新聞記事

2010年03月25日号から

平成22年度予算確定へ

長期優良や太陽光への補助金事業は継続

 国の平成22年度予算案と税制関連法案が今月2日に衆議院で可決され、現時点(3月19日現在)ではまだ参議院で審議中だが、今年度中の成立が確定。各省庁来年度予算の住宅関連施策をまとめた。

国土交通省
既存住宅の質向上と地域材利用に新支援策

20100325_01_01.jpg 国土交通省では、リフォーム市場の活性化や住宅・建築物の長寿命化・省CO2化を目的に、330億円の予算を計上して「環境・リフォーム推進事業」を創設。
 この事業では、過去2年間実施してきた補助金事業である長期優良住宅先導的モデル事業と住宅・建築物省CO2先導的モデル事業を、それぞれ長期優良住宅先導事業、住宅・建築物省CO2先導事業と名称変更し引き続き実施。
 さらに建築士による建物検査を踏まえた質向上リフォームに補助を行う既存住宅流通活性化事業と、エネルギー消費量を1割以上削減する省エネ改修(住宅除く)に補助を行う建築物省エネ改修推進事業も新たに実施する。
 長期優良住宅先導事業と住宅・建築物省CO2先導事業、建築物省エネ改修推進事業は今月5日から募集を開始。既存住宅流通活性化事業については現時点で募集時期は未定だ。
 また、先導的技術による大規模木造建築物や中小住宅会社による地域材利用の長期優良住宅に対して補助を行う「木のまち・木のいえ整備促進事業」を創設。50億円の予算を計上した。
 これは中小住宅会社が建てる長期優良住宅に100万円の補助を行う長期優良住宅普及促進事業の名称を変更して補助要件を拡充するとともに、構造材・内外装材に木材を一定以上使用した大規模な木造建築物や、木造住宅・建築物の技術基盤強化に関する事業にも補助を行う。
 中小住宅会社が建てる長期優良住宅への補助については、昨年同様の条件を満たせば最大100万円の補助を受けられるほか、さらに柱・梁・桁・土台の51%以上に産地証明がある地域材を使用すれば20万円の上乗せとなり、最大120万円の補助を受けられる。
 木造住宅・建築物の技術基盤強化への補助は今月15日から募集を開始したが、長期優良住宅への補助は現時点で募集時期は未定。

経済産業省
高効率給湯器への補助予算は半減

 経済産業省では、2020年に太陽光発電システム導入量を現在の20倍にする目標を掲げ、住宅用太陽光発電については引き続きシステムの導入に対して補助を行う。補助額はこれまでと同様、kWあたり7万円になる見込み。
 昨年の事業仕分けでは予算化見送りとなっていたが、再生可能エネルギー全量買取制度の検討とあわせて、システム価格の引き下げを誘導する補完的・暫定的な普及促進策として復活。予算規模は401億円で、補正予算を含む前年度予算より20億円ほどの減額となっている。
 断熱部材と省エネ給湯・照明等で構成する先導的な高効率エネルギーシステムや、潜熱回収型の高効率給湯器など省エネ効果に優れた設備の導入に補助を行う住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業も継続実施となり、137億円を計上。昨年、世界に先駆けて本格販売となった家庭用燃料電池についても68億円の予算を計上し、引き続き導入に対して補助を実施する。
 ただ、補正予算を含む前年度予算と比べると、ヒートポンプなど先導的システムへの割当分は40億円の増額だが、高効率給湯器等への割当分は87億円とほぼ半減。

税制改正
贈与税非課税枠を1,500万円に

20100325_01_02.jpg 税制改正では、65歳以上の親からの贈与資金を対象とする相続時精算課税制度で、65歳未満の親からの贈与も対象とする特例措置を平成23年12月31日まで延長するとともに、新築・増改築以外に省エネ・耐震・バリアフリー改修も適用対象とする。ただし、特別控除の1000万円上乗せ特例は昨年末で廃止。
 また、新築・増改築のために両親からもらった資金にかかる贈与税の非課税枠を、平成23年12月31日まで現行の500万円から平成22年は1500万円、23年は1000万円に拡大。省エネ・耐震・バリアフリー改修も適用対象とする。
 このほか、固定資産税が戸建ての場合、5年間2分の1に軽減され、不動産取得税や登録免許税も優遇される長期優良住宅普及促進税制や、一般の新築戸建住宅で固定資産税が3年間2分の1に減額される特例措置、30万円以上の省エネ改修・バリアフリー改修を行った場合、翌年度の固定資産税を3分の1減額する省エネ改修促進税制とバリアフリー改修促進税制などの適用期限も2~3年間延長となる。


