編集長コラム


今月からブログへ移行!!
今月からエディターズコラムをブログ形式に変更することにしました。URLは以下の通りです。でも使い方がよくわからなくて、しばらくは苦労しそうだ・・。
※新しいコラムはここ
http://www.iesu.co.jp/cgi-bin/ediblog/

(平成18年6月1日)
分別ゴミのゴミ箱。生ゴミ、紙、プラスチック、その他に分ける(ドイツ・ベルリン)
小さな暮らしってなに?
◆前回のコラムに「小さな暮らし」と書いたら、さっそく質問をいただいた。「小さな暮らし」って何?。待ってました!?いや失礼。説明不足でした。小さな暮らしは消費支出を抑える暮らし、と書くと『ケチケチか』といわれるだろう。そうでもありそうでもない。たとえば、使い捨てせず“長く使う”、時間を金で買わずに時には“時間をかけてやってみる”、たまには“テレビを消した夜を送る”、冬でもTシャツでビールではなく“セーターでかん酒”。便利な暮らしの一部を捨てて、少しだけ昔に戻ろうという発想だ。◆ものを長く使うにはいいものを買わなければならない。それを修理しながらしぶとく使った80年代前半までの日本に戻ろう。だからといって100均を否定はしない。まあ、あまり堅く考えずに、ただ、少し消費と投資を見直そうという程度の話なのだが・・。◆超高断熱化するにはそれなりに費用がかかる。ただ最初に投資してそのあとの家計を小さくしておけば、何かの折にも対応しやすい。そういったお金の使い方についても見直してみてはどうか、という気持ちもある。◆LOHASという言葉がブームだが、これも似たような発想だと思う。ただ、日本には資源がない。われわれは資源がないことを自覚し、小さく暮らすべきだと思ったのだ。

(平成18年5月31日)

柱に100mm充てんし、その外側にさらに100mm断熱した現場。写真はリフォーム物件
旭川で200mm断熱はじまる
◆5月24日、旭川市内と近郊で外壁200mm断熱住宅の工事現場を見てきた。旭川を中心とする道北地域は日本でもっとも寒く過酷な地域。札幌とは寒さの次元が違う。その旭川で今年から新住協・旭川支部が200mm断熱を推進している。◆外壁の断熱を一般的な100mmから2倍の200mmにするとどうなるのか。灯油など暖房エネルギーの消費をグッと抑えることができる。灯油が高騰している今だから、200mm断熱のありがたさはとてもわかりやすいわけだ。遮音性も高くなる。外の音が室内にいるとほとんど聞こえないので、冬の吹雪の日には断熱のありがたさがよくわかる。◆旭川のとなり、鷹栖町で新築、旭川市内で改修の現場を見た。とにかく壁が厚い。「やっぱすごいなあ」見学者の口からつぶやきが聞こえる。専門家は「ここどう納まってるの」とテクニカルな質問を大工さんなどに投げかけていた。◆自分は、北海道の断熱は標準で外壁150mm、できれば200mm以上が良いと思っている。エネルギー価格に左右されず、光熱費を抑えた小さな暮らしのために。でもそのことが大きなコストアップになると、光熱費は減ってもローンの支払いが増えて小さな暮らしにはならなくなる。大切なのは建築費の割り振りと支払いのバランスだ。今の灯油価格だと200mm断熱は10年以内にもとが取れそう。ぜひ高断熱化をお勧めしたい。◆そのときに大切なのは施工力。家を建てようと思ったら、まずは現場を見ること。何ヵ所も見るうちに最初は見えなかったものも見えてくるはずだ。

(平成18年5月29日)

この方位からは全体が写らない
水車小屋ときれいな流れ
新住協の総会が開かれたのだ
◆前回、長野の話をしながら岐阜県中津川市の写真を載せたのは説明が必要だ。写真の農村は中山道の馬籠という宿場に行く途中の風景。馬籠から峠を越えれば長野県、ただ平成大合併の前は馬籠は長野県だったというから複雑だ。複雑なので地理の話はやめよう。とにかく長野と岐阜は隣り合わせ。◆子供のころからお城が好きで、今回も松本城の見学を楽しみにしていた。写真で見ると外壁が一部黒く塗られており、いまいち無粋な城だと思っていたが間違いだった。すばらしいお城である。増築部分は太平の世になってからのものだが、天守など主な部分は戦時の城、つまり戦い守る城なのだ。そこでおきまりのポイントではなくこの城の性質を表現できるポイントを探して写真を撮ったのだがいかがだろうか。◆ついでに安曇野の水車小屋も撮影したので見てほしい。有名なロケ地だそうだが、水の流れがとても印象深かった。◆なんだか観光旅行に行ってきた気分になってきた。そうではない。新住協というNPO法人の総会があったのだ。その取材に松本に出張した。新住協と当社は浅からぬ縁で、設立の時からお手伝いしてきた経緯がある。今では北海道・東北を中心に650人あまりの会員を抱える会に成長した。そしてこの総会で、長年新住協に貢献してきた3氏が役員を退任した。本当にお疲れさまでした。

(平成18年5月25日)

古い家に見えるが新築。梁は古い家から取り出した
美しい田園風景。耕作はたいへんそう・・(岐阜県)
美しい農村と民家
◆先週の17日から20日まで、長野県に出張した。4日とも雨でアルプスの山並みを見ることはできなかったが、充実した出張だった。というのもたくさんの発見があったからだ。まず住宅。東北地方よりも古民家が残っているのではないか。これは徹底的に使い倒すという長野人の気質も関係していると案内してくれた方が説明していた。経済圏と人があまり移動していないことも大きいのだろう。ずいぶんと取り壊されたと聞いているが、それでも古い建物が現役で使われている姿に感動した。◆新しい住宅は徐々に高断熱・高気密化が進んでいるようだが、総合的な情報がないという。断片情報をつなぎ合わせると、時としておかしな方向に行ってしまうこともあるようだが、それでも着実に前進している。いや、じつは部分的に北海道の先を行く取り組みもあるのだ。このことについては改めて触れたい。◆山あいをぬって車窓から見る景色の中に、北海道でよくある耕作を放棄された土地というのがほとんどない。今でもしっかり地域で生活している、それが農村風景となって見るものの心を温かくする。

(平成18年5月24日)

