新聞記事

2011年12月05日号から

神奈川 キーアーキテクツ

自宅改修で大きな手応え

改修版パッシブハウス基準目指す

20111205_02_01.jpg パッシブハウスジャパンの代表理事でキーアーキテクツ社長の森みわ氏が自宅の断熱改修を進めており、外部工事を終えて11月末に入居した。完成は年内の予定。
 森さんからこの春に改修話があることを聞き、興味を持っていた。というのも、面白い改修事例だからだ。
 第1に、この家は賃借物件でオーナーとの新しい契約によって森さんの費用でリフォームする点。賃貸借物件をお互いの負担少なく断熱改修するという仕組みが面白い。
 第2に、建築家の設計だが機能性を失って不動産価値もなくなった物件を再生する点。機能を回復させることでよい部分をよみがえらせるのは、建築家物件、古民家に共通するくくりとして面白い。
 第3に、いろいろな事情により、改修したのは3戸のうち1戸だけという点。所有者が異なるタウンハウスで、合意がとれずに1戸だけ改修する例はほかでもありうる話だ。

透明断熱材なども活用

 物件はRC造外断熱で、築28年。設計した建築家は、エコ住宅へのチャレンジを試みたが、結果は今ひとつで、室内はカビと結露、漏水がひどく、おまけに黒アリが巣を作っていることがわかった。1階は倉庫にもならない状況だったという。それでも改修しようと考えたのは、ユニークな設計が森さんもオーナーも気に入っていたから。
 目標は、パッシブハウスの省エネ改修基準であるEnerPHit(エナフィット)をクリアする暖冷房負荷25kWh/m2。国内2棟目としてドイツに申請する予定。
 金銭面では、70㎡弱の既存延床面積を80m2弱に増築した上で1000万円であげること。
 RCの外断熱は、一部をはがしてみたところとても再利用できる状態ではなく、すべてやり直した。一部に冬場の日射取得を増やす目的で透明断熱材を採用(Sto・シュトー)。
 1階は土間コンの上に真空断熱材を敷き込んだ。RC造の改修の場合、床面断熱は大きな課題となるが、真空断熱材は1つの解決策になると森さんは見ている。今回はプレカット価格などの面でドイツ製を利用。
 既存壁に開口部を設けた部分は、周囲に炭素繊維による補強を行った。
 プールとなっていた屋上防水はすべてはがし、木造で小屋組みしてセルロースで断熱(マツナガ)。空間はロフトとして利用する。
 このほか、開口部は奈良県の杉集成材をドイツでサッシに加工した木製トリプルサッシ、暖房は蓄熱式薪ストーブ(2階)と床暖房(1階)、換気は熱交換換気(ジェイベック)。屋根にはプロパンガスボイラーにつながる太陽熱温水パネルを設置している。

借家人が改修する新方式

 オーナーとの約束では、改修費は森さん持ち。ただし10年間の家賃は固定資産税分のみ。10年後は現状復帰させずに居抜き返却。賃借中の10年間は森さん側の又貸しを認める。
 オーナーの費用負担なし、森さん側はおおむね家賃並みの工事費負担のみ。10年後に、オーナーは価値が回復した物件を手にすることが出来、一方森さん側は住環境の改善に加え個性的な生活を楽しむこともできる。
 森さんは、「新築以外の既存住宅、賃貸住宅の住環境と断熱性の改善も大きな課題。費用負担や枠組み、隣家対策などが重要になるので、今回はどのくらいの費用で収められるか、改修に適した建材や工法は何かを検証しながら工事を進めていった。また、カビや結露で悩む家を建替以外の方法で解決が可能か、という点では大きなチャレンジだったが、断熱改修によって機能の回復は可能だと自信を持った」と話している。


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