新聞記事

2010年07月25日号から

トップを訪ねる 四国・高松編

 日本には元気な工務店がたくさんいる。巨大化を目指すことなく、住宅会社の経営に集中したり、業種の幅を広げたり、ノウハウの販売を行ったりとさまざまだが、軸足を地域と住宅業に置き活躍している。そんな全国の企業トップを、編集長がときどき訪ねマス。

『再受注』から考えた住宅販売 

今年はビッグチャンス
 最寄り駅で電車を降りて客待ちのタクシーに乗り込む。地図を渡し『わかりますか』と尋ねる。指でしばらく道路をなぞってから「うーん」。けっきょく電話番号からカーナビでルート検索。
 5分ほど走ってタクシーは突然停車した。「たぶんここです、訪ねてみましょうか」。こうしてアンビエントホーム高松を訪問した。
 看板ナシ、表札もナシ。事務所の気配もなく、モデルハウスらしさは少しだけ。
 札幌の工務店社長・Tさんに「いちど会ってみるといい」と紹介されていた。今回、ちょうど四国・高松に出張する機会があり、取材に快諾していただいた。
 「今年は10年に1度のビッグチャンス。当社は年商を1・5倍の7億円に伸ばす計画。全国規模で起きているニーズの変化をとらえることができれば、どの地域でも今後の基礎が築ける」。
 藤本氏はイケイケの規模拡大論者ではない。むしろ減少時を基準に事業を構築していると語る。

20100725_01_01.jpg藤本氏の考え方
1.お客さまとのコミュニケーションを切らさない。
2.地域でいちばんおいしいパン屋さんになる。
3.売れる商品を持っている。

 1.基本は、『再受注』。およそ5億円の年商のうち、3億5千万円が紹介受注で、このうち5千万円がOB客のリフォームだという。同社は創業13年で社員7名。かなりコンパクトである。
 看板がなくてフリーのお客が来られないというのは、OB客中心の商売を進めた結果であって、もちろん新規を拒否しているわけではない。
 2.地場産業の情報発信としては、宣伝に頼るのではなく、なくてはならない存在になること。それが藤本氏の言う「地域のいちばんおいしいパン屋さん」の意味だ。
 3.商品は、次世代省エネ基準以上・アトリエ建築家の設計(自分で図面を書かない)・メンテのとき現状復帰できる素材―であること。性能面が一定の基準に達したあとはデザイン性や文化的価値が決め手になる。この点で北海道は10年遅れている一方、性能面で本州は10年遅れている。
 消費者セミナーを開き、そのあとの『次アポ率(次のアポをその場で取れること)』を8割に高めるといった手法を細かくマニュアル化して実現している点も特徴的。

20100725_01_02.jpg 以下に、藤本氏の言葉を切り抜いてみた。
▽消費者の動きは全国共通
 『この地域は特殊だから』という方もいる。もちろん気質の違いはあるし、それが気候風土によってはぐくまれることも実感として理解している。ただ、消費者の動きに大きな違いはない。唯一、首都圏だけは規模がまるで違う特殊な市場だと思っている。
 四国の高松は人口40万人、香川県の人口は100万人。気質はものすごく保守的だが、じゅうぶんマーケットはある。
▽変わる=伸びる
 今までのやり方をやめて変わろうとし、変われた会社は元気で伸びている。『ユーザーの感性に刺激を与えられる会社』は好調といえる。
 商品と人材が揃っていればビッグチャンスだ。当社は今期、社員を増やさずに売上1・5倍増を目指そうと思っている。ただし、その方法は、社員各人が生産性を2倍に上げるも良し、働く時間を2倍に増やすも良し、今まで通りがいい人はワークシェアすることになる。
▽変わるきっかけが必要
 人は多くの場合、ダメにならないと変われないし、悪くならないと次にいけない。ボクは社内で、ダメになったらぶっつぶす壊し屋と呼ばれている。小さな会社のやり方だけれど、これが次へのステップだ。
▽フランチャイズの是非
 役に立たないFCもあるが、いいものもある。自分でやれば試行錯誤して多くの授業料を払い、結果として時間がかかる。いいFCは時間を買うと思えばよい。ノウハウはお金で買うことができる。ただし、信念とか改革の方向とかはあらかじめトップが決めていなければならない。
 そういう意味では、出遅れたと感じている会社は、まずいろいろ調べた上でFCに入ることをお勧めする。