予想に反して好天・そして暖か
◆それまで寒い寒いと言っていたのに、3日からのゴールデンウィーク後半は好天そして暖かな日が続き、最高だった。3日は予定通り今シーズン最後のスキー。キロロは山頂の朝の気温が-2℃とあったがぐんぐん気温が上がり、山は写真のように冬と春が同居する格好になった。木々には霧氷、でもぽかぽか。午後からはザクザクの雪がつらくなったので3時前に切り上げる。◆6日は今年初の20℃突破。半袖で花台を作る。夕方には完成し、嫁いだ先はお隣。いつもお世話になっています。幅1m・高さ1m・奥行45センチ、台の下は開放でというご要望で、サンデー大工は設計にかなり迷った。基本的にすべて206材(38×140ミリ)、振れ止めは12ミリ厚の合板。完成後に蹴ってみたがまあまあの安定感。でも雪が載ると心配だ・・。◆納戸の片付け、畑の準備もまあまあ。遅れていた花の開花も一気にやってきて、珍しく予定を消化した達成感とともにいい感じの休みだった。

(平成18年5月8日)

GW谷間ののんびりした火曜日
ゴールデンウィーク谷間の2日間で、何となくのんびりと仕事をしていたら、次号の担当記事が午後3時には終わり、一段落ついた。外は春の日差しだがまだ風は冷たい。そこで調べてみたら、札幌の4月の平均気温は平年より1.5℃も低く、昨年よりも1℃低い。日照時間はひと月で57時間あまり少ない。57時間というと1日平均で約2時間。寒いわけだ。ちなみに今日の最高気温は午後3時までで7.3℃。平年は14.5℃である。◆北海道はこの時期、今ひとつゴールデンではない。まだ寒いのだ。とはいえ正月以来の連休だから、みんな元気に外に飛び出す。うちのまわりでは畑おこしが始まっている。家庭菜園の開始を告げるのがゴールデンウィークでもある。◆ひとり者のKくんは本日休暇。道東へ向かったはずだ。Sさんは4時半に早退したいと今告げてきた。明日から5連休になるから、みんなそれぞれ休みを楽しみにしている。自分はといえば、やりたいことはあるがなかなか進まない。畑の準備(の手伝い)、納戸の整理、そしてシーズン最後のスキーかな。

(平成18年5月2日)

ほとんどお城。現在はホテルに転用されている。
街路樹のかげから撮影。ホーンテッドマンション?
ベルリンのレジデンス スウェーデン・ドイツ訪問15
住宅というより邸宅。敷地は広くはないが(広大な敷地ではないという意味)、地下1階、地上2階プラスロフトみたいなつくりで、個室は10数室という世界だそう。中には写真のようにそのつくりを生かしてホテルに変身した建物もある。こういった高級邸宅が並んでいるまちがドイツ・ベルリンにある。◆アルプスの少女ハイジというアニメをご存じだろうか。アルプスに暮らすハイジは、あるきっかけでドイツ・フランクフルトの大金持ちの家に引っ越す。その家はやはりロフトつきの巨大な家で、家内を仕切るロッテンマイヤーさんという家政婦さんは権威主義の固まり。ハイジはこんな家のロフトでホームシックに泣いたんだなあと空想する。◆空想がさらに飛躍した。「ははあ、ここらの住人がベンツを選ぶんだな」と妙に納得。ベンツという車は、日本で見るとこわもてさが際だって、何となく怖い筋の人たち御用達のイメージになりがちだが、ドイツの邸宅街では権威がタイヤをつけて走っているようで、それはそれでなじんでいた。ジャガーもかなりなじんでいると思った。◆このあたりはリフォームが盛んだった。断熱改修あり、内外装一新工事あり、こうやってオーナーが変わっていくのだろう。

(平成18年4月19日)

日本でも有名なスウェーデン・ストックホルム郊外のエコロジービレッジ。日本風にいうと枯れた生活。周辺は岩盤も露出している。 ここではカーシェアリングも行っていた−1999年。
豊かな暮らしのために スウェーデン・ドイツ訪問14
◆北ヨーロッパに旅行して、じわりと実感するのは、じつは日本という水に恵まれた国土の豊かさだ。冬の寒さは同じでも日本のほうが緯度が低いことが大いに関係していると思うが、作物の豊かさがまるで違う。ただ、そのせっかく豊かな国土を今、日本は放棄しようという方向に進んでいることに大きな疑問を感じる。エネルギーの安全保障についてはこの連載でも触れたが、食の安全保障についても同じことが言える。海外依存率がどんどん高まっているのはご承知の通り。食糧基地としての北海道の重要性は、本当はより高まるはずなのに、耕作放棄の方向へ向かい、農村が崩壊寸前だ。◆豊かな生活の実現が戦後の日本の目標だった。しかし、今や豊かな暮らしは実現している。それでも多くの日本人が豊かさを実感できずにいるといわれている。これは大きな家とか高断熱・高気密だけでは解消できない問題なのだ。ではどうしたらいいのか。答えはもちろん1つではないし、簡単ではない。ただ1つ言えるのは、効率化と低価格化で切り捨ててきた昔のやり方には、心の豊かさを満たしてくれる何かがあったということなのだ。◆スイッチポンの暖房と薪ストーブを併用する、狭くても自家菜園に挑戦する、たまには車を降りて歩いてみる。こういう生き方が、とかくバーチャルになりがちな現代生活のなかで現実を(動物としての人間の本分を)思い出させてくれるのではないか。都会暮らしの方はいなかに自家菜園を、郊外やいなか暮らしの方は庭に自家菜園を。そしてたまには旅行をしましょう。

(平成18年4月15日)

柱の位置できれいに切ってある
せっかくやるなら・・・
春の札幌は発見がある
◆通勤途中の信号待ちでふっと横を見ると、北大馬術部の諸君が乗馬を始めていた。朝7時過ぎ、道路側からはちょうど逆光で、少しずつ力強さを増す朝日を背に乗馬する彼らを見て、春が来たなと感じた。◆会社の近くでは確か3月から着工した在来木造住宅の建て方現場があり、胴差しの先張りシートがひらひらとしていた。「あれっ?」。信号待ちで止めた車をバックさせ、車から降りて現場に寄ってみた。やはりそうだ。先張りではなく後張り。このため柱との取り合い部で本来ベルト状に連続していなければならないシートがちょうど柱の厚さ(幅)分だけ切れており、短冊のようにひらひらしている。またひらひら具合から見るとシート厚は0.1mm。◆札幌では先張りをする現場が増えてきた。これはとても喜ばしいことである。ただ、せっかくやるなら・・という現場も多い。わざわざ短冊状に切るくらいなら先張りしたほうがいい。破れやすい0.1mm厚のシートを使うより、0.2mm厚のシートのほうがむしろ作業性がいいはずだ。こういう現場に限ってきれいな施工をしている場合もある。おそらく現場も管理者も技術のキモがわかればもうちょっと変われると思う。

