新聞記事

2012年09月05日号から

編集長の目 基準案に思う

首都圏の規制強化が必要なのでは?

20120905_02_01.jpg 今回の省エネ基準案は、省エネ性を燃費のかたちで規制し、それとは別に最低限クリアすべき断熱厚を平均熱貫流率によって規制する形式を取っている。これ自体はよいと思う。ただ、最低限の断熱規制が13年前の通称次世代省エネ基準(平成11年基準)レベルで良いのかどうかは疑問だ。
 1999年に定めた基準をその21年後の2020年に義務化することを2012年に決めるというのは、あまりにスピード感がない。
 断熱規制を強化しなかった理由として、国交省は中小工務店の対応が遅れていることへの配慮と、経済へ悪影響を及ぼさないためと説明している。規制のレベルは、業界内部ではなく、電力不足などを背景とした昨今のエネルギー問題と関連させて、国民レベルで評価すべきだろう。それにしても、東京を含む6地域の基準がこれほど甘くて本当に良いのか。機器による省エネに重点が置かれていることも気になる。
 規制案の中でぜひ修正してほしい点がある。それは北海道・東北を中心とする1~4地域の日射遮へい規制を撤廃したこと、沖縄・8地域の断熱規制を撤廃したこと。その根拠は2面に触れたように北では暖房エネルギーの増加につながり、南では冷房エネルギーの増加につながるからと説明しているが、これは研究不足だ。冷房負荷を減らすためには、北でも日射遮へいが必要だし、沖縄では屋根断熱が有効。むしろ規制を強化すべきだ。

一次エネルギー評価には反対

 基準案を策定した委員は、『躯体と設備をいっしょに評価する世界に誇れる基準になっている』と胸を張ったが、細かすぎる心配がある。
 細かく設定すればするほど正確なシミュレーションができる。一方で、めんどうな基準は、生産現場のコストアップにつながり、いくら細かくても場合によっては実態を反映しない場合もある。詳細な基準内容が示されていないが、この点が心配材料だ。
 最後にひと言付け加えたい。一次エネルギーで住宅の省エネ性を評価することに自分は以前から反対だ。消費者に、熱源選択の自由がないからだ。いちばんの問題は電力。消費者は発電源を選んで電力契約することができない。一次エネルギーを選ぶことができないのだ。それなのに省エネ規制のかたちで結果責任を負わせるのは間違った制度だと思う。消費者や住宅会社に対して、国はエネルギーの使用量を規制すべきだ。


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