新聞記事

2009年12月15日号から

ドイツの省エネ政策

 NPO外断熱推進会議北海道支部では、去る11月27日、パッシブハウスコンサルタントであるクーラー・アンドレア氏を講師に招き、札幌市内で「エネルギーパスとパッシブハウス」をテーマとしたセミナーを開催。ヨーロッパで導入・義務化が進んでいるエネルギーパス制度と、ドイツ発祥のパッシブハウスについて紹介した。

エネルギーパス 燃費表示を義務化

20091215_03_01.jpg クーラー氏はエネルギーパスについて「建物に必要なエネルギー量に関する情報を表示したもの。2003年1月にEUが施行した『建築物のエネルギー性能改善に関わる欧州指令(EPBD)』をきっかけに、EU全27カ国で制度化が進められ、ドイツでは昨年7月から義務化された。ドイツエネルギー庁の認定を受けた省エネコンサルタントが建物の調査を行い、1年間で必要なエネルギー量などを誰でもわかるように図で示した4枚つづりの書類で発行する。さらに窓を性能の高い製品に交換すればどのくらい省エネ効果があるかなど、経済効果の高い省エネ改修向けのアドバイスを記載した書類も添付する」と説明。
 エネルギーパス導入後の効果については「ユーザーが建物の省エネ性を大ざっぱに判断できるのがメリット。特に既存の建物の省エネ改修は地球温暖化防止に一番効果があるので、省エネ改修向けのアドバイスは、例えば外壁の再塗装で足場をかけるついでに断熱材の補強や窓の交換なども一緒に行うなど、費用対効果の高い改修を普及させるきっかけになる」と話した。

パッシブハウス 無暖房に迫る断熱

20091215_03_02.jpg パッシブハウスについては「快適・健康・高品質を兼ね備えた経済性の高い省エネ住宅で、1.必要となる年間暖冷房エネルギー量が15kWh/m2 2.気密性能が50Pa時の換気回数で0・6回/時(相当隙間面積で0・2cm2/m2程度) 3.年間一次エネルギー消費量が120kWh/m2というこれまでの基準に、今春から 4.暖房負荷が10W/m2以下 5.夏期の室温が25℃プラス10%以内という2つの基準が追加された。ドイツのパッシブハウス研究所とその認定機関が認定を行っている」と紹介。
 また、「世界にはキャスビーやリードという住宅基準もあるが、それらの基準はサステナビリティを評価するのに対し、パッシブハウスでは省エネ性を評価する。いろんな建物・工法で建設可能だが、高断熱・高気密・熱交換換気・高性能開口部・熱橋対策が重要な要素となっており、特に断熱・気密層の連続や熱橋は厳密にチェックされる。

20091215_03_03.jpg このような省エネ住宅を設計する際の優先順位は、1番目に断熱性能の向上、2番目に効率のよい設備の導入、3番目に新エネルギーの導入の検討となる。断熱性能が低い建物にいくら効率がよい設備や新エネ機器を付けても効果は薄いからだ」と、高断熱化を図ったうえで高効率設備や新エネ設備を導入することの必要性を強調した。
 このほか、日本でのパッシブハウス普及に関しては「普及には経済性が不可欠だが、日本でも快適な暮らしに対するユーザーの要求が増えていること、長期優良住宅など耐久性に優れた住宅がテーマとなりつつあること、住宅でのエネルギー消費量が増え続けていること、省エネ設備機器の開発に対して高い開発力を持つ日本メーカーの技術貢献が期待できることなどを考えると、日本でもパッシブハウスを建設する意義は十分ある」と述べた。


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