新聞記事

2011年01月15日号から

バトンをつなぐ。会社DNAの承継

 コストが厳しくギリギリの現場が増える一方で、「承継」をキーワードにした取材も増えている。厳しい現実の商売に向かい合いながらも、同時にバトンをつなぐことを考えている経営者が増えているからだ。ただ、昔のような「教えない、ワザを盗め」ではうまくいかないし、事業承継については主導権は現経営者側にある。2011年の事業計画として「承継」をテーマに掲げる会社も少なくないと思う。当社が取材を通じて感じたこと、心に残った言葉をまとめてみた。

営業承継
会社力+個人力の統合

 常に新規の顧客を開拓し続ける住宅販売営業は、ルートセールスで行われる担当者交代→顧客引き継ぎはさほど発生しない。住宅営業はキツイとされ、最近はやり手の営業が少ない、ちょっときつくしかると翌日からこないなど、人事面で幹部の悩みは多い。
 逆に、「スーパー営業マンをつくらないよう気をつけている」と語る社長も多く、個人の力に頼りすぎない営業の仕組みを構築して、営業をマニュアル化する志向が強まっている。
「何名集客できれば何組成約できるかの過去データがあり、集客数で受注が予測できる。営業はそれをフォローするのがメイン」(札幌市、ミニハウスメーカー社長)。
「お客さまへのアプローチづくり、すなわち仕込みですべてが決まる。しかし、社員は自分の接客が受注のカギだと誤解しがち。この点で経営側と社員は相互理解ができない」(札幌市、中堅ビルダー社長)。
 看板や商品といった会社の力と社員個人の力。どちらかというと会社の力を重視する傾向にあるが、しかし、個人の力を高めることも当然必要。2つの力が合わさったとき、強い会社になるという点で異論はない。

事業承継
社長の最後の大仕事

 事業承継こそは、社長以外誰もできない、社長の最後の仕事とも言える。取材していてわかるのは、10年程度の準備期間を費やしていることだ。
 会社をたたむのも1つの方法だが、あえて事業を継続する道を選んだ経営者は共通して「使命」を口にする。これはきれいごとではなくホンネだと思う。
 後継者が子どもでもそうでなくても、不透明なこの時代、社長を引き継ぐことは当たり前だがリスクも大きいし責任も重大だ。それでも事業を継続する道を選ぶのは、お客さまのために会社を存続させるという使命感、そして後継者が全力で経営にあたれば事業は継続できるという会社への自信と雇用維持の責任感だろう。
 税理士で中小企業基盤整備機構北海道支部の事業承継コーディネータを務める吉川孝氏は、原稿や講話の結びに「事業承継は経営者個人とご家族の人生や財産に関する繊細で情緒的な問題でもあり、これを軽視しないこと」と指摘している。まさに人生の区切り。
 中小企業の社長にとって、会社は事実上家業であり、家業である以上、家族もこの問題と無関係ではないという意味だ。

技術承継
後回ししがちだから・・・

 コスト削減と忙しさに忙殺され、技術承継ができなくても家は建つ。後回しになりやすいからこそしっかりやらなければならないということも言える。
「なるべく研修に出すようにしている。ただし、研修内容を吸収できるかどうかは個人の心構え次第。その点の資質向上が、じつは一番重要かもしれない」(札幌中堅ビルダー社長)。
「『やりたい』と言ってきたら費用が許す限りやらせるようにしている。自発性こそが自己啓発のポイントだから」(札幌近郊住宅会社社長)。
 研修にでかければ仕事にしわ寄せが来ることもあり、社員にとって研修に行かないことのほうが正しい選択になる場合もある。
 それでも研修を実施するには、会社全体の向上心が重要になる。


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