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2016年06月18日(17:19)

ニセコ・札幌で大量に生まれる薪需要 視察その2.半機械化林業

黒松内の興奮がさめやらぬまま、われわれはバスに乗って千歳林業さんの本社・倶知安町に向かいました。そこには薪割り機がありました。
 
東日本大震災以降、薪ストーブがブレイクしています。電気に依存しない暖房機。灯油も電気もガス暖房も、ほとんどが電気がないと使えない仕組みになっていますが、薪ストーブはほとんどが電気なしで運転することができます。ただし、薪(まき)を夏の間に調達しておく必要があります。
 
もうひとつの需要は、リゾート地ニセコならではの別荘・ペンション等の需要増。
休暇を過ごす非日常空間に炎が見える暖房がほしいと願うのは普通の心理。ところが、燃料となる薪が調達できない!
 
千歳林業はこれまでも薪を販売してきたそうですが、どうにもやりくりがつかなくなって、2013年度に薪割り機を購入したのだそうです。
 
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〈奥から手前のおのに向けて丸太を押し出して薪を割る〉
 
機械化林業を見学してきたボクたちは、オートメーション化が進んだ生産設備を頭の中に描いていたのですが、目の前にあった設備は「家内制手工業」と呼んでもいいくらい、ゆっくりした設備でした。
短く切った丸太を機械に投入し、おのに押し当てて薪を割る。割れた薪はそのまま流れていくという仕組みです。そのスピードはかなりのんびりしたものでした。
 
聞けば、生産設備のスピードを上げたくても原木の供給が間に合わないのだそう。林業会社においてそういう状況ですから、なにをかいわんや。
 
広葉樹を主に生産していますが、とうてい足りないので、針葉樹を混ぜる場合もある。シラカバは火つきがいいので一定量を入れるけど日持ちがいいのはナラ。いずれにしても原木不足。
 
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〈向かって右から丸太を投入し、ちょうど壁で見えない部分で薪を製造。左から薪が流れてくる。トラクターは何のためにあるか!? じつは薪割り機の動力なのでした〉
 
見学者のボクたちは、ある種の混乱に陥りました。
黒松内では、これからの林業は機械化が進む。そう確信したわけですが、薪割りの生産はまるで違う。そもそも原木が足りない。
 
ボクたちの仕事がそうであるように、林業の世界も一本調子であるわけがないのですね。
生産性をうんと上げる仕事がある一方、需要をにらみながら原料供給と相談して生産性を最適化する仕事もある。
そういった難しさを半日で目撃したのですから、頭の中はかなりいっぱいいっぱいになりました。

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2016年06月17日(19:49)

ニセコ・倶知安エリアの視察に行ってきました その1.機械化林業

6月15日(水)・16日(木)の2日間、ある工務店の視察旅行のツアーガイドとして、ニセコ・倶知安・黒松内・洞爺湖町を回ってきました。
少しずつその内容を紹介していきたいと思います。

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まず最初に見学した木の伐採現場から。
到着した森はトドマツの人工林、いわゆる植林地です。
 
皆さん、木を切ると聞くと、木こり、チェーンソー、危険、という印象を持つかもしれません。ボクたちが見に行ったのは最先端の機械化林業です。
建設機械2台がセットになって林道を進み、「ハーベスター」という電子制御の工作ツールを取りつけた1台が立木を根元からつかみ、ノコの音がしたと思うまもなく木が傾きます。
それはあっという間の出来事でした。

もっと驚いたのがその次。木が倒れて「おおっ」と歓声を上げている最中に、ハーベスターは枝打ちをはじめているのです。伐採から枝打ち。これはほぼ一連の作業です。
大きな立木を「アスパラ」に例えた見学者がいましたが、太くて長い立木がまさにアスパラのように、簡単に持ち上げられ、枝のない丸太柱状になるのです。



ハーベスターはすでに次の作業に取りかかりますが、後ろについている、もう1台が丸太状の木をつかんで土場に集めます。

作業スピードは人力の10倍。ボクは、フォード自動車が自動車のライン生産を開始することで生産性が飛躍的に高まり、価格が劇的に低下したという製造業における伝説を思い出していました。