2010年03月25日号から

◆100万円で広く補助してほしい

◆100万円で広く補助してほしい
札幌市 住宅会社 社長

 当社も200万円、100万円の補助金を申請していますが、少々矛盾を感じています。補助金がなくても家を建てられる人たちが200万円を狙い、ゲットします。一方、200万円の補助金があれば建てられる人には補助金がどうしてもわたらないのです。"先導的"にこだわるという考え方もありますが、広く住宅助成という観点から考えると、補助金を100万円に一本化して、受けられる人数を倍にしたほうが効果が上がるし不平等もなくせると思うのです。

◆展即を主催する方も大変?
札幌市 建材メーカー 係長
 今年も昨年と同じ顔ぶれで展即が行われましたが、集客も全般的に良くなかったようです。ブースの数が目に見えて減ったところは通路が広くなって来場者の少なさが目立ったり、あるいはブースの小間が埋まらず穴埋めに必死だった建材問屋もあり、不況の影響が色濃く出ていたようです。小間埋めにあんなに苦労しているのなら、当社も値引き交渉をもっとシビアにしておくべきだったと反省しています。でも、今の状況では「主催する建材問屋も大変だ」と感じました。


2010年03月15日号から

このままでいいのか疑問も・・・

住宅補助金の功罪

 家を建てる人のための補助金だけれど、住宅業界にも向けているように見える補助金制度。集客や受注獲得に使える半面、書類作成や工程管理に一般住宅以上の労力がかかる。また「補助金頼みでは営業力が弱くなる」という不安や、「家がほしい消費者にとって不平等だし、年金や社会保険の負担が増えているのに、1件に200万円も税金が投入されることに後ろめたさを感じる消費者も出てきた」という声も上がっている。補助金投入3年度目を前に、「補助金制度の現状と課題」をまとめた。

功績は大きい

 住宅会社が補助金への注目度を高めていったのは、一昨年に始まった超長期住宅先導的モデル事業(現長期優良住宅先導事業)がきっかけ。
 "200万円"という補助金のインパクトは大きく、受注に結びつくのはもちろん、地方を中心に集客でも効果があったという住宅会社は多い。

が膨大な手間と工程管理
他の仕事ができない

20100315_01_01.jpg しかし、補助金をもらうための書類作成や申請などの手間は相当多く、営業やアフターなど本来やるべき仕事ができないといった声があがるようになってきた。
 国では長期優良住宅の認定申請図書の簡素化を図ることを目的に、法律施行規則の一部改正を実施予定。申請図書の一部に確認申請などの書類を流用できるようにするとともに、2階建て以下の在来木造は壁量計算書などの計算過程を省略可能にする。
 これにより、多少の負担軽減につながると歓迎の声がある一方、もう一歩踏み込んでほしいという声も強い。この2年間北方型住宅ECOに取り組んだ住宅会社は「認定申請に出す図面や計算書などは、ほとんど技術的審査で提出した書類と同じ。いくら認定申請の書類を減らしたとしても、技術的審査の書類を減らさないと意味はない」と言う。
 また、年度内事業の場合、着工・完成時期が左右されることも、住宅会社が頭を悩ますところ。仕事量の平準化ができなかったり、資金繰りに影響が出たりするからだ
 補助金で受注が取れたとしても、それに振り回されてしまう、仕事のある時期とない時期の差が大きいなどの状態はもっとも深い悩みになっている。

営業力低下が心配
補助金頼みに不安の声も

20100315_01_02.jpg 補助金はユーザーにとって大きな魅力で、受注・集客効果もある。しかし、問題は補助金がなくなった後。補助金に頼りすぎてしまい、知らず知らずのうちに自社の商品力・企画力・営業力を落としているのではないかという不安の声が出始めている。
 「補助金がなくなった時に果たしてユーザーは当社を選んでくれるのか。実際に北方型ECOの割当分は決まったと話したら、他社に流れたユーザーもいる」と言う。
 補助金の要件に縛られてしまうと希望通りのプランが実現できないために、補助金を断ったユーザーもいる。

