新聞記事

2012年07月15日号から

CMHC・BCウッド ネットゼロエネを紹介  導入技術や実証結果など

 CMHC(カナダ住宅金融公社)と、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の木質製品メーカーによる非営利団体・BCウッドでは、今月4日に札幌市内で「カナダ・エコ住宅セミナー」を開催。CMHCの国際トレーナーとしてセミナーや会議の講師を務めるドミニク・アローシェ氏が、カナダで建設されたネット・ゼロ・エネルギー住宅の特徴や、これまでの検証結果などを紹介した。
 ドミニク氏の講演要旨は次の通り。
 カナダのネット・ゼロ・エネルギー住宅は「EQuilibrium」(イクリブリアム)と呼ばれ、消費されるエネルギー量と創り出されるエネルギー量が等しくなることに加え、持続可能であり、オーナーのライフスタイルを実現できる住宅という位置付け。
 柱となる技術としては、①超高性能断熱材を使った建物外皮②50パスカルでの漏気回数が0・5回/時の気密性能③日射取得と断熱のバランスを考えた窓の設計④パッシブソーラー⑤エネルギー効率の良い家電製品と、自然光・手元照明・LEDといったエコ照明、エネルギー使用量表示モニターなどの導入⑥節水型の水回り設備と廃水熱回収⑦太陽熱温水暖房・給湯⑧太陽光発電。このほかにも土壌や水、空気の熱をヒートポンプで利用する方法もある。

住まい方や太陽光への
積雪などに課題も

20120715_01_01.jpg 建設された15棟のネット・ゼロ・エネルギー住宅による実証プロジェクトが、2008年10月から2009年11月まで行われ、予測通りの成果が得られているかどうか、エネルギー消費量などをモニタリングした。今回取り上げるアルバータ州の住宅は、高い断熱・気密性に加え、太陽光発電、太陽熱温水暖房、パッシブソーラーなどを導入している。
 結果としては、年間のエネルギー消費量9856kWhに対し、太陽光発電と太陽熱利用で得られたエネルギー量は6878kWhで、差し引き2978kWhのエネルギー消費量となった。予測の43kWhからはかなり多く、正味ゼロになっていないことになる。
 なぜそうなったのかを検証したところ、まず家電製品や照明の消費電力が予測より多くなっていた。これは予測値が現代のライフスタイルを正確に反映していなかったこと、オーナーの省エネ意識が思ったほど高くないこと、モニター機器の電力負荷が影響していたことなどが原因として考えられる。
 また、太陽光発電の発電量が冬期間に少なかったということもある。調査したところ、降雪状況や天候によって4段組みで設置したパネルのうち、下から1〜2段目に雪が積もってしまうことがあった。それによって冬期間の発電量が下がったと言える。
 一方、水の消費量は、1人あたり1日100ℓ程度と、カナダの平均消費量より3分の2も減っている。
 価格面はどうかというと、このようなコンセプトの住宅は高級住宅市場であれば有望との見方が強いが、現在のエネルギー価格では経済性でネット・ゼロ・エネルギー住宅を勧めるのは困難。しかし、多くのカナダ国民はネット・ゼロ・エネルギー住宅に移りたいと希望している。快適で健康的な室内環境やエネルギーの安全保障ができるという点もメリットとなる。

設備は操作が簡単で
使いやすいものを

 実証プロジェクトで得た教訓として、やはり導入する設備システムは複雑で高度なものではなく、操作が簡単で使いやすいものに変えていかなければならないということがある。複雑なシステムは、オーナーも馴染みがないだけに問題の発生につながる可能性があるし、すべてのオーナーが同じように理解し操作できるかというと、そうでもないという結果も出ている。
 また、省エネと効率を優先させるのが大前提だが、太陽熱暖房はシステムが複雑化する可能性があるので、パッシブソーラーをより活用したい。そのためには優れた施工業者と使いやすい分析ソフトも必要だ。


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