藤本 修(Fujimoto Osamu)
1961年、香川県高松市生まれ。ハウスメーカーをへて1998年アンビエントホームを設立。1998年、工務店ネットワークである㈱アンビエントホームネットワーク設立。2007年㈱CRM設立。工務店の社長であると同時に、フランチャイズ、マーケティング、顧客管理ソフトなどを提供する立場でもある。
http://www.ambienthome.com/


2010年07月25日号から

◆商売のタネはいくらでもある

◆商売のタネはいくらでもある
札幌市 建材商社 部長
 自分はもう退職するつもりですが、商売のタネならいくらでもあるし、言い訳が多くて意固地な後輩たちに、考え方を変えることをよくアドバイスしています。住宅産業が成熟から衰退期に入っていることは間違いないですが、それは全体の話であって言い訳にはなりません。ボクらがやり始めたころは高性能建材の市場自体が小さかったので、全体市場が大きくても関係なかったのです。中小企業は商売がニッチなので、市場の規模に惑わされてはいけません。

◆リフォームは共感から
札幌市 リフォーム会社 社長
 今まで地道に取り組んできたことが花開いたのか、今年は受注件数も売上げも絶好調です。その中で大事だと思っているのがお客さまとの話の進め方です。いきなり断熱改修のメリットを説いても「高いから」と断られます。年金生活が間近に迫った奥さま方へその不安や不満などを伺いながら、自分の経験も元に個人的に共感してあげるのです。若い人にはハードルが高いと思いますが、人生経験豊富なお客さまばかりですから、うわべの営業では振り向いてくれません。

◆マニュアル以外の施工は相談を
札幌市 建材販売店 社長
 先日、当社が道内で代理店になっている内装建材を使った工務店さんから、製品がすぐに剥がれてしまうというクレームが入りました。詳しく話を聞いてみると、こちらが指定したものとは違う接着剤を使っていたことが判明。原因がわかってひと安心でしたが、他の建材も含めて意外とマニュアル通りに施工してくれないことって多いんです。工務店さんは経験をもとに「このほうがいいだろう」って考えるようですが、そうするなら事前に一度相談してほしいですね。


2010年07月22日

おわび 北海道住宅新聞をご購読いただいている皆さまへ

7月15日付記事 長期優良100万円補助「補助枠残り約500戸」 は間違いでした

このたびはたいへんご迷惑をおかけいたしました。
「補助枠残り約500戸」は間違いです。
補助枠は未定です。


国土交通省に確認したところ、締切日は10月1日で変わらず、今後、募集締切日が延長になったり、早まったりする場合には、ホームページ上で速やかに発表するとしています。


経緯を以下にご説明いたします。
「平成22年度木の家整備促進事業」(長期優良住宅100万円補助事業)について、募集が始まった4月当初に長期優良住宅普及促進事業実施支援室に補助戸数を確認したところ、「2000戸を予定」との回答を得ており、6月末時点で同支援室がホームページ上で補助金交付決定通知書が約1500戸となったことから「補助枠残り約500戸」という記事を掲載しました。


その後、一部の読者から「補助枠は2000戸と決まっていないのでは」という指摘を受け、同支援室に確認したところ、当初は2000戸を予定しているという話をしていましたが、「木の家整備促進事業」とともに"木のまち・木のいえ整備促進事業"の一つである「木のまち整備促進事業」の採択プロジェクトがまだ確定していないため、全体で50億円の予算をどう振り分けるかがまだ決まらず、長期優良100万円補助の最終戸数も確定していないとの回答を得ました。


国土交通省にも確認したところ同支援室と同様の回答で、現在のところ10月1日で締切日は変わらず、今後、予算が確定した段階で募集締切日が延長になったり、早まったりする場合には、ホームページ上で速やかに発表するとしています。


よって今回の記事は誤りであり、その原因は同事業の補助枠が当初の同支援室の回答のままと思い込み、確認を怠ったことにあります。
次号(7月25日号)で募集締切は10月1日で変わっていないという記事を掲載するとともに、読者の皆様にご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます。
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北海道住宅新聞
編集長 白井 康永(やすひさ)


2010年07月15日号から

人件費削減は進んでいるか

20100715_01_01.jpg 本紙ではこのほど、札幌圏の住宅会社のうち、社長を含む常勤の従業員が10名を超す企業について、社長に聞き取りで人件費を調査した。その結果、社長の年収は最大で4倍の差があるが、管理職は比較的平均していることがわかった。