有効な税金の使い方は?
地域水準クリア型も

 住宅業界への支援、住宅取得者への支援が行われるべきである、という点については、家電や自動車と比較しても間違いないところだ。そうすると、もっと使いやすい制度に変えることはできないか、ということになる。
 第1に提案採択型で、全国からの提案を一括して審査する形式を改め、要求水準を場合によっては地域ごとに定めてそのクリアを条件にする方法がある。
 これはエコポイント型だ。ただしエコポイントより高いレベルのクリアを条件とする。
 第2に住宅に対する補助ではなく、家を建てた人への補助とする。これはいわばローン減税型だ。こうすることで審査や申請などのやりとりを軽減することができる。
 もちろんほかにも方法はあるはず。せっかくの補助を「有効に使う方法」を考えるべきではないか。


2010年03月15日号から

高性能住宅Q&A 第728回

床下あると暖房費増える?

Q・・・気になり出したことがあります。基礎断熱した床下に、温水暖房配管を被覆なしで露出させていますが、こうすると暖房費が増えるのではないでしょうか?

A・・・北海道内では、基礎断熱した床下のコンクリート温度を保つことで夏型結露・カビを防ぐ方法として、温水暖房配管を被覆なしで床下に露出させるケースがあります。保温被覆材がないので配管からの放熱が期待できるワケですが、ラジエータ状に放熱を促進するものではありません。もともとその程度の放熱量でいいという考え方にたっています。ですから、床下暖房とは違います。
 床下はそれなりの気積があります。仮に高さ50cm、建坪60m2としたら、30m3の気積になります。
 床下のほか、天井ふところをなくして2階床をさらし天井とし、さらに三角屋根の小屋裏も利用したとしたら、床断熱、天井断熱、天井ふところのある住宅と比べ、室内はどのくらい広くなるでしょうか。
 延床面積に変わりがない天井高1・4m以下でも、部屋であることに変わりはありません。暖房空間内であれば暖房費もかかる計算になります。つまり、暖房空間は床面積ではなく室内の容積で見る必要があります。
 先の例で床下50cm、天井ふところ30cm、小屋裏5寸勾配として、その合計はおよそ90m3。これは天井高2・4mの部屋に換算すると38m2分に相当します。つまり、延床面積は総2階の120m2でも、実は160m2近い大きな家なのです。
 90m3の内訳を見てみると、約半分が小屋裏です。

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2010年03月15日号から

エコポイントを付加断熱に交換できるか?

「追加工事」なら可能だが線引き不明確

 今月8日から住宅版エコポイントの発行・交換申請が始まったが、ポイントの即時交換は付加断熱工事も対象になるのかどうかで混乱が起こっている。本紙の取材に対し国土交通省住宅局住宅生産課では、最初から付加断熱で新築・リフォームを計画していたのであれば対象にならないが、当初の計画にはなく、追加工事として行うのであれば対象になるとしたが、線引きは不明確で、住宅会社は慎重に対応する必要がある。
 エコポイントの発行は、戸建て新築であればトップランナー基準または次世代省エネ基準(木造のみ)をクリア、リフォームであれば床・外壁・天井・窓の各部位を次世代省エネ基準相当に改修することが条件。ポイントはあらかじめ登録された環境配慮型製品や商品券、プリペイドカードなどに交換できるほか、即時交換として追加的に行う工事の代金に充てることも可能だ。
 即時交換可能な例としては、外構・造園工事やキッチン、浴室のグレードアップ・改修などが挙げられるが、付加断熱工事も対象になるかどうかで混乱が起こっている。国交省が設置した相談窓口では対象になると答えたケースもあれば、対象にならないと答えたケースもある、ことなどが原因のようだ。