(平成18年4月14日)

自然素材系の断熱材
ラジエーターにつっこんでブラシで掃除する
ジェットヒーター
プラストモの雨樋
バウテック展示会を見て(3) スウェーデン・ドイツ訪問13
◆心残りなので自然素材系の断熱材についてちょっと触れようと思う。7年前はウッドファイバーのブローイング断熱材に驚いたのだが、今回はそういった自然素材系のブローイング断熱材を目にしなかった。かわって登場したのが成型品である。ウッドファイバーとは何か。これを正しく紹介することができないのだが、イメージとしてはおがくずが近いと思う。古紙原料ではなくバージンの木材などからつくるのだ。それをグラスウールやセルロースのブローイングと同じように吹き込むタイプから、接着剤を使ってマット状に成型したものに変わっているようだ。これはおそらくブローイング施工後の沈下が問題となったのではないかと想像するが、もちろん確認したわけではない。◆でその成型品だが、熱容量が大きいことを強調している。つまりこういうことだ。熱伝導率と呼ばれる熱の通しにくさの値はグラスウールと変わりないが、断熱材に熱を蓄えることができるので、寒くなっても温度低下が遅い、すなわち保温力があるということだ。このうたい文句が本当かどうかわからない。おそらく密度が高い(重い)からだとは思うが、ただ、調べてみる価値はあると思っている。こういうときに試験機関が目ざとく試験してその成果を発表してくれるとありがたいのだが・・。◆おもしろいなと思ったものを少し紹介していきたい。まず温水パネルヒーターの掃除具。別に何ということもない商品だが、日本では見たことがない。台所用のガラスビン洗いを長くした形状で、これを上からヒーターのフィンに差し込んでホコリを取る。掃除機に取り付けるタイプの掃除具がかつて日本に輸入されたが、その後どうなったか。◆ジェットヒーターである。これはなかなか優れものだと思った。透明な円筒形の筒の中で燃焼し、輻射と対流で暖める。ヒーターの下に立ってみたが、暖かかった。燃焼ガスなどがどうなるのかはわからないのだが・・。◆雨樋から取水する水栓。雨樋の縦どいを一部切ってそこにはめるだけ。あとは蛇口にホースをつなぎ、貯水タンクにつなげばよい。雨水利用としてはかなりやりやすい方式だと思う。◆それにしても、何となくこういったマイナーっぽい商品に目がいくのは性格だろうか。最後にプラストモである。寒冷地でおなじみの雨樋ですね。うれしくなって写真を撮りました。

(平成18年4月13日)

角材による躯体の展示。
有名なNIBE(ニーベ)のヒートポンプ機種紹介パネル。
バウテック展示会を見て(2) スウェーデン・ドイツ訪問12
◆以前、スイスで見ていたのであまり驚かなかったのだが、バウテックには在来木造のような角材を使った構造展示が見られた。詳しくは知らないが、木造は伝統工法であるこういった柱・梁による工法が中心のようなのだ。筋交いも角材で、さらに驚いたことに日本で兜(かぶと)屋根といわれる変形の切妻屋根をかやで葺く職人グループがいたことだ。“究極の天然素材で造る家”みたいなパンフがおいてあった。展示会に出展するだけ需要があるのだろうか。日本ではかやぶき屋根の葺き替えさえ困難になっているというのに。◆せっかくドイツに行ったのだから自然系の素材などについても説明したいのだが、じつは展示会でさほど目立ったわけではない。木質・植物繊維系の断熱材が2社、それ以外は目につかなかった。最近はドイツというと自然系塗料に自然系の断熱材というイメージがずいぶん強いが、それはドイツのある1面に過ぎないのだろう。◆もうひとつ、日本でよく言われていることがある。RC建築の外断熱材はEPS(わかりやすく言えば発泡スチロール)かグラス(ロック)ウールか。われわれはたまたま今回ロックウールの現場を見たが、だからロックウール中心とは言えない。ヨーロッパは伝統的にロックウールが多いが、木造の現場でもEPSを見ることはある。日本ほどでないにせよ、いろいろな考え方があっていろいろな断熱材が使われているのだ。その1面だけを強調することに意味はあまりない。大切なのはRC建築は外断熱、木造建築は充てん+付加断熱で日本よりはるかに高断熱だという点。もっと大きく言えば、何を使うかではなく、どんな志(こころざし)をもって建築に取り組むかだ。わたしはそう思う。

(平成18年4月4日)

木製窓のリペア。上がビフォー、下がアフター。
薪とヒートポンプなどの複合ボイラー展示
バウテック展示会を見て(1) スウェーデン・ドイツ訪問11
◆ドイツ・ベルリンで開かれた展示会・バウテック(bautec)はさすがに大規模だった。札幌の展示会では比較にならない。大展示会場が関連展示も含めれば10ヵ所つながって、全体では巨大な規模になっているのだ。建材と設備の両方がみられる展示会で、ドイツの今を知るにはちょうどいい機会だった。◆さすが先進工業国だけあって、日本にあるものは何でもありそう。ウレタンで裏打ちした金属サイディングもあったし、型枠兼用断熱材は数種類が出展され、見学者も多かった。おもしろいところでは、木製窓のリペアキッド。腐ったりして部分的に欠けた枠材や障子を樹脂で埋めて下地調整し、塗装でフィニッシュするというもので、これも数種類が出展していた。◆何と言ってもいちばん目についたのは、暖房・給湯、つまり温水の熱源機だ。薪、ペレット、石油、ヒートポンプ、太陽熱。熱源はさまざまあり、数種類の熱源を複合的に利用するタイプがメインだ。薪ボイラーは取替需要もかなりあるようで、熱心に説明を聞く人が多かった。前にも触れたが、ヒートポンプは地中熱と換気排熱の複合型が主流。また、換気排熱の利用という視点でいうと、ヒートポンプと熱交換換気の二通りがあり、出展数ではヒートポンプのほうが多かった。このまま2つの方式の時代が続くのか、どちらかが主流になるのか、注目している。というのも、日本でいろいろ議論しても、省エネ技術の面では彼らの経験が正しい場合が多いからだ。いや、自分の知る限り、ほとんどの場合、日本の机上論より彼らの経験が正しい。これは彼らが理論・実践・経験の積み重ねという至極まっとうなアプローチでものを考えているからだと思う。日本もこの20年で省エネに関する経験を積んできた。そこでたたき上げで鍛えられた実践論は、多くの場合、机上論より正しい。問題は研究者と現場の連携がいつまでたっても取れない点にあるわけで、これはもう、戦前から続く日本の病気かもしれない。◆話がそれてしまった。もうひとつ話題になったのは、旧東ドイツからの出展が結構あったことだ。ドイツという先進国に途上国が同居しているような不思議な感じで、最先端でもなければ洗練されてもいないが製造コストが安く、それなりに興味を引いた。