札幌圏 工務店・ビルダーの実態
この調査は統計値をとるために行ったものではなく、指標として実施した。こういう趣旨から平均値を算出することは行っていない。調査はすべて面談し、決算書類を手に回答いただいた社長もいた。また調査に協力いただいた企業は情報をオープンにしているケースが多かった。
 また、経営者は、創業社長、二代目のオーナー企業のほかに非オーナー社長もいる。
※記事内容は試読をご請求ください。
https://www.iesu.co.jp/publication/newspaper/


2010年07月15日号から

紋別市・認証材補助制度スタート 最大100万円

 オホーツクに位置する流氷のまち・紋別市では、今年4月から地域産業の活性化を目的に、日本の森林認証システムであるSGEC(エスジェック)森林認証を受けた地域材を使って新築・増改築を行う住宅に最大100万円を補助する「紋別市認証材活用住宅助成制度」を開始。これまで4件の申し込みがあったほか、利用を前提とした問い合わせも出てきているなど、まずまずの出足を見せている。
 同市ではかつて年間40~50戸あった戸建住宅の確認申請件数が、昨年度は13戸まで減少。住宅建設は幅広い経済波及効果が見込めるだけに、市ではこの状況を改善して地域産業の活性化を図ろうと、この補助制度を立ち上げた。今年度から3ヵ年実施する予定。
 具体的には、紋別市を始め1市7町2村で構成する網走西部流域のSGEC認証森林約30万haから産出された木材を5以上使い、適切に認証材を管理・使用できる業者認証であるCoC認証を受けた市内の工務店14社(7月6日現在)で新築・増改築を行う場合、構造材で1あたり5万円、内装材で1㎡あたり5千円、合わせて最高100万円まで補助する。
 構造材であれば、森林認証材のカラマツ集成材は輸入材と比べて1あたり3万円ほど割高になるが、その差額に加えてさらに2万円のインセンティブを乗せることで住宅需要を刺激する考え。
 このほか、北海道木材産業協同組合連合会(どうもくれん)の「北の木の家」の認定取得や、住宅金融支援機構のフラット35の技術基準を満たすことなども必要条件となっている。

今年度13件の利用を見込む

 予算枠は1100万円で、1件約84万円と想定して13件分に相当。これまで新築3件、増改築1件、合わせて4件の申し込みがあったといい、このほかにも問い合わせのあった4件で利用が見込まれるなど、制度開始から3ヵ月を過ぎてまずまずの利用状況だという。
 同市産業部農政林務課森林認証担当の野呂田厚司参事は「現在、市内から出ている森林認証材は3千くらいだが、今回の補助制度などを通じて1万まで引き上げることができればいいと思う。今年度は13棟分の予算を計上しているが、利用件数が多くなればさらに予算を増やすことも検討していきたい」と話している。


2010年07月15日号から

◆上向きの実感はない

◆上向きの実感はない
札幌市 建材問屋 部長
 今年に入ってから数字上では道内着工は上向きです。しかし当社の売上はというと、辛うじてプラスという程度で、景気が上向きになってきた実感はほとんどありません。ハウスメーカーや工務店の動きを見ていても、景気のいいところと悪いところとはっきり差が付いているので、全体が良くなっているわけではないのでしょうね。最近目立つのは高級キッチンの売れ行きがいいこと。普及タイプに比べて利益率がいいので当社にとってもありがたいことです。

◆やはり受注は取りたい
札幌市 工務店 社長
 「住み心地はどうでもいいから、とにかく希望通りのデザイン・間取りにして」。これは先日、あるお客様から言われた言葉です。これまでもお客様の希望で明らかに快適性や居住性を損ねるとわかるものは、その理由を説明し、当社ではやらないことを納得してもらっていたのですが、今回のお客様はまるで耳を貸そうとしません。断ろうとも思いましたが、このご時世だけにやはり受注は取りたいのが本音。何とか説得できる方法はないかと毎日頭を悩ませています。


2010年07月05日号から

高性能住宅Q&A 734回 高断熱住宅が6月に寒い

家電や室温設定か?