最初から付加断熱で計画していたら対象外

 即時交換はポイントの発行対象となった工事費用に充てることができないため、最初から付加断熱を前提に条件をクリアする仕様であれば、即時交換はできない。
 また、付加断熱なしで条件をクリアする場合、得られるポイントを即時交換で付加断熱工事の代金に充てることができるのかどうかとなると、 国交省住宅局住宅生産課では「ポイントの即時交換は追加的に行う工事を対象としているので、例え付加断熱なしで条件をクリアしていたとしても、最初から付加断熱を行う計画だったのであれば対象にはならない。リフォームでは工事の途中で断熱性能をグレードアップしたくなって、付加断熱を追加工事として発注するのであれば即時交換の対象となる」としている。
 つまり最初から付加断熱を計画していたのなら対象外、後から追加工事として施工することになったのであれば対象になる。
 そうなると、新築で後から付加断熱を行うのは、現実的な話ではないし、追加的工事として認められるかどうかもわからない。リフォームではまったく考えられないとは言えないが、国交省住宅生産課では「即時交換で本当に後から追加した工事なのかどうかまでは細かく調べないが、実際にそんなケースが本当にあるのか」と言う。
 このように付加断熱工事に対する即時交換の可否は、非常にわかりづらく、不透明な部分もある。慎重な対応が必要といえるだろう。

テラス窓でも混乱

 付加断熱工事の即時交換以外にも混乱が起こっていたのが、テラス窓・掃き出し窓の扱い。
 「引き戸はエコポイント対象外だが、人が出入りできるテラス窓や掃き出し窓はどうなるのかについて相談窓口に問い合わせたところ、引き戸とみなされるので対象にはならないとの回答だった。しかし、窓メーカーはエコポイント対象商品(予定)としてテラス窓や掃き出し窓の写真をホームページやパンフレットに載せている。どうなっているのか」とは、ある住宅会社の声。
 この件についても国交省住宅生産課に取材したところ、「エコポイント対象商品として認められたものであれば、テラス窓や掃き出し窓も対象になる」との回答だった。
 本紙でも相談窓口に何度か質問しているが、出るのはいつも若い女性。どこかのコールセンターの契約・派遣社員だと思うが、とても住宅関係の専門知識を持って対応しているようには感じられない。
 無用な混乱を生まないために、窓口の教育などの改善を求めたい。


2010年03月15日号から

◆昼も雪に埋もれた営業車

◆昼も雪に埋もれた営業車
札幌市 工務店 社長

 先日、出先で昼飯を食べようと、たまたま本州系大手ハウスメーカーの営業所前を通りかかりました。すると驚いたことに、敷地内には雪に埋もれたままの社名入り営業車が何台も止まっていました。まるで営業マンが何も仕事していないみたい。「朝出勤したら、営業車をきれいな状態にしておくのが常識では?」と思いましたが、いったいどうしたんでしょうねぇ。さすがにあれではまずいんじゃないかと、他人事ながら心配になりました。

◆訪販業者と差別化したい
札幌市 リフォーム会社 社長

 当社では、お客さまへのしつこい営業はしていませんし、飛び込み訪問もいっさいありません。その代わり消費者向け無料セミナーの実施やショールームの充実など、お客さまに来ていただくことで商談のチャンスを増やす営業方針です。理想は、お客さまから「○○社にお願いしたい」と言っていただけるような仕組み作り。そのために専門知識や確かな技術でお客さまに信頼される会社になることが大切で、訪販との差別化につながると思います。


2010年03月05日号から

住宅コスト1/10に この夏にも実証住宅

赤平市・植松電機

 宇宙開発の技術を使って住まいのコストを10分の1にするプロジェクトを北空知・赤平市の(株)植松電機が進めている。同社のARCプロジェクトの一環だ。基礎研究は終わり、次の段階として夏に実験住宅を建設、実用化に向けて大きな一歩を踏み出す。

