新聞記事

2010年08月25日号から

北方型のQ値計算法、省エネ基準方式に統一

道では、北方型住宅の熱損失係数=Q値の計算方法を、来年度から国の省エネ基準と同じ計算方法に統一することを決めた。これにより、Q値計算で基礎断熱した床下空間や屋根断熱した小屋裏空間などを床面積に加算できるのは、来年3月31日の登録申請分までとなる。

来年4月から
屋根断熱・基礎断熱は不利に

 Q値計算は各部位の熱損失係数の合計を実質床面積で割って算出するが、北方型住宅では一昨年に北方型住宅ECOが国の超長期住宅先導的モデル事業(現長期優良住宅先導事業)に採択された時、基礎断熱した床下空間を床面積に加算して算出したQ値が、性能評価機関で認められたり認められなかったりするなどの混乱があった。
 そこで道では、北方建築総合研究所を通じ、換気経路に入っていることなどを条件に基礎断熱した床下と屋根断熱した小屋裏も気積に含め、その気積を2・6で割った数値をQ値計算の床面積とする考え方を北海道建築指導センターに示し、北方型住宅の認定に限り、この計算方法を使えるようになった。
 20100825_01_01.jpgただ、国の省エネ基準では、Q値計算で床下空間や小屋裏空間が換気経路になった場合の扱いが示されていないことなどから、住宅性能表示制度の省エネルギー等級の判定でこの計算方法は使えない。そのため道ではこの計算方法を国に認めてもらえるよう働きかけていたが、今年早々に国レベルで基礎断熱した床下等は床面積に算入しないとの判断を出したことから、北方型住宅のQ値計算方法も国の省エネ基準に統一することにした。

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2010年08月25日号から

札幌市 太陽光パネルの高さ除外

建物の高さへの算入は原則不要に

 札幌市ではこのほど、太陽光発電パネルの建築基準法上の取り扱いと、雪止めと同等の効果があると判断した屋根材を発表した。
*   *
 太陽光発電パネルについては、水平投影面積(真上から見た時の面積)が建築面積の8分の1以内であれば12mまで建物の高さに原則算入しないという「建築基準法施行令第2条第1項第6号ロ」を適用する。今月20日の建築確認申請受付分から適用を開始した。
 建築基準法上、太陽光発電パネルはその高さをどう取り扱うか明確になっていなかったが、札幌市ではこれまで屋根上に設置する太陽光発電パネルはすべて建物の高さに算入してきた。しかし、無落雪屋根の住宅や施設の屋上部分にパネルを設置するケースが増えてきたことを受け、建築基準法上の取り扱いを検討。階段室や昇降機塔、装飾塔などと同じ屋上部分として取り扱い、一定の条件を満たせばパネルの高さは建物の高さに算入不要とする基準法施行令の適用を決めた。
 これによって、パネルの水平投影面積が建築面積の8分の1以内の場合、パネルの高さが12m以内であれば建物の高さに算入しないことになる。パネルの高さはパネルまたは架台のうち最も高い部分とし、水平投影面積はパネル部分のみ対象とする。
 ただ、北側の前面道路または隣地との関係で建物の最高高さが定められている地域などは適用外となるほか、第一種または第二種低層住居専用地域内において都市計画による高さ制限がある場合などは、建物の高さに算入不要なパネルの高さが5mまでとなる。
 20100825_02_01.jpg戸建住宅で無落雪屋根にパネルを設置しても、2階建てであれば高さが10mを超えることはまずないが、3階建てであれば10mを超えるケースも考えられる。札幌市の場合、住居専用地域などで高さ10mを超える建物は中高層建築物となり、確認申請の前に建築を知らせる標識を設置したり、周辺住民に建築計画を説明する必要があっただけに、都市型3階建住宅などでは太陽光発電を導入しやすくなりそうだ。

落雪防止屋根材を公表
 雪止めと同等の効果があると判断した屋根材の商品名は別表の通り。
 同市では「氷雪の落下による危害を防止するための措置」として、①軒先から敷地境界線までの水平距離が十分に取れる場合②屋根面に雪止め金具を有効に設置する場合③落下防止の機能を備えた屋根材と同等とみなされる工法による場合―を示していた。
 今回③について住宅会社や建て主の目安となるよう、各屋根材メーカーの資料を検討し、雪止めと同じ効果があると判断した9つの屋根材を公表。製品によって軒先から敷地境界線まで、どの程度の水平距離が必要かも明示した。
 なお、同市建築確認課では、今回公表していない製品でも実験データなどの資料が揃っていて、雪止めと同等の効果があると判断できる場合は随時追加し公表していきたいとしている。


