平成20年1月5日号から
環境イヤー2008幕開け
省エネ性能、絶好のPR機会

北海道・秋の洞爺湖。早朝の洞爺湖は波もなく、静かにもやが晴れるのを待っている
 環境の1年が幕を開けた。京都議定書が定める約束期間が始まり、7月には北海道・洞爺湖サミットが開かれる。北海道に世界の目が集まり、かつてないほどの環境に対する関心の高まりが予想される。こういった大きな環境変化を的確につかみ、これまで培ってきた断熱技術をPRするには絶好の機会が訪れている。

燃費明示で差別化
 世界の関心はいま、エネルギーの確保と環境保護に大きく動いている。このまま温暖化が進めば地球がたいへんなことになるという危機感、温暖化対策でリーダーシップを確保することが政治的に重要と考えるG8諸国・EUの判断、生活者・地域レベルで環境変化を実感し、行動を始めた草の根的活動。
 こういった背景で、7月、世界の首脳が洞爺湖に集まる。京都議定書以降、すなわち2013年以降の温暖化防止の枠組みを話し合うのが主要議題とされ、サミット議長国の日本は、1月から各国との調整を行うことになる。
 日本の現状は京都議定書で約束した1990年比で6%削減を達成するための計画づくりでさえ、12月末の段階で終了していないが、EUを中心とする欧米諸国は2013年以降に向けてすでに動き出し、住宅分野でも断熱基準の強化などを実施している国もある。
 北海道の現状はどうか。景気の低迷と地方の疲弊により、特に戸建てマイホームは着工が激減。価格競争も激しくなり、一部では断熱性能を引き下げざるを得ない状況も見られる。タマホームや一条工務店の進出により、市場環境はますます激しさを増す。
 一方で北海道を取り巻く環境変化も進んでいる。オホーツク海の流氷が年々少なくなり、着氷も遅れていると言われる。仮にオホーツク海から流氷がなくなると、水産資源の減少や冬の観光資源の消滅にとどまらず、海水温の上昇による予期せぬ環境への影響など、その波及は広範囲に及ぶという。
 こういった中で日本でもっとも進んでいるといわれる住宅の断熱性能をどのようにPRし、消費者の環境意識に訴えるか。限られた建築予算の中でどのように費用アップ分を説明するか。
 本紙では2つの方法を提言したい。第1は暖房費の明示。床面積1m2あたりの必要暖房エネルギーと灯油または電気換算の燃料費を、自社の仕様と現在の主流である新省エネ基準レベルの住宅とで比較する。
 第2は環境性能の明示だ。ホルムアルデヒドなどVOC対策、室内換気対策、住宅からの一酸化炭素、窒素酸化物、硫黄酸化物などの排出の有無、そしてCO2削減量などの明示だ。
 環境対策を消費者にお知らせすることは自動車などですでに始まっており、これからの時代には当たり前となる。いち早く準備し、技術力ある会社が一丸となってリーダーシップをとり、エンドユーザーに発信したい。

2008年を大胆予想!
どうなる? 今年の住宅業界

消費税アップが再び現実味を帯びてくる中、基準法改正の影響が少ない持家着工は前年比5%増が見込まれる(写真と本文は直接関係ありません)
 建築基準法改正ショックも冷めやらぬままに新しい年の幕が上がったが、今年も住宅・建築関連の法改正や洞爺湖サミットを睨んだ省エネの推進、消費税率引き上げ論議の再燃など、住宅業界の行方を左右する話題が目白押し。編集部ではこれらの様々な情報を分析し、大胆にこの1年を占ってみた。

  実現可能性65%  全道着工4万5千戸台持家は5%増か
 平成19年の全道新設住宅着工戸数は、基準法改正によって確認審査の現場が大混乱となったことから、4万戸強と前年より1万戸近く落ち込んだ。特に改正法施行後のマンションと木造アパートの大幅な減少には目を覆うばかり。
 しかし、確認審査の混乱も徐々に落ち着きつつあることに加え、今年から来年にかけて施行予定の住宅関連法改正や、早ければ来年とも噂される消費税アップを前にした駆け込みも見込まれることから、住宅着工量も4万5千戸程度まで回復しそうだ。
 持家に関してはもともと基準法改正の影響が小さいが、少しだけ反動増、消費税率引き上げ論議の再燃にともない潜在需要層も掘り起こされることから、前年比5%増の1万2500戸程度に落ち着くだろう。マンションも消費税アップ前の駆け込みが見込めるほか、反動もあって回復へ向かうと思われる。
 ただ、木造アパートに力強さはない。基準法改正で1階がRC造の車庫、2・3階が木造という混構造の物件は構造計算が必要となり、3階建て以上は法定中間検査が義務化されるなど、建てづらいことに加えてアパート事業の収益性悪化で地主も建築意欲が減退気味。いましばらく停滞が続くだろう。

