新聞記事

2009年04月15日号から

キーワードは即効性・若年層・接点増やす

 集客・見込み・成約ともに大きく減少し、住宅不況が止まらない。道内住宅着工は今年に入っても大きく落ち込み、1~2月合計で前年比4割減。集客できる商品を求めてフランチャイズ(FC)やボランタリーチェーン(VC)への加入を考える住宅会社も出てきているが、数あるFC・VCの中で、自社に適しているのはどこなのかを判断するのは簡単ではない。今回はFC・VCを内容によってタイプ別に分類し、代表例をピックアップするとともに、独自の商品開発や営業戦略で厳しい市場に挑んでいる住宅会社を取り上げた。
 
求められるスピード感
 昨年秋の世界的な金融恐慌に端を発した不況の波はユーザーの消費マインドを著しく低下させ、住宅や自動車、家電など国内の主要産業に大きな打撃を与えた。
 そういう現状でユーザーが「買いたい」と思う商品と、その商品をユーザーに売り込むための効果的な宣伝戦略や経営体制を考えられるかが必要になっている。
 しかし、新規商品開発、経営の見直し、営業強化など工務店が取り組む課題解決には、相応の人的資源や時間が必要。この際、割り切って外部からのサービスや商材購入を積極的に利用することで問題解決のスピードを速める必要があると考える経営トップが増えているのも、時代の変化が急激で速いからだろう。

第1・ノウハウ一式買う
 「今までとは違う客層を開拓したい」と考えたとき、新商品ノウハウ一式を買えば、結果的に時間とカネの節約になる。
 『風家(ふうや)システム』((株)オーパス)は、独自ルートの輸入建材などを使い、女性をターゲットとした企画住宅「風家」を建てるノウハウ一式が手に入る。建材を会員価格で買え、別の企画住宅ノウハウも割安に買え、継続的な情報提供も受けられる。
 『ハグハウス』(ハウジング山地(株))は、子育て世代向けに自然素材を使ったデザイン住宅のノウハウや独自建材を提供する。さらに販促支援として本部で広告展開も行う。昨年始めたばかりだが、道内では既に6割のエリアで加盟店が決まるなど出足は好調だ。
 『カーサキューブ』((株)ナック建築コンサルティング事業本部)は、開口部を極力少なくして立地に左右されずデザイン性を高めた若者向けモダンデザインの企画住宅のノウハウを提供する。道内も既に導入している会社が数社ある。
 これらの商品はFCのような縛りが少なく、「魅力的な商品企画と独自建材さえ使えればそれで差別化できる」「工法はこれまでと変えたくない」という工務店の声にも応えられる。
 
第2・FC組織に加盟
 「注文住宅だけでなく、新たに間口を広げる商品が欲しい」「棟数を増やしたいので商品ノウハウだけでなく売り方の指導もして欲しい」という場合は、営業・経営指導まで含めたFCに加盟する選択肢がある。テリトリー制を敷いてエリア内でFC同士の競合を避ける配慮や、経営指導、共同販促など工務店業務の広い範囲にわたってかかわりを持つ。
 『インターデコハウス』(ハウジング山地)は、ヨーロッパデザインの輸入住宅FC。独自に輸入した豊富な建材が使え、北欧風から南欧風まで多彩なバリエーションが特徴。毎年新商品を発表するほか、オリジナル家具を使ったライフスタイル提案も行う。
 『アイフルホーム』((株)トステム住宅研究所)は25年前からスタートしたFCの老舗。大規模FCのスケールメリットを生かした合理的経営手法の提供や、FC加盟店へのサポート体制の充実を売りにしている。
 変わり種は、『頭のよい子が育つ家』(スペース・オブ・ファイブ(株))。FC方式だがエリア制を敷いていない。「大手ハウスメーカー1社に採用されるよりも、多くの地場工務店に採用される方が『頭のよい子が育つ家』をより多く供給できる」という考えだ。有名私立中学に入学した子どもの家を実際に調査した結果を元に、『頭のよい子が育つ家』を建てるノウハウを提供する。
 
第3・営業・経営コンサル
 「営業が弱いがどうすれば強化できるか」「ムダなコストを見直して住宅価格を下げたい」など、悩み解決を外部の頭脳を借りて行いたい、という場合は住宅建築のコンサルティングサービスを受ける選択肢がある。
 『7億セールスシステム』(ナック建築コンサルティング事業本部)は、社員5人で年間7億円の売上を上げるノウハウ一式を伝授する。人材の研修や経営コンサルティングなど総合的なサービスを受けられる。
 『アキュラシステム』((株)アキュラホーム)は、木造住宅の合理化システムで、施工、資材購入時のムダを省いてコストダウンを図るノウハウのほか、新規商品開発も指導する。両社とも、資材の共同購買システムを持っており、一工務店で購入するよりも割安に建設資材が購入でき、コストダウンに役立つとPRしている。
 『フォーセンスデザイン住宅開発マニュアル』((株)フォーセンス)は、工務店独自のデザイン住宅を開発するためのツール一式とサポートサービス一式を販売する。同社は年間施工数が30~50棟の中堅工務店経営者3名が役員を務めており、実践的なノウハウをまとめているとPRしている。
 いずれのサービスも半年の無料サポート期間があり、その後もサポートを受ける際は月会費を払う。
 