宇宙技術を家づくりへ

20100305_01_01.jpg 同社は大学の研究者と共に宇宙開発に乗り出し、これまでの常識を覆す低予算でCAMUI(カムイ)ロケットの打ち上げに成功し、全国から注目を浴びている。今進めているARCプロジェクトは家だけでなく、街作りや人材づくりも同時並行で行って北海道や日本を良くしていこうという壮大な構想だ。プロジェクトの中心的存在である同社の植松努専務に取材した。
 住宅については分野別の基礎研究がほぼ終わり、コストを10分の1にするメドがほぼついたという。今年夏に基礎研究内容をすべて盛り込んだ実験住宅の1モジュールを建設し、事務所として実際に使いながら検証する。来年中に実験住宅を完成させ、事業化のメドをつけたい考えだ。
 「当社で住宅を施工する、販売するというところまで考えていない」と言い、事業化にあたっては住宅業界との共同開発を希望している。「北海道の多分野の企業が協力し、家電の領域まで踏み込んで開発することで、住宅に圧倒的な優位性が出てくる。新たな輸出産業にもなる」と植松氏は話している。
(写真:「住まいのコストを10分の1にするメドがほぼついた」と語る植松努専務)

50cmの断熱層。窓は新開発の真空

20100305_01_02.jpg 10分の1にするカギは、運べる大きさに分割したユニット化。製造・建築コストを低減し、維持管理が容易で建て直さなくても良い構造にすること。もう1点は、熱の最大有効利用。排熱回収などの手法を徹底することで住宅から排出されるエネルギーをゼロに近づけることにある。
 ユニット化に関しては、構造躯体と内装を分離して工場で製造し、現地でビス止めして組み立てる。ヒントになったのは大型船のブロック建造法。内装を先に仕上げ、船体は小さなブロックに分けて後で組み立てている。
 躯体と内装空間の間に50~60cmの空気層を設け、ライフラインの収納場所として活用、配管や配線の維持管理がしやすい構造にする。しかも分厚い空気層が断熱材として機能する。開口部は新開発の真空断熱ガラスで断熱性能をアップする。年に1回居住者が自分で真空度をメンテナンスする。ポンプなどで空気を抜けば真空のメンテナンスができる。これまでの宇宙開発研究から出てきたアイディアだ。
 空気層断熱は昨年夏建設した研修室など3棟の鉄骨造建物にさっそく採用した。H形鋼の柱の間にできる空間は断熱材を入れていないが、取材に訪れた2月下旬、深夜電力で土間床に蓄熱する電気床暖房は最弱にセットされていたにもかかわらず、室温は17℃以上あった。現在は、室内の温度変化などデータを採取している。
(写真:ARCプロジェクトで研修スペースとして使用している建物は実際に空気層断熱を採用し、開口部が出窓のように見えている)

20100305_01_03.jpg その次のステップとして考えているのが家電と住宅の融合だ。たとえば家電で一番電力を消費しているのは冷蔵庫だ。日本では住宅スペースが狭く、断熱厚を薄くすることが求められるからだ。そこで、分厚い空気層で包んだ冷蔵庫を造作し、建物と一体化する。故障する可能性のある冷却ユニットは、交換容易な構造とする。
さらに冷蔵庫の排熱で衣服を乾燥させたり、エアコンや換気の排熱を給湯に活用するなど、家から排出される熱をできるだけ回収できる仕組みを考えている。これは人工衛星で省エネルギー化のために実践している技術で、それを家庭用に応用しようとしている。
 最後のステップとして、家庭で使う電気の直流化を挙げた。LED電球や液晶テレビも直流で動くし、最近の換気システムは省電力化のために直流モーターを採用している。一方で家庭用電源は交流のためこれらの機器を使うために交流から直流に変換する装置が機器内に必要で、それがエネルギーロスとなっている。また、太陽光パネルが発電するのは直流で、それをわざわざ交流に変換している。直流化によって変換の無駄がなくなり、トータルの消費電力が3割近く減り、エネルギー消費の少ないコンパクトな家が完成する。
(写真:同社敷地内には世界に数ヵ所しかない無重力実験装置などが並ぶ)

低コスト化で人材呼び込め

「決して奇跡的な新技術を使っているわけではないが、既にある技術を組み合わせて住宅コスト、食のコスト、学ぶコストが大幅に下がれば従業員の生活コストを引き下げることができる。また、これらによって産業が活性化すれば、普通の注文住宅の着工も増える。その結果、生活が豊かになる」と植松氏は言う。
 同社はもともと建築物の解体などの際に金属を選り分ける特殊マグネットの開発・製造を行っており、市場で圧倒的なシェアを持つ。他社にはできない高付加価値な仕事をベースに、もっと大きなことをやってのけようとしている。
 「田舎は土地が余っている。だから省スペース化の必要はない。田舎こそ、住のコストを引き下げて人材を都市から呼び込むべきだ」植松氏の挑戦はこれから正念場だ。


2010年03月05日号から

◆節水はいいけれど...

