| 流れはエコ機器重視 |
| 始まった温暖化対策、気がつけば政策変更 |

暖房エネルギー消費の実態が認識といかにずれているかを説明する資料まで用意して、国土交通省は家電と給湯エネルギー削減に進もうとしている |
住宅など民生部門からの二酸化炭素(CO2)発生が増加しているにもかかわらず、2月末の時点で断熱基準の立法化はおろか省エネ基準の改定すら行われていない現状で、ジワジワと浸透しつつあるのが“エコ機器の購入支援”などの形を取った政府のエコ機器推進政策。今年は従来の断熱性能向上政策から一転してエコ機器推進へ大きく切り替わる変化の年となりそうだ。
根拠は政府統計
省エネ面で住宅が抱える課題は、CO2排出の抑制と高騰するエネルギー価格への対応、そしてこれらの対策をできるだけコストを上げずに実現することだ。
これまでの省エネルギー対策は、断熱・気密性能の向上による暖・冷房費の削減だった。欧米諸国と比べれば断熱レベルの低さや規制の弱さはあるが、寒冷地については断熱・気密性能の向上が快適性の向上にもつながることから、ここ20年で大きく進歩してきた。
しかしこの間、CO2の排出は増加を続け、京都議定書で約束した2008年から2012年の間に1990年比で6%削減するという目標達成が、現状のままではきわめて難しいことがすでにハッキリしている。
政府はここで大きく舵を切った。本紙でも昨年からたびたび報道しているように、断熱よりエコ機器重視の姿勢を明確にしたのだ。
根拠となったのは家庭でのエネルギー消費とCO2排出量の政府統計。1990年と比べ、1世帯あたりのテレビやエアコン台数が増え、それまでなかったパソコン、温水洗浄便座、DVDプレーヤーが登場。こういった電気製品による電力消費の伸びが大きいことが第1点。
第2点は全国平均で見ると、暖冷房は家庭で消費するエネルギーの3割を占めるだけで、給湯(約3割)と一般電灯(約4割)を削減する効果のほうが大きいこと。
第3点は、新築住宅での省エネルギー化はほぼ目標通りに進んでおり、順調であること。
これらを総合的に考え、電力消費型のライフスタイルを変える啓もうとともに、住宅分野では照明の省電力化、給湯器の省エネルギー化、暖冷房機器の高効率化がキーワードとして登場した。
これまで住宅の断熱化を推進してきた研究者の中にも、一転して給湯器の高効率化を推進すべきだと主張する人も登場しているという。
このような背景から、端的に言えば、照明分野で白熱灯から蛍光灯、LED照明へ、給湯分野でエコキュート購入支援となってきた。
政府の意向を踏まえ、業界や地方自治体も大きく動き出した。家電業界や電力業界がオール電化普及という追い風もあって、エコキュート推進にさまざまなPRを展開し始めている。また地方自治体もいろいろなかたちで購入支援を打ち出している。4月から始まる札幌市の制度もその1つだ(2面参照)。
政府は民間の宣伝力を利用して、政策をジワリと浸透させる考えだ。
課題と提言
忘れてならない断熱強化
こういった変化の年に、本紙は課題と提言を提示したい。 第一に、政府は実質的には断熱強化からエコ機器購入支援へ、政策を大きく転換したにもかかわらず、その理由を国民はおろか業界にも何も説明していない。その結果、大手企業は情報をいち早くつかむ一方、その他の企業などは国の姿勢変化を知る機会が奪われている。政府はこれからの省エネ政策について、公式に、広く国民に説明する責任があるはずだ。
第二に、省エネルギーをトータルで推進することに異論はもちろんないが、基本は断熱強化だという点がぼやけ、ともするとエコ機器一辺倒に進む恐れがあること。
断熱は100年持つが機器は10数年で交換する必要がある。そういった特性を説明し、エコ機器とともに断熱強化も推進・支援する政策追加を政府に望みたい。このままでは家電メーカーを喜ばせるだけの省エネ政策になりかねない。
そして第三に、断熱材業界とこれまで高断熱を推進してきた住宅業界は、一体となって断熱啓もうを推進する必要がある。熱源機器の高効率化などはもちろん重要だが、それは断熱強化とともに進めるべきものだ。
このまま今の流れが続くと、断熱に対する消費者の関心はますます低くなる。特に北海道は家庭で消費するエネルギーの過半数を暖房が占め、全国平均を大きく上回っているのだ。北海道では暖房エネルギー消費を抑えることが最優先であり、それがCO2削減と光熱費抑制に最もつながりやすいことを、消費者に説明する必要がある。 |