新聞記事

2013年06月05日号から

マンションに見る最新のスマート装備

 東日本大震災以降、戸建住宅では大手ハウスメーカーを中心に"スマートハウス"の商品化が相次いだが、分譲マンションでも道内のデベロッパー2社がエコロジー・エコノミーを打ち出した"スマート設備搭載マンション"を積極的に展開。他社物件との差別化につなげている。

道内2社が先行し、太陽光など設置

20130605_01_01.jpg ここ1-2年の間に戸建住宅では、大手ハウスメーカーの多くが太陽光発電や蓄電池、HEMSなどを導入した、いわゆる「スマートハウス」を商品ラインアップに加えた。スマートハウスの定義は特に決まっているわけではなく、仕様も各社様々だが、共通しているのは太陽光発電で作った電気を、蓄電池やHEMSを利用することでムダなく使うということ。首都圏ではスマートハウスだけの住宅展示場も誕生しているほど、旬の商品となっている。
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 一方で、分譲マンションはどうかというと、採用物件は徐々に出てきているものの、その数はまだ少数。特に道内・札幌ではマンションデベロッパー15社程度のうち、積極的に太陽光発電などのスマート設備を導入しているのは㈱じょうてつ(山口哲生社長)と日本グランデ㈱(平野雅博社長)の2社だけだ。

 この2社のうち、日本グランデは〝環境にやさしい商品を提供する〟というコンセプトのもと、かねてからディスポーザーや節水型設備の導入を進めていたが、さらに物件の差別化を図るため、2010年末の着工物件から他社に先駆けて太陽光発電の導入を開始。今年3月に完成した「グランファーレ学園前ルネッサンスグランデ」から、太陽光発電に蓄電池を組み合わせたシステムを採用している。共用部の照明の電力をまかなうと同時に、余った電気を売電・蓄電することで管理費の削減を図るとともに、停電時には非常用電源の役目を果たす仕組みだ。
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 さらに現在、札幌市北区に建設中の「グランファーレ北24条ステーションサイド」では、入居者の節電・省エネをサポートすることを目的に、HEMSも全戸に導入した。
 同社企画設計部の北谷博之部長は「お客様は立地・価格を優先して物件を選ぶが、そのうえでさらに太陽光発電や蓄電池があると『これはすごい』となる。太陽光発電や蓄電池などの設備が購入のきっかけになることはほとんどないが、他社物件の差別化としてこれらの設備は非常に有効で、万が一、災害が起こった時の安心感にもつながる」と言い、スマート設備が他社物件と競合した時に最後の一押しとなる「決め手」となっている。
[写真 上から]
太陽光モニター
エントランスホールに設置されたモニターで太陽光発電の状態を入居者が確認できる(日本グランデ)

太陽光発電kai
屋上の塔屋の上に設置された太陽光発電パネル(日本グランデ)

蓄電池kai
エントランスホールの一角に備えられた蓄電池(日本グランデ)

専用住戸の光熱費削減で〝指名買い〟も

20130605_01_04.jpg 一方、じょうてつでは共用部だけでなく専有部分のランニングコスト削減に踏み込み、太陽光発電による共用部分の省エネ・電気代削減に加え、専用住戸にもヒートポンプエアコンやエコキュート、HEMSの導入を進めている。
 同社が属する東急グループでは、2008年から環境配慮に関する優秀な取り組みを表彰する「東急グループ環境賞」を創設。これをきっかけに同社では環境負荷低減に貢献できる物件を提供していこうと、2010年着工の「アイム北29条」からヒートポンプ採用のオール電化を推進。「アイム北29条」は同賞の環境優秀賞を受賞した。2011年からは太陽光発電の導入も開始し、現在では太陽光発電・ヒートポンプ・HEMS・LED照明を導入したオール電化仕様を〝スマートECO2スタイル〟と称してユーザーにアピール。この取り組みによって、指名買いのユーザーが増え、同社の物件同士での競合も見られるようになってきたという。
 ランニングコストは同社の試算によると、現在建設中の「アイム旭山公園通」の3LDK(81.9㎡)で4人家族が暮らした場合、年間光熱費は北海道電力の値上げ申請をそのまま適用した条件で19万4800円となり、都市ガスセントラルとIHクッキングヒーターの組み合わせより15%近く安い。既存物件の入居者アンケートでは「以前の住まいより光熱費が下がった」という声が6?7割を占めるそうだ。
 同社不動産事業部都市開発部の坂昭彦部長は「一昨年の震災以降、エコ・省エネに対する関心が高いお客様が多くなっている。分譲マンションを選ぶ際の優先順位は立地が1位だが、その次に設備を重視するお客様も増えており、〝スマートECO2スタイル〟の取り組みは完全に差別化になっている」と語る。

[写真]
HEMS
オプションで専用住戸内のテレビをHEMSのモニターとして使うことも可能(じょうてつ)

2社とも販売価格に上乗せなし

 両社に共通するのは、太陽光発電などのスマート設備を導入したからといって、販売価格が決して割高になっているわけではないということ。
 例えば日本グランデの「グランファーレ学園前ルネッサンスグランデ」は3LDKの販売価格が2300万?2600万円台だが、同物件から半径1キロ圏内で来年完成予定の他社物件は3LDKの最多価格帯が2500万円台。じょうてつの「アイム旭山公園通」も3LDKの販売価格が2430万?3130万円で平均2780万円と、周辺の物件と比べても割高感はない。販売価格を抑えつつ付加価値を高めていることは営業戦略上の大きなポイントだ。
 この点については、「確かに原価は上がるが、大切なのは建設する地域で売れる価格設定にすること。そのために利益を抑えることもある」(日本グランデ・北谷部長)、「設備関係は支給方式とし、当社が各メーカーと交渉し、価格が安いメーカーから仕入れてゼネコンに支給しているほか、仕上げの素材の変更などにより、太陽光発電やヒートポンプ導入物件としては割安な価格設定にしている」(じょうてつ・坂部長)と言う。
 また、両社とも次の展開として低炭素建築物の認定を視野に入れていることも興味深い。じょうてつでは今年8月頃に販売開始する「アイム大通公園Ⅱ」で分譲マンションとしては道内初となる低炭素建築物の認定を目指しており、スマート設備導入に加えて躯体の断熱性能も引き上げる予定。日本グランデも低炭素建築物の検討を始めたところで、新しい基準・仕様などについては今後も積極的に取り入れていく意向だ。


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