平成20年10月5日号から
スウェーデンmeets北海道
30年で石油5割削減
環境と経済発展は両立する

住宅・サービス部門におけるエネルギー消費の比率。石油エネが大幅に減少しているのがわかる
(スウェーデンエネルギー庁の資料より)
 スウェーデン大使館では、ローエネルギー住宅が担う役割についてスウェーデンと日本両国からの最新情報を提供する環境セミナー「スウェーデンmeets北海道~気候変動との闘い・ローエネルギーハウスの役割~」を、9月26日に石狩管内当別町のスウェーデンヒルズで開催。スウェーデンの政府関係者や北海学園大学教授の佐々木博明氏による講演のほか、ハウスメーカー・設備機器メーカー担当者によるプレゼンテーションとパネルディスカッションも行われ、両国の省エネ技術や環境政策の考え方などについて、活発な意見交換が行われた。
 午前中の第1部では、始めに駐日スウェーデン大使のステファン・ノレーン氏が挨拶。「スウェーデンでは1970年代と比較すると、石油消費量が50%減っているが、これは主に住宅部門での削減によるもので、今や暖房に石油を使うことはほとんどなくなった。石油の代わりにバイオマスや地中熱などの再生可能なエネルギーを利用することでCO2の大幅な削減にも成功しており、現在では1990年比で9%の削減となっている。一方で経済も同比45%の成長となっており、これは炭素税や経済的なインセンティブ導入の効果が大きかった」と、環境に優しい政策と経済成長が両立可能であることを強調した。


ミカエル・フィヤルストロム氏
化石エネルギーゼロ
 続いてスウェーデンエネルギー庁ビジネス開発局次長のミカエル・フィヤルストロム氏が「スウェーデンの気候変動との闘い・官民建築セクター協力成功例」をテーマに基調講演を行った。

スウェーデンの住宅・オフィスに導入されたヒートポンプ台数の推移
(スウェーデンエネルギー庁の資料より)
 ミカエル氏は「スウェーデンは国家戦略の一環として、2050年までにエネルギー消費量を半減し、住宅については2020年までに化石エネルギー利用をゼロにするという考えだ。そのために大手マンションデベロッパーで構成し、高効率設備機器の導入と情報の共有化を進めている“BeBo(ビーボ)”や、オフィスビル等の所有企業で構成し、再生可能なエネルギーの導入推進を目的としている“BELOK(ビーロック)”などの団体に協力してもらっている。
 住宅に関しては様々な建物を対象にローエネ住宅事業を行っているが、例えば実証用のアパートでは古い物件と比べてエネルギー使用量が4分の1まで低減。同じく実証用の2世帯住宅では年間エネルギー使用量が8000kWhと非常に少ない」と、スウェーデンの省エネ政策を紹介。

公的補助行いヒーポン普及
 また、「従来からの省エネ政策の結果、暖房用ヒートポンプは世界市場の4分の1を占めるほどになった。1975年以降、公的資金を投入して補助を行ってきたことで、今や住宅で一般的な設備となっている。もともとヒートポンプの導入は石油暖房を減らすことが目的だったが、エネルギー庁で高効率化と低価格化を推進することにより、普及当初と比べて効率は30%アップ、逆に価格は30%安くなった」と、省エネ政策の一環としてヒートポンプの普及が進んでいることも強調した。


佐々木博明氏
世界全体で環境対策
 昼食を挟んで午後から始まった第2部は、始めに北海学園大学教授の佐々木博明氏が「新しい省エネルギー住宅の動向」と題して講演。
 佐々木氏は「日本では次世代省エネ基準を改定する動きが出てきているが、建物が周囲の環境に与える影響を評価することも重要になってきており、札幌では昨年から大規模建築物にCASBEE(建築物総合環境性能評価システム)評価書の提出を義務付けた。
 世界ではスウェーデンがBo01、Bo02といった様々な環境・省エネ対策が導入された住宅博覧会を実施し、オランダでは太陽光発電住宅団地、イギリスではBedZEDというというゼロエネルギー集合住宅の建設を開始。道内でも無暖房住宅やゼロエネルギー住宅を試験的に展開する住宅会社が出てくるなど、先進国の取り組みは活発だが、今後は日本やスウェーデンの省エネ技術や考え方を、中国やインドなど経済発展が急速に進む新興国に伝えていくことが大切だ」と、環境対策を世界的な枠組で行う必要性があることを訴えた。


最後に行われたパネルディスカッションでは、司会の佐々木氏を含む8名が活発な意見交換を行った
より良きパートナーとして前進
 続いて、ガデリウス(株)、三菱電機(株)、システムエア、スウェーデンハウス(株)の4社が自社商品の紹介などプレゼンテーションを行った後、ミカエル氏、スウェーデンエネルギー庁のエリック・オルソン氏、北海道電力(株)総合研究所の石川光浩氏を加えた7名がパネラー、佐々木氏が司会を務め、パネルディスカッションを実施。
 ヒートポンプの普及方法や熱交換換気の課題、シックハウス問題などについて議論が交わされ、最後に佐々木氏が「今後も両国がより良きパートナーとして進んでいきたい」と述べ、セミナーを締めくくった。

米国サイズに統一
ウェアーハウザー 日本サイズは流通在庫のみ

TJI、LSLとも使う住宅会社は増えてきている
 ウェアーハウザージャパン(株)は、木製I型梁のTJI、側根太などに使用するLSLのサイズを今年11月から米国サイズに統一する。
 アメリカは、昨年今年とサブプライムローン問題で住宅景気が大きく後退しており、同社のアメリカ本社も昨年は工場閉鎖・売却などを経験した。このため、従来は日本市場向けに235ミリと286ミリのTJI・LSLを輸入してきたが安定供給が困難になると判断、輸入を10月末で中止し、11月からは全面的に241ミリ、302ミリの米国サイズに統一、日本サイズの製品は販売店の流通在庫のみとなる。
 同社によると、昨年から米国サイズの輸入を始めたが予想外に好調で、昨年末の時点で全輸入量の3分の1を占めるまでになった。最近は2×4用だけでなく在来工法の住宅会社にも採用が増えてきているという。
 問い合わせは同社トラスジョイスト部門(Tel.03・3405・7441)。

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