新聞記事

2009年11月15日号から

木造3階建耐震実験で長期優良住宅が倒壊

「想定通り」と言うが・・・

 長期優良住宅の構造安全性向上を目的に、去る10月27日に兵庫耐震工学研究センターで行われた実大震動台実験で、長期優良住宅で義務付けられた耐震等級2(倒壊等防止。以下略)相当の試験体が倒壊、別の試験体は軸組接合部の強度が倒壊した試験体より弱いにもかかわらず倒壊を免れたことが大きな波紋となって広がっている。住宅会社からは「本当に耐震等級2は安全なのか?」と心配する声も挙がっている。
 実施したのは(独)防災科学技術研究所と木を活かす建築推進協議会。実験を行った2棟の試験体は、延床面積約38坪で、平面は4・55m×10・92mと、間口が狭い長方形。試験体1は性能表示の耐震等級2と同等の設計、試験体2は耐力壁こそ耐震等級2を満たすが、軸組接合部は試験体1より弱い設計となっていた。
 実験ではこの2つの試験体を同時に震動台に並べ、建築基準法で想定している地震の約1・8倍の人工地震波で20秒間揺らしたところ、耐震等級2である試験体1は、柱頭柱脚の引き抜きはなかったが、先に耐力壁が破壊されて変形し倒壊、試験体2は実験開始後約10秒で柱脚部が引き抜けたが、最終的に倒壊には至らなかった。

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「これで命を守れるのか」という疑問も

 実験を行った関係者の1人は「試験体1の倒壊は想定していなかったが、軸組接合部より先に耐力壁が破壊されたのは想定通り。試験体2も倒壊こそしなかったが、実験開始後10秒で柱脚部が破壊されて引き抜きが起こるという、倒壊と同等の損傷を受けていた。試験体2の柱脚は土台から外れた後も鉄骨の架台の上に乗っていたために倒壊しなかっただけで、実際の住宅であれば基礎の高さの分だけ柱脚部が落下するので倒壊に至るだろう」と話す。
 ただ、住宅会社にとっては"想定通り"では済まないようだ。
 今年長期優良住宅を3棟建設している道東の住宅会社は「木構造のことを理解しないお役人が、基礎と土台・柱をガッチリつなぐよう基準で定めたことで、逆に地震の被害が甚大なものになりかねないという事実が、今回の実験で解明したのでは」と言い、道央の設計事務所は「倒壊しないほうがいいのは当たり前。住む人の命を守れるのはどちらの建物なのか、考えなくてもわかるはず」と話している。
 長期優良住宅を手がけている住宅会社にとって耐震等級2の住宅が倒壊し、一般的な住宅は倒壊を免れたという事実が衝撃的であったことは間違いない。


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