新聞記事

2014年06月15日号から

道建築技術協会 寒冷地対応の太陽熱温水器提案 道内での普及目指しセミナー

20140615_2_1.jpg 太陽光発電より効率に優れる太陽熱給湯を道内で普及させようと、(一社)北海道建築技術協会では去る3日にセミナー「積雪寒冷地における太陽熱温水器の導入方策と効果」を札幌市内で開催。同協会副会長の鈴木憲三氏を始め4名の講師が、最近の太陽熱温水器の技術動向や、積雪寒冷地に適した太陽熱給湯器の仕様などについて講演を行った。
 セミナーでは始めに同協会・鈴木副会長が「太陽熱温水器の利点と課題」と題して講演。「主な太陽熱給湯器メーカーは関東より西にあり、寒冷地で製品を開発・販売する意識があまりない。そのため道内で太陽熱給湯器の普及を図るには、当協会や道内の住宅業界関係者らが積極的に動くことが必要。普及すれば工務店はユーザーに対して、省エネの新たな提案が可能になり、設備業者も新たな事業展開につながる」と、今回のセミナーの主旨を説明した。
 続いて矢崎エナジーシステム(株)の相曽一浩氏が「太陽熱利用機器の最近の技術」、さっぽろエコメンバー登録事業者で西澤設備工業の西澤正人氏が「真空管式太陽熱温水器の紹介」をテーマに講演。相曽氏は道内での普及課題である冬期の利用効率について、「北総研での実験では、太陽熱パネルを壁面に垂直設置すると冬期でも30℃以上の温水を作ることができ、給湯負荷の35%程度はカバーできることがわかった。釧路でもエコキュートと組み合わせたシステムを実験したところ、冬期は給湯負荷の多くをエコキュートでまかなっていたものの、COP(成績係数)で見ると、太陽熱パネルは3〜4程度とエコキュートの2を上回り、寒冷地でも結構使えるという感触を得た」と報告。
 また、西澤氏は「道内での集熱効率を考えると、集熱部が真空層の二重ガラスになっている真空管式が有利。真空管式でもヒートパイプを使うものと、複合パラボラ反射板で集熱効率を高めたCPCタイプと呼ばれるものがあるが、ヒートパイプを使う製品はバルコニーや地上への設置も可能。積雪寒冷地でも庭先に設置し、雪を落としながら使うと、屋根設置より効率がいい」と、タイプ別に製品の特徴を紹介した。

壁付けタイプの実証試験も計画中

 最後にエス・ティ総合研究所の高村慎介氏が、「積雪寒冷地向け太陽熱温水器の提案」と題し、同協会が道の補助事業に申請している「寒冷地対応型太陽熱温水器」の実証試験について報告した。
 積雪の影響を避けるために集熱パネルを外壁面に4㎡設置し、室内に設置した200リットルの貯湯タンクとの間で不凍液を強制循環させてお湯を作るシステムを、エコキュートと組み合わせて利用する計画。コストは工事費込みで60万円以内を見込む。道の補助事業に採択されればモニター住宅を3軒募集して設置し、集熱量や経済性、利便性などを1年間調査する。
 高村氏は「試算によると、年間集熱量は灯油換算で札幌では290リットル、帯広では350リットルになり、給湯エネルギーの7〜8割を削減できる。また、全道220万世帯に設置すれば、家庭のエネルギー消費量を灯油換算で84万キロリットル、CO2排出量を200万t、それぞれ削減できる」と、高い効果が得られることを強調した。


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