Q・・・断熱厚で壁が200㎜以上、熱損失係数(Q値)で1W以下の超高断熱住宅を引き渡し、冬の間は「本当に暖かい(寒くない)」と好評だったのですが、6月中旬に訪ねた際、『上旬まで暖房を入れる日があった』と聞いて驚きました。そんなものでしょうか。
A・・・この話は、最近ときどき耳にします。そして、以前から原因を調べていますが今ひとつわかりません。理由はわかりませんが、『5~6月に意外と寒い』という高断熱住宅が多いことは確かです。
 以前はこの時期の話題と言えば、『3月なのにオーバーヒートした』という暑い住宅の話でした。こういう住宅はもちろん5月も当然のようにオーバーヒートします。しかし、朝晩は暖房を使っていたりするのです。ある1日に朝・暖房、お昼前後から冷房、夜は再び暖房という空調をするわけです。

20100705_01_01.jpg原因は複合的で5つくらい

 さて本題です。
 考えられる理由は複合的ですが、1.日射遮へいがしっかりしている 2.建物に蓄熱層がある 3.室内に熱源がない 4.断熱性能が高い 5.室温がふだんから低めに設定されている―という要素が考えられます。
 1.寒い家はオーバーヒートしない家であることが多いようです。日射の遮へいがしっかりしていたり、完全に真南を向いていて西面には窓が少なかったり。
 日射遮へいはいろいろな方法があります。例えば窓が小さいこともその1つです。日射遮へいが効いていれば、太陽光や外気温度に左右されにくいことは確かです。
 2.蓄熱量が大きく影響しているのではないかと昨年までは想像したのですが、決定的な理由ではないようです。ただ、基礎断熱などによってコンクリートの蓄熱量があれば、室温がコンクリート温度に引っ張られます。
 3.室内に熱源がないということは、実は大きな原因になっているように思います。熱源とは暖房だけでなく、家電製品、つまりテレビも冷蔵庫もパソコンも、すべて熱源になります。内外温度差が小さいこの時期は、300Wクラスの家電が動いているだけで暖房と同等の効果があります。概算では室温を1・5℃程度引き上げるチカラがありますから、テレビがついているかどうかでだいぶ違うでしょう。
 4.そもそも断熱性能が高いことが、夏冬問わずに屋外の気温に左右されにくい室内をつくるワケですから、この時期特有のピーカンの晴天で外気温が低いときなどは、日射遮へいがほどよく効いていれば、屋根の照り返しの影響もあまり受けずに室内が低温で推移することになります。
 5.室温を高めに設定している人は、ちょっと寒いだけで迷わず暖房onなのに対し、20℃くらいの設定のかたは、肌寒くなる18℃くらいまでガマンしてしまうという面もあるようです。
 肌寒い感覚は17~21℃、おおむね18~20℃でしょうから、ふだんの暖房温度が密接にかかわってくるわけです。
 お客さまの中には、「欠陥(断熱欠損)じゃないか?」というニュアンスをにおわせる方もいます。
 そうではないと説明するのは難しいですよね、きっと。まずは「同じく寒い思いをされている人けっこういるんですよ」というあたりから入るのがいいでしょうか。
 対策は「自分だけではない安心感」。すなわち『遠慮せずに暖房しよう』と心を解放して差し上げることかもしれません。


2010年07月05日号から

日本VOC測定協会

測定料6万円に値下げ

 室内VOC測定を通じて健康に過ごせる家づくりの普及活動を行っているNPO日本VOC測定協会(福井政義理事長)では、去る5月31日に網走市内で平成22年度総会を開催。今年度から、同協会登録事業者によるVOC測定料金を従来の10万円から6万円(税・諸費用別途)に改定することを決めた。これにより、住宅会社・ユーザーは今まで以上にVOC測定を利用しやすくなる。
 同協会では、VOCに関する正確な知識を持ち、厚生労働省の測定ガイドラインに準じて室内空気のサンプリングを行うことができるVOC測定士を認定・登録するとともに、アクティブ法によるサンプリングや公的な第三者機関・北見工業大学による高精度の分析などによって、信頼性の高いVOC測定の普及を推進。3年前の創設以来、全国で約80件の測定を行ってきた。
 これまでホルムアルデヒドやアセトアルデヒド、トルエン、キシレンなど8物質のVOC測定を室内1ヵ所につき10万円で実施してきたが、より多くの住宅会社・ユーザーを対象にVOC測定の普及を図るためには測定料金の改定が必要と判断し、6万円に引き下げた。消費税や交通費、測定機材の送料など諸費用は、従来通り別途必要になる。
 問い合わせは同協会事務局(本部0152・43・1588、東京03・5496・9710)へ。
http://www.jvma.jp/


