新聞記事

2014年06月05日号から

健康・省エネ道協議会で慶大伊香賀教授 高齢者ほど室温低下で血圧上昇 断熱化で家庭内事故死を減らせる

20140605_1_1.jpg 断熱住宅の効能を快適・省エネ性だけでなく、健康維持・改善効果にまで広げていこうと北海道で取り組みはじめた健康・省エネ住宅推進北海道協議会(牧泰昌会長)は先月17日、札幌で慶応大学伊香賀俊治教授を迎えてスマートウェルネス住宅の勉強会を開いた。
 伊香賀教授は、住宅の断熱性を改善することで住宅内での不慮の事故死を減らし、医療費や介護保険料を抑えることができるはず、という視点でこれから証拠を積み重ね国政に反映させたいとした上で、以下のように語った。
 日本の交通事故死は半分に減ったが、家庭内の事故死は増え続けており、溺死と転倒・転落だけで交通事故の死者数を上回る。
 溺死は浴室で起きており、高齢者ほど死者が多く、寒いほど死者が増える。また、転倒・転落は、冬季に寒さで歩行数が減ることが原因ではないかといわれており、どちらも寒くない家に変えることで死者数を減らせるはずだ。
 寒い時期に循環器系の疾患で亡くなる人が多く、外気温と「心疾患・脳血管疾患・呼吸器疾患」のいわゆる3疾患の死亡率は関連していることが、海外でも発表されている。
 ところが、3疾患死亡率が高いのは、日本では四国、東海、中国の各地方であり、ヨーロッパではスペイン、ポルトガル、イギリスだ。逆に死亡率が低いのは、日本では北海道、ヨーロッパでは北欧諸国で、これらは室内の断熱と暖房の環境と深い関係があるとみられている。
 イギリスは、この調査結果を重く見て、循環器系疾患のリスクが高い環境で暮らしていることを国民が知らない現状を改善するため、広く国民に広報し、リスクを評価した上で最終的には強制力を持って住宅環境を改善する取り組みをはじめた。
 日本でも、断熱住宅に移ることで血圧がどう変化するかの調査を行っている。若いころに一軒家を取得し、住み続けて60代、70代になると、寒さによる血圧上昇とそれによる疾患のリスクが高まるが、そのことに居住者が気がついていない。そのことがいちばんの問題だ。高知県での冬の調査では、自宅での起床時より断熱されたモデルハウスでの起床時の血圧が6mmHg下がっている。
 北海道は日本で唯一、住環境がいい地域。古い住宅から断熱改修した住宅に移り住んだ住民の健康を調査し、断熱住宅が健康に良いことをぜひデータとして集めてほしい。

[写真]
講演する伊香賀教授

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室温が10℃下がると高齢者ほど血圧が上がる。これが循環器系の疾病の引き金になるという


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