◆節水はいいけれど...
道東 リフォーム店 店長
 各社の最新型トイレのセールスポイントは、洗浄水を大幅に節水できることですが少し心配なこともあります。それは、洗浄後に便器ではなくその先の配管などに汚物が付着しやすくならないか、ということ。水量が減ればトラップ部分などに流れ残って付着するかもしれません。配管詰まりの原因になって後から大変なことにならないか心配です。メーカーも「便器から出て行った汚物がどうなろうが関係ない」とまでは思ってないでしょうが。


20100305_02_01.jpg◆家は奥様が決める時代
札幌市 リフォーム会社 社長
 今までの経験を言うと、ほぼ100%の確率で、リフォーム工事をするかしないか、どのようにするかを決めるのはご主人ではなく奥様です。少なくとも9割は奥様に決定権があると思います。ご主人が最初に応対してくれた物件で、ご主人がこうしたい、と意思表示をしてきたとしても、それが奥様の意向に沿っていない場合は簡単にひっくり返ります。奥様が話し易いように、奥様が納得できるように、接客も提案も工夫しないと受注確率は減るでしょうね。


◆何か矛盾してる?
旭川市 工務店 社長
 話題の住宅版エコポイントはリフォームの場合、使用する断熱材がノンフロン製品に限られていたので、新築でも同じかと思って相談窓口に確認したら「新築に使う断熱材はノンフロンに限ると決めていないので、フロン製品も使うことは可能です」とのこと。せっかく"エコ住宅"という名称を付けているのだから、新築もノンフロン製品に限定すればいいのに、何か矛盾してるような気がします。断熱材の多くはノンフロンに切り替わっているとはいえ、変な話ですね。


2010年03月05日号から

主婦の経験が営業に生きる/ウーマンズ・アイ Vol.9

音更・(株)とかち工房 武藤ふみえさん

20100305_03_01.jpg 「子どもの頃、家の間取りを描くのが好きでしたが、まさか仕事になるとは」と笑う。専業主婦として家庭に入り、子どもも生まれて幸せな生活の中、地元新聞の女性通信員に応募。そして住宅会社が主催し、消費者が家具を製作したり2×4パネルを使った小屋を建てる「家づくり教室」を取材することになり、出会ったのが後にとかち工房を創業する後藤薫さんだった。


 「自分1人でモデルハウスを見に行ったりするのが好きで、家づくりにかかわりたいという気持ちは心のどこかにあったのだと思います」と武藤さん。通信員の仕事が終了後、ある住宅会社にパートとして採用され、モデルハウス受付をしながら次第にインテリアコーディネートなども行うようになった。
 とかち工房に縁あって入社し、一からの出発の中で、これまで経験したことのない営業職を志した。「自分が会社に対して何ができるかを考えて決めました。自分が建てたいと思う家だから営業もしやすい」という。
 本気で営業に取り組むと、より専門性の高い仕事がしたくなる。そこで武藤さんは宅建資格を働きながら取得した。現在はお客さまとの出会いからプラン打ち合わせ、引き渡し後のアフターまでこなしている。

自分の家を建てるつもりで

20100305_03_02.jpg 武藤さんは、昨年だけで5軒の現場を担当した。忙しい日々の中で、どういったことを心がけているのだろうか。「お客さまの想いや気持ちを十分に聞き出して汲み取ること。『人の話を聞く』という取材経験が生きていると思います。1軒1軒、自分が建てるつもりで取り組んでいます。」
 主婦としての経験も大いに役立っている。営業や打ち合わせの相手は主婦ということも多い。ついつい盛り上がって長話になることも。仕事と関係ない世間話のようでいて、重要だという。
 「細かな話の中に、プランニングのヒントが見つかることもあります。それに主婦業は家事が繰り返しの仕事になりがち。その中で楽しみを見つけるために自分たちの働く場所であるキッチンのレイアウトなど細かなことにこだわりが出てくるのです。そんな主婦の気持ちに共感し、要望にできるだけ応えることができるのも、専業主婦や子育て、共働きといったいろいろな経験があるからだと思います」と武藤さん。