  実現可能性50 %  一定の省エネ義務化し次々世代基準も発表
次世代省エネ基準で断熱性能は住宅先進国と肩を並べるほどになったと言われているが、義務基準ではないため実効力はほとんどないのが現状。それではサミットにやってくる各国に会わす顔がないはずだが、次世代省エネ基準の義務化はほぼ100%ない。義務化される基準はあるものの、次世代省エネと新省エネの中間くらいのレベルという説が有力だ。
 また、次々世代省エネ基準を発表。国内外に日本の住宅の省エネ施策をアピールする。その内容は住宅本体の断熱化より、日本の誇るハイテク技術を駆使したヒートポンプや熱交換換気、太陽光発電など、高効率設備機器が主役を担う。電力消費量を抑えた家電・照明も含め、ジャパニーズスタイルの省エネ住宅が先進国首脳の目にどう映るかが注目される。


タマホームが昨年元旦に関東地方に入れた新聞チラシの一部。今年は道内でもこのように価格を訴求したチラシが目に付くようになる?
  実現可能性100 %  新規参入の本州大手が道内中堅と激戦
 既報の通り、一条工務店が札幌で営業を開始し、タマホームも北海道上陸を果たすのは間違いない状況で、このほかにも道内市場を狙っている大手ハウスメーカーがいると噂されている。札幌ではこれら本州大手と道内中堅クラスの住宅会社との受注争奪戦が激化しそうだ。
 本州で一条工務店はデザイン・品質の良さをセールスポイントにアッパー層を狙い、タマホームはローコストを売りに中低所得者層を取り込んでいるが、本州の関係筋の話によると、両社が進出した地域で最も影響を受けやすいのが年間50~80棟ほど手がける地場の中堅クラスだという。
 他の地域と違って道内では断熱・気密など積雪寒冷地への対応が重要だが、その点では道内の住宅会社に一日の長がある。しかし、一条工務店やタマホームが本州各地で地場の住宅会社を相手に受注を伸ばしてきたのも事実。
 両社の進出はマイホーム需要を刺激するプラスの面も予想されるが、道内中堅クラスはもちろん、大手や中小地場ビルダーもしっかり準備してほしい。

  実現可能性25 %  四号物件の特例廃止で住宅の商品化加速
 木造2階建て以下の住宅、いわゆる四号物件の確認審査で、建築士が設計・監理したものについては構造関係規定の審査を省略できるという特例が見直されるのにともない、住宅の商品化・画一化が進みそうだ。
 特例が廃止された場合、構造詳細図や軸組図、基礎・小屋伏せ図など、新たにいくつかの構造関係図書が必要になると予想されているが、これらを一から用意するのはかなりの手間。そうなるとプレカット工場がサービスで図面作成を行うことも増えると考えられるが、同時にプラン・仕様の絞り込みや確認図面完成後の変更有料化など、図面作成にかかるコストを減らそうとする住宅会社も増え、住宅は自動車などの工業製品と同じようにあらかじめ用意された商品ラインナップからユーザーに選んでもらうという、カタログ販売が主流になるか?
 もっとも四号物件の確認特例見直しは今年12月にも実施予定だったが、先月行われた社会資本整備審議会建築分科会基本制度部会で国交省は来年以降の施行とする考えを示した。これは昨年の改正基準法施行による混乱を踏まえた措置と思われる。


ドイツで販売されているペレットボイラー。灯油価格高騰と地球温暖化防止を背景に日本でも普及へ向かうかもしれない
  実現可能性5 %  木質バイオマスのセントラル暖房が登場
 灯油価格がついに100円/リットルを突破し、電気・ガス料金も燃料費調整制度によって上昇傾向にある中、薪ストーブやペレットストーブが注目されているが、今年はさらに薪やペレットなどを燃やしてお湯を作る薪・ペレットボイラーの輸入販売が本格化。木質バイオマスセントラルヒーティングを採用する住宅が登場する。
 灯油・電気・ガスとは異なり、燃料自体をユーザーが直接補給しなければならないが、地球上のCO2を増やさないカーボンフリーな熱源で、価格も安定しているため、エコに関心が高いユーザーを中心に静かなブームとなり、家計を預かる主婦の間でも評判に。
 当面は価格が高い輸入品しか選択肢はないが、国産の薪・ペレットボイラーの開発も始まり、林業活性化や地産地消、CO2排出量削減を図る観点から国や地方自治体は購入費用の一部を補助。灯油・電気ボイラーと変わらぬ価格で購入できるようになるかも。

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