新聞記事

2012年04月15日号から

いま、木造賃貸がおもしろい2

事実1 町村では住宅が足りない

 なぜ町村で住宅が足りないのか。例えば道北の猿払村は、郵便・学校関係や民間企業の転勤族が、所得制限を厳しくした平成21年度の公営住宅法改正によって村営住宅などに入ることができなくなった。企業などは転勤者のため社宅を猿払に建てるわけにいかず、近隣の稚内や浜頓別から通勤しているケースが8世帯以上はあるという。民間賃貸は1棟4戸のアパートが3棟あるだけで戸数が足りない。
 ニセコ町は、リゾート施設で働く人や移住者などが家を求めているが、町営住宅などに空室がない。民間賃貸もないため、近隣の倶知安町から通勤している現状。


事実2 高品質なら満室経営できる

 空室・空家があっても満室経営を続けるノウハウと住宅需要によって、賃貸が好調な地域もある。道南・八雲町の㈲山野内建設(山野内辰男社長)は、自社施工アパートの管理・仲介をしており、満室運営を続けている。
 オーナーへの提案は、戸建て同様の断熱性とオール電化。イニシャルコストは若干高くなるが、入居者が「快適」なので満室経営が続けられる。この春完成させたのは、ヒートポンプ暖房・給湯で光熱費負担を大幅低減した。

事実3 民間事業者がいない

 旭川の近郊、愛別町は、賃貸の事業者がいないという。町民で旭川に仕事を持っている人はいるが、通勤圏ではなく、需要が薄いためアパート業者が参入しない。
 同じくニセコ町も民間の事業者がいない。採算への不安からニセコ町での事業に参入してくれないという。
 どちらの町も町営住宅などが多数あるが、収入制限などもあって入居希望者が借りられない場合があるほか、町営で建てれば建てるほど民間の参入を難しくしてしまう。

20120415_01_01.jpg子育て世代向けの町営住宅(愛別町)は、音の問題に配慮した長屋式(タウンハウス)

実例1 戸建て賃貸(ファミリー向け)

 札幌近郊の都市で戸建ての賃貸住宅を経営する工務店が、匿名で取材に応じてくれた。というのも、本業である住宅新築をもう一方で否定するような事業展開に対して、やや閉鎖的な地元の反応が不安だからだという。
 新築受注に変化を感じたのが2000年ころ。それまでオープンハウスのチラシを打てば必ず次の受注が決まったが、鈍ってきた。そこで2002年からは宅建の資格を取って賃貸経営に乗り出した。工務店自らがオーナーになり、自社で立てて不動産経営を始めたのだ。
 メインを賃貸経営にシフトした理由は、エンドユーザーの志向が変わると感じたからだ。景気が悪くなると、支払いの面で賃貸はラク。また、家に縛られず職を変わりやすい。一般の人が持ち家を持つ時代は終わったと考えた。札幌市内とは異なり分譲マンションがないことも、背景のひとつだった。
 ただ、一生賃貸となれば仮住まいではない。また安普請で15年で建て替えるようなアパートは環境にも悪いと考え、戸建ての住宅品質を持ち込んだ上で、防音には十分に気をつかっている。
 現在、戸建て賃貸を24戸経営しており、もう少し拡大したいと考えている。
 札幌のビルダーからも、「農家などのアパート経営者から、収益力よりも安定経営を重視して戸建て賃貸の要望がある。年に数棟ずつ建てているが、ファミリー賃貸は独身者の物件より管理がラクだそうだ」という話も出ている。


実例2 プレミアム賃貸
(ディンクスなど)

 住宅の所有にこだわらない層、長期ローンを背負いたくない人、賃貸に対する目が肥えている転勤族を対象に、上質な賃貸を提供して入居率98%をたたき出しているのが道東・帯広のルームアンドスタイル㈱。対象を独身女性、ディンクス(共働きの子どもなし夫婦)、子育て家族に限定し、広めの1LDKと2LDKを用意。1Lは看護師、2Lは医師、公務員などが多いという。(詳細は本紙昨年10月15日号に掲載)
20120415_01_02.jpgプレミアム賃貸は、エクステリアも重要な差別化ポイント


実例3 ガレージハウス(単身者)

 北海道ではまだ例を目にしないが、首都圏ではガレージと一体の賃貸住宅が静かなブームになっているという。メゾネット式で1階がガレージ、2階がワンルームの居室という東京都世田谷区の物件は、ガレージが車2台分、2階のワンルームは約15畳。札幌は1階が車庫で2階、3階が居室という3層構造のアパートが多いが、ちょっと発想を変えればガレージハウスという打ち出しもできる可能性がある。


提案1 高断熱アパート
(技術力フルに)

 戸建て並み断熱からさらに一歩踏み出して、超高断熱アパートを計画し、今年着工する工務店がある。猿払村の小山内建設㈱は、村が今年度から開始した1戸あたり上限350万円の助成制度を受けて、200㎜断熱のアパートを計画中だ。断熱性能は、光熱費の安さとして入居者に還元されることになり、助成が受けられればイニシャルコストのアップも負担にはならない。
 事実2で紹介した山野内建設は、300㎜断熱とヒートポンプ暖房・給湯のアパートを5月に着工する予定だ。こちらは、光熱費メリットを入居者にもオーナーにも還元することで、オーナーの投資意欲を引き出すという考え方。


提案2 中古再生アパート(仕入はただ同然)

 空き室が多くなったアパートを中古で取得し、外壁塗装や内装一新、ペット対応などで入居率改善を実現する例はあった。例えば「賃貸アパート、お色直し計画」をすすめているアステリ(札幌市)は、直感的に住みたいと思わせる印象的なデザインを限られた予算で行っている。女性対象に花柄とチェックのクロスや目隠しのためのロールスクリーンの設置などといったアイデアだ(詳細は本紙昨年9月5日号に掲載)。
 これを住宅性能や間取り面にも展開しようというアイデアもある。中古の戸建てを買取り、断熱・耐震改修した上でメゾネット式の賃貸や、数人が同居するシェアハウスに用途変更する(コンバージョン)。移住者などを対象とすれば都市部以外でもニードがあるとみて、計画している工務店もある。
20120415_01_03.jpgお色直し計画のビフォー/アフター。女性にターゲットを絞っている


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