平成20年3月25日号から
流れはエコ機器重視
始まった温暖化対策、気がつけば政策変更

暖房エネルギー消費の実態が認識といかにずれているかを説明する資料まで用意して、国土交通省は家電と給湯エネルギー削減に進もうとしている
 住宅など民生部門からの二酸化炭素(CO2)発生が増加しているにもかかわらず、2月末の時点で断熱基準の立法化はおろか省エネ基準の改定すら行われていない現状で、ジワジワと浸透しつつあるのが“エコ機器の購入支援”などの形を取った政府のエコ機器推進政策。今年は従来の断熱性能向上政策から一転してエコ機器推進へ大きく切り替わる変化の年となりそうだ。

根拠は政府統計
 省エネ面で住宅が抱える課題は、CO2排出の抑制と高騰するエネルギー価格への対応、そしてこれらの対策をできるだけコストを上げずに実現することだ。
 これまでの省エネルギー対策は、断熱・気密性能の向上による暖・冷房費の削減だった。欧米諸国と比べれば断熱レベルの低さや規制の弱さはあるが、寒冷地については断熱・気密性能の向上が快適性の向上にもつながることから、ここ20年で大きく進歩してきた。
 しかしこの間、CO2の排出は増加を続け、京都議定書で約束した2008年から2012年の間に1990年比で6%削減するという目標達成が、現状のままではきわめて難しいことがすでにハッキリしている。
 政府はここで大きく舵を切った。本紙でも昨年からたびたび報道しているように、断熱よりエコ機器重視の姿勢を明確にしたのだ。
 根拠となったのは家庭でのエネルギー消費とCO2排出量の政府統計。1990年と比べ、1世帯あたりのテレビやエアコン台数が増え、それまでなかったパソコン、温水洗浄便座、DVDプレーヤーが登場。こういった電気製品による電力消費の伸びが大きいことが第1点。
 第2点は全国平均で見ると、暖冷房は家庭で消費するエネルギーの3割を占めるだけで、給湯(約3割)と一般電灯(約4割)を削減する効果のほうが大きいこと。
 第3点は、新築住宅での省エネルギー化はほぼ目標通りに進んでおり、順調であること。
 これらを総合的に考え、電力消費型のライフスタイルを変える啓もうとともに、住宅分野では照明の省電力化、給湯器の省エネルギー化、暖冷房機器の高効率化がキーワードとして登場した。
 これまで住宅の断熱化を推進してきた研究者の中にも、一転して給湯器の高効率化を推進すべきだと主張する人も登場しているという。
 このような背景から、端的に言えば、照明分野で白熱灯から蛍光灯、LED照明へ、給湯分野でエコキュート購入支援となってきた。
 政府の意向を踏まえ、業界や地方自治体も大きく動き出した。家電業界や電力業界がオール電化普及という追い風もあって、エコキュート推進にさまざまなPRを展開し始めている。また地方自治体もいろいろなかたちで購入支援を打ち出している。4月から始まる札幌市の制度もその1つだ(2面参照)。
 政府は民間の宣伝力を利用して、政策をジワリと浸透させる考えだ。

 課題と提言  忘れてならない断熱強化
 こういった変化の年に、本紙は課題と提言を提示したい。  第一に、政府は実質的には断熱強化からエコ機器購入支援へ、政策を大きく転換したにもかかわらず、その理由を国民はおろか業界にも何も説明していない。その結果、大手企業は情報をいち早くつかむ一方、その他の企業などは国の姿勢変化を知る機会が奪われている。政府はこれからの省エネ政策について、公式に、広く国民に説明する責任があるはずだ。  第二に、省エネルギーをトータルで推進することに異論はもちろんないが、基本は断熱強化だという点がぼやけ、ともするとエコ機器一辺倒に進む恐れがあること。  断熱は100年持つが機器は10数年で交換する必要がある。そういった特性を説明し、エコ機器とともに断熱強化も推進・支援する政策追加を政府に望みたい。このままでは家電メーカーを喜ばせるだけの省エネ政策になりかねない。  そして第三に、断熱材業界とこれまで高断熱を推進してきた住宅業界は、一体となって断熱啓もうを推進する必要がある。熱源機器の高効率化などはもちろん重要だが、それは断熱強化とともに進めるべきものだ。  このまま今の流れが続くと、断熱に対する消費者の関心はますます低くなる。特に北海道は家庭で消費するエネルギーの過半数を暖房が占め、全国平均を大きく上回っているのだ。北海道では暖房エネルギー消費を抑えることが最優先であり、それがCO2削減と光熱費抑制に最もつながりやすいことを、消費者に説明する必要がある。

