新聞記事

2011年08月05日号から

バリアフリーリフォームの提案方法

講師 西代明子

自立した生活のために

20110805_02_01.jpg 最近は30年前のようにバリアフリーと聞いただけで嫌な顔をするお客様がいなくなりました。それだけ一般的になったということでしょう。
 歳をとっても住み慣れた我が家に住み続けるため、バリアフリーリフォームを希望する方も増えています。50~70代前半が中心ですが、40代の方からの相談も。工務店にとっては営業の切り口として提案しやすい時代になったと思います。
 一方でクレームも増えています。夢いっぱいで始めたリフォームが悲しい結末を迎えないためのポイントを、私が日頃実践していることを交えながらお話しします。

「不便」を見つけ出す

 バリアフリーに限らず、リフォームは住まい手が不便に感じていることをどれだけ見つけられるかで満足度やリピート率が違ってきます。
 外構を含めた建物全体と生活の様子をよく観察し「何に困っているか」を想像力を駆使して探し出すことが大切です。
 例えば浴室をリフォームする場合。お風呂に直行するのではなく、まず外廻りを見ます。敷地内の段差や物置の位置から家に出入りするところや雪かきの道具を取りにいく場面を想像してみましょう。提案の幅がグッと広がるはずです。
 この段階で工事車両の駐車スペースはあるか、庭木がじゃまにならないかなども判断します。お客様に事前に伝えておけば、あとで駐車場代が発生したり、大事な花を踏んづけてしまったりといったトラブルを防ぐことができます。
 建物の中に入ったら、階段のそばの古新聞の山や和室の長押に掛けっ放しの洋服を見逃さないでください。「しまう場所がないか、収納が使いにくい」ということです。
 トイレも我慢せずにお借りして手すりはあるか、寒くないかをチェックしましょう。
 私はお宅に伺う前に「片付けないで下さい」とお願いします。整理整頓されたら日常の不便さが見えなくなるからです。『ありのまま』の生活を見せていただく方が多くの情報が得られます。

住む人が暮らしやすく

 バリアフリーリフォームを望む60歳くらいの方の自宅は築20~30年、1階は居間と客間、水廻り、2階は寝室と子ども部屋という間取りがほとんど。夜中に階段を下りてトイレに行くのが億劫な方も多いようです。
 それなら1階の客間を遊ばせておくのはもったいない。実際お客様が泊まることは滅多になく、床の間にハンガーや金庫などが置かれている家もたくさんあります。
 客用布団を入れる押し入れと床の間をクローゼットに改造し、寝室として使う方が住む人にとって、ずっと暮らしやすく安全な家になります。仏間の幅を少し狭くすれば、下着やタオルを入れる収納も確保できます。
 2階の子供部屋も「子育てが終わったんですから自分たちのために使いましょう」と提案してみては。夢だった書斎を還暦を過ぎてから実現するのもいいと思います。
 2階に寝る場合は寝室の近くにトイレを造るか、安全に1階に行けるよう階段を緩やかにし、手すりを両側に設置する必要があります。就寝前に薬を飲む方は2階にも小さな洗面台か流し台があると便利でしょう。

医療の専門家との連携

 通院、あるいは入院中の人がいる場合は現在の身体能力やどういう介護が必要なのかを知っておかなくてはなりません。
 進行性の病気であればリフォームしても近い将来、対応できなくなるかもしれないことを見越した提案をします。
 手すりだらけにするのではなく、体の状態に応じていつでも付けられるように下地を施工。お客様を傷つけないよう「転ばぬ先の杖で下地を入れておきます」という切り出し方がいいでしょう。
 医師や看護師、ケアマネージャー、お金や制度の専門家との協力体制も不可欠。わかったつもりで全てを仕切ると、住む人にとって不幸な結果を招きます。
 施工会社の方には福祉住環境コーディネーターの勉強をおすすめします。リュウマチなど代表的な病気の症状や対応方法についての基礎知識が身につき、より適切な受け答えが出来るようになります。営業面でもプラスになるでしょう。

あったかリフォーム倶楽部2011年総会記念講演会から


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