向かい合って4棟が並ぶ無暖房住宅を吹雪混じりのなか見学する。玄関は北入り |
スウェーデンの大手建設会社が施工した物件で、断熱材の養生が悪く、カビなどの被害を発生させて大問題となり、同社の株価にまで影響する事件があったという。しかし、スウェーデンはやはり省エネルギーの最先進国だと改めて強い印象を受けた。本紙主催のスウェーデン・ドイツ住宅視察ツアーで訪れたスウェーデンの最新事情について、今回は大きく2つの点について見ていきたい。
10年以内に回収
まず1点目は省エネルギーへの取り組みだ。
彼らの口から異口同音に聞かれるのは、住宅で消費するエネルギーの過半数を占める暖房エネルギーを抑制するとともに、給湯と一般電灯などすべてのエネルギーを抑制すること。そしてこれら省エネのための投資が、およそ10年以内で回収できること。
その代表がスウェーデン第2の都市、ヨーテボリに建つ無暖房住宅だ。無暖房住宅は躯体の超高断熱化と熱交換換気だけの装備。暖房設備はない。太陽熱温水器は給湯のエネルギー削減に利用している。
建設中のモデルハウス。片流れ屋根と大きな開口部が特徴的
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無暖房住宅は1戸あたりの延床がおよそ120m2の連棟、いわゆるタウンハウス。1戸あたり平均の全消費エネルギーは年間で7800kWh。最小で4500、最大で1万200kWh。最大消費の家にはプラズマテレビが2台あるという。繰り返しになるがこれは住宅の全消費エネルギーだ。
北海道は調理と一般電灯で年間およそ4000kWhを消費し、給湯に灯油で少なくとも500リットル、電力換算でおよそ5000kWhの電力を消費する。合計で約9000kWh。暖房エネルギーがかからなかったとしても無暖房住宅の平均を上回っている。
無暖房住宅は給湯エネルギー削減のために太陽熱温水器を利用しているが、それだけではない。ライフスタイルが違うのだ。
無暖房という取り組みはスウェーデンでも特別のようだが、省エネへの妥協のない姿勢は共通している。そして賃貸でも分譲でもおよそ10年以内に断熱など省エネ化にかかったコストアップ分を光熱費の減少で回収できることが大切だ、という考え方だ。
決して物好きで省エネ化を進めているわけではない。エンドユーザーに高省エネ住宅を入手するメリットをハッキリと提示することが大切だ、という考え方に、われわれはうなずかざるを得なかった。この意味で、高省エネ化はビジネスになるのである。
モダンインテリアのモデルハウスは若者を中心に大人気
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トレンドはモダン
今回感じたもう1つの最新事情は、合理的である限り決してやり方を変えないスウェーデンにおいても、住宅のデザインはモダン調に変わってきていることだ。
ヒュース・エキスポというストックホルムの住宅展示場では、ちょうど2棟のモデルハウスが新築中。いずれもモダンスタイルだ。日曜日ということもあり、けっこうな見学者がいたが、破風の飾りや柄物のクロスを貼った住宅は見学者が少なく、モダンインテリアの住宅には若者を中心に多くの見学者が入っていた。
開口部を大きくとるのも日本と同じ。デザインのグローバル化はスウェーデンでも進んでいるようだ。 |