新聞記事

2012年04月25日号から

2012全調査 道内自治体の住宅系補助金 賃貸で400万円支給も

 少子高齢化、人口減少、財政悪化・・・道内自治体は多かれ少なかれこうした課題を抱えている。人口減少を食い止めるためには移住者、定住者を増やすことが重要だが、住宅の確保が難しく、公営住宅を増やそうにも財政などの問題がある。そこで住宅系の補助金で民間賃貸の建設を活性化して受け皿を充実させようとしている。
 平成23年6月5日号で取り上げた道内自治体の住宅系補助金について、今年も調査した。高額補助金の自治体は前年よりも増えており、自治体の期待の高さがうかがえる。(一覧表は以下のページから伝言欄に「4月25日号の見本希望」とご記入の上、試読紙をお申し込みください)
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/

新築・戸建
18自治体で補助開始
20自治体で200万円以上

 移住・定住促進のため新築戸建に補助金を交付する自治体が増えている。今年は新たに18市町が加わった。中でも十勝・幕別町では、人口が減少している幕別市街の定住促進に新築時の土地購入相当分として最大300万円を交付する。このように、建物本体ではなく新築前提の土地取得に対する補助も多い。
 このほか、最大条件で200万円以上補助金がもらえる自治体は20と、前年の13から大幅に増えた。額では下川町が前年に引き続きトップ。
 地元業者限定、あるいは地元業者の場合補助額アップが多いのも特徴だ。地域材

新築・賃貸
公営住宅の弱点補完
持家系より補助率大きめ

 公営住宅は建設するのに多大な資金負担があるため、民間賃貸住宅への補助を行う自治体がある。その数は15と少ないものの、補助率などを見ると明らかに持家系よりも手厚い。際立っていたのは陸別町。1戸あたり専有面積67㎡以上の世帯者向けで400万円/戸となっており、補助率は3分の1以上ありそうだ。また、幌加内町では給与住宅に限って最大500万円/戸の補助制度を設けている。

リフォーム
19自治体で制度新設
耐震改修で補助額アップ

 リフォーム系補助金も19自治体が新たに補助を開始した。目立つのが耐震改修への補助金新設や増額。政府の耐震改修促進政策の誘導もあるが、昨年3月の東日本大震災の影響も少なからずあるのではないか。
 耐震改修の補助額が大きいのは、渡島・福島町、日高・新冠町、空知・岩見沢市、滝川市、新十津川町など。また、13市町で耐震改修の補助が新設されたり補助額がアップした。
 商工会とタイアップして、プレミアム付き金券方式で助成する自治体もある。札幌圏近郊で目立つ。

設備
人気は太陽光補助
詳細未定のところも多く

 設備系の補助で人気があるのは、やはり太陽光発電。遠軽町は制度を整理して最大額は90万円に減ったが、既築住宅への設置に新たに補助が付く。網走市では今年度から太陽光発電設置の補助が開始される。
 このほか、太陽光補助の詳細を4月末から5月にかけて発表する自治体も8市町あった。
 ペレットストーブ設置の補助も比較的多い。補助率が2分の1など、比較的高いのも特徴だ。

自治体の声
空室出て補助休止も
民間活力で財政負担減らす

 地方では民間賃貸住宅の絶対数が少ない。公営住宅は住宅困窮者への支援が第一のため収入による入居資格制限があり、需給バランスがうまくいかない場合がある。さらに、人口減に財政難という問題を抱えた自治体では、費用負担の大きい公営住宅新設は避けたいと考えている。
 民間賃貸住宅への建設補助は、こうした問題を解決する近道として採用されているが、中には完成した賃貸住宅に空室が複数出てきたため、新たな賃貸住宅建設補助を休止した自治体もある。担当者からは「小さな町なので数的にも充足している」という答えが返ってきた。
 陸別町では前年度の利用がなかったということもあり、今年度は1戸あたりの補助金を3割増額した。補助金が有効に利用されるよう、自治体も知恵を絞っている。

