平成20年2月25日号から
家電・照明・設備に照準
IBEC・省エネフォーラム 断熱強化も大事だが…

省エネフォーラムで講演した6名の講師
 一般家庭の省エネを進めるためには、家電や照明、設備の高効率化ヘ向けた政策も必要。去る13日に建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が東京で開催した第26回建築環境・省エネルギーフォーラムで、IEA(国際エネルギー機関)のマーク・エリス氏や東北大学大学院教授の吉野博氏らは、CO2排出量が増加の一途を辿る家庭部門の省エネ推進にあたって、高効率な家電・照明・設備機器を積極的に使う必要性を示した。今後、断熱強化とともに住宅の省エネ政策の柱となりそうだ。

省エネの対象拡充
 今回のフォーラムでは、冒頭にIBEC理事長で慶應義塾大学教授の村上周三氏と、国土交通省住宅局長の和泉洋人氏が挨拶。
 その中で和泉氏は住宅・建築物の省エネ化をよりいっそう進めるため、考えられる手段はすべて講じるスタンスであるとした。
 具体的には省エネ法で省エネ措置の届出が義務付けられる住宅・建築物の条件を、現行の床面積2000m2以上から同300m2以上に拡充する方針を示したほか、家電製品や自動車などで現在商品化されている製品のうち、最も省エネ性が優れている商品を上回る省エネ性能の実現を義務付けたトップランナー制度の住宅への導入や、先進的かつ効果的な省CO2技術が導入された先導的な住宅・建築プロジェクトを進める民間事業者に補助を行う省CO2推進モデル事業の創設、省エネ改修工事を含む増改築工事を行った場合、所得税と固定資産税を減額・控除する省エネ改修促進税制の創設などを挙げた。
 また、福田首相肝いりで進められている200年住宅ビジョンを実現するための制度も、現在開かれている通常国会に法案を提出することを明らかにした。



IEAによる家庭でのホームエンターテイメント機器の電力消費量の予測。今後は増加の一途を辿り、2030年には2005年の約6倍に達する見込みだ
娯楽家電も大問題
 続いて村上氏、東北大大学院教授の吉野博氏、IEAのヤンス・ラウステン氏とマーク・エリス氏、国交省住宅局住宅生産課長の坂本努氏、経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー対策課長の三木健氏がそれぞれ講演し、村上氏は「民生部門だけエネルギー消費の増加が止まらないのは世界的な傾向であり、なかなか歯止めがかからない。これはわれわれの生活に直結しているだけに、生活水準を下げることにつながりかねないからだ。室内の快適性など環境品質の向上と、省エネ・省資源など環境負荷の低減を同時に達成する必要がある」と、生活水準を高めながら省エネを進めることが重要との認識を示した。
 吉野氏とヤンス氏、マーク氏、坂本氏、三木氏は、「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が世界各国からエネルギー消費削減の可能性を予測した事例を集めたところ、先進国では21~54%、発展途上国では18~41%削減可能であることが判明。断熱改修や高効率な照明・家電・設備の導入、暖房・給湯の制御システムの改善などが有効で、特に発展途上国では電球型蛍光灯と調理用レンジが重要と指摘している」(吉野氏)、「建築物のエネルギー効率向上は、そこで使われる設備機器類のエネルギー効率向上と密接に関連している」(ヤンス氏)など、いずれも一般家庭でのエネルギー消費量を削減するためには、新築住宅の断熱強化や既存住宅の断熱改修に加え、家電・照明・設備機器の高効率化がカギを握ると指摘した。
 特にマーク氏は「アメリカの一般家庭の電力消費はこのところ急速に増えている。2005年時点で1997年と比較すると、暖房・給湯関連は減っているが、冷房や照明、AV機器、テレビゲーム機などの電力は増加しているからだ。これはほとんどの先進国でも同じ傾向にある。
 このうち、テレビやDVDレコーダー、ゲームなどのホームエンターテイメント関連機器で使われている電力は、家庭の全消費電力の10%未満だが、2030年までには現在の約6倍になるという予測もあり、機器のネットワーク化による効率的な電力管理などの新しい技術や、電力消費削減のための政策が必要になってくる」と、家庭で使うホームエンターテイメント機器による電力消費の増加と、それを抑えるための政策の必要性を強調した。

目標達成へ規制強化や新事業
 このほか、坂本氏は「具体的な政策としては、省エネ法の改正や住宅性能表示制度の推進、CASBEEの活用などを進めてきたが、省エネ型住宅建築の普及や再生可能なエネルギー利用の推進などを盛り込んだ21世紀環境立国戦略が昨年閣議決定されたことを受け、省エネ法の規制強化や省CO2推進モデル事業の創設などによって、京都議定書目標達成計画で定めたCO2排出量の削減量をさらに約200万t削減する見込み」と、今後の政策目標についても説明。
 三木氏は「一般家庭で暖冷房、給湯、家電・照明などすべてのエネルギー消費を削減するためには、高効率給湯器の普及やトップランナー制度による家電製品の低消費電力化、住宅の断熱強化などが必要になる」と、高効率な家電・設備機器と高断熱をセットにした省エネ対策を訴えた。

