新聞記事

2011年03月05日号から

熱交換換気に興味2

高性能住宅Q&A 745回

熱交換効率、単体では判断できず

前回は、第3種換気を使っている工務店様からの質問で、『熱交換換気に興味があり、何を判断基準に選んだらよいのか』という声に対し、熱交換換気と省エネは、換気効果も省エネ効果も目に見えにくいため、ザッとあげても5つほど問題があることを指摘しました。今回はその続き。
   *   *
20110305_01_01.jpg 暖房システムなら、理由はともあれ暖まらなければ言い訳無用。しかし換気は機能が2分の1に低下しても(つまり換気回数が0・25回/hに低下しても)多くの場合は問題が起きません。よって換気不良という問題になかなか気がつかないのです。しかも換気しない、すなわち屋外に捨てる暖房熱の量が減ることで省エネには貢献します。これが熱交換換気システムだったら、間違って「省エネ換気」と言いかねないわけです。
 換気排熱の低減を考えるときは、必ず空気質の維持とセットでその両立を前提としなければなりません。「省エネと空気質をどう両立させるか」という課題から出発して、この問題に迫りたいと思います。

 さて、熱交換換気に期待するものを挙げてみました。
1.暖房費用の節約
2.エネルギーの節約
3.暖房負荷の低減
4.給気の加温
5.暖房機能
6.ネームバリュー
 こういうかたちで個条書きにしたのは、整理して考えたいからです。世の中、「熱交換効率XX%」だけが評価基準のようになっていますが、それは換気機能の一部を表現したに過ぎません。住宅に装備するときは、住宅の省エネ性を評価するのであって、「熱交換効率」は一部パーツの性能に過ぎないことを確認しておきたいのです。
 「熱交換効率」とは1から6のどれを指すのでしょうか。よく見ると、すべてに関係していますね。
 もっと具体的に考えましょう。
1.熱交換効率が何%なら暖房費用を節約できるのですか?
2.熱交換効率が何%なら、エネルギーを節約したと言えるのですか?
3.熱交換効率が何%なら暖房負荷が低減したと評価できるのですか?
4.熱交換効率が何%なら、給気加温の効果があると言えるのですか?
5.熱交換効率が何%なら、暖房として機能すると言えるのですか?
6.熱交換効率が何%なら、ネームバリューありと判断できますか?
 この中で答えが出るのは6番だけです。そして答えは「90%以上」になると思います。

1.暖房費用の節約
 暖房期間が7ヵ月から8ヵ月になる北海道では、暖房費の節減は生活コスト圧縮に直結します。しかし、ザッと探しても、換気システムのほかに、台所のレンジフード、(別系統なら)トイレとフロの換気、自然換気(空気漏れ)があるので、機械の熱交換効率がその家全体の回収効率とは一致しないのです。だから、熱交換効率だけで節約になるかどうかを判断することはできません。

2.エネルギーの節約
 灯油暖房が当たり前だった時代はともかく、熱源の多様化が進んでおり、しかも「省CO2」は家庭で使ったエネルギー量ではなく、「一次エネルギー量」で見なさいというのが今の世の中。そうすると、エネルギーの節約のために大きな役割を持ってくるのは熱源選択と断熱となり、換気熱の回収はメインではない。ゆえに熱交換効率だけでは節約になるかどうか判断できません。
 乱暴な言い方になりますが、一次エネルギー量が少ないのは天然ガス。一方、電気は使いやすくかたちを変えている分、一次エネルギーは多くなる。このため熱源選択で家の省エネルギー性が大きく違ってくるということが起きます。
(続く)

一次エネルギーとは
 基本的に自然界に存在するままの形でエネルギー源として利用されているもので、石油・石炭・天然ガス等の化石燃料、原子力の燃料であるウラン、水力・太陽・地熱等の自然エネルギー等自然から直接得られるエネルギーのことをいう。
 これに対し、電気・ガソリン・都市ガス等、一次エネルギーを変換や加工して得られるエネルギーのことを二次エネルギーという。
 通常、原油換算万トン、万キロリットル(万KL)として表示されることが多い。(EICネット 環境用語集から)


イラスト
熱交換器は1つのパーツ。家の省エネ性がこのパーツだけで決まるなら単純でいいのだが...(イラストは換気分野の世界的権威であるアーネ・エルムロート博士の資料から)

連載ページ 
1.空気質と両立が条件
2.熱交換効率、単体では判断できず
3.見えないだけに誤解も多い
4.性能より効能で
5.省エネより暖房節減に効果
 
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