新聞記事

2013年12月05日号から

塗り壁で木造にRC並み蓄熱性 PCM蓄熱材「e-プラスター」発売

20131205_03_01.jpg 木造住宅にRC住宅並みの蓄熱性をもたらす世界最先端の技術が、北海道内で実用化にこぎ着けた。PCM蓄熱材と呼ばれる素材を調合した塗り壁材「e-プラスター」を室内の壁面に施工することにより、冬でも好天時に起きる室内のオーバーヒートがなくなり、快適性と同時に省エネルギーを実現する。
20131205_03_02.jpg 木造住宅は蓄熱性能が低いため、100㎜断熱クラスでも3月以降になると好天時に室温が30℃に達し、オーバーヒートを起こしてしまう。ところが日が陰って夕方になると一気に室温が低下する。土間蓄熱や基礎断熱で少しは蓄熱性を高めることができるが、大きな解決にはなっておらず、高断熱化をすすめる上でも課題となっていた。
 PCM蓄熱材は、特殊でミクロ単位の小さいカプセルの中にろうそくと似た成分のパラフィンを封入した素材。周囲の温度が上がると固体だったPCMがカプセル内で液体に変化する。このときに熱を吸収し、温度の低下によって固体から液体に変化するときに熱を吐き出す物体の性質を利用して、室内がオーバーヒートする前に吸熱、室温が低下を始めると放熱することで室温を安定させる。
 蓄熱性能は調合によって変えることができ、蓄熱量はセメント・モルタルの6~9倍にもなるという。
20131205_03_03.jpg 施工方法は、一般的な塗り壁材料と変わらない。塗り厚2㎜程度で室内250~300㎡に施工する。試験施工の結果によると、薪ストーブを暖房熱源とする家で、12月中旬から翌5月中旬までの室温は16~26℃の間で推移し、温度コントロールの難しい薪ストーブ熱源でも30℃を超えることがなかった。塗り壁材としては吸放湿性能もあるため、調湿効果も発揮する。
 11月22日には札幌でセミナーを開催し、道外からも参加者を集めた。当日の講師を務めた開発者の石戸谷裕二氏(工博、室内気候研究所主席研究員)は「これまでに21棟の試験施工によって成果を検証し、室温安定による快適性向上と同時に、同じQ値の住宅ならe-プラスターを施工した住宅のほうが暖房エネルギー消費を減らせることがわかってきた。高断熱・高気密技術を前提に、PCM蓄熱材を活用することでエネルギー依存度が低い家をつくることが可能になる」と説明した。なお、経年劣化は、住宅の寿命と同じ50~60年のスパン、年内には準不燃を取得できそうだという。
 自社の設計住宅で試験施工した宮島豊氏(㈱フーム空間計画工房)によると、e-プラスターを施工した物件とその他の物件では、暖房エネルギー消費にハッキリと差があり、設計Q値から計算した暖房エネルギーの削減効果は2割強に及ぶという。
 問い合わせは室内気候研究所へ(北広島市稲穂町西7丁目2-4、tel/ fax. 011-372-9092)。

[写真上から]
セミナーで講演する開発者の石戸谷氏
当日は施工のデモも行われた。色粉を混ぜることも可能という
フーム空間計画工房の施工例。Q値1.24Wの家がQ1.0W相当の省エネ性能をたたき出しているという


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