第4・エコ設備・主婦目線
 太陽光発電やヒートポンプなど時流に乗っているエコ設備機器で商品力を強化したい場合、それらの導入支援を行ってくれる企業もある。
 平成11年に設立された『(株)PVソーラーハウス協会』は、全国約150社、道内約20社の工務店などが加盟する組織で、住宅設備面の強化に関する様々なサポートを実施。例えば国による補助金の情報や、ソーラーパネルやヒートポンプを安く買える共同購入、ソーラーパネルの施工研修などを行ってくれる。
 同協会は茨城県の工務店が東京電力と連携してソーラーパネルやヒートポンプなどの普及拡大を図ったのが始まりで、現在は住宅の省エネ・創エネ提案力を強化したい住宅会社がメンバーとなっている。
 入会金は道内企業であれば無料、会費は月1万円。カタログや広告宣伝の負担は免除している。
 また、家づくりの主導権を握っている子育てママ目線で企画や集客を成功させるため、札幌圏の工務店が有力な連携先として見ている企業に、社員全員子育てママという『(株)マミープロ』がある。
 同社は平成18年7月設立の北海道・札幌圏の子育て情報提供ウェブサイト「ママNavi」の運営会社。設立3年にして既に月間アクセス数35万件・ユーザー数2万人、会員数1700人。札幌圏の子育てママを中心にウェブサイトだけでなく、イベント運営・雑誌発行なども行っている。
 工務店のモデルハウスを共同で企画したり、イベント開催と集客、モデルハウス内の催し、「ママNavi」へのバナー広告掲載などの実績がある。
 
独自路線で切り拓く
アシスト企画/社内の若い力活かす
20090415_01_01.jpg 道内の住宅会社の中には、外部の力に頼らず、独自の商品開発や技術によって需要を開拓しているところもある。
 そのうちの1社が、FCなどを活用するのではなく、あえて社内の力を活かして商品開発に取り組む札幌の(株)アシスト企画(岡本勝社長)。
 同社では若手社員の感性を商品企画に活かすことで若年層のニーズに沿った新商品開発を行うため、設計・施工・営業の各部門から若手3名を選出。2チームで健康住宅・和風住宅の商品企画化を目指し、自然素材採用を全面に打ち出した健幸家族の家『Pure(ピュア)』と、和のテイストや安らぎの空間を現代的にアレンジした現代和装の家『庵(いおり)』が具体化、4月末にはそれぞれモデルハウスが完成する予定だ。
(写真...若手社員の感性を活かしたアシスト企画の新商品「庵(いおり)」のイメージパース)
 
ジョイフル北海道/わかりやすい商品力が武器
20090415_01_02.jpg コストパフォーマンスの高さと積極的な広告宣伝で若年層を中心に札幌圏で受注を伸ばしているのが(株)ジョイフル北海道(本社旭川市、落合博志社長)。
 同社では『幻の家』シリーズで当初から1千万円を切る本体価格や金物工法、外張り断熱、オール電化などを武器に受注を伸ばし、受注の約8割を20代後半から30代半ばで占めている。
 広告宣伝費は不況で多くの企業が削っている中でも昨年より多くかけており、特に1年前から始めたテレビCMはネームバリューの向上に成果を挙げているという。
 これまでほぼ100%企画型住宅だったが、今年はデザイン性を高めた商品やフリープランの商品も計画。年間で旭川と札幌合わせて200棟、札幌単独では前年比20棟上積みとなる140棟の受注を目標としている。
(写真...外張り断熱・オール電化など時代のトレンドを先取りしつつ低価格としたジョイフル北海道の「幻の家」)
 
ダイアハウジング/真似できないセンスを提案
20090415_01_03.jpg デザイン性を追求した自社ブランド『d-concept』(ディーコンセプト)を立ち上げ、安定して受注を確保している住宅会社が(株)ダイアハウジング(札幌市、松木直之社長)。
 1.子供がいない 2.夫婦共働きで所得に余裕があるという競合が少ない若年層をターゲットに、単なるシンプルモダンではなく、誰にも真似のできない"デザインセンス"を活かした大開口や間接照明による光の演出を提案。数は多くないが、確実に存在する客層を取り込み安定受注につなげている。
(写真...大開口部と間接照明を活かしたデザインを提案するダイアハウジングの「d-concept」)
 
混迷の時代に活路探す工務店経営者たち
注文住宅のほかにFC、VCから企画商品などを購入して成功/T工務店 社長
 「工務店経営者の役目は倒産しないこと。そのために自社オリジナルの注文住宅だけで不十分ならと、割り切ってFCなどを利用した。FCやVCの役割はさまざまだと思うが、導入の目的はお客さまとの接点を増やすということに尽きると思う。時代の変化が激しいので、独善に陥らないようにするためにも、外部商品は役に立つ」
 
これまでFCに入ったことがないが、いまはすべてを見直す/O工務店 社長
 「これまで年間20棟以上の物件をやってきたが、ここ2~3年、10棟台に落ちている。このままではいけないと思っているが、正直なところどうしていいのかわからない。同業や取引先にも意見を求めている。これまでFCに加盟したことは一度もないが、いまはFC加盟も方法のひとつと思っている」
 
差別化商品をマスメディアに載せずに足で稼ぐ/K建設 社長
 「当社のデザイン提案を、それを望んでいるユーザーに知ってもらう機会さえあれば、受注と受注単価は必ず上向くと確信している。ただし、雑誌広告は掲載料が高いしチラシは昨年失敗した。FCとかの商品による集客ではなく、エンドユーザーに直接お話しする機会、知ってもらう機会をマスメディアの宣伝以外で展開することに全力を投じている」
 
このまま徐々にやめるかもう一度本気で受注を目指すか.../S工務店 社長
 「自分でもいまの20代、30代のユーザーとは共感できないことはわかっているし、営業する上ではマイナスになるので説教がましいことを言ってはいけないことも頭では理解している。このままでは工務店をやめるしかない。その前にもう一度本気になるかどうか、それを決めかねている状態だ」
  
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