平成20年7月15日号から
来年4月に新基準施行へ
 
 次世代省エネ基準を改定する“次々世代省エネ基準”が、来年4月から施行されることがほぼ決まった。現在、委員会で内容を検討しており、早ければこの秋にも基準案が公表される見込みだ。


欧米諸国と日本の省エネ基準の比較。新基準はQ値はそのままに、給湯や照明等も含めて住宅トータルのエネルギー消費量を抑制する方向で策定されそう
Q値は次世代並み
 住宅分野の省エネルギー基準である次世代省エネ基準は、平成11年に発表されて以来、大きな変更なく現在に至っているが、その間に地球温暖化が世界的な環境問題として注目されるようになり、国内の住宅分野でも家庭部門のCO2排出量の増加を背景に、よりいっそうの省エネ化とCO2排出量の削減が急務となっている。
 そこで国では地球温暖化防止が中心議題となった北海道洞爺湖サミットの開催に合わせて次世代省エネ基準の改定に着手。来年4月からの施行を目指し、基準策定が進められている。
 具体的な内容についてはまだ検討中だが、現時点で本紙が独自に収集した情報から推測すると、基準は義務化する項目と努力義務の項目の2つで構成され、注文住宅系、建売住宅系、共同住宅系などの事業者別に異なる基準を適用することになりそう。
 すでに言われているように、暖冷房のほか、給湯、照明等も含めた住宅トータルのエネルギー消費を抑制するため、地域別に断熱・気密基準を設定したうえで、採用する各種熱源および暖冷房・給湯機器等に応じ、総エネルギー消費量を定められた数値以内に抑えるという考え方。
 なお、断熱に関しては、Ⅰ地域でQ値1.6Wなど次世代省エネ基準と同じ熱損失係数を設定する模様。
 現時点で想定されている施行までのスケジュールとしては、8月中に基準の内容をほぼ固め、9~10月頃に基準案を公表してパブリックコメントを募集。その後、年末に告示、年明けに全国で講習会を開催し、4月1日施行となる予定。

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寄稿・前編
トビイロケアリ(黒アリ)
新築住宅に侵入する事例について
(株)青山プリザーブ 青山 修三

トビイロケアリがかじり落とした発泡ポリスチレンの掘削くず。表面のモルタルが水分を吸収するらしく、湿ったところを好むトビイロケアリにとっては、好環境となる
 トビイロケアリという名称にあまりなじみはないと思います。ごく一般的にいる小さな黒アリです。シロアリのような木材への食害被害を起こすことはありませんが、湿って腐っている木材に好んで集まるため、これまでは劣化した古い住宅からの防除依頼が多くなっていました。
 ところが最近、新築間もない住宅から防除の依頼が増えています。そこで、当社に依頼のあり、防除を行った古い住宅と比較的新しい住宅の事例から、トビイロケアリの侵入と断熱工法などの関連をまとめました。

築後5年以内が多い
 調査範囲は札幌市全区と周辺の北広島市・恵庭市・江別市・石狩市・当別町・岩見沢市・小樽市です。調査期間は 2005年4月から06年9月。調査件数は2005年が35件、06年が37件で、合計72件。月別で最も多いのが6月で36%を占めました。札幌市保健所の調べによると、2005年度のアリ類相談件数のうち89%が6月から8月に集中しています。


調査家屋の建築後年数
 調査した72家屋の築後経過年数をまとめると、5年以内が30%以上を占めて、21年以上の27%を上回り、最も多くなりました。
 古い調査報告によると、トビイロケアリが侵入した家屋の共通点は、営巣ヵ所が浴室などの湿潤なところであったり、台所や風呂場の腐った木の中に巣を作っていたりと、木材腐朽との関連が指摘されています。
 築後21年以上の住宅については、これらの調査報告が当てはまるようです。しかし、30%以上を占めた5年以内の家屋は木材の腐れは見あたりませんでした。また、いずれも気密化住宅で外壁のクラックもなく、アリの侵入が容易であるとは考えられません。

断熱材に巣を作る

発泡ポリスチレンにできたトビイロケアリの巣の痕跡。断熱材を食べるわけではなく、本来は腐った木材に巣を作るが、断熱材が水分を含むと格好の巣の場所になるようだ(誤解を招かないため、断熱材の色を加工・変更してある)
 調査の中でわかったことは、発泡プラスチック系の断熱材が関係しているらしいということです。
 住まい手は、室内でアリを発見して防除を依頼するほか、土台の水切りの下に粉が落ちていて、何だろうとあたりを調べてわかるケースもあります。
 防除現場で刺激を与えると、基礎断熱材から多量のトビイロケアリが脱出したり、巣を作っていたりする例があります。基礎断熱や木造の外張り断熱に使われる発泡プラスチック系の断熱材に巣を作ったり、アリ道ができているのです。
 トビイロケアリは断熱材を食べるワケではありません。適度な湿り気と柔らかさを好んでいるのではないかと思いますが、詳しいことはまだわかっていません。
 建材に対する好みがあるのかどうかもまだわかっていませんが、断熱材の突き合わせやコンクリートとの隙間から入るようです。ですから、断熱材の施工時に養生目的のガムテープでもいいので合わせ目を留めるなどの対策をしておけば、被害はかなり防げるようです。
 発泡プラスチック系の断熱材とトビイロケアリの行動との関係は、わからないことがまだたくさんあります。今後検討する必要があります。
(前編終わり)



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住宅内にクロアリが侵入する事例を最初に報告した記事
(この記事)

前年記事の続報(2009年07月15日号)
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(2010年2月25日号)
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状況説明より、共感と誠実な対応

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(2013年5月15日号)
「アリの侵入は築後6ヵ月以内が多く、1年以内の侵入報告がほとんど..」

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