これはもう、ヒトとは比較にならない。圧倒的な機械力の勝利です。しかも、少なくてもチェーンソー作業より安全だし、雇用を生みます。ハーベスターを操っていた若者は、ホテルマンからの転職。本当に楽しそうに仕事をしていました。
 
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〈本当に気持ちのいい若者たち〉

圧倒的な生産性によって何が変わったか。
視察を受け入れてくれた千歳林業(本社・倶知安町)の栃木社長によると、
丸太の生産原価が落ちる。だから、立木を高く仕入れることができる。立木を高く仕入れる(木が高く売れる)ことができれば、森林所有者は再投資の費用が確保できる。丸太の生産量が拡大するので、増加する国産材・道産材の需要に対応することができる。
 
 
〈千歳林業・栃木社長〉

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これだけ革命的な生産性向上が起きているのに、ボクら建築側にいる人間はそのことをあまり知らない。
そのことにも驚きました。

視察地は黒松内町でした。黒松内道路を黒松内南ICまで進み、そこから黒松内の名流・朱太川(しゅぶとがわ)をさかのぼって山に入っていきます。現場は道有林で、幅が1mほどにまで狭まった朱太川を2度渡り、伐採現場に到着しました。浅瀬とは言え川渡りを中型バスで2度もやってしまいました。運転手さんは緊張の連続だったと思います。
 
黒松内はいいところです。黒松内道路から山に入っていき、ボクはいちどキャンプに行ったことがあり、森の豊かさを再度感じることができたのもうれしい体験でした。
 
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ちなみにこの日の昼食は「道の駅 くろまつない」の有名なピザ「DO」。Lサイズを大人15人であっという間に完食。みんなの笑顔をみたら、おあじについては説明の必要はないな、と思いました。間違いなくオススメです。
 
で、15人のうち10人くらいはピザのあと、これまた有名なパン工房に直行してパン購入。もちろん白井もシナモンリングを1つ購入しその場で食べました。柔らかくてしっかりしていて、ぜいたくな食感のパンです。はい、こちらもオススメ。
 
というわけで、道の駅 くろまつないでのお食事は、Mサイズピザ2人で1枚、Lサイズピザ4人で1枚、さらにパンを1人1コ、くらいがいい感じかと思います。
 
おみやげにアンジュ・ド・フロマージュのチーズを購入したかったのですが、1泊旅行だったので見送りました。

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2016年06月09日(19:01)

中学の頃から「北海道住宅新聞」を読んでいた!

昨日、ある取材先で名刺交換させていただいた方から、とてもうれしい話をうかがいました。

実家が工務店で、昔から「北海道住宅新聞」を購読していただいていることは存じていましたが、

「中学の頃から読んでいたから」とTさん、
「へえ、変わった中学生だったんですね」と自分、
「オヤジ、ヘンな新聞取ってるなと思って、自分も読んでた」とTさん。


昭和の時代から新在来木造構法を取り入れた、ものすごく先進的で頭の柔らかいお父さんでした。


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ちょっと年をとったかなぁ・・。

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2016年02月21日(17:15)

経済産業省がZEH登録制度を発表しましたね。

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1.ZEHビルダーでないと補助金は受けられない。
2.2020年度における年間のZEH建築(改修)割合を50%以上とすることを目標として各年度の目標値を設定・公表すること
3.公募開始時期については、平成28年4月上旬~中旬を予定
この3点がポイントでしょう。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/zeh_builder/
〈画像は経産省のホームページをキャプチャーしたもの〉

やり方がじつにエグイですね。
義務化よりよっぽど高度な戦略と言えるかもしれません。

しかし、よく考えると、これは太陽光発電を住宅に設置することをなかば義務化する政策です。しかもその費用は国民負担。

いろいろな意味で今後議論が起きるでしょう。
ただ、背を向けるわけにはいきません。

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2016年02月19日(17:38)

「どっち?」「ぜっち!」というほど話題沸騰のZEH(ゼッチ)

今年は「ZEH」という言葉で年が明けました。
住宅内で使うエネルギーを削減した上で、その全量を自家発電でまかなう住宅=ネットゼロエネルギー住宅。略してゼッチZEHです。
 
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住宅内で使うエネルギーは何がどのくらいか。地域によって差があります。
札幌は全エネルギーのうち約6割が暖房、2割が給湯、残り2割が照明や家電、調理です。
そして、暖房が多い分、全国平均と比べると使うエネルギーが1.5倍以上になるので、がんばって省エネしてもたくさん自家発電しなければなりません。
 
