編集長の目
高断熱住宅とフラッシュオーバーのあやしい関係 |
| 帯広の住宅火災記事・その後 |

倒壊はしなかったが、激しく燃えて全焼となった帯広の住宅 |
はじめに
本紙9月25日号の1、2面に掲載した北海道・帯広市内で8月下旬に起きた住宅火災について、多くの反響が編集部に寄せられました。
その多くは火災拡大の原因を知りたい、という内容でしたが、「準耐火構造であるはずの軽量鉄骨造、消防の到着も早かった市街地で、逃げ遅れるほどのスピードで火が回り、激しく燃えて全焼に至ったのはなぜか?」「本当に断熱住宅は火災に弱いのか、信じられない」といった問い合わせもかなりありました。
ここでは、今回の火災をきっかけにしながら、もう少し広く問題を見ていきたいと思います。
辻本教授の考え
今回の火災と報道などの流れをごく簡単にまとめると、帯広市内で起きた火災が非常に激しかったため、報道を知って東京理科大学・辻本誠教授が現場を視察。そこで地元紙に1.「通常の火災に比べて燃え方が激しい」2.「断熱材などによる気密性の高さが、強力なフラッシュオーバーを引き起こしたのでは」と分析した上で、3.「冬の寒さが厳しい北海道では、省エネで環境にもいい高断熱住宅が喜ばれる」4.「こうした惨事が起きたことで、断熱性を追求することがすべていいとはいえなくなるのでは」と語ったという流れだ。
本紙は独自に現場近くの建築士らに聞き込むと同時に、帯広市消防本部、東京理大・辻本教授、当該住宅を設計・施工した住宅メーカーに取材。フラッシュオーバーが起きたかどうかは分からない(消防・辻本教授)が、住宅の断熱性が高いとフラッシュオーバーが早く起きるといい(辻本教授)、高断熱・高気密住宅の火災対策が必要になるかも知れないと指摘した。
北海道はほとんどが断熱住宅
本紙は、いくつかの点から、『断熱・気密住宅だから燃え広がりが早い』という話に疑問を持っている。しかし、仮にそうだとしたらまさに大問題である。
建物構造などとフラッシュオーバーに分けてポイントを見ていきたい。
火災があった帯広では最近、住宅火災による消防の出動が減っているという。また、新築の5割を超えると言われるツーバイフォー住宅の増加により、消火がしやすくなっている上、いったん消火したと見えて再び燃える危険な燃え方がツーバイフォー工法に関しては起きにくいとも言われている。これはファイアストップ構造によって、小屋裏まで一気に燃え抜ける被害拡大を抑制できるからとされる。
いずれも過去5年の火災発生状況などのデータに裏付けられたものではないが、火災現場に近い筋からの話だ。
北海道の場合、ツーバイフォー住宅は例外なく断熱・気密住宅だ。また在来軸組工法も、昭和50年代中盤以降の家なら100ミリ厚の断熱材を全充てんしており、断熱住宅である。辻本教授が言う断熱住宅とは何を指すのか、ハッキリとはしないが、今回の物件が特別高い断熱・気密仕様だったわけではなく、そういう状況の中で「断熱住宅ではフラッシュオーバーが早く起きる」という教授の指摘には首をかしげざるを得ない。なお同教授は、本紙の取材に対して、「断熱住宅は危険だ、という社会的問題として取り上げる根拠になるほどの事例だとは考えていない」とコメントしている。
大切なのは火災警報のあり方?
東京理科大学の研究者は、同教授のほかにもフラッシュオーバーによって逃げ遅れが起きる危険性を指摘、さらに建物の断熱性との関連を実験して警鐘を鳴らしている。
同大学総合研究機構・火災科学研究センターの松山賢講師は、独立行政法人住宅金融支援機構が発行する「住宅金融2008年度夏号」に寄せた記事の中で、火災を知ってすぐに逃げることが大切とした上で「住警器(住宅用火災警報器)効果を期待したい…同時に、住警器に変わる(原文のまま)優れた火災予防・防火対策の技術開発を期待したい」として、新たな規制が必要とも受け取れる主張をしている。
同氏は、アメリカやイギリスでは住警器が火災による死者の減少に大きく貢献したとしており、それならアメリカより断熱・気密性で劣る日本の住宅では、フラッシュオーバーによる逃げ遅れの危険度は確実に低いのではないか。
フラッシュオーバーをことさらに大きく取り上げているが、問題は逃げ遅れ防止の対策が重要であることと、その対策として住警器がベストか、ほかにあるのか、という点がじつはポイントになっているようでもある。
最後に
今回の火災については、木造より火災に強いとされる鉄骨造建物が、倒壊することなく残ったまま、内部は激しく燃えて死者も出た。そのことがいろいろな憶測を呼んだ面がある。住宅の構造や・工法との関係、内装規制や室内に置かれた可燃物など、断熱という狭い観点からではなく、広く検証することも必要なのではないだろうか。 |