新聞記事

2009年10月25日号から

「こう配1/50以上」に不安の声

 今年7月に全保険法人統一となった瑕疵保険の設計施工基準で、フラットルーフ(陸屋根)は50分の1以上のこう配を設けることになったが、道東のある住宅会社は「50分の1こう配では凍った雪が軒先にせり出し、落下した際に外装材や窓を壊す危険性がある」と指摘。国土交通省では、こう配が50分の1未満でも雨漏りが防げる仕様であれば、同基準の第3条認定を取ることで保険が適用になるというが、その場合、住宅会社にとっては負担がまた一つ増えることになりそうだ。
 
道内の現状・道東など標準で1/100
20091025_01_01.jpg 瑕疵保険の設計・施工基準は、当初各保険法人ごとに定められていたが、今年7月に国交省が基準を統一。これにともない、北海道だけで認められていた木造のフラットルーフも全国で認められるようになり、こう配は50分の1以上、防水材は金属板(鋼板)ふきやアスファルト防水など6種類の中から採用することなどが規定された。
 ただ、これまで道内では道立北方建築総合研究所監修、北海道建築指導センター発行のパンフレット『戸建て住宅の屋根の雪処理計画』や、同じく同センターが発行している『北方型住宅技術解説書』の中で、こう配を100分の1~100分の5としたフラットルーフの仕様を掲載。気象条件や断熱・気密レベルにもよるが、道内では50分の1こう配のフラットルーフだと、屋根上の雪が軒先にせり出してくることがあるため、100分の1こう配を標準とする住宅会社もある。
20091025_01_02.jpg 今回、軒先のせり出しによる危険性を指摘した道東の住宅会社も、フラットルーフは100分の1こう配が標準。「3月頃の日射が強い日には、屋根に載った雪の表面が融け、融雪水が屋根面に流れるが、夜になって冷え込むとその融雪水が凍るため、50分の1こう配だと軒先のほうへ凍った雪が滑ってくる。なぜ100分の1こう配ではダメなのか」と話す。
 せり出しを防ぐために雪止めを付けるという手もあるが、逆に氷堤を作る原因となり、スガモリのリスクが高くなる可能性もある。
 国交省住宅局住宅生産課住宅瑕疵担保対策室では、設計施工基準で定めたフラットルーフのこう配について「小屋組木材の乾燥収縮が起こっても、屋根面が雨漏りの原因となる逆こう配にならないよう50分の1以上とした。ただ、絶対に50分の1未満では施工できないということではない。雨漏りのリスクが少ない仕様だと保険法人が認めれば、基準の第3条の適用により施工できる。その場合は、雨漏りを防ぐためにどんな工夫をするのかを示してもらうことになる」としている。
 瑕疵保険の設計施工基準で屋根にかかわる部分は、雨漏りを防ぐことを目的としてるが、道内で問題となるのはスガモリ。国交省は基準に適合しない地域特有の仕様について、保険法人が設計施工基準と同等の性能があると認めれば保険適用を認める基準第3条を適用すればいいというスタンスだが、いちいち雨漏りのリスクがないことを示さなければならないのは住宅会社にとって新たな負担になる可能性もある。基準に載せないまでも、国はどのような仕様であれば50分の1未満のこう配で施工できるのか、例示仕様を示すことも検討すべきだろう。
 
(図2点...屋根たる木に寸法安定性や強度に優れるI型梁を採用した現場。基準の第3条認定申請にあたっては、このように屋根面がたわまない工夫をするか、たわんでもスガモリしない工夫をすることが必要)
 
基準第3条の適用申請・納まり図など提出
 20091025_01_03.jpgそれでは50分の1未満のこう配のフラットルーフで施工するにはどうすればいいのか。
 まずは、雨漏り・スガモリを防ぐため、一つは積雪荷重や小屋組木材の乾燥収縮の影響を受けても屋根面がたわまないようにすること。母屋・束・たる木のピッチや野地板の厚さなどを地域の積雪量に応じて適切に設定するとともに、小屋裏換気と天井面の断熱・気密をしっかり行う。もう一つは屋根面がたわんでも雨漏り・スガモリしないようにすること。例えば改質アスファルト系防水シートなど防水性の高い下葺き材を使い、板金部分と合わせて2重防水構造とする方法や、ハゼを防水性の高い部材で密閉するなど板金部分そのものの水密性を高める方法が考えられる。
 このように雨漏り・スガモリ対策を十分行ったうえで、利用する保険法人に基準第3条の適用を保険加入時に申請することになるが、その際に必要になるものとして、瑕疵保険を扱う住宅保証機構では納まり図や、使用する屋根材・防水材の種類と葺き方を示した書類等を挙げている。これらを検討して個別に判断することになるという。
 また、あらかじめ屋根板金業者等が50分の1未満のこう配で施工できるマニュアルを用意しているのであれば、そのマニュアルを申請時に添付すればいい。
 なお、瑕疵保険の基準が統一される前に道内でフラットルーフや無落雪屋根の設計施工基準として用いられてきた道建築指導センター発行の『戸建て住宅の屋根の雪処理計画』は、今後改訂される予定だ。


(写真...道建築指導センター発行の『戸建て住宅の屋根の雪処理計画』(上)と『北方型住宅技術解説書』(下)に掲載されているフラットルーフの仕様。いずれも1/100こう配での施工を認めている)


試読・購読のお申し込みはこちら 価値のある3,150円


関連記事

powered by weblio


内容別

月別

新着記事