新聞記事

2009年02月25日号から

電気熱源はヒーポンが必須

20090225_1_3.jpg 1月末に改正省エネ基準とともに発表された住宅事業建築主の判断の基準、いわゆるトップランナー基準については、一定規模以上の建売住宅会社だけでなく、戸建注文住宅を含むすべての住宅会社を対象とした住宅版省エネ性能ラベリング制度にも用いることを、現在国が検討している。利用は任意だが、中小でも大手と同じ土俵に乗ることが求められる。これまで断熱・気密に熱心に取り組んできた住宅会社はむしろ追い風として活用することもできるはずだ。今回はトップランナー基準をクリアする仕様について検証してみた。
 
(表...トップランナー基準をクリアするための主な断熱・設備仕様 ※いずれも太陽光発電・太陽熱温水器・節湯型機器は使用せず、照明は新築時に設置しないものとし、第3種換気はDCモーター仕様とする)
 
一次エネ消費で評価

 トップランナー基準について簡単に説明すると、暖冷房、給湯、照明、換気を含めた住宅トータルでの一次エネルギー消費量が、国で定めた基準値と比べてどれくらい下回っているかを達成率で評価するもの。一次エネルギーとは石油・石炭・天然ガスなど、家庭で使われる電気や灯油、都市ガスなどに変換される前のエネルギーを指し、単位は熱量を表すGJ(ギガジュール)。1GJ=23万8900となる。
 基準値となる一次エネ消費量は、次世代省エネ基準相当の性能の躯体に一般的な設備を組み合わせた約36坪・2階建ての標準プランと比較して1割少ない値に設定。北海道は道北・道東中心のⅠa地域と道央・道南中心のⅠb地域に分けて設定しているが、いずれも標準プランの設備は、暖房が灯油温水セントラル(室温設定20℃)、給湯が石油瞬間式などとし、Ⅰa地域は124GJ、Ⅰb地域は113GJが基準値になっている。
 この基準値を実際の住宅の一次エネ消費量で割って100をかけた数値が達成率(%)で、100%を超えれば基準をクリア。なお、換気動力は別に見ることとし、セントラル換気や同時給排型壁付けファンを設置する場合は、1.2GJまたは4.9GJを基準値に加算する。
 住宅版省エネ性能ラベリング制度は、この評価方法によって基準をクリアしたことを、ラベルの貼付によって表示できるようにする仕組みだ。

ガス高効率型は有利

20090225_1_1.jpg この一次エネ消費量は、一般の人が簡単に一から計算できるものではない。そこで国では各設備ごとの一次エネ消費量がわかる早見表を用意し、躯体の断熱性能(Q値)に応じて一次エネ消費量と基準達成率がどのくらいかを簡単に算出できるようにする考えだ。
 まだ最終的なものは公表されていないが、年末に社会資本整備審議会省エネルギー判断基準小委員会が公表した案をもとに、どういう組み合わせならⅠa地域の基準値をクリアするのか見ていきたい。
 まず、一般的な電気・ガス・灯油暖房給湯設備と第1種換気・第3種換気ごとに、躯体の断熱性能=Q値を平成4年省エネ基準レベルの1.8W、同11年基準レベルの1.6W、そしてさらにワンランク上の1.4Wとした時の基準達成率を試算してみた。
 結論から言うと、ガス高効率ボイラー(エコジョーズ)による温水暖房・給湯なら、Q値が1.8Wでも換気方式にかかわらず基準値をクリアする。潜熱回収をしない一般的な灯油ボイラーによる温水暖房・給湯は第1種換気ならQ値1.6W以下、第3種換気なら同1.4W以下が必要。
 電気暖房・給湯は電気の生焚きだと厳しく、電気蓄熱暖房器と電気温水器の組み合わせでは、Q値1.4W以下で第1種換気を使っても基準値をクリアできない。最低でもQ値1.4W、換気は第1種とした上で、給湯をヒートポンプとすることになる。

断熱性能は最低でも1.6W以下に

20090225_1_2.jpg 一方、道央・道南中心のⅠb地域はどうかというと、結果としてはⅠa地域と同じ。ただ、冬期の外気温がかなり低いⅠa地域とは異なり、暖房にはヒートポンプ温水暖房も早見表に追加されている。暖房・給湯ともにヒートポンプとすれば、第3種換気ならQ値1.6W以下、第1種換気なら同1.8W以下で基準値をクリアする。
 ただ、住宅版省エネ性能ラベリング制度案では住宅トータルでの一次エネ消費量を評価するとともに、断熱性能については平成11年省エネ基準への適合状況も表示する方向で検討されていることから、最低でもQ値1.6W以下としたうえで、基準値をクリアする暖房・給湯・換気設備を検討する必要がある。
 
(写真上...写真上...潜熱回収型のガス高効率ボイラー・エコジョーズで暖房・給湯を行えば、Q値が新省エネ基準レベル(1.8W)でも換気方式に関係なく基準値をクリア可能、写真下...電気熱源の場合、道内では給湯または暖房・給湯両方にヒートポンプを採用しないと、基準値をクリアするのはかなり厳しい(写真はイメージです))


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