カーポート内部に使ったガルバリウム鋼板外装材に浮き出ている白サビ。雨水がかからない部分であることに加え、自動車の排気ガスの影響もあり、白サビの原因となる腐食促進物質が堆積しやすかったと考えられる(下は拡大写真) |
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昨年の春、札幌市内の築5年の住宅で、外装材に使った溶融55%アルミニウム亜鉛めっき鋼板、いわゆるガルバリウム鋼板に“白サビ”が発生しているのが発見された。オーナーは「20~30年は持つと思って使ったのに…」と落胆の色を隠せないでいる。
腐食促す物質が堆積
ガルバリウム鋼板は、1972年にアメリカ・ベツレヘムスチール社が開発したもの。日本国内では日鉄住金鋼板 (株)が1982年に初めて商品化し、新日本製鉄(株)の登録商標となっている。通常の亜鉛めっき鋼板の3~6倍以上の耐久性があると言われており、モダンデザインの住宅を中心に屋根や外壁に採用されるケースも増えてきている。
今回ガルバリウム鋼板外装材の白サビが見つかったのは6年ほど前に建てられた住宅で、建物と一体化したカーポートの内部と、こう配屋根の軒の下、さらに
2階のバルコニー回りという、雨水がかかりにくい部分に発生。オーナーは発見当初、単なる汚れだと思っていたが、指でこすっても落ちなかったため、施工した住宅会社を通して外装材メーカーに調べてもらったところ、ガルバリウム鋼板のメッキ中の亜鉛が溶け出して酸化した白サビであることがわかった。
白サビはガルバリウム鋼板表面の腐食の進行を遅らせて鉄を保護するもので、耐久性に直接影響を及ぼすことはないと言われている。原因は腐食促進物質の堆積で、この住宅の白サビ部分からは酸性雨や酸性雪、自動車の排気ガスに含まれるナトリウム、塩素、硫黄という腐食促進物質が検出された。これらの物質は外装材表面に付着しても、雨水がかかれば洗い流されるが、軒下や庇・出窓の下など雨水がかかりにくいところはそのまま堆積していき、その部分だけメッキ中の亜鉛の溶け出しが早くなって白サビが発生しやすくなる。この住宅でも雨水がかかりにくい部分にだけ白サビが発生しているのはそういう理由からだ。
「ノーメンテだったのでは…」
ガルバリウム鋼板外装材を扱うメーカーも、あらかじめカタログやパンフレットで、付着物が腐食やサビの発生を引き起こす場合があるため、雨がかからない場所を重点的に水洗いすることを勧めているが、住宅会社もユーザーも“ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、メンテナンスも不要”と思い込んでいることがほとんど。今回ガルバリウム鋼板外装材を使っている住宅会社数社にも確認したところ、定期的な水洗いが必要と認識している会社はなかった。
この住宅のオーナーも「メンテナンスは一切いらないし、20~30年は大丈夫と言われて使ったのに、いくらなんでも白サビが出るとは思っていなかった」と話しており、現在はどのように補修するのかを検討しているところだ。
軒下に近寄って見ると、白い斑点状の白サビがよくわかる。汚れと思って指でこすっても取れない
軒下の部分の白サビの様子。外回りでも雨水がかかりにくいので付着した腐食促進物質が洗い流されず、堆積しやすい。鋼板外装のカタログを見ると、特に定期的な水洗いを推奨している部分でもある |
情報の周知を徹底
この件についてガルバリウム鋼板外装材メーカーは「注意を促すという意味では、以前からカタログに水洗いやメンテナンスをして下さいと記載しており、最近では酸性雨や大陸からの大気汚染物質などによって環境条件が厳しくなっていることに加え、営業担当者もより周知しやすいよう、カタログの最初のほうのページで、よりわかりやすく記載している」と話す。
ただ、今回白サビが発生した住宅のオーナーは「最初に水洗いが必要だとわかっていれば、別の選択肢を考える人もいるのでは。特に軒下にわざわざ水をかけて洗うのはおかしいのではないか」と語っており、施工した住宅会社も「家の水洗いはあり得ないことだと思う。カタログに書かれている以外にもっと積極的に徹底する情報を提供すべきでは」と話すなど、メーカーとの間に温度差があるのも事実だ。
消費者目線が必要
外装材の問題というと、北海道では5年前に無塗装ステンレス製の雪止め金具を付けたガルバリウム鋼板の屋根材で、電食により腐食が発生したという事例が記憶に新しいが、この時もメーカー側は「異なる金属同士を接触させれば電食が起きるのは業界の常識」としていたのに対し、住宅会社・板金業者側の間には常識と言えるほど認識されていなかったという問題が浮き彫りになった。
今回もメーカーはカタログで水洗いを行うように記載しているが、住宅会社もオーナーもその点についてまったく知らなかったという現実がある。メーカー各社には水洗いやメンテナンスの必要性をより周知徹底することが望まれるし、住宅会社・ユーザーも含めた3者で行き届いた情報を共有できるようにすることも必要。メーカーの一社も「洗浄や点検といったメンテナンスの必要性が住宅会社や消費者にまだ十分周知されていない状況にあるならば、メーカーとしてこれまで以上に周知徹底を図りたい」としている。
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