2010年08月25日号から

◆800万円住宅が出現

◆800万円住宅が出現
長野県 建材店 部長
 新潟や北陸、そして長野にも登場しました。880万円住宅(パパまる)に触発されたのでしょうか、地元住宅会社やゼネコンの新規参入組が800万円の住宅を発表しています。今年30棟受注したという話も聞こえてきます。こういう世の中ですので、お客さまの関心は支払い可能な、あるいはリスクの少ない支払額で、という方向に向かうからでしょう。家の広さは20坪とかで現実的なのかどうかわかりませんが、とにかくユーザーとの接点が大切だという点は良くわかります。

◆エコアパートも挑戦したい
札幌市 設計事務所 代表
 エコハウスというと戸建住宅を思い浮かべる人が多いと思いますが、先日東京に行った時、知人の紹介でエコアパートを見学する機会に恵まれました。形態的にはコーポラティブハウスとよく似ているのですが、屋根緑化や太陽熱利用など、自然エネルギーを活用する仕組みを取り入れているのが大きな特徴。入居者も共同の畑で野菜を作るなど、都会にいながらエコライフを楽しんでいる姿が印象的でした。ぜひ北海道でも建てることができればと考えています。

◆水まわりリフォームが好調
札幌市 リフォーム会社 社長
 今年は断熱内窓など、明らかにエコポイントがらみのリフォームもありますが、それ以上に水まわりリフォームが増えているのが目立っています。トイレや風呂の場合はバリアフリー化でエコポイントがもらえることもあるのでわかりますが、キッチンが意外に好調です。売れる価格帯も幅広く、これまで我慢していたお客さまが動き始めたのかな、と考えています。それに比べると、外装材リフォームは今ひとつ盛り上がっていません。


2010年08月16日

雪庇防止技術の協力者募集

 住宅の換気排熱をロードヒーティングに利用する技術を開発した川本清司氏が、このほど、その応用技術として雪庇防止、スノーダクトの縦トイ・横トイの凍結防止をロードヒーティングといっしょに実現する手法を開発。現在、施工実験に協力してくれる住宅会社を募集中だ。

 建築基準法の改正により、住宅などの建築物は1時間当たり0・5回の換気を行うことが義務となっており、暖房を行う冬場は換気とともに捨てられる熱の再利用が課題となる一方、雪国で安全・安心に暮らすために雪処理の問題はいまも変わらず大きなテーマだ。
 換気排熱を利用したロードヒーティングは、両方の課題をいっぺんに解決できる技術として、考案者の川本氏と本間弘達氏(伊藤組土建)が特許を取得したほか、(社)日本建築学会北海道支部の技術賞も受賞。技術を応用した商品としてエコロードヒーティング「ゆうらく」が販売されている。
 今回はその技術を屋根に発生する雪庇防止と、スノーダクトのトイ防止にも活用しようという試みで、その実証実験に協力してくれる住宅会社を募集している。
 条件は、札幌市内に今年11月末をメドに新築・完成する40坪以上の木造住宅。建築との取り合い確認や見積もり作業などの時間を見込む必要があるため、応募〆切は9月3日(金)。
 条件など詳しい問い合わせは、実験を実施する川本氏へ((有)北欧住宅研究所、電話011・712・0331)。


2010年08月15日号から

東岩・グラスウール 道リサイクル認定・北方型ポイント対象

 ニットーボー東岩が製造するグラスウール製品が、北海道リサイクル製品に認定された。今回認定を受けたのは、「太陽SUN」「サンツーバイ」「サンボード」「トーヨーファイン」の4製品群。北方型住宅ECOプラスでは、これら認定製品に対し「その他部材」として5ポイントが設定されている。
 北海道リサイクル製品認定制度は、北海道内で発生した循環資源を利用し、道内で製造された一定の基準を満たすリサイクル製品を北海道が認定し、リサイクル品の利用を促進する制度。
20100815_01_01.jpg 製品の製造、流通、再生利用または廃棄の各過程において、環境負荷の低減に十分配慮されている点も認定基準となっている。
 同社は道内企業として、江別市でリサイクル原料(板ガラス、牛乳・ジュース・ビールなどの空き瓶)から断熱材を製造しており、これを機に断熱材の生産を通じてCO2削減を実現しながら、生産工程ではリサイクル資源を最大限に活用して、環境負荷の低減に貢献したいとしている。
 なお、今年度の北方型住宅ECOプラスでは、地域材の使用が条件となっており、「その他部材」としてリサイクル断熱材に5ポイントが設定されている。リサイクル断熱材は「北海道認定リサイクル製品」に限ると規定されており、同社の認定グラスウールを使用するとポイントが加算される。
 詳しくは同社営業推進課へ
(tel.011・590・8800)。