20120425_01_02.jpg宗谷・猿払村で新築補助金を利用して建てられた住宅(建築・小山内建設㈱)

20120425_01_01.jpg安平町では、民間賃貸住宅建設に対し、1戸あたり180万円、最大2500万円を補助する


2012年04月25日号から

読者のつぶやき

◆正直、待てませんワ
札幌 工務店 社長

 木の家...に続く補助事業の募集を待っていますが、4月17日現在、まだ動いておりません。開始を待ちわびる気持ちは顧客もいっしょですが、自分は『もうそろそろ待てないな』という気分になっています。補助金事業のサイクルと関係なく仕事を回せれば、100万円との差額分・実質的には50万円くらいを値引きしてもいいのではないかと。値引と言えば聞こえが悪いので、"クーポン50万円分"とか、当社からのエコポイントとか、真剣に考えています。

◆ウェブ対策で成果がでるまで
札幌 工務店 社長
 あるお客さんが、現場見学会の場で、「札幌良い住宅.jpを見て、そこから興味を持って会社のホームページにたどり着いて、そこで会社の考えなどに共感して来ました」と話してくれました。今まで自社のホームページが受注のきっかけを作ったこと、インターネット経由、そして札幌良い住宅.jp経由で商談につながったのは2~3件程度。お客さんの方からこちらに興味を持ってきてくれたケースなので価値ある御縁です。ウェブ対策で成果が出るまで数年かかりました。

◆現場が忙しいと私は楽
札幌 工務店 社長
 商談や打ち合わせ、見積もりやプラン作りなどで3月以降慌ただしくしていましたが、4月になって現場が動き出し、やっと春が来た感があります。現場が順調に動きだすと私は少し楽になります。こういう時にこそ、家づくりをよく勉強し、会社の課題に向き合い、新しい出会いや学びも得て、得たものを次に出会うお客さんのお役に立たせることが大事だと思います。社長は社員が頑張っている時に遊んでいる、と思われがちですが、私なりに真剣です。


2012年04月15日号から

いま、木造賃貸がおもしろい2

事実1 町村では住宅が足りない

 なぜ町村で住宅が足りないのか。例えば道北の猿払村は、郵便・学校関係や民間企業の転勤族が、所得制限を厳しくした平成21年度の公営住宅法改正によって村営住宅などに入ることができなくなった。企業などは転勤者のため社宅を猿払に建てるわけにいかず、近隣の稚内や浜頓別から通勤しているケースが8世帯以上はあるという。民間賃貸は1棟4戸のアパートが3棟あるだけで戸数が足りない。
 ニセコ町は、リゾート施設で働く人や移住者などが家を求めているが、町営住宅などに空室がない。民間賃貸もないため、近隣の倶知安町から通勤している現状。


事実2 高品質なら満室経営できる

 空室・空家があっても満室経営を続けるノウハウと住宅需要によって、賃貸が好調な地域もある。道南・八雲町の㈲山野内建設(山野内辰男社長)は、自社施工アパートの管理・仲介をしており、満室運営を続けている。
 オーナーへの提案は、戸建て同様の断熱性とオール電化。イニシャルコストは若干高くなるが、入居者が「快適」なので満室経営が続けられる。この春完成させたのは、ヒートポンプ暖房・給湯で光熱費負担を大幅低減した。

事実3 民間事業者がいない

 旭川の近郊、愛別町は、賃貸の事業者がいないという。町民で旭川に仕事を持っている人はいるが、通勤圏ではなく、需要が薄いためアパート業者が参入しない。
 同じくニセコ町も民間の事業者がいない。採算への不安からニセコ町での事業に参入してくれないという。
 どちらの町も町営住宅などが多数あるが、収入制限などもあって入居希望者が借りられない場合があるほか、町営で建てれば建てるほど民間の参入を難しくしてしまう。