エコ機器導入に支援

札幌市 4月から助成や無利子融資など
 札幌市は4月11日から高効率型暖房・給湯機器などに対する無利子融資・補助事業を始める。対象は札幌市民と中小企業等で、対象機器は太陽光発電、ヒートポンプ暖房・給湯、ガスコージェネなど。
 札幌市は市民1人あたりの二酸化炭素排出量を2010年に1990年の水準から6%削減することを目標としているが、2003年は1990年比で9%増加しており、二酸化炭素排出量削減のための政策が待ったなしの状況となっている。
 今回の事業は「札幌・エネルギーecoプロジェクト」と名づけられ、平成20年度から22年度まで3ヵ年度で実施する。
 事業概要は①融資②補助③PR―の3本柱で推進する。このうち具体的な支援事業としては、市民向けに1.住宅ローンと提携した助成 2.機器設置への無利子融資 3.補助金支給―の3項目、中小企業向けに機器設置への無利子融資を行う。
 市民向けの3項目の概要は以下の通り。1.住宅ローンと提携した助成は、新築・リフォームローンとして提携金融機関が融資する場合、金利を0・1%以上優遇するとともに機器導入費の3%を助成する。融資枠は6億円。
 2.機器設置への無利子融資は、機器を単独で導入する場合に金融機関に対して利子補給し、無利子融資する。保証料についても支援する方向。融資枠は2億円。
 3.補助金支給は、機器をローンを使わずに導入するときに費用の約1割を補助する。補助枠は2500万円。
 いずれも対象機器は太陽光発電、太陽熱利用システム、ペレットストーブ、地中熱ヒートポンプ、ガスエンジン給湯器、潜熱回収型ガス給湯器、CO2冷媒ヒートポンプ給湯器、ヒートポンプ温水暖房システム、潜熱回収型石油給湯器、そして複数種の対象機器を設置する場合。
 対象住宅は持家、建売等、賃貸住宅。
 詳しい条件など問い合わせは札幌市環境都市推進部エネルギー対策課(Tel.011・211・2872)。

17日に道支部が発足

NPO家づくり援護会 より早く適確にアドバイス


会の事業を説明する小山理事長

挨拶する今井支部長
 “イエンゴ”の愛称で知られるNPO法人家づくり援護会(小山武理事長)では、全国の一般ユーザーから寄せられる住宅相談などの声に、より早く、適確に対応できるよう、北海道、東北、関西の3地域で新たに支部を設立。北海道では今月17日に札幌サンプラザで『北海道支部』設立の会が開催され、駆けつけた大勢の関係者を前に同会の活動内容の説明や道支部メンバーの紹介などを行った。
 イエンゴは住宅に問題を抱える消費者に対する相談活動やサポート活動を行っているNPO法人で、平成14年に設立。これまで1万人を超える消費者を支援し、徐々に認知度を高めてきた。
 北海道支部設立の会では、始めに小山理事長が「一度住宅に関する被害に遭うと、その人は悲惨な状況になってしまう。この会は住宅でそのような問題を出さないようにと考え、欠陥住宅の撲滅・防止を目的に平成14年から活動を開始した。ただ、建てる前に転ばぬ先の杖と考えてこの会に来る人は非常に少ない。これはまだ私たちの努力が足らないからだと思っているが、北海道支部ができたことによって、そのような状況も変えていけると思う。北海道で欠陥住宅などに悩んでいる人はできるだけ早く連絡してほしい」と、会の目的や活動状況を紹介。その後、相談事業や建築主サポート事業、設計サポート事業、検査・診断・調査事業、啓もう事業など、各事業の内容やこれまでの実績について説明した。

会員6名でスタート
 続いて北海道支部長の今井正樹氏(アトリエ樹代表)が「北海道支部設立により、地域に根ざした活動ができる。マスコミで道支部設立が報道された後、道内各地から問い合わせや相談があり、住宅で悩んでいる人はかなり多いと感じているが、現在の会員6名は全員経験豊かで頼もしいので、悩んでいる人はどんどん相談してもらいたい。きっと適確なアドバイスやサポートができる」と挨拶。他のメンバーの紹介も行った。
 この後、同会専務理事の植田達二氏による質問タイムが設けられたほか、会終了後には懇親会も開催。大勢の関係者が北海道支部の設立を盛大に祝った。
 道支部の所在地と連絡先は以下の通り。札幌市北区篠路2条3丁目5-17林崎ビル405号、TEL・FAXとも011・772・0136。

ホームページ:http://www.iengo.ne.jp/
hokkaido@iengo.ne.jp

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