(平成18年3月31日)

改札がないので、ズカズカとプラットホームに入っていける。映画で見た外国の駅そのままだった(ちょっとこじんまりしているけど)
イエテボリか・ヨーテボリか・ゴーセンバーグか? スウェーデン・ドイツ訪問11
◆スウェーデン第2の都市、ヨーテボリという街はおもしろい。何がおもしろいかといえばその名前である。日本語ではヨーテボリとイエテボリという2通りの表記があるが、スウェーデン語の発音はその中間くらいだそう。スペルはGOTEBORG。GのあとのOの上にクロボチが2つつく。これでヨーテボリとは日本人には全く読めない。困ったことにGOTHENBURGという表記もある。これが何と英語名なのだ。ゴーセンバーグと読む。英語名のあるスウェーデンの都市とは???。われわれはますますわからなくなる。◆ヨーテボリは歴史的にはオランダとかスコットランドの影響が強く、早くから開けた港町だった。ストックホルムが首都・政治のまちだとすると、ヨーテボリは産業。現在はボルボグループが本社を構え、カメラ好きなら誰でも知っているハッセルブラッドもここが本社。エリクソンもそうだと言っていた気がする。日本で言えば大阪・関西地域。首都への対抗心も強く、ストックホルムを“裏玄関”と称することもあるという。◆スウェーデンの南西部に位置し、市としての人口は50万人弱。圏域で90万人程度というから、ちょうど良い大きさだ。落ち着いたいい感じの街で、暮らしやすそうと感じた。

(平成18年3月28日)

集まった観客は4,000人という。大応援団!!
ナイタージャンプ大会を初観戦
◆土曜日の昨日3月25日、ノルディックスキー・ジャンプの今季最終戦にして原田雅彦選手の引退試合となる競技大会を応援に行った。札幌オリンピックで笠谷選手が金メダルを獲得してからジャンプが好きで、一度応援に行ってみたいと思いながら、昨日まで行けずにいた。春のナイター大会といえど、日が暮れれば寒い。難しい天候条件だったらしく、K点を超える大ジャンプが少なかったが、大いに楽しんだ。◆トリノオリンピックでも活躍は今ひとつ、原田選手は体重不足で失格になるなど、パッとしない日本のジャンプ陣だが、昨日のように国内大会を見ていると少年からベテランまで多くの選手が飛んでいる。昨日の参加者は何と90名。オリンピックに出られるのはその中でも限られた選手なのだと改めて思った。◆で優勝は若手の伊東選手。引退する原田、宮平らベテランに『あとは任せろ』とばかりの気合いだった。一方、今年の第一人者、岡部選手は1本目で首位に立ちながら2回目が失敗。よきライバルだったであろう原田選手の引退に力んだのだろうか。心配なのは長野の金メダリスト・船木選手だ。去年の夏、大倉山ジャンプ台でトレーニングする姿を見かけた。意外にもきゃしゃで静かな物腰に何となく心を打たれた。昨日もお世辞にもいいとは言えない状態。何とか復活してほしいと願い、あわせて岡部・葛西両ベテラン選手と優勝した伊東選手の来シーズンの飛躍を期待し、そして原田、宮平両選手の勇姿をまぶたの裏に焼き付けて、ジャンプ台をあとにした。

(平成18年3月26日)

地中熱と換気排熱を利用して温水をつくるヒートポンプ。ドイツの展示会で。
どの家も薪を調達し確保しているらしい
ヒートポンプについて スウェーデン・ドイツ訪問10
◆知っている限りでもスウェーデンのヒートポンプ(HP)の歴史は古い。HPというと日本ではエアコンなど空気熱源の冷暖房設備をイメージするが、スウェーデンで昔からあるのは第3種換気の廃熱を回収してお湯をつくるタイプだ。1980年代の技術資料にも登場している。ご存じの方も多いと思うが、最近は地中熱HPが展示場などで目につく。温度が安定した地中から熱をくみ上げるため、採熱管を埋設するボーリングが必要になるが、成績係数(COP)は安定して高く効率がいい。◆スウェーデンはちょっと掘ればすぐ岩盤だからボーリングコストが安く、地中熱HPを採用しやすいというのがこれまでの情報だった。しかしそう安くもないらしいという話を今回聞いた。既存住宅に取り付けた家庭の話によると、設備費は温水暖房以降の室内配管・放熱器などを除き、ボーリングとHP機器類、施工費で240万円。これなら日本とそう変わらない。◆展示会レベルではヒートポンプが大人気だ。多くは地中熱と換気排熱に加え、太陽熱温水器を利用した給湯もシステム化している。ヒートポンプ・太陽熱温水複合型の機器とでも言えばいいのだろうか。ただ、一方でペレットや薪を燃やすボイラーも人気があり、なかにはヒートポンプとの複合タイプもあった。ハイテクだけではない、循環型資源も使っていこうという奥行きの深い考え方がスウェーデンにもドイツにも共通してみられる。◆そういえば、築61年の戸建住宅にホームステイした方がそこのオーナー夫婦から聞いた話によると、暖房として真冬は石油ボイラーを使うが、春先と秋口はボイラーを使わずに暖炉を使っているという。熱源の複合化と薪という手間のかかる熱源を現代でもふつうに利用する姿勢が、われわれ日本人にはない。これは手間がかからないことを良しとしてきたわれわれ日本人のライフスタイルの問題でもある。

(平成18年3月24日)

