新聞記事

2013年04月05日号から

北東北の工務店4団体 住宅展示場オープン

130405-1men.jpg 大手ハウスメーカーやパワービルダーの進出、地域経済の疲弊や人口減にともなう住宅市場の縮小など、地場工務店を取り巻く環境が厳しさを増す中、青森・岩手・秋田の地場工務店グループが、今年2月から4月にかけて住宅展示場を相次いでオープン。"大手にも負けない家づくりを地元ユーザーに見てもらいたい"と、工務店がその想いを一つにした。


奥津軽ECO住研 -青森・五所川原
3年で地場のシェア6割に拡大

 津軽半島の根元に位置する青森・五所川原市で、性能が高い環境配慮型のエコ住宅を提案する展示場作りをきっかけに、地場工務店シェアを高めていこうと結成されたのが「奥津軽ECO住研」(岩渕司会長、㈲岩渕建築工務所専務)。同会が今年3月にオープンした総合展示場「エルムECOタウン」は平成21年4月の結成以来3回目の展示場となる。
 津軽半島の根元に位置する五所川原市には、もともと複数のモデルハウスを見ることができる総合住宅展示場がなく、地元ユーザーは青森市などの住宅展示場まで足を運んでいた。そのためか大手ハウスメーカーや青森・弘前の両市から進出してくる住宅会社も多く、新築住宅における地元工務店シェアは3~4割にも満たない。「このままでは地域の経済・雇用環境も良くならない」と、性能・品質にこだわる市内の工務店6社が集まり、地場工務店でも性能が高い住宅を建てられることを示していこうと、総合住宅展示場の運営を企画し、結成した平成21年12月に展示場第1弾、同23年春に第2弾をオープンさせた。
20130405_01_01.jpg 今年3月9日(土)オープンの第3弾は"未来型住宅"をテーマとし、省エネ・節電を意識して太陽光発電・ヒートポンプ暖房給湯・HEMSを全棟で採用。来場する地元ユーザーが様々なタイプのモデルを楽しめるように、会員会社で異なるデザイン・プランとなることも意識した。
 オープン2日間での来場者数は、約250組、600名と、これまでで一番多く、ユーザー対象のセミナーなども含め同会の活動が着実に地元ユーザーに浸透していることがうかがえる。
 同会会員もこれまでの展示場の成果が現れてきていることを実感しており、来場者の中には近いうちに新築しようと思っていたので見に来たというユーザーや、新しい展示場ができるのを楽しみにしていたというユーザーもいるという。同市の地場工務店シェアも6割強まで伸びた。
 岩渕会長は「会員6社だけでなく、会員外の地場工務店や大工にも展示場の効果が波及して、地域の住宅産業全体の活性化につながればいいと思う。地場工務店同士が手を組んで展示場を継続して行っているのは全国でも珍しく、他の地域からの視察もあるが、それもいい刺激になっている。これからも時代の変化に対応しつつ、地元ユーザーのことを考えた展示場を続けていきたい」と、今後の抱負を語っている。

むつECO住宅研究会 -青森・むつ
先進的な住まいを地元に提案

20130405_01_02.jpg 下北半島の厳しい気候風土を知り尽くした青森・むつ市内の地場工務店5社が、地元で建てられる住宅の性能水準向上と地元ユーザーへの情報発信、そして環境に配慮した良質な住宅ストックの形成を目的として昨年5月に立ち上げたのが、「むつECO住宅研究会」(工藤敬人会長、㈱シーエスホーム社長)。同会の事業第1弾となるのが市内苫生町で今年2月にオープンした下北初の総合住宅展示場「むつ苫生(とまぶ)ECOタウン」だ。
 むつ市は大手ハウスメーカーや県内のパワービルダーが進出しているほか、他地域の住宅業者が入ってくるケースもあり、広告宣伝力・営業力の差で受注が決まることもあるという。しかし、同会の会員は営業マンを持たず、社長が現場管理から図面作成、営業まで1人でこなす工務店が中心。
 そこで、むつ苫生ECOタウンは会員5社がそれぞれエコで先進的な家づくりを示すことで、地元ユーザーはもちろん、会員外の地場工務店にも性能の高い住宅に対する意識を高めてもらうとともに、1社単独よりも効果的な広告宣伝や営業展開につなげることを狙いとしている。
 モデルハウスは、いずれも県が策定した青森型省エネ住宅の推奨断熱基準であるQ値1.4Wをクリアし、より省エネ化・低炭素化を目指して暖房・給湯ともヒートポンプを採用。さらに来場者に省エネ性の高さを目で見てわかってもらえるよう、HEMSも全棟で設置した。
 2月23日?のオープン初日にはテープカットともちまき、豚汁の振る舞いなどを実施。昨年行った家づくりセミナーや事前の広告によるPR効果もあって、土日の2日間で600名を超える地元ユーザーが来場した。その後、来場したユーザーと新築の打ち合わせが進んでいる会員や、どの業者で建てるか悩んでいたユーザーからの受注が決まった会員もいるなど、早くも成果が表れてきたという。
 同会会員の㈱菊池組・菊池洋壽氏は「展示場の運営はすべて初めての経験で、手探り状態で進めていったが、会員各社が志を一つにして取り組んだ結果、メーカーや商社、建材店、関連工事業者の協力や応援もあって、無事にオープンできた。今後は会の予算を見ながら市民セミナーも実施していきたい」と話している。