手描きスケッチにも取り組む

20100305_03_03.jpg 現場は毎週通っている。図面だけではわからない、実際の空間構成などを見ながら、ニッチの位置を考え直したり、細かな部分まで目を光らせる。職場で女性だから働きにくい、と感じたことがないのも幸いしている。
 今後は、プレゼンテーションの技術に磨きをかけ、お客さまを感動させるような営業に取り組む。とかち工房では、造作家具に力を入れているが、お客さまの要望を聞いて打ち合わせの席上で後藤社長がペンを走らせてスケッチを描くと、お客さまもたいへん喜ぶという。武藤さんも見よう見まねで描き始め、もっとうまくできるようになりたいと考えている。
 
(株)とかち工房ホームページ


2010年03月05日号から

高水準の省エネ推進 パッシブハウス・ジャパン設立

20100305_04_01.jpg ドイツ発祥の省エネ住宅・パッシブハウスの普及を日本・アジアで推進するパッシブハウス・ジャパン(森みわ代表理事、キーアーキテクツ代表)がこのほど設立され、本格的に活動を開始した。
 パッシブハウスは1991年にドイツのパッシブハウス研究所で開発された省エネ住宅。年間の一次エネルギー消費量基準は120kWh/m2と、ドイツの省エネ義務基準より大幅な省エネを実現しながらも、快適性は決して犠牲にしないことから、ヨーロッパはもとより、アメリカや日本、韓国などでも注目され、昨年には神奈川県鎌倉市で日本初のパッシブハウスが建設された。
 パッシブハウス・ジャパンでは、ドイツ・パッシブハウス研究所の日本における正式な窓口として世界各国の研究機関と連携し、省エネ住宅に関する最先端の技術情報の発信や、建物の熱損失などを計算するパッシブハウス用のソフト・PHPPの改良、日本の気候風土に適した省エネ基準の確立などを計画。
 具体的には、パッシブハウスの認定、パッシブハウス入門セミナーやPHPPを用いた省エネ設計セミナー、設計コンサルタント、省エネ建築診断士資格試験、EUの第3者機関による住設建材の性能値取得の手伝いなど建材設備機器メーカーのサポートを行う。
 現在、工務店や設計事務所、建材設備機器メーカーなどを対象とした賛助会員も募集中で、会員になると様々な特典が受けられる。

日本向け仕様を追求

 森代表理事は「建物からの"熱損失"を厳しく制限するパッシブハウス基準は、"究極の高断熱高気密住宅"と位置づけられてしまいがち。それは決して間違いではありませんが、ひたすら省エネ性能のみを追求した概念ではなく、本来は省エネ住宅の居住性と経済性を同時に成立させることがパッシブハウス基準の目的。EUではパッシブハウスの性能値とその評価方法が、建築のカーボンニュートラル化のための重要な一歩として各国で採用される見通しです。パッシブハウス生みの親であるファイスト博士もパッシブハウスの日本への適用に大変意欲的であり、私達パッシブハウス・ジャパンの掲げる、日本の風土と文化に適したパッシブハウス基準の検証に心から賛同してくださいました」と話している。
 入会や問い合わせはホームページを参照のこと。


2010年03月03日

3月13、14日 札幌 「ゆうらく」の現場説明会

 換気排熱を利用して雪を融かすロードヒーティング「ゆうらく(旧とけまるくん)」の現場見学会が3月13日(土曜)、14日(日曜)の両日、札幌市手稲区の明日風のまちで開かれる。
 燃料を使わないという考え方は画期的だが、ほんとうに融けるの?という疑問や、実際の融け具合を確かめたいという声を受けて開かれるもので、当日は仕組みの説明や機器類の見学のほか、これまで20棟以上に採用している住宅会社から施工やお客さまの声を紹介する。


 会場は札幌市手稲区明日風5丁目、アシスト企画の新しいモデルハウス「E―ZO(イーゾ)」。時間は両日とも午前10時から午後3時まで。
 問い合わせは日本住環境札幌支店(電話011・222・6330)。


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