スウェーデンはこのブランドのガスウォーターが多い。スカンジナビア航空(SAS)もこれが出てくる。 味もいいと思う。
ガスウォーター スウェーデン・ドイツ訪問09
◆日本でも最近はスーパーに並んでいるが、ヨーロッパでは当たり前にガスウォーターが売られている。ガスウォーターとは炭酸入りの水、サイダーから甘みをなくしたような飲み物だ。◆最初は気色悪い飲み物だと思った。水を飲んで、何でゲップをしなければならないのかと(失礼)。ところが何にでもかぶれやすい性格、帰るころにはすっかりファンになり、日本でもときどき買うようになった。なので今回も行きの飛行機の中からガスウォーターを飲んでいた。仲間たちが不思議な顔をしてみている。『あんな気色悪い飲み物!!』。ところが病気は伝染する。スウェーデンを離れるころには『じゃ試しに飲んでみるか』という仲間が現れ、帰国日になると『このガスウォーターいけるね』という声が飛び交うようになる。もちろん全員ではないが。◆分析好きなので、ガスウォーターをこう分析している。ヨーロッパの冬は特に乾燥している。乾いたのどを潤すのは水よりも炭酸系がさわやかになれる。だから冬こそガスウォーター、ならば北海道もガスウォーターが売れる?◆日欧の国際便に搭乗するスチュワーデス(今はキャビンアテンダント?)は日本人がガスウォーターを好まないのを知っている。「ガスウォーター」と頼むと『アイスウォーター?』と返事が返ってくる。「ギャス」と発音し直しても『アイス?』と帰ってくる。「ガ・ス」と答え、スッチーの愛想笑いとともにようやく念願のガスウォーターが手に入る。

(平成18年3月22日)

庶民的で安心できる店でした。
すぐに弁解したくなるきまじめさ スウェーデン・ドイツ訪問08
◆よく言われるように、ドイツ人と日本人はある部分では似ていると思った。不思議なものでレストランの予約を入れてちょっとでも遅れると、お詫びと弁解をしたくなる。なぜだろう、そんな気持ちにはふつう、あまりならないのだけれど。3人で行ったベルリンのレストランでの出来事である。◆店員の1人は英語がしゃべれなかった。このため、われわれのテーブルは必然的にもう1人の店員が専属でつくかたちとなる。何とか理解できる英語のメニューがあり、われわれは無謀にも食事とビールを次々オーダーする。そして最後に名物料理というソーセージ盛り合わせ。出てきた皿を見て、旅慣れたSさんも驚いた。絶対に食べきれないと確信した。◆それでも小雨に雪が交じるなか、道に迷いながらおよそ30分も歩いてようやくたどり着いた店である。腹は減っていた。ソーセージを3分の2、付け合わせの野菜類を3分の1を食べたところでギブアップ。会計の時、思わず弁解した。『とてもおいしかった。でもこれ以上は食べられない。なぜなら日本人は・・』と始めたところで店員が言葉をかぶせた。「いいんだ、わかっている。ところで日本語でダンケシェーンは何という?」と聞かれ『ありがとう、だ』と答えると「今日はありがとう」。こんなほのぼのとした会話があったドイツの首都・ベルリンの夜だった。それにしてもあの店員は何をわかっていたのだろう。きっと日本人はみな、食べきれずに残すんだろうな。

(平成18年3月20日)

1960年代に建てられたという公営住宅。
リフォームでここまで新しくなった。
ベルリンに見た戦後 スウェーデン・ドイツ訪問07
◆日本人は平和ボケという批判があるが、それは正しいと思った。ドイツは日本と同じく第二次大戦の敗戦国である。第一次大戦でも負けている。7年前にドイツ南部のフライブルグに行ったときはあまりそのことを感じなかった。しかしベルリンは違う。戦中・戦後の60数年がハッキリと刻まれている。それを痛切に感じたのは1960年代の公営住宅を見たときだった。もちろん温水セントラルヒーティングは装備されている。断熱材も使われている。しかし、ガラスは単板。これが改修されずに2006年まで使われていたのだ。部屋も小さい。戦後復興でお金がなかったのだろう。住宅を供給するだけで精いっぱいだった事情が見えてくる。◆改修後は見違えるように変わった。外断熱改修にバルコニーの熱橋対策、開口部強化、そしてソーラー温水器による給湯エネルギー削減。雑誌でもよく見るようないまどきのドイツの集合住宅に生まれ変わったと言って良い。◆現地通訳さんが言っていた。日本からドイツに来て間もないころ、東ベルリンを脱走して西ベルリンにやってきたドイツ人に、東に残る家族に贈り物を渡してきてほしいと頼まれた。ベルリンの壁1つで隔てただけのお隣さんというつもりで気軽に引き受け、検問所を通過してからがスパイ映画さながらの体験だった。離れずつきまとう尾行、その尾行をまいて目的地へ。その後はダッシュで大脱走である。旧西ベルリンでは旧東側による尾行、盗聴、そして拉致が当たり前のように行われていたという。今でこそ北朝鮮による拉致問題でわれわれ日本人も世の中に“非常識”が存在することを知っているが、当時はあまりに恐ろしい現実に戦慄したそうだ。

(平成18年3月17日)

ユニークな壁掛けフックを並べてみた。
IKEAでの販売価格は1個19クローネ(約300円)。
H&Mで購入した息子のジャケット・249クローネ(約4000円)。喜ぶ息子の笑顔・プライスレス ってか。
IKEAショップで買い物 スウェーデン・ドイツ訪問06
◆IKEA(イケア)という名前を聞いたことのある方も多いだろう。近く日本にも進出するスウェーデンの大型家具ショップという表現がいいのだろうか。札幌本社のニトリという家具ショップがあるが、IKEAはニトリを数倍にした規模と品揃えである。土曜日で開店後すぐの時間だったにもかかわらず、駐車場も店内も大にぎわい。スウェーデンでこんなにたくさんの人を見ることができるのは、おそらくここしかないのではないかとヘンに感心した。◆セコセコと小物を買い物したのだが、そのせいで道路をはさんで向かいにあるホームセンターを見る時間が少なくなってしまった。バウハウス(BAUHAUS)というこの店はさほど混んでおらず、見応えもありそうだった。◆残念なのは日本とは電圧が異なること。このため照明器具など一般電灯を利用する電気製品を購入することができない。安くていいものがたくさんあったのに。また和風のデザインも意外と多い。北欧のデザイナーには日本好きの人がいて、デザインに反映されているからなのだが、残念ながら日本という国に関しての情報は、多くの北欧人はほとんど持ち合わせていない。すしバーも至る所にあるのだが・・・。◆ショッピングの話題をもうひとつ。H&Mというアパレルのブランドがある。ホテルのすぐそばにショップがあったのでのぞいてみた。日本のユニクロのような低価格の普段着。物価の高いスウェーデンにあっていわゆる“安心価格”だった。このブランドもそのうち日本に上陸するのだろうか。

