新聞記事

2014年08月05日号から

際立つ3社の特徴 トリプルサッシがたいへんなことに!!

 寒冷地の定番窓である樹脂サッシが今年、たいへんなことになっている。エクセルシャノン、YKKAP、三協立山が相次いで新型のトリプルガラスサッシを発売。後れをとるまいとリクシルが秋の新型発表を事前告知した。これで年内には主力メーカーのトリプルガラス樹脂サッシが一新されることになる。

どの地域も日射取得タイプが有利

 新型トリプルガラスサッシは、高断熱と同時に日射取得率の良さをPRする商品が多い。寒冷地に求められる「窓まわりの寒さ解消」と同時に、「暖房エネルギー削減」を見据えた動きだ。
 それでは、同じ条件で暖房負荷を試算した場合、どのサッシを選べば暖房エネルギーを削減できるのか。計算した結果、サッシの熱貫流率(U値)が良く、住宅の熱損失係数(Q値)が良くても、暖房エネルギーが減るとは限らないことがわかった。
 表とグラフは、カタログでU値と日射取得率(η値)を公表しているYKKAPとエクセルシャノンの新型トリプルサッシについて、カタログ数値を使って熱計算・暖房エネルギー試算ソフトQPEXで暖房エネルギー消費を計算した結果。QPEXはいちばん普及しているとみられる2.74を使用した。
 細かい点は住宅のプランによって異なるため、全体の傾向を見ることが大切になると思うが、YKKAPのAPW430は、日射遮へい型でU値の良いサッシでも日射取得型のサッシでも、暖房エネルギー消費量があまり変わらない。
 一方、エクセルシャノンのトリプルシャノンⅡ(クリプトンガスタイプ)は、U値の良いグリーンガラスよりもCVDクリアガラスのほうがどの地域でも1割がた暖房エネルギーの削減につながる。
 北ヨーロッパや北欧より日射に恵まれた北海道は、ガラスの日射取得率が重要になることがわかる。
 U値だけにとらわれずに、住宅会社側もη値にも関心を持ちたいところだ。ちなみに日射取得タイプのη値は0.56と0.58だ。

札幌、旭川などトリプルの効果が大きい
帯広、函館、八戸はガラスで変わる

 地域別に見ると、冬場の日差しに恵まれている帯広は、ペアガラスでもけっこう暖房費の削減につながる。南面は日射取得の有利なペア、その他の面はトリプルガラスを使うことで、暖房費削減とコスト抑制を実現する可能性が見える。また、ガラスのη値によって暖房負荷が大きく変わることも特徴的だ。これらの傾向は、函館、そして八戸も同様だ。
 北見は、同じく冬場の日射に恵まれている帯広とは傾向が違い、どの方位もトリプルのほうがいいようだ。旭川よりもさらに5%多い暖房負荷が示すように寒さが厳しいために、南面でも逃げる熱をしっかり減らした上で得られる熱を増やすことが求められる。
 札幌、旭川などそのほかの地域は、トリプル化の効果は大きく、1割前後の暖房負荷削減が期待できる。ガラス面の冷輻射が減ることを考えても、これからはトリプルガラスが基本になっていくのではないか。北海道はもちろん、東北でもトリプルの恩恵は大きい。

YKKAP、エクセルシャノン、三協立山.際立つ各社の特徴

20140805_1_1.jpg YKKAPのAPW430は、①アルゴンガスに最適化した16㎜空気層の設計、②樹脂枠部分の優れた断熱性能、③躯体との熱橋が少ない半外付け的なプロファイル-の3点がカタログ上もうたわれている。
 トリプルシャノンⅡは、①5月のカタログからη値の優れたCVDクリアガラス仕様のトリプルを標準で用意した、②樹脂枠が丈夫でサッシの製造範囲が広い(方立てなしで大きな窓が作れる)-ことが挙げられる。
 三協立山のトリプルスマージュは、カタログ上は表記されていないが①ガラスと障子一体のスリム設計と、②海外生産によるコスト競争力-を営業上のポイントに上げている。また同社専用のQPEXを配布。
 3社ともに特徴がハッキリしており、選ぶ側の住宅会社は迷うかもしれないが、いままでのような特徴差があまりなく価格が選択ポイントの中心だったサッシ選びから、新型トリプルでは選択の幅が広がったと言えそうだ。


グラフ
4タイプのトリプルガラスサッシで暖房エネルギー試算

20140805_1_2.jpg


4タイプのトリプルガラスサッシで暖房エネルギー試算


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