20120415_01_01.jpg子育て世代向けの町営住宅(愛別町)は、音の問題に配慮した長屋式(タウンハウス)

実例1 戸建て賃貸(ファミリー向け)

 札幌近郊の都市で戸建ての賃貸住宅を経営する工務店が、匿名で取材に応じてくれた。というのも、本業である住宅新築をもう一方で否定するような事業展開に対して、やや閉鎖的な地元の反応が不安だからだという。
 新築受注に変化を感じたのが2000年ころ。それまでオープンハウスのチラシを打てば必ず次の受注が決まったが、鈍ってきた。そこで2002年からは宅建の資格を取って賃貸経営に乗り出した。工務店自らがオーナーになり、自社で立てて不動産経営を始めたのだ。
 メインを賃貸経営にシフトした理由は、エンドユーザーの志向が変わると感じたからだ。景気が悪くなると、支払いの面で賃貸はラク。また、家に縛られず職を変わりやすい。一般の人が持ち家を持つ時代は終わったと考えた。札幌市内とは異なり分譲マンションがないことも、背景のひとつだった。
 ただ、一生賃貸となれば仮住まいではない。また安普請で15年で建て替えるようなアパートは環境にも悪いと考え、戸建ての住宅品質を持ち込んだ上で、防音には十分に気をつかっている。
 現在、戸建て賃貸を24戸経営しており、もう少し拡大したいと考えている。
 札幌のビルダーからも、「農家などのアパート経営者から、収益力よりも安定経営を重視して戸建て賃貸の要望がある。年に数棟ずつ建てているが、ファミリー賃貸は独身者の物件より管理がラクだそうだ」という話も出ている。


実例2 プレミアム賃貸
(ディンクスなど)

 住宅の所有にこだわらない層、長期ローンを背負いたくない人、賃貸に対する目が肥えている転勤族を対象に、上質な賃貸を提供して入居率98%をたたき出しているのが道東・帯広のルームアンドスタイル㈱。対象を独身女性、ディンクス(共働きの子どもなし夫婦)、子育て家族に限定し、広めの1LDKと2LDKを用意。1Lは看護師、2Lは医師、公務員などが多いという。(詳細は本紙昨年10月15日号に掲載)
20120415_01_02.jpgプレミアム賃貸は、エクステリアも重要な差別化ポイント


実例3 ガレージハウス(単身者)

 北海道ではまだ例を目にしないが、首都圏ではガレージと一体の賃貸住宅が静かなブームになっているという。メゾネット式で1階がガレージ、2階がワンルームの居室という東京都世田谷区の物件は、ガレージが車2台分、2階のワンルームは約15畳。札幌は1階が車庫で2階、3階が居室という3層構造のアパートが多いが、ちょっと発想を変えればガレージハウスという打ち出しもできる可能性がある。


提案1 高断熱アパート
(技術力フルに)

 戸建て並み断熱からさらに一歩踏み出して、超高断熱アパートを計画し、今年着工する工務店がある。猿払村の小山内建設㈱は、村が今年度から開始した1戸あたり上限350万円の助成制度を受けて、200㎜断熱のアパートを計画中だ。断熱性能は、光熱費の安さとして入居者に還元されることになり、助成が受けられればイニシャルコストのアップも負担にはならない。
 事実2で紹介した山野内建設は、300㎜断熱とヒートポンプ暖房・給湯のアパートを5月に着工する予定だ。こちらは、光熱費メリットを入居者にもオーナーにも還元することで、オーナーの投資意欲を引き出すという考え方。


提案2 中古再生アパート(仕入はただ同然)