(平成18年3月16日)

吹雪の中の視察でハンス・エイク氏もこんな顔
無暖房住宅の北側外観。
無暖房住宅は“あり”か? スウェーデン・ドイツ訪問05
◆無暖房住宅の視察に行ったのだから、そろそろその話題に触れなければならない。いや、あまり引っ張るつもりはないのだけれど、エッセンスは新聞でご紹介するということで勘弁いただきたい。ここでは“無暖房”という発想がばかげているかそうでないかを考えてみたい。◆結論から言えば“あり”だと思った。その究極の意味は、燃料供給が止まっても寒さから身を守ることはできるということだ。エネルギー的にいえば給湯も一般電灯も当然に必要とされる。だからゼロエネではない。完全にエネルギー供給が止まれば無暖房住宅でも困る。そんなことよりも、住宅で消費するエネルギーのおよそ6割に達する暖房がいらないのだから、エネルギーが6割カットされても大丈夫だという点が心強い。それが無暖房住宅の意味だろう。◆残念ながら日本とスウェーデンではエネルギー価格が違うため、設計者であるハンス・エイクの言うように投資を5年で回収することは、日本ではできない。タウンハウスが嫌われる日本で、戸建てでこれに挑戦するには壁に60cm近い壁の断熱が必要になるかもしれない。それ自体が非現実的だといえばそれまでだが、仮に年間2万kWのエネルギーを1戸の住宅が消費するとして、その6割を占める暖房エネルギーを限りなくゼロに近づければ、年間消費エネルギーを半減することが可能になる。これは画期的なことだと考える。◆だれもが求める家でないことは確かだが、しぶとく生き残るための家があってもいい。これをエコならぬエゴハウスと命名しているのだが、以前にも増してエゴハウスに興味が出てきた今日この頃である。ハンス・エイク、そして知子ハンソンさん、ありがとう。

(平成18年3月14日)

ストックホルムの旧市街。1600年代からの街。
集合住宅が建ちならぶ
北海道人にとってのスウェーデン スウェーデン・ドイツ訪問04
◆高断熱化と木材の腐れ防止技術を目指したときから、北海道にとってスウェーデンは偉大なる先達であり教師だった。当社がはじめてスウェーデン視察を企画したのが1989年、わたしがはじめて訪問したのはその10年後の1999年。少人数で添乗員の付かない緊張した旅だった。そして今年は2006年。1989年から17年の歳月が流れ、スウェーデンはいまだにわれわれの教師かと問われれば、迷わずYESと答える。◆北海道は日本という国の1地域だがスウェーデンは国。それも工業国。比較にはならない。しかし似ている点も多い。南に強力な国家がある(東京のこと)。冬は閉ざされがち。自国だけでは経済が回らず、結局南に向かって出稼ぎに行くしかない。そのとき技術を持って世界に発信を続けているのがスウェーデン。そのことへのあこがれのような気持ちが強いのだと思う。◆今回はエネルギーの安全保障ということに思いをはせた。ご承知の方もいると思うが、スウェーデンもドイツも原子力発電所を停止する方向で動いている。尊敬できるエコの国が原発廃止の方向だから、われわれも新規の電源開発は非原発で、という気持ちはわかる。しかし現在の石油高騰はどうだ。中東がおかしくなれば日本はなすすべもない。政治的にいえばアメリカの指導がなければ明日からでも路頭に迷うのが今の日本である。それなのに省エネ、新エネにいっこうに真剣にならない。ロシアからの天然ガスもアメリカ次第か。中国のようななりふり構わぬ石油買いあさりもやっていない。唯一何とかなりそうなのが原発である。この現実から目を背けることができなかった。というのも、ヨーロッパはロシアから天然ガスを購入し、原発がかなりあり、スカンジナビアではノルウェー沖の油田と水力発電が豊富。中東から石油も買っているがリスク分散が進んでいる。◆そこでふと思ったのが200年近く戦争をやっていないスウェーデンの安全保障の考え方だ。南と東にはドイツとロシアがある。どうやって戦争をやらずに近世から近代・現代の200年を乗り切ったのか。そこには計り知れない知恵があるはずなのだが、エネルギー分野でもその知恵が十二分に生かされていると感じた。そもそも戦争は商圏拡大とエネルギー調達の歴史だから。エコとかエネルギー問題を見るとき、こういった安全保障から考えないと日本は再び大失敗を犯すのではないか。◆北海道という1地域でもできることはある。われわれは薪だけで寒さをしのげるしたたかさと、消費社会に巻き込まれず本物だけを発信する力強さが必要なのだと心に刻んだ。

(平成18年3月11日)

バスのオールシーズンタイヤ。信じられない??
続・北国に暮らす人間だからこそ スウェーデン・ドイツ訪問03
◆一緒に旅行した鵜野日出男さんがご自身のブログで訪問記を書いておられる<こちら>。ジャーナリスト出身だけあって、ツボを押さえた語りかけが楽しく読ませる。さすが。そのみちの後輩として勉強になる。出発前、わたしが鵜野さんを脅したとブログでも書かれている。そうなのだ。かなり脅したつもりである。『防寒は万全を期してください。屋外を歩く機会もあり、寒さは想像以上にこたえるはずです。〈中略〉ツルツルの靴裏に何かを取り付けるというやり方はおすすめできません。』とメールした。温暖地からの参加は鵜野さん1人だったからである。◆現地で驚いたのは北海道のメンバーである。バスがサマータイヤまたはオールシーズンをはいているのである。乗用車はわずかなスパイク以外はスタッドレスのようだが、山がないいわゆる坊主タイヤもおり、「北海道ならすぐ死ぬな」と口の悪い道産子。しかしスウェーデンでは死なない。第1に雪がきわめて少ない。第2に融雪剤を散布している。第3に街中がほとんど渋滞しない。それでも雪が降ると上り勾配の高速道で大型車両が上れなくなり、大渋滞を引き起こすそうである。

(平成18年3月10日)