THMネット'99 -岩手・花巻
大手との違いを明確に打ち出す

20130405_01_03.jpg 北国・岩手で地域に合った暖かく快適な住まいを考えていこうと、盛岡・遠野・花巻・水沢の地場工務店や設計事務所などが中心となって活動している「THMネット'99」(藤田好造会長、㈱拓三建設社長)。同会の設立は平成11年と今回紹介する4団体の中では最も長い活動歴を誇る。その同会の会員4社が力を合わせ、今年3月に花巻市内で全9区画の分譲地「THMネット・エコタウン」をグランドオープン。各社モデルハウスを展示・公開した。
 同会ではこれまで、会員の勉強会や研修会、北海道や海外への住宅視察など主に住宅の性能向上を目的とした活動を進め、その成果を家づくりやセミナーなどを通じてユーザーに還元してきた。
 今回オープンしたTHMネット・エコタウンは、会員4社が他の会員や取引先などの支援も得ながら造成とモデルハウスの建設を行った。資本力・営業力に勝る大手ハウスメーカーに対し、技術力・提案力では勝るとも劣らない地場工務店のことを地元ユーザーに認知してもらうことが大きな狙いだ。3~4年前に会員の完成物件が同じ時期に揃った時も、合同で完成見学会を行ったことはあったが、同じ場所で同時期にモデルハウスを建設・公開するのは初めて。
 4社のモデルハウスは、"花巻の地域性に根ざした高性能な住宅の提供"を共通コンセプトとし、全棟Q値1.3W以下の断熱性能で暖房・給湯はヒートポンプを採用。そのうえで、女性目線のプランを特徴とするモデルや、Q値1.0Wとより高い性能を提案したモデル、太陽光発電を搭載して省エネ・低炭素化を重視したモデル、県産材や自然素材を活かしたモデルと、各社それぞれオリジナリティをアピールしている。
 今年2月9日(土)のプレオープン時は、約100組、200名が来場。訪れた地元ユーザーは、まず室内の暖かさに関心を示し、「それぞれ特徴あるプランなので、とても参考になった」という声も聞かれたという。
 同会の事務局を務めるSS建築デザイン室㈲の佐藤さよ子社長は「性能に優れた家づくりができる工務店が地元にいるということに、気付いてもらえた感触があった。地場工務店が地域で仕事を続けていくためには、それぞれ自社の特徴を明確にし、地域に根ざした家づくりを行うことで地元ユーザーの信頼を得ることが一番大切。そのために今回、大手との違いをわかってもらえるモデルハウスを展示・公開できたことは、とても意義がある」と、確かな手応えを感じている。

にかほ・eco・カーペンターず -秋田・にかほ
1社単独では不可能な集客数達成

20130405_01_04.jpg 秋田県南西部の"にかほ市"で、地元の気候風土にあったエコ住宅を提供し、地域の活性化につなげようと活動しているのが「にかほ・eco・カーペンターず」(加藤末五郎会長、㈲加藤建工社長)。一昨年11月に地場工務店7社で結成し、今年3月に7社7棟の住宅展示場「夕日ケ丘タウン にかほ・eco・カーペンターず展示場」を市内金浦にプレオープンした。
 同会結成は、今回展示場をオープンした分譲地58区画の造成が決まった時、地元工務店で展示場をやってはどうかという話が持ち上がったのがきっかけ。同市は大手企業の工場があり、県内でも景気の良い地域だったが、大手企業が撤退し始めたことで景気は悪化しつつあり、大手ハウスメーカーの進出も顕著になっている。そこで地場工務店同士が切磋琢磨し、技術力・営業力を高めることで、この状況を乗り越えていこうと、市の建設技能組合に加入している7社が一致団結。展示場オープンに向けて活動を進めてきた。
 展示場を運営するにあたっては、奥津軽ECO住研など青森・岩手・新潟の地場工務店による展示場の成功事例を視察し、オープン前には会員会社のプレゼンと地元金融機関による住宅ローンの紹介を行うセミナーも実施して、地元ユーザーへの周知を図った。
 モデルハウスは各社とも40坪前後の規模とし、全棟ヒートポンプ暖房・給湯を採用。デザイン・プランは事前に会員各社が完成予想図と平面図を出し合い、それぞれ似たようなものにならないように配慮している。
 今年3月9日(土)にプレオープンし、土日2日間で約250組、500名が来場と、「1社単独ではとても不可能な集客」(加藤会長)を達成。来場者からは「いろいろなタイプの住宅を見学できるのがいい」「地元で画期的なことをよくやってくれた」などの声が聞かれ、地元ユーザーにかなりのインパクトを与えた様子。
 加藤会長は「金浦地区は今後、公共施設や病院などが整備される予定で、市民がどんどん集まってくることが予想される。それだけに展示場をやる意義も大きく、今回のモデルハウスが完売したら、残っている区画ですぐに第2弾の展示場をやりましょうと会員のみなさんに話している」と、早くも次の展示場開催に意欲を見せている。


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