 空き室が多くなったアパートを中古で取得し、外壁塗装や内装一新、ペット対応などで入居率改善を実現する例はあった。例えば「賃貸アパート、お色直し計画」をすすめているアステリ(札幌市)は、直感的に住みたいと思わせる印象的なデザインを限られた予算で行っている。女性対象に花柄とチェックのクロスや目隠しのためのロールスクリーンの設置などといったアイデアだ(詳細は本紙昨年9月5日号に掲載)。
 これを住宅性能や間取り面にも展開しようというアイデアもある。中古の戸建てを買取り、断熱・耐震改修した上でメゾネット式の賃貸や、数人が同居するシェアハウスに用途変更する(コンバージョン)。移住者などを対象とすれば都市部以外でもニードがあるとみて、計画している工務店もある。
20120415_01_03.jpgお色直し計画のビフォー/アフター。女性にターゲットを絞っている


2012年04月15日号から

いま、木造賃貸がおもしろい1

 「賃貸住宅がおもしろい」という声を最近ときどき耳にする。サラリーマンオーナーが急増したり、大手賃貸デベロッパーが建てまくったりと、ときに嵐もやってくる賃貸市場だが、いま、戸建てでつちかったノウハウを投入し需要を開拓する動きが徐々に見られる。

家が足りない、ファミリー向けがない
住宅問題は意外と深刻

 2011年の住宅着工を10年前(2002年)と比べると、全国では総数が27%減に対し賃貸(貸家)は17%減にとどまる。ところが北海道は、総数が33%減に対し賃貸はそれを上回る40%減。賃貸市場が好況とは、この数字からは言えない。
 北海道内の貸家をさらに調べると、こんなことがわかった。同じくこの10年間で、木造アパートは3分の1近くに大幅減少する一方、木造戸建ての賃貸は14%減にとどまり、木造の長屋(タウンハウス、あるいはメゾネット方式)は増加して何と2・5倍。いまや長屋式は、アパート2棟に対して1棟以上の比率に達している。建て方の変化は、ニーズあるいは提案の変化だ。
 統計上、北海道は14%の空き家があるはずだが、空き家がない(住宅が足りない)という地域もある。それも都市部ではなく、町村だ。町営住宅など公営住宅の所得制限が厳しくなり入居できない。あるいは町営住宅も空きがない。民間アパートがない、呼びかけてもアパート経営をやってくれない―といった事情。
 札幌など都市部では逆に、建てた先から空室になるといった深刻な問題もある。基本的には供給過剰だが、魅力は新築だけ、というのでは、次から次と建つアパートにお客をとられることは目に見えており、家賃を下げれば収益を圧迫するという悪循環。それでも満室経営を続ける例もある。
 大きく住宅問題をとらえれば、持家が買えなくなれば、ファミリー向け賃貸が必要になる。そして北海道だけでなく日本全国、ファミリー向け賃貸は圧倒的に不足している。都市部は新築/中古ともに分譲マンションがあるが、北海道ではほぼ札幌圏限定で、住宅問題は意外と深刻だ。
 町村では民間の賃貸住宅に助成制度を用意する例も出てきている。
 道北・猿払村は、新たに村内に民間アパートを新築する個人・法人に対して、建設費の一部を助成する制度を2014年度までの期間で実施する。戸数は延べ8戸程度で、助成額は村内の施工業者は建設工事費の35%(戸当たり350万円が上限)。
 またニセコ町は、2010年度からアパートの固定資産税を減免する制度を開始したが効果がなく、今年度は半年がかりで部門横断のプロジェクトをスタートさせた。どうすれば住宅を用意できるか、という課題に対応するためだ。

新築の技術力で需要開拓

 北海道には戸建住宅で技術を磨いた工務店がたくさんいる。しかし、マイホームはピークの3分の1に減少し、とくに都市圏から離れた地域は新築がなくなっている。
 しかし、住宅は戸建てだけではない。木造アパート、そして移住者などを対象とした中古住宅の改造なども、断熱・耐震化技術を応用することで事業展開できるはずだ。
 道内でいま何が起きているか、(次の面で)まとめてみた。