スウェーデン・ヨーテボリ中心部の鉄道駅と
バスターミナルなどを結ぶアトリウム。午後10時ころ
失敗写真だが恥を忍んで掲載。 ミートボールにデミグラスソース、トマトの上がコケモモのジャム。マッシュドポテトが付く家庭料理だそう
北国に暮らす人間だからこそ スウェーデン・ドイツ訪問02
◆昔からちょっとした北欧かぶれである。会社でノルウェー・ホーグのデスクチェア、自宅でもノルウェー・ストッケの子供用チェア2脚にスウェーデン・イノベーターのソファ、デンマーク・モーエンセンのイージーチェアを使っている。しかしスウェーデンの食事だけはいただけない◆スウェーデンは食事がまずいことで有名である。食材は北海道とよく似ている。シャケ、サバ、イワシ、ニシンといった魚類のほか有名なヘラジカやトナカイの肉料理もあるが、一番の問題は味付けにあると思っている。口がまがるほど合わない。それともう一つ、北ヨーロッパや北欧では野菜といえばジャガイモ程度しかできない。野菜がとれないから味覚がおかしいのではと想像している。同じ寒冷地でも北海道は春から秋にかけてさまざまな野菜を収穫できる。雪が多い、緯度の割に寒いといったハンデを返せば、豊かな広葉樹の森と食材があるということなのだ◆同じ寒冷地に住む1人として、冬の生活にはとても興味があった。われわれが本州以西の暑さを本当のところわからないのと同じで、寒さにもわれわれにしかわからない“質”がある。-5℃までの世界と-10℃の世界、そして-20℃の世界の違いをかぎ分ける能力を身につけている。◆スウェーデン第2の都市・ヨーテボリは設計外気温が-16℃。数日前も-15℃まで下がったそうだ。いっぽう札幌は-10℃。しかし、それはまれだろう。ヨーテボリは厳寒地・旭川や帯広のような寒さではない。ただ、冬は暗く長い。太陽の恵みはほとんどないのだろう。白熱灯とろうそくに暖かみを感じる彼らの暮らしが少しわかった。札幌の冬は雪と寒さだが、スウェーデンの冬は暗く長い。

(平成18年3月9日)

朝7時30分過ぎのスウェーデン・ヨーテボリ中心部。
小雪が舞いかなり暗い
再開発地区の日本風にいえば現地案内所。
ここにもペアガラスとおもしろい形状の温水ラジエーター
暗い冬に暖かな室内 スウェーデン・ドイツ訪問01
◆昨日2月23日、8日間のスウェーデン・ドイツ視察から帰ってきた。現地に滞在していた7日間で1日も太陽がのぞかなかったのには驚いた。12月-1月には曇天が続く札幌でも、1週間のうち延べ数時間は太陽が拝める。ヨーロッパの冬の暗さを身をもって体験した。ただ、気温は比較的高い日が続いた。スウェーデンで0℃前後、ベルリンはプラス気温である。無暖房住宅が建つヨーテボリは数年前の記録的寒さでマイナス20℃まで下がったというが、アベレージでは札幌よりかなり暖かい印象だった。何より雪がほとんどない。生活するにはとても楽である◆見事なのは、スウェーデンの断熱と暖房に関するインフラの徹底した整備だ。窓はどこへ行ってもペアまたはトリプルで気密タイプ、暖房は低温水のラジエーター。ドイツに移動してラジエーターの放熱温度が高いのでびっくり。そのくらいスウェーデンはどこも断熱性能がしっかりしているのである◆ただ暖房温度は予想に反して意外に高い。スウェーデンは断熱欠損や冷気流が少ないため、ホテルも住宅も公共施設も室内はかなりの低温だと思いこんでいた。ましてエネルギー価格が高騰している現状がある。室内空間はおよそ20〜21℃程度。汗ばむくらいに暖かい。25℃以上といわれる北海道の平均的住宅暖房温度よりは低いのだが…。

(平成18年2月24日)

雪庇と表現するのが正しいのだが、実際は巻きだれになっている
ツララの根元が凍り、氷堤となっている
屋根の雪はいまだに悩みのタネ
◆大雪の後遺症の交通渋滞で、ついつい道路脇の家々の巻きだれや雪庇、ツララを観察してしまう。札幌は低層の戸建てだけでなく、中・高層のマンションも巻きだれや雪庇が例年にもまして大きい。しかも気温が上がらないので、一度できたらあまり落下せずに成長を続けているのだ。◆巻きだれなどの有効な対応策はいまだにない。札幌なら北西の季節風が強いので、南東側に発生すると一応は言えるが、局地的に風が巻くので、すべてがそうだとも言えない。ただ、ここ数年の観察で言えそうなのは、M型無落雪の勾配が緩やかでパラペットの立ち上がりが小さいほど、巻きだれができやすい、屋根勾配の緩急にかかわらず軒が深く出ている方が巻きだれが小さいことだ。◆一方、雪が落ちない三角屋根が増えたことで、巨大なツララや軒先の氷堤をよく見かける。これは屋根形状もあるが、断熱・気密性能と屋根通気で決まると言って良さそうだ。ニュータウンを見ていると、向かい合って巨大なツララのある家とない家が建っている。特に氷堤は数年で軒先を壊しそう。見ている方がビクビクする。同じ造りでも寒冷地用の雨樋があればツララはごく少ない。◆今年の札幌はひどいと思っていたが、道北はもっとすごい雪庇ができるようだ。寒さで雪が融けない、風が強いなどの原因であろう。

(平成18年2月15日)
スウェーデンとドイツに行ってきます
◆2月16日から23日まで、スウェーデンとドイツに視察旅行に出かけます。ハイライトは2つ。スウェーデンの無暖房住宅視察とベルリンで開かれるバウテックという住設建材の展示会。帰ってきたら、少しずつ写真をアップするつもりです。お楽しみに。

