2015年7月

2015年07月30日(16:50)

北海道のアンティーク・古民家を串刺ししてみました

アンティークブームです。
家具や調度品、身につけるものも新品ではなく、少しこすれた跡もあるけどツヤのある革のバッグとか、お気に入りに囲まれて暮らすことがブームの背景にあるとされています。
新品の緊張感より中古の親しみを愛するとも言えるでしょうか。

ボクもわりと中古ものが好きです。新品にこだわらないですね。
住宅でも、古民家がブームです。ですが、古民家を横断的に解説したり、まとめた資料はあまり見たことがありません。
ニシン御殿ならニシン御殿だけ。洋館なら洋館だけ。
どれもつまみ食いしたいボクなりに、ちょっと分類してみようと思い立ちました。

ニシン御殿(ニシン番屋) 小樽・祝津
洋館(公共・準公共建築) 札幌・時計台
擬洋風(函館などの町家) 函館・西部地区
建築家(田上義也など)  札幌・ろいず珈琲館
古民家(農家民家)    厚真・旧畑島邸
その他(いろいろな個人住宅)

一般に、古民家というと農家民家を指すようですが、上記の建築も広い意味で全部古民家です。
そして、一般に知られている順に上から並べてみました。

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ニシン御殿は、家というより施設に近いですね。外観も室内も自分の家につながるイメージが得られにくいですが、ニシン漁全盛期のにぎわいとその後の衰退が、昭和の栄枯盛衰を象徴するようで、ボクは好きです。

定番は、小樽・祝津と道北小平町の花田番屋ですが、写真はこれらの定番を外して、しかもニシン御殿へのイメージも裏切って、洋風のニシン番屋です。場所は石狩・濃昼(ごきびる)。しっかり管理しているようでうれしくなります。
ニシン御殿についてはこのページが楽しいです。
http://nisin.hideohiguchi.com/

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洋館は大好きです。豊平館とか函館区公会堂とかが大好きです。でも欧米のゴシック建築が好きなわけではありません。ボクの場合、木造下見板張りの軽快でカラフルな外観、落ちついたインテリアと少し高い天井が好きらしいです。

写真は、秋の朝の函館区公会堂。すてきですね。ここは民間人が出資して建てられた地域のための公民館です。海を望むバルコニーが最高にいいんです。

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擬洋風がすごく好きです。擬洋風の家がいまでも普通に使われている函館・西部地区を散歩するのが大好きです。洋館と同じで軽快な外観と、簡素な和風とのハーモニーが楽しいのでしょう。個人的にはもっとも好きな古民家です。

写真は、またまた函館。西部地区の商家です。現役ですよ。
https://www.iesu.co.jp/column/2014/11/05083836.html

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建築家の町家物件はすごいですね。パトロンがいて、建築家が作品作りを進めた感じが伝わってきます。函館・元町の日和茶房というカフェとして営業している田上義也氏の設計物件は、正直かなり圧倒されました。
写真も函館・日和茶房。函館3連発となりました。

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北海道の古民家はあまり知られていませんね。本州の古民家は、かやぶきの高い屋根と屋敷森などに囲まれた堂々とした構えが多いから、見た瞬間に明治や江戸時代にタイムスリップすることができますが、北海道の古民家はトタン屋根にアルミサッシ、土台が若干傾き気味?みたいな家が多いそうで、どうやって価値を高めるかとなると、やはり再生工事が必要になる場合がほとんどだと思います。
ただ、内部を見るとニシン御殿に負けないがっしりした骨組みに圧倒されます。

町家はオーナーが変わったり、賃貸で店舗になったりと利用価値が維持される場合も少なくないですが、農家民家は廃屋・解体の危機に瀕しています。どうにもならない問題ですが、薪(まき)にしてしまうにはあまりにももったいないと思います。
興味がある方は、厚真町の再生古民家をみてきてください。パン屋さんとして営業しているので、営業時間内なら古民家内で買ったパンを食べることもできます。

写真は厚真町の再生古民家の広間&縁側です。断熱工事により、冬でも使える板の間になったそう。
記事こちら。
https://www.iesu.co.jp/ghs/article/20150724141920.html

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2015年07月21日(16:41)

中古住宅の価値を引き上げることは本当に可能か?