20120415_02.jpg


2012年04月15日号から

読者のつぶやき

◆ひょうのおかげ(?)でリフォーム好調
北見市 工務店 部長
 再来年の消費税率アップが現実味を帯びてくる中、「消費税が上がる前に新築を」というお客様も増えつつありますが、それ以上に多いのがリフォームの話。北見では昨年降ったひょうの影響で屋根や外壁などが傷んだ住宅が相当数出ましたが、補修するならついでにほかの部分のリフォームも一緒にやりたいというお客様が思いのほか多いんです。ひょうによる損害で北見には相当な額の保険金が下りたそうですが、経済効果はかなりあるのではないでしょうか。

◆施工が難しくてもカッコいいものを
道東 工務店 社長
 公共施設などでたまに建築家が設計した建物を施工することがありますが、個人的な好みの問題はあるにせよ、どうせ建てるならカッコいい設計をお願いしたいです。中には「こんなのどうやって納めるの?」っていう設計もありますが、それもまた挑戦しがいがあるというもの。特に公共施設は長年にわたって多くの人が利用するものですから、施工するわれわれにとっても記念碑的な存在になります。自分の孫に「スゴイ建物だね」と言ってもらえたら最高でしょうね。

◆ホッとする家
札幌市 住宅会社 設計・営業

 当社が施工した物件の中でも、引き渡し後におじゃますると特別にホッとするお宅があります。暮らし方やご家族のお人柄にもよると思いますが、ここにいるとホッとするという空間があったりして、自分でも不思議だなと思います。「この家はホッとしますね」と奥さまに話すと「お友だちもそう言って集まってくださる」みたいな話を聞いたこともあります。家によっていろいろだといつも思いますし、それがまた自分たち建築屋の楽しみでもあります。


2012年04月05日号から

木造建築の新しい可能性 特集

 一昨年10月、国は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行し、低層の公共建築物の木造化を推進することになった。コンビニなど民間商業建築でも木造化が始まっており、木造建築のこうした新しい可能性について、工務店・住宅会社がどう取り組めるのか探ってみた。

増える公共建築や商業建築
環境問題と経済面

20120405_1.jpg 公共建築では、政府の「コンクリートから人へ」という政策転換によって公共事業費が大幅に減らされて「ハコもの」が作りにくくなった。一方で福祉・文教施設では、高齢化や待機児童の増加による施設建設の需要が増大している。こうした建築物は多くが300~1000m2程度と住宅よりも大きいが施設の性格を考慮すると2階建て以下が多い。
 そこに政府が「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を施行、あわせて国産材の利用促進を図り、国内の林業保護と振興に役立たせようと大きく舵を取った。さらに木造は建物建設時のCO2を削減でき、国産材を使うことで輸送時のCO2軽減もできるなど、地球温暖化対策にも有効という判断だ。
 この流れを受けて道も昨年3月22日に「北海道地域材利用推進方針」を発表し、道産材を積極的に活用して学校や社会福祉施設、病院、図書館や公民館、公営住宅、公務員宿舎などで木造化を進めることを決めた。特に道営住宅に関しては昨年7月に「新たな木造道営住宅推進方針」を発表し、これまでRC造など非木造が99%を占めていた道営住宅の木造化への一部転換を印象づけた。

