地盤調査・改良の方法として3つの新手法が注目されている。「とりあえず杭打ち」という最近の風潮から、新しい手法を取り入れることで、施工コスト、施工法のメリットなどを吟味した上で最適な地盤改良の選択ができ、場合によっては地盤改良が必要なくなったり、掘削深さが基礎杭よりも大幅に浅くなることで施工のコストダウンが可能になる。
新手法1
SDS法の地盤調査
数万円で土質判定までできる
ジャパンホームシールド(株)(本社東京都)は新しい地盤調査法として、スクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験を全国で展開している。スウェーデン式サウンディング(SWS)試験を改良した。SWSでは地盤の硬さ=支持力(N値)しかわからないが、SDSではそれに加えて土質の推定ができるため、地盤改良の的確な判断ができる。
SWSは、スクリューの上に乗せたおもりがどれくらい土中にめり込んだかを測定して支持力を判定する。これに対しSDSでは、めり込み方が速いのか遅いのかなどといった要素も測定することで、土質の推定も可能となった。調査費用はSWSとさほど変わらず、「4~5万円程度」と同社は話している。
SWSで「粘性土」としか推定できなかった土質が、SDSでは「沖積層」「洪積層」「ローム層」「腐植土」と4種類に判定可能だ。同じ粘性土でも、洪積層は良質地盤、腐植土は軟弱地盤となるため、SWSでは安全を見込んで杭を打つことが多かった。SDSで良好地盤と判定された場合は地盤改良が必要なくなるため、コスト節約になる。
【問い合わせ】ジャパンホームシールド(株)札幌支店(tel.011・330・1765)。
【写真】SWSとSDSの比較イメージ(同)
新手法2
道内向け柱状改良法
不同沈下のリスク減らす
コンクリート杭よりひと回り大きな円い穴をほぼ1間間隔で地面に開け、そこに元の土と固化剤の入ったセメントミルクを混ぜて注入すると、固化して柱状改良体となる。柱状改良体は、地盤との摩擦力で建物を支えることができ、硬い支持地盤を必要としないため、7~8mの深さまで掘れば十分だ。大地震の際にも揺れにある程度追従してせん断破壊がおきにくく、不同沈下を減らすことができるメリットがある。
ところが北海道に多く見られる泥炭は、セメントを混ぜて柱状改良体を作る際に十分な強度が得られないことがある。そこで東翔(株)(札幌市)は「東翔式柱状改良工法」を開発した。掘削機の先端部を独自のせん断スパイラルヘッドに改良。これにより、泥炭など不良土壌は地上に掻き出し、代わりにまわりの良好な土壌をセメントミルクと混合して戻すことで十分な強度を持った柱状改良体を作る。大手ハウスメーカーなど、採用例も増えてきている。
同工法は、4社の地盤保証制度への加入が可能で、不同沈下による建物損傷など、地盤改善が必要になった場合、施工後10年間は最高5000万円まで補修工事が保証される。
【問い合わせ】(株)東翔(tel.011・786・5391)。
【写真】周辺土壌とセメントミルクをかき混ぜて円柱状の改良体を作る(東翔)
新手法3
砕石パイルを使う
液状化現象が起きにくい
砕石パイルは、掘削機で掘った円い穴に直径20~40mm程度の天然砕石を入れ、転圧して締め固めることでパイル(杭)状にして周辺地盤との摩擦抵抗を高め建物の荷重を支える。
ハイスピード工法(開発元・ハイスピードコーポレーション(株))が知られており、道内では(株)遠藤組(本社苫小牧市)など数社が同工法の代理店として展開中。
N値=4程度の比較的軟弱な地盤でも1・5m以上連続していれば支持層となるため、パイルの深さは3~5m程度で済むこともある。掘削深さが大幅に浅くなれば、地盤改良のコストダウンにもつながる。
施工は、電柱を自立させる建柱機を改良した機械で行う。ドリルで地中を掘削し、砕石を投入してから先端のピストンバルブから圧縮空気を送り込んで砕石を転圧する。この作業で周辺地盤まで広範囲に固まる。大地震の際、液状化で地下水位が上昇して一気に地表に水が噴き出すことで起こる、不同沈下や地盤沈下も砕石パイルが水を通しやすいために起こりにくく、液状化被害を防ぎやすいという。
実際、東日本大震災で液状化の被害が多発した茨城県東部で同工法を採用した住宅が複数あったが、不同沈下の被害はほとんどなかった。
【問い合わせ】(株)遠藤組(tel.0144・36・3469)。
【写真】建柱車を改造した作業車(写真左奥)で、20~40㎜の天然砕石(写真右の青い部分から)を注入していく