家が足りない、ファミリー向けがない
住宅問題は意外と深刻
2011年の住宅着工を10年前(2002年)と比べると、全国では総数が27%減に対し賃貸(貸家)は17%減にとどまる。ところが北海道は、総数が33%減に対し賃貸はそれを上回る40%減。賃貸市場が好況とは、この数字からは言えない。
北海道内の貸家をさらに調べると、こんなことがわかった。同じくこの10年間で、木造アパートは3分の1近くに大幅減少する一方、木造戸建ての賃貸は14%減にとどまり、木造の長屋(タウンハウス、あるいはメゾネット方式)は増加して何と2・5倍。いまや長屋式は、アパート2棟に対して1棟以上の比率に達している。建て方の変化は、ニーズあるいは提案の変化だ。
統計上、北海道は14%の空き家があるはずだが、空き家がない(住宅が足りない)という地域もある。それも都市部ではなく、町村だ。町営住宅など公営住宅の所得制限が厳しくなり入居できない。あるいは町営住宅も空きがない。民間アパートがない、呼びかけてもアパート経営をやってくれない―といった事情。
札幌など都市部では逆に、建てた先から空室になるといった深刻な問題もある。基本的には供給過剰だが、魅力は新築だけ、というのでは、次から次と建つアパートにお客をとられることは目に見えており、家賃を下げれば収益を圧迫するという悪循環。それでも満室経営を続ける例もある。
大きく住宅問題をとらえれば、持家が買えなくなれば、ファミリー向け賃貸が必要になる。そして北海道だけでなく日本全国、ファミリー向け賃貸は圧倒的に不足している。都市部は新築/中古ともに分譲マンションがあるが、北海道ではほぼ札幌圏限定で、住宅問題は意外と深刻だ。
町村では民間の賃貸住宅に助成制度を用意する例も出てきている。
道北・猿払村は、新たに村内に民間アパートを新築する個人・法人に対して、建設費の一部を助成する制度を2014年度までの期間で実施する。戸数は延べ8戸程度で、助成額は村内の施工業者は建設工事費の35%(戸当たり350万円が上限)。
またニセコ町は、2010年度からアパートの固定資産税を減免する制度を開始したが効果がなく、今年度は半年がかりで部門横断のプロジェクトをスタートさせた。どうすれば住宅を用意できるか、という課題に対応するためだ。
新築の技術力で需要開拓
北海道には戸建住宅で技術を磨いた工務店がたくさんいる。しかし、マイホームはピークの3分の1に減少し、とくに都市圏から離れた地域は新築がなくなっている。
しかし、住宅は戸建てだけではない。木造アパート、そして移住者などを対象とした中古住宅の改造なども、断熱・耐震化技術を応用することで事業展開できるはずだ。
道内でいま何が起きているか、(次の面で)まとめてみた。