新聞記事

2011年10月15日号から

ヘムス(HEMS)

スマートハウス研究 (その3)

 これまで2回にわたってHEMS(ヘムス)について誤解を恐れずに解説してきた。そこから、未来はすごいが現状は発展途上ということが見えてきたと思う。最終回となる今回は、スマートハウスの現状と今後の見通しについて考えたい。

東京でスマートハウス見学
 9月28~30日にかけて東京で恒例のジャパンホームショーが開催、特別企画として「スマートハウス・エコハウス・次世代照明特集」が組まれた。積水ハウスは、同社が横浜に建設した「観環居」(かんかんきょ)と呼ぶスマートハウス実験住宅で採用している技術をパネル展示したほか、ヘムスのデモンストレーションを行った。
 そこでは、消費エネルギーの「見える化」だけでなく、離れて暮らす両親の消息や町内会の電子回覧板などのコミュニティー機能、最寄り駅の電車の時刻表示など、インターネットとも融合した「家庭用ポータルサイト」とでも言うべき表示内容だった。
 しかし、同ショーではほかに目立った展示は見られなかった。急きょ横浜市内に移動してスマートハウスのモデルハウスを見に行ったが、「観環居」は平日非公開のため見学できず、住友林業が公開しているスマートハウスを見に行った。
 このスマートハウスは住宅展示場のモデルハウスとしての位置づけが重視されており、エネファームや蓄電池は稼働しない『模型』扱い。さらに、ヘムスの家電コントロールも節電のためエアコンなどの元コンセントを抜いているということで動作状況は見学できなかった。スマートハウスの実態がなかなか見えてこない。

カギ握る「最適化制御」
 月が改まって、今月4日から8日まで映像・情報通信技術の総合見本市「CEATEC(シーテック) JAPAN2011」が千葉・幕張で開かれ、初日にパナソニックの大坪文雄社長がスピーチを行った。その中で創業100周年に向けた同社の方向性の1つとして述べた内容がまさにスマートハウスと言えるものだった。
 それによると、ヒートポンプ機器などの『省エネ』、太陽光電池や燃料電池で電気を生み出す『創電』、その電力を大容量蓄電池や電気自動車のバッテリーに貯め込む『蓄電』、そしてこうした創電、蓄電の状況やタイミングを見極め、家庭内のエネルギー使用状況をモニターしながら最適な節電のアドバイスまで行うヘムスに代表される『最適化制御』、この4つを提供できるのが同社だという。それは、スマートハウスの中核技術そのものだ。
 そして今、大手ハウスメーカーや通信・家電・コンピューターメーカー、自動車会社などが束になってこの4つを融合させようとしているのがスマートハウスの現状と言える。

実用化には課題も
 しかし、もう一方ではマスコミのセンセーショナルな報道に動じる必要はないと感じた。というのも、規格の統一やシステムのコンピュータウィルス対策、蓄電池とヘムスの連携、低価格化など、実現にはいろいろ課題があるからだ。
 ここで予想されるのは、ヘムスと太陽光発電、低コスト蓄電池など現実的に実現可能な技術だけを抜き出して「○○式スマートハウス」のようなものが乱立する可能性。一時期の『健康住宅』ブームのようになり、混沌とした状況になるかも。
 こうした混乱の中でも、消費者から住宅会社への問い合わせも徐々に増えてくることが予想される。

ヘムスがお手頃に
20111015_02_01.jpg スマートハウスに必要な4要素をそれぞれ検討してみると、ヘムスが一番採用しやすいと言える。NECが既に10万円以下の機種を発表するなど、低価格化が進んでいるためだ。元は、太陽光発電状況をモニタリングする機器として始まったため歴史もあり、分電盤を専用品に変えてモニターを取り付けるというレベルなら採用しやすいと言える。
 省エネに関しては次世代省エネ基準よりも上の性能レベルが求められるが、技術的には問題ない。創電も太陽光発電については、実用化されて年数が経っているのでハードルは価格以外にはあまりないと言える。
 問題は蓄電。現状では蓄電池の単価が高く、家庭で使う1日分の電力をバックアップするのに100万円でも足りないぐらい。しかも、蓄電池の寿命は5~10年程度と言われているため、ランニングコストを考えるととても実用的とは言えない。電気自動車の活用も言われているが、電気自動車そのものが発展段階で、普及率も非常に低いために手を出すのはリスクが多い。
 スマートハウスの現状はこのように黎明期という感じだが、政府の政策次第で主流になる可能性もある。今後の動向から目が離せない。

画像
ジャパンホームショーで展示された積水ハウスのヘムス

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