新聞記事

2013年02月05日号から

断熱住宅、過去最大のピンチ

高性能住宅Q&A 769回 節約のために暖房・換気を停止

20130205_01_01.jpg Q...年明けしてすぐに昨年引き渡したお客さまから呼ばれました。いわく「窓ガラスが凍る」「結露でべちゃべちゃ」とのこと。家に行ってみると、暖房はリビング以外停止、換気も停止。「寒い、寒い」とセーターを着込みながら、結露・結氷の状況を訴えるのです。
どう対応したらいいでしょうか?


背景に、余裕を失う孤独な消費者

A...北海道の高水準な断熱住宅で、この冬「窓ガラスが凍る」「結露でべちゃべちゃ」という不具合が出ていると、数社から聞いています。その原因は、節電、省エネのために住まい手が暖房・換気設備の両方またはいずれかを止めてしまうこと。
 『北海道の住宅、相当に深刻な問題を抱えてしまった』と感じます。
     *     *
 窓の凍結や結露には、これまで大きく2つの原因がありました。
1.スカスカの断熱欠損住宅で非暖房室やタンス裏での結露:古い住宅ならしょうがないけど、新築でもときどきあって、ほとんど欠陥住宅のレベル。
2.換気不良によって窓におびただしい結露が生まれる:断熱性能は良いが、原因は換気。設備が最初からマズイ場合もあるし、住まい手が運転を止めてしまう場合もあります。

 今年の状況は、どちらにも属さない第3の類型です。中には暖房設備を停止して、ポータブルの電気ヒーターやこたつを使う家もあり、全くの本末転倒が起きています。
 この冬は、燃料高騰に加え北海道電力から節電要請。テレビでも節電の知恵として「使っていない部屋の電気や暖房はこまめに止める」みたいなことがいわれています。さらに年末年始の大寒波。最低気温がマイナス15℃を下回らない程度なら窓は凍結しませんが、それより寒い地域は結露を超えて凍結するそう。

 引き渡しの時に、住宅会社側は全室前日暖房が大切であることを説明しており、再度、窓が凍った理由と対策を説明すると、ご主人は納得するが奥さまは不満顔だそう。
 主婦はどうして納得しないのか、当社のライターも務めている主婦に聞いてみると、こんな話が...。
 『マンションや団地から引っ越し→光熱費のバカ高さに驚き→ちょっと寒くても節約しなきゃ→友だちも「だよねー!」みたいな。竣工直後は躯体が冷えていること、全室常時暖房換気も説明受けてわかってるんです。でも住宅ローンやら何やらで節約しなきゃ、奥さんパート出なくっちゃ、みたいな事態の中で、突きつけられた目の前の光熱費に驚き、なんとかしなくっちゃ!』となると説明します。
 住まい手の理解がなければ、どんな素晴らしい家も窓が凍る寒い家になる。北海道の断熱住宅にとって過去最大のピンチが訪れたと感じています。

納得いくまでゆっくりしっかり説明

 この話から読み取れることは、『予想外』の光熱費の高さや燃料高騰で、余裕を失ってしまう消費者の姿です。
 わがままで、すぐにクレーマーに豹変すると言われる昨今の消費者ですが、見方を変えれば、相談できる人がおらず、不安で孤独だとも言えます。いったん苦情が起きれば、損をするのは業者側ですから、クレームへの事前対策という意味でも、住宅会社側が施主の不安を取り除く配慮・声がけを徹底し、「転ばぬ先の杖」に努力する必要がありそうです。

 既存住宅の対策は、全室暖房を維持しながら室温を下げる提案と、できるなら換気量を0.3~0.35回/hに下げること-だと思います。住宅性能がしっかりしていれば、少し着込んでスリッパを履くなどして室温18~20℃でも快適に暮らせます。
 大切なのは、部分暖房と換気停止が結露を引き起こすこと、間欠暖房しても節約になりにくいこと、室温設定を下げれば節約になることを、ゆっくり施主が納得いくまで説明することだと思います。

今後の対策は・・
 ①事前のヒアリングでそれまで光熱費がいくらかかっていたかをしっかり把握し、それを元に新居の光熱費と性能提案を考え、何度も十分に説明し了解してもらうこと、②光熱費を抑えるために家を小さくすること、③結露しない最低限の暖房と換気は、ユーザーが停止にできないようにすること-ではないでしょうか。
 具体的な設備については、暖房は各社の考え方があるでしょうが、電気蓄熱暖房器を1台入れるのもひとつの方法です。狙いは、電気蓄熱暖房器のパワーで基礎的な室温を作ってもらうという目的です。

 換気については、停止できないセントラル換気で0.3~0.35回/hの換気を行い、基準法上の不足分である0.2~0.15回/hをon/off可能な壁つけ換気扇にするという方法です。ユーザーはきっと壁つけ換気扇を運転しないでしょう。それでもギリギリ大丈夫か、少し障害が出るくらいのレベルを集中換気で担当するのです。壁つけ換気扇はLDKやホールなどがいいですね。水回りは常時換気した方が空気がキレイになるので、集中換気が担当すべきだと思います。


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