(平成18年2月10日)
子供たちに教えられること
 この冬は最近になく楽しいスキーをしている。その理由がわが子だといえば、親バカと笑われるだろうか。◆子供にスキーを教えようとはやる気持ちに反比例して、子供はスキーが嫌いになっていく。そんな小さな絶望の中で迎えたこのシーズン。一番の問題だった末っ子が突如として滑れるようになった。それは本当に驚くほど突然だった。このシーズンはなにも教えていない。4日間のスクールに通い、突然楽しさに目覚めた真ん中の子が末っ子に教えたのだ。◆スキー場に行ったときにはすでに滑れるようになっていた。しかし、午前中は父との個人レッスン。登っては滑り登っては滑り。この間、上の子2人は母親とリフトに乗っていた。末っ子はお昼近くには嫌気がさし、滑らなくなっていた。昼食前に「午後からリフトに乗るか」と声をかけると「うん」と返事が返ってくる。しかしこの返事に本人は後悔していたらしい。リフト1本目。後ろ滑りでスキーの先を押さえてやる。途中からは暴走になる。ところが2本目からは全く手を貸さなくてよくなった。“この子にとってのスキーデビューは今年だったんだ”そう思った。◆もともとスキー好きな上の子に加え下2人も好きになったことで、『スキーに行きたい』という点では姉弟が一致するようになった。『ポールをくぐりたい』『プレジャンプをもう1回』『深雪に行きたい』大人が危ないといいそうな『やりたい』がたくさん出てくる。そしてどれも楽しくできてしまう。圧雪されたゲレンデだけがスキー場じゃない、ボーゲンを教えることだけがスキーじゃない、ということをあらためて思い出させてくれる。“俺も子供のころはこうだった”。そう、今さらのように、スキーの楽しさを思い出したのである。子供たちのブームは今、ストックを抱え込むクラウチング。ダウンヒルのテレビを見てはまねている。

(平成18年2月8日)
ふがいなく、ちょっとまじめなお話
◆昭和38年、1963年生まれ。就職の年には“新人類”と呼ばれた。しかし、40歳を過ぎて最近痛切に感じるのは、あの戦争を体験してきた80歳を過ぎてなお元気な方々から学ぶことがたくさんあるということだ。◆昨日もこんなことがあった。ボクはいつものように出勤前のわずかな時間で車の前だけを除雪し出かけた。夜帰宅すると、いつになくキレイに除雪してある。女房は除雪の負担からか2週間ほど前から腰を痛めており、除雪はしなくていいと言ってある。不思議に思っていると、「Yさんがやってくれたの。黙って見ていられないんだって。ものすごいパワーで雪を寄せ、通路を広げて子供たちに『そこをソリで滑りなさい』って指示して雪山を小さくして。帰り際、『そこの雪山、見通し悪いね』って言って帰って行ったよ」。◆Yさんは80歳を優に越した1人暮らしの女性である。これには恥ずかしさを通り越して尊敬の気持ちに達した。本来ならわれわれがYさんをお手伝いするのが筋である。女房が「腰は痛くならない?」と尋ねたら『ぜーんぜん平気よ』と答えたそうである。心と体の鍛え方がまるで違う。作業は丁寧でキレイ。普段は除雪のあとさらに箒で掃く。ボクらが“ムダ”と考え切り捨ててきたことを、いまでもかたくなに変えずやっている人たちである。そういえば米寿を目前に亡くなったOさんのご主人も、ボクが冬に大けがをして車の乗り降りにも不自由しているときに、『危ないから』と言って車の雪下ろしを手伝ってくれた。Oさんの足元のほうが危ないのに。◆あの悲惨な戦争を体験してきた70,80代の方々のもっている強さや思いやり、人生のひたむきさをボクは学び、それを子供にも伝えていこうと少しだけがんばっている。
P.S.今朝も中途半端な除雪で家を出た。意気込みだけで行動が伴っていない。

(平成18年1月26日)
ドットプロジェクトを推進する佐々木先生と長土居さん
北上市内のツララ。かなりひどい
大館市郊外の家。吹雪混じりです
冬の東北を旅して
◆2泊5日、船中泊2日という日程で東北に出かけ、今朝のフェリーで帰ってきた。東北各地もずっと真冬日、20日は盛岡や大館で朝の最低気温がマイナス10℃を下回ったらしい。暖かさを期待していたわけではないが、さすがに寒い。それでも「やっぱり北海道とは違うな」と思うのは日差しの強さだ。晴れていても雪曇りでも、日差しは札幌でいえば2月も中旬の力強さがある。◆盛岡の夜、佐々木隆先生、長土居さん、東北電力の野武士たちと一杯やっているときもそのことが話題となった。日差しをどう利用するか。北緯39度近辺に広がる岩手で、マイナス10℃の寒さをクリアしながらぽかぽかの日だまりも楽しめる家。“岩手型の超・省エネ住宅で日本一を目指そう”と大いに盛り上がった。わたしも大賛成である。◆今回、少々意外だったのは、大雪の影響でツララ・スガモリで悩んでいる住宅が多いこと。何せ朝はマイナス10℃以下、昼にはプラスの10℃を超える地域もあるというから、確かに難しい。比較的少雪で日射に恵まれており、気温が高いことをのぞけば北海道でいえば十勝型の気候だ。水沢の夜、一杯入った席で出てくる話題はみなツララ・スガモリ。少しだけ北海道での屋根と雪の話をしたものだから、話題が集中した。いろいろ話したあと、「じつは北海道でもまだ完全には解決していません」と話すと、皆さんちょっと安心したような残念そうな表情になる。◆大館では秋田杉の曲げわっぱで比内鶏の親子丼をいただいた。うまい。突き出しの漬け物もうまい。本当にうまい。知的オオタホームの社長様、専務様、ごちそうさまでした。秋田は豊かだなあ。◆事務所から外を眺めると、いつものようにどんよりとした空。電話も鳴らない。静かな土曜日である。


(平成18年1月21日)
吹雪の札幌市内を眺めながら思うこと
◆札幌も正月三が日を過ぎてから、かなりの雪になっている。ドカ雪というほどではないのだが、あっという間に平年を上回ってしまった。ちょうど新年の挨拶回りと雪が重なったものだから、このところの札幌の渋滞はただごとではない。で、毎年のように話題に上るのが除雪・排雪の悪さだ。◆札幌市は逼迫した財政からか、このシーズンに多くのロードヒーティングを止めた。除雪回数も減らしていると聞く。これらの措置はある意味で仕方のないことだ。だいたい、市に全部を任せようとするから税金の使い道についてチェックが甘くなる。敷地内の雪を公道に積み上げる不心得者がたくさんいるのも、1つには「自分の税金で除雪している」という依存の感覚があるからだと思う。◆かねてから思っていることなのだが、札幌のような積雪寒冷地は、本州とは違う独自の都市計画をしなければならない。第一に建ぺい率を下げること。第二に道路と隣地からの外壁後退距離を大きくとること。第三に下水道を現在の1系統処理から汚水・雨水分離の2系統処理に変更し、雨水系統を排雪に利用すること。第四に除雪・排雪のマナー条例を制定し、公道に排雪する不心得者を監視すること。そして最後に、オリンピックの招致の前にこれらの政策を実現に移すこと。

(平成18年1月12日)