2010年08月15日号から

特集 長期優良住宅

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20100815_02_03.jpg 長期優良住宅の認定制度がスタートして1年2ヵ月。国の補助や各種減税措置などもあり、今年6月末時点での認定戸数は全国で約8万戸に達した。今や長期優良住宅への対応は住宅会社にとって重要なテーマの一つ。ここでは長期優良住宅のポイントを再確認するとともに、手間がかかる技術的審査や認定申請をサポートしてくれる各種サービスなどについてまとめた。

記事について詳しくは試読をご請求ください。


2010年08月10日

道・住宅課が調査業務の入札を実施

道は道営住宅ストックの整備・活用に関する調査業務 一式について、一般競争入札を行う。
資格審査申請の提出は、平成22年8月10日(火)から平成22年8月20日(金)まで。
詳しい情報は道庁ホームページで。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/jtk/nyuusatuseibikatuyou.htm


2010年08月05日号から

住宅エコポイントでアパマンの次世代対応加速中

 リフォームでの利用が約8割以上を占める住宅エコポイントだが、新築では戸建てよりも賃貸アパート・分譲マンションの動向が関心が集まりつつある。実際にアパート・マンションでエコポイントの対象であることを打ち出す住宅会社やデベロッパーも目に付くようになり、業界関係者からは「高断熱化が遅れていたアパマン市場の次世代省エネ基準対応が進んでいる」という声も出てきている。

木造アパート 施工業者主導で進行

 今年6月末時点での住宅エコポイント発行戸数を見ると、北海道は累計で2660戸。このうち新築15%、リフォーム85%と、リフォームでの発行が大多数。
 新築のエコポイント発行戸数が少ないのは、1.鉄骨プレハブ系の大手ハウスメーカーは、エコポイントに対応するためトップランナー基準をクリアする必要がある 2.工務店は30万円相当のエコポイントより、長期優良住宅の100万円補助を優先する傾向にある―などといったことも背景にあるようだ。
 ただ、共同住宅では少し事情が違ってくる。新築のエコポイントは1戸につき30万ポイントがもらえるため、4戸1棟のアパートなら120万ポイント、6戸1棟なら180万ポイントももらえることになる。これはオーナーにとって大きなメリット。
 特に木造アパートであれば次世代省エネ基準をクリアすれば良いので、そのコストアップ分はエコポイントで十分カバーできる。次世代省エネ基準対応によって快適性・省エネ性が向上すれば、他の物件との差別化や入居率の向上につながるという声もある。

オーナー側デメリットなし
20100805_01_01.jpg 例えば、賃貸アパートの"エコポイントキャンペーン"を現在展開している札幌のアサヒ住宅㈱では、「次世代省エネ基準対応で1戸あたり25万円のコストアップになるものの、4戸1棟だと120万ポイントもらえるので損はない。性能アップ分のコストはエコポイントの即時交換で充当できるし、居住性が良くなって、入居率が上がることになれば、オーナーに十分メリットはある」と話す。
 ただ、同社では「エコポイントを理解しているオーナーはそれほどいない」と話しており、エコポイント対応は今のところオーナーではなく、施工業者の提案で進んでいる状況だ。


※エコポイントを大々的に打ち出したアサヒ住宅の新聞折り込みチラシ

賃貸マンション
基準クリアは厳しいが都市ガス化で・・・

20100805_01_02.jpg 一方、賃貸でもRC造のマンションはどうか。
 共同住宅でも木造であれば次世代省エネ基準をクリアすればいいが、RC造となるとトップランナー基準をクリアする必要がある。
 暖房・給湯については電気熱源とする場合、ヒートポンプ機器が必須となり、ガス・灯油は潜熱回収タイプが有力な選択肢。これを好機と捉えて動いているエネルギー関連企業もある。
 北海道ガス㈱リビング営業部リビング開発グループの齊藤勉マネージャーは「営業でRCの賃貸マンションのエコポイント対応は、潜熱回収型給湯器のエコジョーズが決め手と話しており、去年はゼロだった賃貸マンションでのエコジョーズ採用は、今年これまでのところ10棟で採用または採用の計画がある。30万ポイントでは通常のガス・灯油ボイラーとの価格差を埋められないが、入居者にとっては割安な家庭用セントラルの料金体系が適用になり、追い炊き・お湯張りもできるので、ランニングコストが安くなるうえに快適も高くなる。
 オーナーにとっては資産価値が上がることにもなると説明し好評だ」と話しており、賃貸マンションでもエコポイントに対応する動きは出ているようだ。

