光熱費ゼロ住宅の魅力

  灯油や電気料金などが今後も値上げを続けたとしたら、住宅ローンよりも、光熱費の支払いで私たちの家計が圧迫される恐れがあります。
 住まいの環境対策も大きな動きを見せています。これから私たちが建てる住宅は、2020年、そして2050年の段階で、社会に、地球環境に迷惑をかけない住宅にしたいものです。キーワードは「実現可能な光熱費ゼロ住宅」。早速探っていきましょう。

戸建住宅の年間エネルギー消費量とコスト
戸建住宅の年間エネルギー消費量とコスト
光熱費の内訳
光熱費ゼロ住宅を手に入れるためには、まず住宅の断熱性能を高める必要がある。写真は断熱材の吹き込み工事
窓は断熱性能と日射取得の両面で検討する必要がある。窓面積を増やすと日射取得が増えて冬は暖房使用量を減らせるが、夏は室内のオーバーヒートが心配。大きな窓は明るく開放的な室内を実現できるので、日射を遮る「オーニング」など様々な工夫も組み合わせながら考えてみたい
窓は断熱性能と日射取得の両面で検討する必要がある。窓面積を増やすと日射取得が増えて冬は暖房使用量を減らせるが、夏は室内のオーバーヒートが心配。大きな窓は明るく開放的な室内を実現できるので、日射を遮る「オーニング」など様々な工夫も組み合わせながら考えてみたい

30年で700~1000万円以上の節約

 総務省が行っている平成18年家計調査によると、日本人の総世帯の平均水道光熱費は月1万8906円、年間で22万6872円でした。この数字に19年から始まった原油高騰の影響は含まれていません。

 原油高騰の影響は、暖房にエネルギーを多用する道内の住宅では特に深刻です。灯油代は1リットル120円台と3年前の約3倍にまで高騰しています。平成19年~20年の道内1世帯あたりの灯油支出は対前シーズン比39%増(日銀札幌支店レポート)となっており、発電に原油を使う電気も値上げの動きが出始めています。こうした状況を踏まえて本誌が北海道内の一般的な住宅でどのくらい光熱費がかかるか想定したのが表1のデータです。グラフは用途別の内訳です。

 私たちが家計を守るためには、光熱費高騰のリスクを最小限にする住まいを手に入れることが必要です。

 もし光熱費ゼロの住宅を手に入れることができれば、平成18年家計調査の統計をベースにして考えても30年間で約680万円、本誌想定によると約1040万円の光熱費支出を減らすことができます。将来にわたる光熱費高騰を考えると、暖房エネルギーに依存する割合の多い地域では、もっと大きく家計に貢献することになります。



地球に迷惑をかけない

 例えばドイツは2020年までに暖房を使わなくても太陽や人体、生活発熱で室温を維持できるような住宅(省エネ基準で15kW/m2年)を義務化する予定です。カナダは2030年を目標に、全ての新築住宅に光熱費ゼロ基準を適用する予定と報じられています。今後日本でも踏み込んだ対策が講じられる可能性があります。

 将来、「昔は省エネ基準も緩かったからエネルギー消費もCO2排出も多い住宅を建ててしまった」と振り返るのではなく、私たちがこれから建てる住宅は2020年はもちろん、2050年を過ぎても快適に安心して過ごせる住まいであってほしいものです。

 家計と地球環境を同時に守る住宅に欠かせないのは、建設費が安く、省エネと自然エネルギー供給を併用して光熱費負担を減らすことができ、生涯で何度も建て替えたり、大規模リフォームをする必要がない住宅です。



実現できる住宅会社は?

 最大の壁はそれだけの品質の住宅を実現可能な価格で手に入れることができるか。たとえ30年で700万円以上の光熱費削減を実現できても、建設費がそれ以上にかかるなら、地球環境には貢献できても、家計の助けにはなりません。

 また、建設費の安さや流行のデザインなどを優先する消費者が多い中で、住宅会社も「環境」と「光熱費」を軸に据えた事業にはなかなか特化できない事情があります。

 本誌では、建設費が高い全国大手ブランドではなく、価格と品質の面で「実現可能な光熱費ゼロ住宅」に挑戦している地場の住宅会社を探し、その実現方法を取材しました。

whats new