新聞記事

2011年04月05日号から

震災の着工影響(北海道)

年計で1万戸維持

20110405_02_01.jpg 東日本大震災による空前の物不足により、住宅着工にどのくらい影響があるかを心配する声が日増しに高まっている。
 住設・建材の状況は日々変化しているが、戸建て住宅着工の動向をどう見るかを探ってみたい。
 先の見通しが立たない中、あえて予測すれば、9月までは4月と夏場を中心に対前年で最大2~3割台の減少、10月以降は2~3割程度の増加が1つの目安になるのではないか。通年では1万戸の大台をキープ、減少率で5%前後か。
 まず、影響要因を列挙する。資材の価格上昇リスクについては今回は触れない。
①生産工場の被災
②物流の停滞
③計画停電の影響
④復興工事の影響
⑤職人の出張
⑥放射性物質の漏えい
⑦消費者マインド
⑧キャッシュフロー
   *   *
 ①生産工場は、一部を除きおおむね3ヵ月、6月いっぱいには復旧・回復するだろう。ただ、重要部分が破壊された工場は、回復まで半年以上かかる見込み。ガラス製品やサイディングといった窯業建材、石油化学製品の一部工場が深刻な被害を受けている。
 ②物流についてはすでに相当回復している。倉庫・在庫などを含めた流通も3ヵ月たてばかなり回復するだろう。
 ③計画停電の影響は計り知れない。東京電力の3月25日プレスリリースによると、夏季の電力不足は最大で850万kW程度という。これは北海道電力の全発電設備量・約740万kWを100万kW以上も上回る。
 供給量は増えつつあり、5月はいったん計画停電が終了。しかし6~9月は再び計画停電が必要になる。10月以降は回復の見込みだが、冬と夏のピーク時の手当ては、来年もメドがない。夏場は工場生産が激減か。
 ④復興工事の住設建材への影響は限定的と見られる。遅くても5月いっぱいには当初の仮設住宅向けは終了する予定だ。
 ⑤職人が復興工事に出張して手当てが難しくなる可能性は高い。ただ、その影響は一時的で特定業種に限られると見られる。建築板金、電気、水道、大工(東北と道南に限定か)あたりが可能性が高いと見られる。
 ⑥放射性物質の漏えいについては、まったく予想もつかないが、あるテレビ番組で研究者が司会者に封じ込めまでにかかる時間を尋ねられ、正常化には5年程度と答えていた。今後5年はかかると覚悟する必要がありそうだ。
 ⑦消費者マインドは、徐々に改善するだろう。テレビ報道も自粛一色から変化の兆しがある。ただ、いちど盛り上がった家を建てる気持ちが冷えてしまう心配もある。また、被災地支援に入っている関係者は当然延期だろう。
 最後に⑧キャッシュフローだが、仕事があるのに資材が手配できずに工事できず、売上が上がらないという状況は起きると見たほうが安全。4月着工予定の物件は2ヵ月先延ばし、が必要になる可能性がある。
   *   *
 これらを総合的に考えると、4月の着工は激減。5月後半から6月は正常化するも7月以降の夏場は物不足が顕在化し工事の進行に遅れが目立ち、新規の着工も停滞。9月後半から着工が急増し年末へ、というシナリオを描くことができる。


試読・購読のお申し込みはこちら 価値のある3,150円


関連記事

powered by weblio


内容別

月別

新着記事