※北海道ガスでは賃貸マンションのエコポイント対応にエコジョーズを勧めており、手応えが出てきているという

分譲マンション
次世代標準化へ

20100805_01_03.jpg 最後に分譲マンションの状況を見てみたい。
 分譲マンションもエコポイント対応の条件は、RC造の賃貸マンションと同じトップランナー基準クリアだが、道内の分譲マンションの熱源はガスセントラル(FACT)が主流となっているので、後は断熱性能を省エネ等級4にするかどうかの判断をデベロッパーがするだけと言われている。
 本紙編集部で調べたところ、現在エコポイント対応をうたっている分譲マンションは5棟。合計戸数は約310戸にのぼり、このうち2棟を施工中の日本グランデ(株)では「断熱仕様は窓を通常のペアガラスからアルゴンガス入りLow―Eペアガラスに変更して省エネ等級4に適合させ、暖房・給湯はガス高効率給湯器のエコジョーズを採用した。販売価格は若干上がっているものの、目に見えるほどではない。営業的にエコポイント対応は当然という考えで、今後エコポイントが終わったとしても、この性能・仕様を落とすことはないと思う」と言う。
 住宅エコポイントの延長・拡充が予想されるほか、特に札幌市内の物件は環境に配慮することを求めた"CASBEE札幌"への対応もあり、分譲マンションは一気に次世代対応・次世代以上へと進みそうだ。

※日本グランデが現在施工中のエコポイント対応マンション。看板にもしっかり30万円相当のポイントがもらえることをうたっている


2010年08月05日号から

北洋銀行のエコボンド(私募債) 

札幌の住宅会社2社が発行

 札幌市の「さっぽろエコメンバー」など、環境配慮型企業として認証・登録された企業を対象にした銀行保証付きの私募債の発行が住宅業界でも相次いでいる。北洋銀行は、こうした私募債を「北洋エコボンド」としてPRし、発行した企業のイメージ向上にも役立てている。

三五工務店

 (株)三五工務店(田中寿広社長)は、6月30日に第4回無担保社債5千万円を北洋エコボンドとして発行。年限は5年、担保の代わりに北洋銀行が保証し、受託・引受も同銀行が行う。
 同社では、いち早く高断熱・高気密住宅に取組み、近年は道木連が認定する『北の木の家』の認証を受けるなど地材地消によるCO2排出量の削減や、パッシブ住宅の建設など、地球環境にやさしい家づくりに継続的に取り組んでいる。こうした取り組みが認められ「さっぽろエコメンバー」に認証・登録された。調達資金は事業資金に充当する予定。

イネスホーム

 イネスホーム(株)(塚本誠社長)は、7月13日に第2回無担保社債5千万円を北洋エコボンドとして発行。年限は5年、担保の代わりに北洋銀行が保証し、受託・引受も同銀行が行う。
 同社では、「ちょっとアイディアをプラスする家づくり」をコンセプトに自由設計の家づくりを行っている。土台は薬剤不要のヒバ材、構造体は環境にやさしい防腐防蟻材を使用し、環境と健康に優しい住宅づくりに取り組んでいる。今年6月に環境への取り組みが認められ、「さっぽろエコメンバー」に認証・登録された。調達資金は事業資金に充当する予定。
  *     *
 北洋エコボンドの発行は、私募債として企業規模、財務、収益内容についての厳しい発行基準を満たしていることが必要。さらに国や地方公共団体が行っている環境配慮型企業の認定・登録をしていることで「環境保全に貢献している優良企業」と社会的評価がなされる。利用する企業にとっては、通常の私募債よりも発行条件が優遇されるほか、一括償還できるため資金繰りが円滑になり、社会的信用も高まるメリットがある。


2010年08月05日号から

◆雪のせいにしても解決しないので

札幌市 住宅会社 社長

 本州の元気な工務店と話をすると、経営体力の違いを痛感させられます。彼らの「悪い」は赤字すれすれの線だけれど、北海道では「大赤字」だったりします。当然いいときも利益率が違います。何としても収益体質をしっかり、強い会社を作らなければなりません。なにが違うんでしょうね。経営者の能力、社員のやる気といったあたりが一番の問題だと思って、いろいろやり始めています。雪のせいにしていても、いつまでも解決しないので...。

