新聞記事

2012年09月05日号から

断熱規制の強化なし

2020年の義務化前提にした新しい住宅の省エネ基準案

一次エネルギー消費量と断熱厚を規定

1999年(平成11年)以来13年ぶりとなる住宅の省エネルギー基準改定案が、去る8月21日に国土交通省から公開された。今月中にもパブリックコメントのかたちで国民の意見を聴き、年内に公布・施行される見込み。この基準案は、8年後の2020年までにすべての新築住宅・建築物に対して適合を義務化することを前提としている。

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 国の住宅省エネに関する政策の大枠:今回の省エネ基準案が義務基準として最低限の省エネルギー性能を規定。誘導基準の役割を果たすのは、去る8月29日に成立した「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく「認定低炭素住宅」の認定基準となる。この法律は近く公布され、年内には認定基準が制定される(3面に関連記事)。
 さらに、経済産業省・国土交通省・環境省は、「低炭素社会に向けた住まいと住まい方」の推進方策の中で「2020年までに標準的な新築住宅でネットゼロエネルギー住宅(ZEH)を実現し、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現する」としている。
 これらをまとめると:義務化基準、誘導基準、ZEHと省エネ性能を高める方向へ政策が進行していくことになる。今回の省エネ基準案は、その底辺を担う義務化を前提とした基準だ。
 現行の基準である通称次世代省エネ基準は、基本的には断熱性能と熱損失を規定する内容となっていたが、新基準はこの点がまったく変わる。

 新基準:住宅で使われるすべてのエネルギーを、一次エネルギーベースで規制する内容となる。具体的には、暖冷房+換気+照明+給湯+家電等の合計一次エネルギー消費試算値が基準値を上回らないこと。この時、試算値から太陽光発電などによる自家発電の自家消費分を差し引いてよい。現行の事業主基準(トップランナー基準)と同じ仕組みになるわけだ。
 断熱基準も残した。これはヒートショックや結露防止など室内温度分布の確保のためと説明している。基準のレベルは次世代省エネ基準相当だが、評価方法は外皮の平均熱貫流率(通称U値)とし、熱損失係数(Q値)方式を採用しない。純粋に断熱厚だけを規定する趣旨だという。
 重要な変更点があと2つある。1つは地域区分の呼び名変更。表のように、従来のⅠ地域は1、2地域に分かれ、東北などⅡ、Ⅲ地域は3、4地域となる。また、1~4地域は日射遮へいの基準がなくなった。日射遮へい性能が冬場の日射取得を減らしエネルギー増加につながるためと説明している。

暖房:熱源によって基準に大きな差
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 肝心の基準内容だが、今のところ基準の一例と、東京を含む新6地域での試算例しか発表されていない。住宅面積によって基準値が変わるなど非常に細かいが、例えば給湯は熱源機と世帯人員で決めるなど部分的に簡略化されている。このうち、暖房と冷房については基準数値が示されている。全館暖房の場合の基準を表にした。数値は一次エネルギーなので、これを編集部で灯油と電気消費量に換算してみた。
 札幌を含む2地域、120m2の例では、灯油でおよそ1,860リットル、電気で7,000kWhとなり、灯油なら楽勝だが電気ならヒートポンプを採用するかQ値を1.2W程度まで上げる必要がある。一次エネルギー換算では、熱源によって消費量が大きく異なることが特徴だ。


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