空き家が増えている、若年人口が減っている、今後さらに家があまりそう、などの理由で、中古住宅をもっと売りやすいように、もっと買いやすいようにしよう、という動きが始まっています。
そのためには、まず中古住宅が安心して買えるか検査をしましょう。
耐震性は? 大切な部分に腐れや劣化はないかを調べて、「骨組みは大丈夫だけど、屋根がちょっと傷んでいるからなおしたほうが良いですね」みたいな検査結果を提出する。そうすれば、売り手も買い手も安心して中古住宅を売買できる。

この仕組み、とてもよくできていると思います。中古品を買うときに目ききによるチェックは必要だし、そうでなければ保証がほしいというのが買い手の気持ちですから。

今のところ普及はこれからですが、ボクはぜひ普及してほしいと思っています。


ただ、1つ引っかかることがあります。検査して性能面で問題がないことが確認されれば、不動産価値が高まる、すなわち高く売れるようになるという趣旨のPRが政府からも発信されているのです。

ボク、そうはならないと思います。
中古住宅の価値は、性能だけで決まるわけではないからです。
むしろ、この検査制度が始まり普及することで、性能が現行法に近いレベルにあることが当たり前になる。物件の価値はそこでは決まらず、立地やデザイン、基準を上回る性能などが決定要因になるはずですし、中古市場ではほしい人のニーズに合ってない物件は、たとえデザインがよく高性能でも売れないわけで、そういった市場原理までひっくり返すほどの「検査」があるはずがないと思うのです。
 
もっといえば、検査して性能がOKなら価値は上がる、というのはある種のバブル経済思想であって、"資産インフレを起こせば国民お財布のひもが少しゆるむはず"という下心があるのではないかと勘繰りたくなります。

中古物件の検査は、中古車でいえばディーラー車を買うようなもの。
「何かあったら当然うちがめんどう見ますから」という。
そのことで安心料が上乗せされることはあっても、価値が上がるわけではない。
そこんところはき違えないほうが良いと思うのです。

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〈中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 報告書から。価値が上がるために何をすべきなのか。そこが問題ですよね。クリックして拡大します〉

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2015年07月19日(07:51)

建築研究所 坂本雄三理事長「誘導基準ができます」

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7月18日(土)
建築研究所・坂本雄三理事長の講演会が室蘭で開かれました。主催は地元の住宅会社・住まいのウチイケさん。ハウス・オブ・ザ・イヤーの受賞記念というかたちで、市民と専門家160名ほどが集まりました。
地場工務店がまずしっかり家をつくること、いい家をつくっていることを地域の市民に知ってもらう努力を怠らないこと、断熱技術と設備、そして制御技術を高めること、基本は断熱性能にあることなどを説明し、みんな聴き入っていました。

そのなかで、「誘導基準」の話が出てきました。
現行の基準は5-6年後に義務化が予定されており、すでに目指すべき目標ではなくなっています。そこで、新たに目標を示す形になりそうです。
細かなことは触れられませんでしたが、現行基準から2割強化という線のようです。単純に北海道に当てはめると、熱損失係数(Q値)で1.3Wを切る水準になります。北海道は本格的に200mm断熱時代が到来することになりそうですね。
その他の地域はようやくまともな断熱基準が登場したと言えそうです。

さあみなさん、これからどうしましょうか!!

〈写真最前列は室蘭市長の青山剛くん。生意気にも「くん」付けで呼ばせていただくのは、高校の後輩だから。室蘭工業大学の建築出身の市長は、やはり建築と都市計画が好きですね〉

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2015年07月16日(16:12)

旅の風景.函館-北見-美瑛-東神楽

7月9日から14日の出張でカメラを構えた風景を紹介します。

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講演会場となった函館国際ホテルのとなりに建つ、ニチロビルディング。目を引いたのは、1階のアーチと2階以上の窓の引っ込み具合。表情が乏しくなりがちなオフィスビルに丸型と凸凹によって表情を与え、道行くボクの目を楽しませてくれました。
資料によると1934年の建築。北洋漁業最盛期のニチロ漁業が建てた巨大なオフィスビルの1つで、1号館はいまの函館国際ホテル建築に当たり解体され、写真の2号館がボクの目を楽しませてくれた。