20100805_03_01.jpg◆若い世代は案外イイ!!
帯広市 工務店 社長
 最近、内覧会を開くとけっこうお客さまが多いです。真剣に考えている方ばかり。もちろん当社に決まるかどうかはまだわかりませんが、ちょっと変化を感じます。若い世代は共通してまじめで物わかりがいい方が多いです。一方、年配者はささいなことにこだわって前に進まない場合があります。コミュニケーションさえうまくとれれば、若い世代は案外イイお客さまだと、当社では思っています。
(イラストあり)

◆地域材って一体...
旭川市 工務店 社長
 地域材って言うからには、てっきりその土地で生産されている木材や建材を指すのかと思っていたら、そうではないんですね。例えば長期優良住宅の100万円補助では、産地証明があれば外国で生産された木材も地域材として認めてます。そう言えば昔は輸入丸太を道内で挽いた木材も道産材と言ってたそうです。輸入材を使って外国の森林環境保護と地域の活性化に貢献したけど、国内の森林は荒れて、林産業も衰退したなんてことになったら、とても笑えません。


2010年08月05日号から

暮らしに寄り添う建築を目指して/ウーマンズ・アイ vol14

札幌・アトリエmomo 櫻井百子さん

20100805_04_01.jpg 円山のマンションの一室には、個人で仕事をする"一国の主"たちが集まっている。職業は様々だが、その多くは女性。櫻井さんも、ここにたったひとりの建築事務所を開いた。同室の仲間たちがお互い助け合って仕事をしており、「みんな違う業界だからこそ、気楽にグチを言いあったり、仕事を紹介し合ったりできるんです」と櫻井さん。仕事が終わってからみんなで飲みに行くのが、なによりも楽しい時間だという。

出産・育児を機に潔く決断

20100805_04_02.jpg 櫻井さんは高校で理系クラス、大学で建築学科と、男性に囲まれて過ごすことが多かった。「そんなに男女の差を意識したことがなかったけれど、女扱いされたくない、という意識はあったかもしれません」。何をするにも完ぺきにしなければ気が済まない性分だった。それは「女だから」と言われたくない、という無意識の表れだったのかもしれない。しかし子どもが生まれたことが転機となる。
 出産後は職場だった建築事務所を1年休職し育児に専念。その後復帰してからは、仕事をとりまく状況がすっかり変わった。保育園へ迎えに行く時間で仕事が区切られ、熱を出したといって急に呼び出される。子どものいる生活は、予測不能の連続だ。「でもいい意味でおおざっぱになったというか、無理しなくていいんだ、できることをしようと思えるようになりました」。
 子どもがいて、無理なく働くためには「独立するしかない」と考えた櫻井さんは、事務所を退職する。「2つのものから選ぶとき、潔いほうを選ぶ。半端になるならやめます」。育児と仕事をきちんと両立させたい、という櫻井さんらしい決断だった。

設計者の前に生活者である

20100805_04_03.jpg 2008年に念願の個人事務所を設立したが、30代という若さで一軒の家を任せてもらうには信頼が必要になる。
 そこでまずホームページを工夫した。建築家という存在を身近に感じてもらえるよう、親しみやすいデザインにし、建築家になるまでの詳細なプロフィールも掲載した。また建築業界以外の人たちと積極的に交流し、刺激を受けた。
 櫻井さんがエコハウスに取組むようになったのも、こうした交流がきっかけ。環境問題について活動している人には、環境に負荷の少ない材料の選び方など学ぶことが多かった。櫻井さんは、暮らし方を変えていく提案を、建築でできないか考えるようになる。そして昨年、「下川町21世紀環境共生型モデルハウス」のコンペで最優秀賞に選ばれ、環境を大切にした家づくりの指針となるエコハウスを設計した。
 「暮らしに寄り添う距離は、女性のほうが近いかもしれません」と櫻井さんは言う。例えばキッチンのゴミ箱の位置、物干しの高さなど、自分が生活の中で「こうだったら便利だな」と思うことを図面に書いてみる。すると施主の奥様に共感されることも多い。
 同時に思い込みで設計しないよう心がけてもいる。「これからの時代、キッチンを"女の城"として考えるのは違うかもしれません。ご主人や子どもも使いやすい"みんなの城"として提案していきたい」。設計者の前に生活者であるからこそ、気付きがたくさんあるのだ。

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下川町のエコハウス『美桑』。林の奥にひっそりと、奥ゆかしくたたずむというコンセプトで設計した
平尾建築事務所時代に担当した住宅のキッチン。大工の造作でコストを抑えながら細かい提案などを実現した


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