2010年07月05日号から

◆CASBEEは取っておくべきか

◆CASBEEは取っておくべきか
北見市 工務店 社長
 何だか最近、私の回りではCASBEE(戸建て)の資格取得を目指す人がやたら増えてきたように思います。今すぐ必要にはならなくても、将来的には国の住宅政策の中で重要な資格に位置付けられる可能性があるというのが、その理由だそうです。特に根拠がある話とは思えないのですが、北方型ECOのBIS・BIS―Eの例があるので、補助金絡みで突然重要性を増すことがあるかもしれません。いずれにしても簡単に取れる資格ではなさそうですが・・・。

20100705_03_01.jpg◆エアコンは冷房専用?
札幌市 工務店 社長
 ここ数年で寒冷地用のエアコンが各メーカーから市販されたので、当社でもエアコン暖房にチャレンジしてみようと思い、何人かのお客様に「こんな暖房方法もありますよ」と話をしました。ところがみなさんいずれも「エアコンって夏に冷房するものでしょ」という反応。暖房設備としては見ていないんです。まずはお客様に寒冷地でも使えるエアコンがあると知ってもらうことから始める必要がありそうです。


2010年07月05日号から

提案力と誠実さでマーケット開拓/ウーマンズ・アイ vol.13

札幌・スズキトレーディング

20100705_04_01.jpg常務取締役 奥山博子さん
取締役チーフアドバイザー 
外川敏恵さん

 ヨーロッパや北米の木材製品の輸入・販売を行う(株)スズキトレーディングで、営業スタッフとして活躍している奥山博子さんと外川敏恵さん。2人は19年前にこの業界に入って以来、一般ユーザーに直接商品を売り込むのではなく、設計事務所や住宅会社などに自社商品をスペックインしてもらうための販売促進活動に力を発揮してきた。

男性と女性で能力差はない

 2人の仕事は家庭の主婦と直に接するポジションではないため「共感目線」が生かされることはほとんどないが、営業担当として誠実な対応や丁寧な商品説明、木材や建築に関する幅広い知識などが求められてくる。
 「体力面で男女差はあっても、考える能力に違いはない」というのが同社鈴木社長の考えで、日常の業務は取引先との打ち合わせやプレゼンテーションのほか、仕入れ・検品、配送の手配、伝票整理など男性社員と変わらない。担当エリアは道内全域で出張も多く、「仕事の性質上、女性であることを意識させられたり、男性との視点の違いを感じる場面はなかった」と奥山さん。
 外川さんも「細かな気配りなど女性のいいところは大切にしたい」としながらも「商品や会社の姿勢をいかにアピールするかが肝心」と話す。
 営業先で露骨に拒否反応を示す人も、最近では見かけなくなったといい、セクハラなどのトラブルに巻き込まれたこともない。「問題が起きても会社全体で情報として共有する体制が整っています」という奥山さんの言葉からも女性が働きやすい職場環境が伺える。

木の特徴をしっかり伝える
 20100705_04_02.jpg20100705_04_03.jpg奥山さんは「私たちが扱っているのは必需品ではなく、嗜好品」と話す。
 「同じような商品を販売している多くの会社の中から選んでいただくには、あらゆる樹種の特性や他社製品について勉強し、提案力をアップさせることが必要なんです」と外川さん。
 日頃の営業活動では、木材の特性をきちんと理解した上で採用してもらうことを心がけている。
 「自然の木は温かみがあり、調湿性に優れ、経年変化を楽しむことができる半面、キズがつきやすく、乾燥して変形も生じますし、木の風合いと美しさを保つためにはお手入れも必要。そうした部分も木という天然素材の特徴であることをしっかり伝えることができなくては」(奥山さん)。
 展示会などでは、日頃会う機会のないエンドユーザーから「木が膨張・収縮する時の音を楽しんでいる」「適度な湿度が保たれ、室内が暖かく感じる」といった生の声も聞くそうだが、それも営業ツールの一つとして意識。「住まい手個人の感想ですが、取引先には必ず伝えるようにしています」と奥山さん。
 「道内の工務店は勉強熱心。自社のカラーを打ち出した個性的な家を造る会社が多いですね」と口を揃える2人。「同じ北海道でも、地域によって住宅づくりはさまざま。その土地の気候風土を熟知した地場工務店が仕事を確保できる世の中であってほしいと思います」と、外川さんは語ってくれた。

photo
写真上:床に幅広で厚みがある飫肥杉の無垢フローリング、天井にウエスタンレッドシーダーを使い、異なる樹種でコーディネートした室内(一晃建設施工)
写真下:床に味わいあるレッドパインの無垢フローリングを採用(丸三ホクシン建設施工)


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