コンビニなどで民間も関心

 一方、民間建築でも木造化への関心が高まっている。たとえばコンビニエンスストア。鋼材の値段が高騰したことなどから木造で建てる例が少しずつ増えている。たとえば、(株)セブン―イレブン・ジャパンでは一昨年から道内店舗の木造化を進め、昨年8月末現在で道内に34店舗の木造店舗を建設した。2年間で建て替えを含め道内に70~80店舗建設していることから、少なくとも新築店舗の約半分が木造化されていることになる。ツーバイフォー工法を採用し、トラスを積極的に採用することで柱の数を減らし、鉄骨造店舗と変わらない空間作りを実現。それでいて建設コストを軽減しているという。
 コンビニは店舗面積が60坪程度の広さが多く、独立型の店舗では多くが平屋建てなので防火規制への対応もハードルが低く、木造化しやすい。また、24時間営業などを行うことでエネルギーを多く使うとされているコンビニでは、エネルギー消費量削減やCO2排出量の削減を行うことが重要となっており、木造化は照明のLED化、暖冷房エネルギーの低減とともに今後コンビニ建築で重要になる。
 また、高齢者専用賃貸住宅や介護付き住宅など高齢者向け建物も木造化が進んでいる。ハウスメーカーでは、木の温もりの良さや結露も起きにくいことをアピールし、専門部署を作って需要開拓に取り組んでいる例もある。このほか、民間保育園、小規模店舗、事務所など木造化の需要は幅広く存在する。

提案営業が必要
工事面では管理ノウハウ

 木造建築の用途はこのように拡大しており、工務店や住宅会社に対する期待も大きい。ある建材販売店ではこのように話している。「おおむね500m2以下の建物であれば、材料や技術的にも住宅と大きな差異はなく、工務店の経験がそのまま生きると思う。木造建築経験の浅いゼネコンもあるので、工務店が担い手として育ってほしい」。
 もっとも、財政難で公共工事は減っており、建て替えが中心。そこで役所の担当者に木造建築による建て替えを提案することも必要だ。公共建築物はこれまでRC造やS造がほとんどだったため、担当者は木造の方が高くつくと考えていたり、耐久性が低いと考えている場合もある。公共建築物の木造化について詳しく知らない場合もあり、木造化のメリットについて建築会社側から提案する必要がある。
 現場管理の重要性を指摘する声もある。一級建築士事務所・建築計画工房(苫小牧市)の佐藤孝司代表は、「延床面積が1000m2クラスの木造建築になると、現場管理が重要となる。たとえば、建て方をやっているときに大工を10人程度しか入れなかった現場があった。しかし、それでは床の養生費などが余計にかかる。この規模の木造建築のノウハウが不足していたことが理由だ。木造のメリットを生かすために現場管理者の育成は急務だ」と話している。

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https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/


2012年04月05日号から

◆断熱材の薄手化が進むでしょうが...

断熱建材メーカー 札幌所長
 札幌版次世代住宅基準によって、断熱材、窓、換気メーカーは商品ラインナップの強化をはじめています。断熱材でいえば、やはり薄手化、つまり高性能化の方向だと思います。Q=1.3Wをクリアするためには、少しでも断熱材の熱抵抗値が高いほうが有利だからです。国もトップランナー制度で高性能化を後押しするそうですし、当社も販売的には新しい商材が必要です。ただ、断熱強化する上で本当に必要なのは高性能化より厚手化。厚手化が進めば良いと思っています。


◆まさかそんなことを・・・
道央 設計事務所 所長
 少し前、あるお客さまの希望を取り入れて設計すると、ご予算を300万円ほどオーバーする住宅がありました。値引きを何度も迫られ、それが無理と分かるとお客さまはなんとその図面を持ってローコストが売りの住宅会社に「この図面で見積もってくれ」と行ったそうです。ところが、さらに300万円以上高い見積が出た上、よく見ると造作などは「同じ仕様では不可」など×印がついてこちらに戻ってきました。「だから言わんこっちゃない」と心の中で思いました。


◆メール対応力
札幌市 工務店 社員
 最近のお客さんは気になった住宅会社にはまずメール。質問や相談を送って担当者の対応の良さ、自分と合うかどうかをチェックする人が増えてきた気がします。その日のうちに、しかも親身になった良いお返事を書くことで受注につながったケースも、そしてメールによって現在商談中のお客様との間での信頼関係が深まったケースも何度も経験しました。もちろんお会いしてお話するのが一番ですが、メールでの対応力もかなり重要だなと思うこのごろです。


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