新聞記事

2009年01月15日号から

暖房費のジェットコースター

 08年は急激なエネルギー価格の高騰のあと、反転して急激な下落があり、灯油はピークで8月にリッター135円を記録したあと、暮れには60円台に下落した。北海道や東北といった寒冷地では、住宅で使うエネルギーの半分以上を暖房が占める。こういったエネルギー価格の乱高下になるべく影響されない安定した家計を実現するために、どのような手法が必要になるだろうか。

石油製品乱高下の果てに
090115_1_1.gif 灯油価格は06年からリッター80円前後で推移し、07年の年末に一気に100円前後に上昇。その後さらにピークまで駆け上る。
 灯油がリッター80円になると電気熱源のほうが割安感が出て、オール電化が進んだ。さらに100円になると、「もう灯油暖房の時代は来ない」と考える関係者が多くなっていた。
 住宅のセールストークには「光熱費を○○万円削減」などの文字が躍り、省エネ性能がウリの1つになった。
 ところが昨年8月後半から価格は急落する。12月には60円台まで下がり、今年1月以降、電気料金の値上げが決まっていたこともあり「やっぱり灯油が割安」という話も出てきた。灯油ピーク時期がいわゆる非需要期だったこともあり、サイフはさほど痛まなかったともいわれている。
 高騰と急落を経験して09年以降、良識的な住宅会社はどのような提案をするといいのだろうか。
 円高と世界的な需要後退で原油は急落したものの、エネルギー価格は長期的に高値が続くといわれている。しかし現状はむしろ安い。今は灯油が安くても、また高騰する可能性を含んでいる。

目標水準は1.3~1.0W
090115_1_2.gif 現状では『安いから灯油(電気)』という勧め方はできない。家計の安定を第一に考えれば、価格が乱高下しにくいのは電気と都市ガス、灯油は多少なりとも買いだめができる市況製品であり、住宅の省エネ化によって高騰時の出費増大を抑えた上で採用する方法がある。
 次に、暖房費を抑えるためには家を小さくする、断熱性能を上げる、高効率機器を採用する―といった手法があるが、高効率機器の省エネ性が温暖地ほど上がらない寒冷地では、まずは断熱強化が必要になる。
 グラフのように140m2の札幌の住宅で、灯油価格が82円台からピークまで上昇すると、約10万円の出費増になる。
 こういった不安定さを抑えるのが断熱強化だ。断熱を強化しておけば、エネルギー価格が高騰しても出費を抑えることができるほか、快適性や環境親和を優先してやや割高なエネルギーを選んだときも、ランニングコストを抑えることができる。
 北海道では現在、北方型住宅ECOレベルのQ値1.3W~1.0Wがひとつの目標水準となっている。この程度であれば大幅な工法改良やコストアップなしに達成できることを、北方型住宅ECOモデル事業で多くの住宅会社が実感した意味は大きい。
 今後はこのレベルが北海道の標準になる日が来るだろう。そのときまではエンドユーザーに推奨高断熱レベルとして提案し、その効果を説明して理解を得る必要がある。


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