新聞記事

2014年07月25日号から

長野県 「見える化」で省エネ推進 住宅購入時に省エネ性能の説明義務化

20140725_2_1.jpg 長野県は、住宅の省エネルギー化を誘導する画期的な制度を開始した。
住宅・建築物の新築や増改築を行う場合、施工業者にCASBEEやQPexなどで評価した環境性能の説明を義務付けた「建築物環境エネルギー性能検討制度」と、同じく施工業者に自然エネルギー利用設備の導入効果について説明を義務付けた「自然エネルギー導入検討制度」を、同県の地球温暖化対策条例に盛り込み、今年4月から施行。現在は床面積300m2以上の建物が対象で、戸建住宅など同300m2未満の建物も来年4月から対象になる。

 同県では、2006年3月に制定した地球温暖化対策条例を昨年3月に大幅改正。県民が住宅・建築物を新築・増改築する時に、より省エネルギー性の高い建物を選択できるようにするためには、省エネ性能の「見える化」が必要と判断し、新たな2つの制度を導入した。一次エネルギー消費量や、灯油や電気といった二次エネルギーの消費量などを設計が終わった段階でユーザーに示すことで、省エネについて考える機会を着工前にユーザーに与え、省エネ化を誘導しようという狙いだ。

 「建築物環境エネルギー性能検討制度」は、住宅の設計・施工の請負や販売を行う事業者が、建物のエネルギー消費量やCO2排出量、環境配慮措置などについて評価した結果を、ユーザーやオーナーなどの建築主にわかりやすく説明することを義務付けている。評価にあたっては、国の環境性能評価システム・CASBEE、NPO新住協のQPex、(一社)エネルギーパス協会の燃費表示・エネルギーパス、改正省エネ基準(H25基準)の一次エネルギー消費量計算プログラムのいずれかを利用。クリアしなければならない性能水準等は特に設けていない。
 「自然エネルギー導入検討制度」は、建設地の気候風土や建物の規模に応じて、どのような自然エネルギー設備を採用すると効果的か、採用による費用対効果はどのくらいなのかを、建築主に説明することを義務付けている。最終的に自然エネルギー利用設備を採用するかどうかは、建築主の判断となる。

 この2つの制度について、長野の住宅関連業者の反応は「余計なことをしてくれる」と後ろ向きな設計事務所がある一方、「条例によって各社の住宅の性能を同じ土俵で比較できるようになるのは、お客様にとってメリットのあることだと思う。特に省エネ化を進めるうえで最も大切な断熱性能に関心を持ってもらえれば」(北信商建・相澤英晴社長)と、前向きに捉える住宅会社もある。「見える化」が義務になるだけに、300m2未満の物件でも制度が始まる来年4月へ向けて、これから関心が高まりそうだ。

 同県建設部建築住宅課は「この2つの制度は、施工業者側からより高い省エネ性能を持つ住宅・建築物の建設を、県民に促すことが狙いの一つ。これらの制度について、施工業者向けには昨年度18回の講習を行い、延べ900名を超える受講者を数えたが、今後は一般県民への制度周知にも力を入れていきたい」と話している。

[画像] 長野県が目指す住宅のイメージ(長野県環境エネルギー戦略の資料)


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