Q...ゲリラ豪雨から数日したこの夏、お客さまから「屋根の雨水が道路まで飛んだ。こんなことになるとわかっていたら...」という苦情めいた電話が入りました。ハゼを立ち上げた無落雪の勾配屋根で、谷を走った水が飛んだようです。雪処理を優先した結果なのですが...。
A...そもそも建築としての欠陥とも思えませんがしかし。ここに取り上げたのは、2つの大切な視点が潜んでいるように思ったからです。1つは気候変化への対応、もう1つは非常識な消費者が増えていることへの対応です。
この夏だけとは限らない
今年の夏から学ぶことは、温暖化が進めば、さわやかな夏の北海道も雨が増えて湿度が上がる可能性があるということです。
関東以西が雪に対する備えがないのと同様に、北海道(道南をのぞく)は雨に対する備えがほとんどありません。住宅に限らずインフラもそうです。ちょっとの大雨ですぐに道路は冠水。家は床下浸水。でも、そんな大雨は年に一度あるかどうかだから、対策は不要だった。それがいままでの家づくり・まちづくりだったと思います。
しかし、今年のように大雨が多いと、やはり雨の知識と対策が必要です。ただ、本当に温暖化が進むかどうかは未定。そこで対策をしておく必要があるかどうかの見極めも大切になります。
コスト増招く消費者の変化
もう一つは、自分の主張が社会通念上、許容範囲を超えているかどうかを判断しない消費者が増えているように思われることと、その対応です。
いつの時代もクレーマーと呼ばれる消費者はいるし、彼らが増えていることを裏付ける資料があるわけでもありません。ただ、ゆすり・たかりの悪意はないけれどシロウトの立場を利用して「知らなかった」「説明がわからなかった」といったいい訳で苦情を申し立ててくるタイプは、工務店にとってはけっこうやっかいだと思います。
相手の言い分にどこまでつきあうかは微妙でしょう。こういう人たちが増えると、コストアップにつながります。そういう面で心の準備が必要かもしれません。
雨配慮のポイントは
話を気候変動に戻します。
北海道程度の雨をゲリラ豪雨と呼ぶかどうかはともかくとして、少なくても北海道にとっては道路が陥没し死者が出るほどの雨でした。
大雨について設計の段階で一定の配慮をする場合、ポイントになりそうな点を挙げてみました。
○屋根面では、水勾配の確保と雨水の流し方。
○屋根の雨水を受ける雨樋が北海道の屋根にはいまでもほとんどない。フラット系は軒先に雨が落ちないが、軒の出がないと外壁を汚すという別の問題がある。特に窓まわりの汚れは目立つ。
○雨樋があっても、大雨の時は雨樋を乗り越える(オーバーフローを起こす)というのが本州での常識。大雨は雨樋の対象ではない。
○大雨が対象外とは言え、特に隣地との関係については注意が必要。
○基礎を多少掘り下げて駐車場とする3層構造の木造アパートは、雨水処理に注意が必要。
現段階では、雨が風を伴うことはあまりありません。がしかし台風が来るようになると暴風雨も到来しそう。そうすると外壁の雨もりが問題になるかもしれません。
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雨対処の建築がこれから北海道で大切になるかも