大友詔雄社長 |
去る7月12日に(株)木の繊維(札幌市、大友詔雄社長)が設立。来年から苫小牧市植苗に工場を建設し、再来年の平成21年からは、木質チップを原料にマット状の木質繊維断熱材を製造・販売する。
木の特性を活かす
木質繊維断熱材は、木の成分をそのまま活かして断熱材にするため、廃棄物がほとんど出ず、木の優れた特性が発揮されるのが魅力。
ドイツ・ホーマテルム社の木質繊維断熱材。木の繊維では、これを道産材から生産する |
ドイツ・ホーマテルム社で開発したこの断熱材は、3年前から(株)NERCで輸入し、道内で販売されてきた。しかし輸送コストがかさみ、他の断熱材に比べてかなり高い価格となるため普及を進めるには日本で作ることが不可欠と判断、昨年10月にホーマテルム社から独占的ライセンス生産と販売の権利を得た。
事業化に関しては資金もかかることから、共同出資で新会社設立を企画、(株)中山組、中道機械(株)、NERC(以上札幌市)、丹治林業(株)(苫小牧市)、(株)ヤマオ(十勝・芽室町)ら道内5社が中核として出資したことで事業化に弾みがつき、ライセンス契約から1年足らずで新会社発足にこぎつけた。
木質繊維断熱材は、樹皮をむいた木を破砕して作られたチップを繊維状に細かくして、バインダーを数%混ぜて成形する。繊維同士が3次元で絡み合って弾力性のあるマット状木質繊維断熱材となる。断熱性能は、熱伝導率=0・038W/Kと高性能グラスウール16K品並みの性能があり、熱容量が多く蓄熱性が高いため、夏場の防暑には効果的という。またドイツでは30~90分の耐火性があると評価されている。
製造時、剥いた樹皮やごく僅かに出る廃棄物は燃料として工場で使うため、廃棄するものが全くなく資源の有効利用につながる。また住宅解体時に廃棄する際も土に戻すことができる。製造時のエネルギー使用量は、他の代表的な断熱材に比べて約7分の1と少なく、環境負荷が少ない。加えて、道産材を原料にして道内で生産、供給することで原料や製品輸送にかかるエネルギーを大幅に減らすことができるなど、生産から廃棄の過程まで廃棄物やCO2の排出量を減らし、省エネにも貢献するエコ断熱材として期待されている。
コスト下げ普及図る
計画では、丹治林業と中山組が苫小牧市植苗に所有する敷地2・5haに工場を建設、24名を新たに雇用して生産を開始し、初年度は年間10万程度の生産を目標としている。その後、数年以内に年間30万規模を生産する予定。これは、戸建住宅用断熱材として換算すると約1万棟分になり、道外へも販売する。原料は道産のトドマツ・カラマツ両方を使う予定。既に試作品もできており、断熱性能もドイツからの輸入品と同等だという。
木の繊維では、今後本州にも同様の工場を建設したい考えで、今回の工場はモデル工場として位置づけている。また、断熱材だけでなく、社名のとおり木の繊維を応用した製品の研究開発拠点としても活用したい考えだ。
同社では、「地域の未利用資源を活用した地産地消を進めて地域経済の持続的な発展に役立ち、また価格もグラスウールボードと同等に抑えて事業を一早く軌道に乗せる計画」と話している。
問い合わせは、同社(札幌市中央区北1条西4丁目札幌ノースプラザ8F、Tel.011・398・5210)へ。
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