08年45,000戸割れか? |
持家3%増、需要は薄い |
建築基準法の改正施行などによって昨年後半大幅に減速した住宅着工が今年はどうなるか。昨年終盤までは『08年は反動増でかなり伸びる』という見方もあったが、今年になって強気の見方はほぼなくなった。ただ後半を楽観的に見るか悲観的に見るかの違いで予想が異なっている。木造に関しては前年割れからプラス10%程度まで大きくぶれている今年の予測を見ていきたい。
北海道内の過去4年と今年の住宅着工(予測)
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平成16年 |
平成17年 |
平成18年 |
平成19年※ |
平成20年 |
総戸数 |
49,183 |
52,317 |
51,175 |
42,786 |
44,520
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利用
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持家 |
13,998 |
12,948 |
13,470 |
11,875 |
12,231 |
貸家 |
27,170 |
30,657 |
30,905 |
24,132 |
25,339 |
給与 |
621 |
345 |
419 |
399 |
379 |
分譲 |
7,394 |
8,367 |
6,381 |
6,380 |
6,571 |
※平成19年は確定値ではない
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最も厳しい数年に突入
北海道銀行が昨年12月に発表した08年度の北海道経済の展望では、道内住宅着工を前年比6%増の4万6300戸と予測している。07年度は上回るが06年度までは回復しないという見方だ。持家と分譲については需要が薄く、賃貸系は投資意欲が減退気味、さらにマンションの着工遅れや在庫増加によっては予測を下回ると見ている。ただし持家、貸家、分譲ともに4%台から6%台の成長予測。
北洋銀行の予測もほぼ同じ4万7000戸程度。
本紙は4万4500戸程度と予測している。持家と分譲の回復に力強さがなく、いずれも3%台の成長にとどまるという見方だ。
以下に着工を取り巻くいろいろな状況を見てみたい。
要素1
改正基準法施行による影響
元には戻るが減った分の上乗せはない。
北海道の戸建てはもともとさほどの影響がなかったので、07年からの減少基調を反転させるだけの力強さはない。賃貸系が後半持ち直すかどうかが見方の分かれるところ。
要素2
サブプライム問題
世界的な株安を引き起こし、金利低下、ドル安、国内富裕層の投資意欲減退につながっている。
上昇局面だった国内の金利は引き下げが予想され、住宅ローンについてはプラス面もある。
国内の金融機関は貸し渋りが起きるほどの直接的影響はないと見られているが、我が国の経済に深刻な影響を与えることは間違いない。
要素3
原油の高騰
ガソリン・灯油値上げ、ほとんどすべての商品に及ぶ値上げ圧力と上がらない収入により、物価上昇・収入低下というこれまでで最も厳しい数年間に突入した。可処分所得の低下により、2年程度は住宅を含む高額商品は真冬の時代を迎える。意外なほど指摘されていないが、経済の専門家は数年前からその危険性を指摘していた。特に値上げ初年度となる08年前半は影響が大きい。
要素4
地価の上昇
地価は一部で明らかに上がりすぎた。購買力と見合うまで値落ちするには少し時間が必要。
一方、下落し続ける都市周辺のニュータウンは、販売価格が実勢価格を上回るなどの状況が続く限り買いがつきにくい。
要素5
建設物価の上昇
石油高騰などにより値上がりした住設建材価格が住宅価格を押し上げ消費を鈍くしている。ただ、木材・合板といった相場ものは、着工減少による在庫のだぶつきで値崩れを起こしている。
要素6
アパートオーナー
融資拡大が多くのサラリーマンオーナーをつくったが、家賃下落や供給過剰により収益性が悪化、アパートバブルは終わったとされる。
それでも「賃貸市場は底堅い。泡(バブル)は消えるが、持家系が振るわない分、根強い需要はある」との見方も強い。
要素7
全国展開大手の進出
受注競争は激化するが、市場活性化により需要を刺激する効果もある。ローコスト系ビルダーがここ数年で立て続けに進出した長野県では地場の工務店が商品の見直しなどを迫られている。
要素8
トリガーは引かれた?
少子高齢化、地方の崩壊、住宅あまり現象など、新設住宅着工が低下する要素は景気以外にもたくさん。悲観論者の中には昨年の6月20日をきっかけに、ここ数年の踊り場状態からせきを切ったように着工減へと動き出したと見る向きもある。
物価上昇が響く
いろいろな視点があるが、やはり今年は〈要素3:原油高騰〉によるインフレ・収入低下のダブルパンチの影響が最も強く表れると見られる。自動車メーカーの国内販売目標も弱気だ。
来年以降はある種の落ち着きを取り戻すにしても、今年春からの値上げラッシュは消費マインドを冷やすに十分なインパクトとなるだろう。 |