意外と誤解されているのが冷房です。冷房は想像以上にエネルギーの使用量が少なく、全国平均では棒グラフの棒が見えないくらいしか使っていないのです。
暖房はマイナス温度から20℃以上まで30度くらい温度を上げるのに対して、冷房は35℃の日でも冷やす温度は10度以下。しかも住宅は間欠冷房なので、常時使うわけではない、ということのようです。
 
寒い地域ほどうんと省エネして、それでもたくさん自家発電しなければいけない。それがネットゼロエネルギー住宅です。
 
昨年末、経済産業省が2020年までにZEHを新築の5割以上にするとぶち上げました。しかも達成度合いをチェックするとも。
 
このことで、年明けから寒冷地北海道は大きな騒ぎになっているのです。
 
国土交通省の2020年度省エネ義務化なんて吹っ飛んでしまいましたね。省庁同士のつばぜり合いというか、どの業界の利益代表なのかというか、まあまあ・・・。

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2016年01月04日(11:01)

丙申・2016年を迎え住宅会社経営者の見方は!?

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おはようございます。
今年は、消費税10%引き上げの前年となることから(どんでん返しがなければ、ですが)、マイホームの駆け込み需要、そしてその先の不況が近づいてくる1年になります。

日ごろお世話になっている住宅会社経営者の皆さまの声は、大きく二つに分かれると思います。
1:新築着工は減り、受注は減り続ける。新規事業の開拓が必要だが言うまでもなく難しい。今後はリフォームへ配置転換が始まる。

2:新築着工は減るが、受注棟数が減る計画は立てていない。強みをさらに磨くとともに、商品開発面であらゆることをやっていく。

非常に乱暴ですが、この2つの意見に分けられます。そして、さらに乱暴ですが、経営規模が大きい会社は1の意見になりやすく、中堅クラスの会社が2の意見になりやすいようです。
もちろん、現在の受注状況や社歴が長いかどうかなども関連します。

乱暴に整理するとこうなるかと思います。
社歴が長い=多くのOB客がいる。リフォームを事業化しやすい。(雇用吸収力がある)
商品開発力がある=現在の市場から支持がある(このまま新築中心で進む自信がある)
販売に苦戦している=市場縮小はそのまま受注縮小につながる(ビジョンが開けていない)

こう見てくると、変化が起きそうなのはリフォーム市場かもしれません。リフォーム専門店はあっても、住宅会社の本格参入はいままで少なかった。そこに大手ハウスメーカーを含め、たくさんの会社が本格参入することが予想されます。

一方の新築は、今後ますます地方都市から札幌など県庁所在地や主要都市に進出する会社が増えそうです。
地元で成功したノウハウを持って大きな都市の市場に挑戦する。このため大きな都市の市場は激戦になる。

今年は丙申(ひのえさる)というそうです。
丙申の年は、「これまでの頑張りが形になっていく」と解説している人がいます。
そういう年になるように、がんばりたいと思います。

ところで、北海道に野生の猿はいません。

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2015年12月24日(19:25)

ライフオーガナイザー2級 合格! もっといい家・もっといい暮らしを

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11月29日のコラムでライフオーガナイザーの資格試験に挑戦したことを報告しましたが、このほどめでたく合格の一報が届きました。

家の中を上手に片づけて、リバウンドしない(またゴチャゴチャに戻らない)こと。ライフオーガナイザーの仕事をわかりやすく言うと、こんな感じです。

ここでの学びを2つ
1.片づけ方は人それぞれ。
自分に合った片づけ方がある。だから、安心しなさいという感じに受けとめました。

2.いるものといらないもので分けてはいけない。この点は、まだ身についていません。やはりいらないもの探しをしてしまう。
自分に合った片づけは、これからさらに磨いていきたいと思います。

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ボクは、自分の部屋を片づけたいがために受験したわけではありません。ライフスタイルと密接に関わる家の中の整理、そして、そのために収納はどうあるべきか、ということを使い手目線でまず自分が学び、それをいろいろなかたちで皆さんにお伝えしたいと思ったからです。