高性能住宅Q&A 「寒い」とクレーム ①
背景には燃料高が
夜間は暖房を止めない

今年は「寒い」というクレームが増えている
 Q1…7年前に引き渡した住宅のお施主様から「寒い」と連絡が入りました。なぜ今年だけ寒いのか原因が分かりません。断熱・気密・暖房などの仕様は現在と同じですし、ボイラーの故障もありません。(札幌市 工務店設計)
 Q2…
昨年の12月末に引き渡した住宅で「寒い」と言われました。なぜ寒いのか原因が分かりません。高断熱・高気密で暖房は温水セントラルヒーティング、建物の気密性能は相当隙間面積で0・5/m2。窓は樹脂サッシローEガラス、一部は木製のトリプルも使っています。その木製窓の窓際も寒いとおっしゃるのです。私が訪問した時には、暖房温度は21℃前後でした。原因と対応策を教えて下さい。(帯広市 工務店社長)

 A…2つのご質問をまとめました。というのも、今年はこの手の相談をよく受けるからです。そして原因の1つはどうやら共通しているようなのです。高断熱・高気密住宅の普及を推進して20数年、今年は大きな曲がり角にきたと感じています。
      *            *            
 詳しくみていきましょう。
 なぜ寒いのか、その理由は1つではない場合が多いのですが、共通しているのは、背景に灯油・エネルギーの高騰によって「もったいない」という気持ちが過度に強くなり、温水セントラルヒーティングの家でやってはならないことをやった結果『寒い』となるケースが多いという点です。
 第1の質問です。この家は調査の結果、原因が2つありました。1つは家の南に大きなマンションが建ち、日当たりが悪くなったこと、もう1つは暖房ボイラーを節約のために夜間止めてしまっていることです。この2つがあいまった結果、冷えたら暖まらない寒い家になったわけです。
 言うまでもなく、温水セントラルヒーティングは使わない空間も含めて放熱を続けることが原則です。夜間にボイラーを止めて、朝方室温が13~15℃程度まで下がってしまったら、ストーブとは違ってすぐに家を暖めることはできません。
 これはセントラルヒーティングの常識だったわけですが、ユーザーは必ずしもそれを知りません。また夜間に止めて朝運転を始めてもさほどの省エネにならないことも常識ですが、ユーザーはほとんど知らないでしょう。いや、じつは最近の若い設計者や現場管理者も知らない人が多いのです。
 そういった特性を持っているセントラルヒーティングの家で、朝まで暖房を止めて、朝から運転しても日差しが入らないとなかなか温度が上昇してくれません。そうこうしているうちに午後になり、外気温が下がってくると、もう追いつかないのです。
 日当たりがいいときは、日射が暖房代わりになってくれました。しかしマンションによって日射がなくなるとパワー不足なのです。よく計画された高断熱住宅ほどパワー不足に陥るはずです。
 調査をした方は、この家のオーナーに「夜は暖房を止めないでください。その代わり天気のいい昼間は止めてもいいと思います」と伝えたほか、セントラルヒーティングの特徴をよく説明しました。また、高断熱住宅では日射が暖房代わりになること、マンションによって日差しの暖房機がなくなったことあわせて説明しました。
(Q2へ続く)

手作りの台所用品
ダッチウエスト アメリカから直輸入販売

売れ筋のクラシックレクタングル
 ダッチウエストジャパン(株)は、米・エンクルーム社が製造する高品質キッチンラックの輸入販売を始めた。
 ダッチウエスト社は、「エンライト」など高性能薪ストーブを北米から輸入しており、このストーブの雰囲気に合う周辺部材としてエンクルーム社のキッチンラックを提案する。
 キッチンラックは、天井から2ヵ所のフックでつり下げ、鍋などを吊して見せる状態で収納する製品。高炭素鋼を使い、アメリカの熟練した職人が伝統的なフランス式メタル加工機械を使って手作業で作るのが特徴。アメリカでも国内の職人が手作りするのはエンクルーム社ぐらいで、後は人件費の安い海外で生産された製品が主流だ。そのため、同社の製品は最高級の製品として知られているという。
 表面は、大半の製品がハンマーで打ち付けたような細かい凸凹があるハンマードスチール仕上げ。艶消しの重厚感ある仕上げは、カントリー調キッチンなどにマッチする。高炭素鋼枠材の内側に格子状の鉄材が入り、そこにフックをかけて鍋を吊す。枠材の形は製品によって長方形、楕円形、円形の3種類ある。

優美なデザインのオーバルラック
 売れ筋は「クラシックレクタングル」や「ダッチクラウン」、普及価格帯の「オーバルラック」、「レトロレクタングル」など。大きさはおおむね幅80センチ前後、奥行40センチ前後、高さ50センチ前後。重量は「クラシックレクタングル」が17・6キロと重く、後は7~8キロ程度。
 価格は「クラシックレクタングル」が9万4800円(税別)、「ダッチクラウン」が10万8000円(同)、「オーバルラック」が4万6800円(同)、「レトロレクタングル」が4万5800円(同)。
 キッチンラックのほか、ベーカーズカート(パン切り台)やワインラック、コートラックなども発売している。
 問い合わせは、ダッチウエストジャパン(帯広市大通南28丁目4、Tel.0155・24・6085)へ。

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