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早朝の函館・万代埠頭です。朝ランに出発し、海岸線陸橋を埠頭まで走ると、丸太が山積みされていました。これは出荷なのか入荷なのか? そもそも樹種は? ボク、ニオイをかいだらだいたいわかるのですが、ランニング中で臭覚が低下しているのか鼻がきかない。ただ、強い香りを放つスギやヒバでないことは確か。木肌から見るとカラマツでしょうかね。とすると出荷待ちかな。

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埠頭から折り返して金森倉庫へ。それまでベイエリアには雲海がかかっていたのですが、日が昇るにつれて霧が晴れ、函館山に少しかかるだけになりました。その瞬間の写真です。

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飛んで北見市内。夕食は講師の先生と事務局で近所の焼肉店「龍巳」へ。この店、到着前から大いに話題となりました。というのも「北見焼肉マップ」なる資料によると煙の量が「超高」とあるのです。炭焼きのお店はほかにあるけど、煙が超高はここだけ。みんな上着をホテルにおいて出発です。そしてたどり着いたのがこの路地。何ともいい風情の焼肉店です。安い・うまい・ちょっと煙い! 最高です。

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翌朝、この日は小雨交じりでしたが朝ランを決行。向かったのは北見市内を流れる無加川の土手です。ここはとても走りやすい道でした。適当なところまで行って折り返すつもりでしたが、ちょうどいい場所に頭首工(巨大なえん堤)があったので、その上に行ってみました。水量が少なくややよどんだ水流でした。
資料によると、常呂川第二頭首工だそうです。

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最終日の午前中は、山本亜耕さんといっしょに美瑛・東神楽へ。美瑛は、黄金色の麦の穂とラベンダー、そしてジャガイモの花。最高の季節を迎えておりました。地元のボクらが見ても素晴らしい景観。ただこの景観は農家の努力のみによって保たれていることを改善しなければ、おそらく20年後にはもうなくなっているでしょう。この風景を20年後も楽しむためにどうしたらいいのか、みんなで考えませんか。

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最後にシャッターを切ったのが旭川家具・匠工芸の本社・工場。旭川で設計業のキャリアをスタートさせた山本亜耕さんにとって、工房まわりは大切な仕事だといいます。そこにはいろいろな職人とデザイナーがいて、「こんなのつくってみたんだけど」という試作品が静かに眠っている。それを見ることで作り手同士の創作につながっていく。例えば「造りつけの家具に使ってみたい」とかアイデアの泉だそう。工房めぐりからアイデアが生まれる。なるほど、地場のものづくりとのつながりが重要だという言葉の意味が少しだけわかった気がしました。

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2015年07月15日(19:13)

鰺ヶ沢でのおそろしくも楽しい取材!

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函館出張を1日延ばして、海峡線に乗って青森に渡りました。
目的は、お寺の建替取材です。
北海道から大工が出かけて、本州でお寺を建てています。
 
一人一人インタビューし、最後に「いちばん気に入っている場所で写真を撮らせてください」とお願いしました。
 
最初の2人は本堂内での撮影でした。次に軒先に上がりました。
「大工とスズメは軒で泣く」ということわざがあります。
とても難易度が高い軒先。それだけに見せ場でもあるのです。
 
さあ次はどこ?
「じゃあ、いまつくっている宝珠で」
解説しましょう! 宝珠(ほうじゅ)とは本堂の屋根の一番高いてっぺんに乗る飾りのことです。
「わかりました。行きましょう」
 
大工のHさんに続いて、足場からまず軒下まで上がります。
そこからはハシゴで軒の上、すなわち瓦が乗った屋根に登ります。
そこからさらに足場のかかった屋根をまっすぐ上に登り、途中で板の上を渡って横移動、最後に急こう配を這って登ります。
ついに頂上まで来てしまいました。
下は見ません。何があっても下は見ません。上だけを見て撮影!
 