2016年はそんな発信もできればいいなと思っています。もちろんボクだけの力ではとうていムリですから、専門家のお力を借りて、できればコラボしながら、もっといい家・もっといい暮らしを見つけていきたいと思います。

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2015年11月21日(18:04)

冷たい雨のなか、札幌市内の住宅めぐり

冷たい雨に雪が交じる、寒い一日でした。
11月21日(土)、ボクはモデルハウスの見学と建売住宅の工事現場チェック、注文住宅の工事現場見学、完成内覧会の見学をして事務所に戻りました。

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まず、断熱材の施工写真を撮影したかった現場は、雨のため施工中止。工事は月曜日に延期になりました。
ボクを案内しながら大工さんがタイベックの下に隠れた断熱材の状態を見せてくれました。ありがとうございます。

モデルハウスはすてきなインテリアで人気の住宅シリーズです。どの空間もゆとりがあり、眺め回したくなる感じの家でした。

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内覧会は、見学のお客さまが大勢おられ、大人気。そこかしこがしっかり作り込まれていて、注文住宅の面白さがつまっていました。

家を見て回ると、それまでは気がつかないこと、自分の好きなタイプとかがわかってきます。

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2015年11月18日(19:59)

温風暖房の可能性

昨日はあったかリフォーム倶楽部主催のセミナー
「暖房熱源と暖房方法の選択」が開かれました。

講師は同会会長で北大名誉教授の繪内正道先生。
繪内先生はじゅうぶんな準備の上に講演内容を組み立ててくださいました。参加者の皆さんにとって、なかなか刺激的な内容だったと思います。

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そのなかで、スライドを1枚、ピックアップしてみました。
断熱性能がうんと高い住宅では、どんな暖房方法が良いのか。
いままでと同じか、それとも変わってくるのか。

繪内先生は、Q値で1.0Wよりも高性能になってくると、温風暖房が有利だ、という見方を示しておられます。
温風暖房の位置づけは、今後の焦点の1つかもしれません。断熱性能が高くならないと、温風だけで家を暖めることは難しいのです。しかし、熱交換換気の給気を加温するだけで暖房できるレベルになると、温風暖房はいままでと全く違ったものになってきます。
エアコンとも違うし、巨大な送風機で空気を回す温風暖房とも違う、気流感のほとんどない暖房になります。

ルームエアコンに押され気味で話題になりにくいですが、熱交換換気+給気加温の可能性を忘れてはいけない、というメッセージでした。

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2015年10月30日(17:38)

昨夜は少し"断熱昔話"を

いまではまあまあ普通に断熱住宅が手に入る時代になりましたが、ここに至る歴史はなかなか壮絶なものがあります。
北海道開拓の歴史は、そのまま寒さとの戦いでもあったわけですが、現代の技術が生まれる直接のキッカケになったのは、昭和40年代以降の動きです。
いまから半世紀近く前にさかのぼるわけです。

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これってじつはすごいことでして、リアルに言えば、当時、歴史を動かした人たちは、いまかなりのお年になられ、すでになくなった方もおります。
「当時は何があったのか」
「なぜあの製品が開発できたのか」
後世を生きるわれわれが感じている疑問を知る最後の機会がいまだ、という話を、お魚のおいしい居酒屋さんで焼酎を飲みながら、3人で話しておりました。

ボクは当時を生きた1人ではありませんが、数ヵ月かけて調査し報告書にまとめた経験があり、住宅断熱化の始まりのころからの情報を、工法などにかたよりなく、わりと知っていると思います。
それでもわからない重大なことがいくつもあります。

じつは、今年の冬、東京から、北海道の断熱の歴史を取材しに来られた先生もいらっしゃいます。


日本の住宅断熱が北海道から始まったことは、北海道外でもわりと知られています。
が、北海道がどこから学んだか、は知られていません。
また、世界的に住宅断熱化をリードしてきた国がどこかも、正しく伝わってはおりません。

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北海道が学んだのはスウェーデンです。
昭和50年代に学会が中心となってスウェーデン視察に行った、そのメンバーとそのときの情報から、北海道の断熱化が本格的に動き出したと言えるかもしれません。

もしかすると、ボクがまとめた報告書を世に出す機会があるかもしれません。当社にお越しいただいた先生もそれをすすめておられました。

昨日の夜の昔話で、気持ちがまた少し前に進みました。

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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