さて、下りはもっと怖いです。撮影でしゃがみ、緊張で足が疲労しているため、バランスが取りにくい。加えて反りが入った屋根こう配は平衡感覚を壊してしまうようです。板の上を横移動するだけなのに、体が傾いてしまうのです。
そんな状態で軒からはしごで下りなければなりません。
 
胸ポケットには買ったばかりのスマホ。かがめばポケットからスマホ落下は確実。
命からがらおりました。
 
そして5人目。さあ、どこでも行きますよ! と白井。
「じゃあもう一回テッペンに!」
笑うしかありませんでした。
こんどはスマホを地上において、Oさんに続いて登ります。
前回の反省を生かし、平衡感覚が狂いやすい視界情報より、三半規管を信じて歩きます。少しだけ怖さが減りました。平行移動で前回ほどふらつかずに歩くことができましたが、屋根から下りるのはやはり怖い。
 

 
そして最後。
さあ、どこでも良いですよ! と白井。
「じゃあもう一回いいですか」
いいですとも(笑)。
こんどはテッペンではなく、下屋根。
瓦では泣く銅板葺です。
Mさんに続いて登ります。ところが急こう配で足を滑らしてしまいました。
幸い、落下することもなく何とか撮影ポイントへ。
 
軒で泣くのは大工ではなく、記者ですわ。
 
取材はすごく楽しかったんです。
大工が好き、ものづくりが大好き!
そういう若者を取材すると、おっさんのボクまですがすがしくなります!
 
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〈軒先から見下ろす日本海。この日はとてもおだやかでした〉

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2015年07月15日(19:10)

セミナー出張が終わりました

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函館・青森(鰺ヶ沢)、北見・旭川の出張が終わりました。
セミナーはどの会場も満席! 多くのかたに力添えをいただき、そして多くのかたに集まっていただき、そして、講師の山本亜耕先生、藤原陽三先生に素晴らしい内容の講演をいただきました。

参加いただいた皆さんからのアンケートからも「やって良かった」と主催者・協賛各社の満足感でいっぱいです。
講演内容については後日新聞で特集いたします。

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2015年07月08日(18:19)

明日から、6日間のツアーが始まります

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7月12日・日曜日をはさみ、その前の今週末は函館と青森、日曜日から北見・旭川へ出張です。函館・北見・旭川でセミナーを開き、そのすきまに青森に渡って1件取材します。

今回のセミナーは、事前の予想をはるかに上回る申込数になりました。函館85名、北見60名、旭川75名です。時代の後押しだと思います。

いいセミナー運営ができるように、明日の晩は決起大会です!
まずは函館から。どうぞよろしくお願いいたします。

「省エネ住宅・設備セミナー 断熱+環境設備のこれから」

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2015年07月01日(19:17)

本州からの住宅視察がひと段落しました。

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100人以上の住宅会社・工務店・設備会社の皆さんをご案内しました。北海道の高断熱住宅と同時に、売却前提のモデルハウスも見ていただきます。そうすると、2-3日という短期間でも北海道の住宅の現状をわかってもらえるかなと思うからです。

既成概念を取り払って、新しいチャレンジをいろいろやっていることを知っていただくと同時に、特別な高額住宅ではなく、普通の住宅が普通にしっかり断熱されていることを断熱されていることも知っていただきたいのです。

そのなかで、ボクが教えられることもたくさんあります。
今年、特に感じたのは外装材についてです。金属サイディングや金属板外壁がとにかく多いと指摘される。
確かに多いですね。
メンテコストがかからずに長持ちする外壁材を、という要望が、金属板外装の増加の背景にあると思います。
また、いま徐々に増えている木外装について「腐るからうちの地方では使えない」と言われることが多い。これも、よく考えれば10数年前までは北海道も同じだったことを思い出しました。
水切り、雨がかり、湿気の開放。こういった技術を積み重ねていまがあるのですね。

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屋根については、いつも首をかしげられるM型の無落雪方式がありますが、雪が落ちない三角屋根とそれに使う屋根材も珍しいようです。屋根材が珍しいというより、雪を乗せたまま冬を越して問題を起こさない技術に驚くようです。
これも、考えてみれば10数年前から技術開発が進んで、断熱・気密化と屋根通気などで雪を載せたままOKな屋根ができてきました。

これらの結果、北海道の家は外観からして本州の家と違うことになります。厳しい気象が住宅を造ってきたと言えるでしょう。そこを見てもらえると良いな、と思います。

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PROFILE

編集長 白井 康永

家づくりを変えたいという野望を持ち、北海道住宅新聞、札幌良い住宅jp を中心に、少子化の激流のなかでわれわれが日本を導きます.時にひょうひょうと(笑).
北海道・札幌市生まれ54歳。血液型O型.新卒1年、専門学校に通う娘たち、高校を卒業した息子あり. 休日にやってること:のろまジョギングとテレマークスキー.

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