平成18年3月5日号から
徹底した省エネに進むスウェーデン
北欧視察報告 デザインはモダン調に

向かい合って4棟が並ぶ無暖房住宅を吹雪混じりのなか見学する。玄関は北入り
 スウェーデンの大手建設会社が施工した物件で、断熱材の養生が悪く、カビなどの被害を発生させて大問題となり、同社の株価にまで影響する事件があったという。しかし、スウェーデンはやはり省エネルギーの最先進国だと改めて強い印象を受けた。本紙主催のスウェーデン・ドイツ住宅視察ツアーで訪れたスウェーデンの最新事情について、今回は大きく2つの点について見ていきたい。

10年以内に回収
 まず1点目は省エネルギーへの取り組みだ。
 彼らの口から異口同音に聞かれるのは、住宅で消費するエネルギーの過半数を占める暖房エネルギーを抑制するとともに、給湯と一般電灯などすべてのエネルギーを抑制すること。そしてこれら省エネのための投資が、およそ10年以内で回収できること。
 その代表がスウェーデン第2の都市、ヨーテボリに建つ無暖房住宅だ。無暖房住宅は躯体の超高断熱化と熱交換換気だけの装備。暖房設備はない。太陽熱温水器は給湯のエネルギー削減に利用している。

建設中のモデルハウス。片流れ屋根と大きな開口部が特徴的
 無暖房住宅は1戸あたりの延床がおよそ120m2の連棟、いわゆるタウンハウス。1戸あたり平均の全消費エネルギーは年間で7800kWh。最小で4500、最大で1万200kWh。最大消費の家にはプラズマテレビが2台あるという。繰り返しになるがこれは住宅の全消費エネルギーだ。
 北海道は調理と一般電灯で年間およそ4000kWhを消費し、給湯に灯油で少なくとも500リットル、電力換算でおよそ5000kWhの電力を消費する。合計で約9000kWh。暖房エネルギーがかからなかったとしても無暖房住宅の平均を上回っている。
 無暖房住宅は給湯エネルギー削減のために太陽熱温水器を利用しているが、それだけではない。ライフスタイルが違うのだ。
 無暖房という取り組みはスウェーデンでも特別のようだが、省エネへの妥協のない姿勢は共通している。そして賃貸でも分譲でもおよそ10年以内に断熱など省エネ化にかかったコストアップ分を光熱費の減少で回収できることが大切だ、という考え方だ。
 決して物好きで省エネ化を進めているわけではない。エンドユーザーに高省エネ住宅を入手するメリットをハッキリと提示することが大切だ、という考え方に、われわれはうなずかざるを得なかった。この意味で、高省エネ化はビジネスになるのである。


モダンインテリアのモデルハウスは若者を中心に大人気
トレンドはモダン
 今回感じたもう1つの最新事情は、合理的である限り決してやり方を変えないスウェーデンにおいても、住宅のデザインはモダン調に変わってきていることだ。
 ヒュース・エキスポというストックホルムの住宅展示場では、ちょうど2棟のモデルハウスが新築中。いずれもモダンスタイルだ。日曜日ということもあり、けっこうな見学者がいたが、破風の飾りや柄物のクロスを貼った住宅は見学者が少なく、モダンインテリアの住宅には若者を中心に多くの見学者が入っていた。
 開口部を大きくとるのも日本と同じ。デザインのグローバル化はスウェーデンでも進んでいるようだ。


人に優しい住まい
北建連建築研修大会 安心・安全を次の世代に

本間大会長
 北海道建築工事業組合連合会(本間弘恭理事長、丸什本間建設(株)社長)主催の第33回北海道建築研修大会が2月22日、旭川市内のホテルで開かれ、道内の建築業者など約250名が出席した。
 同大会は会員各社の経営資質の向上と組織の結束強化を目的とするもので、テーマは「人に優しい住まいづくり」。
 冒頭、本間大会長は「景気が明るさを取り戻したと言われているが、道内の戸建て需要の伸びは鈍く、受注競争による低価格化で企業収益が低下。我々工務店にとっては依然厳しい状況が続いている。少子高齢化による住環境の変化など社会のニーズを的確に捉え、経営改善に努めなくてはならない」と挨拶。
 続いて旭川市旭山動物園園長小菅正夫氏が「旭山動物園の再生~蘇った日本最北の動物園」と題した特別講演を行った。

地域との信頼関係
 全体討議では北海道東海大学芸術工学部教授大矢二郎氏の基調講演「人に優しい住まいづくりをめざして~安心・安全な住宅を造る技」と、大矢氏の司会によるパネルディスカッションが行われた。パネリストは国土交通省住宅局住宅生産課建築生産技術企画官瀬良智機氏、北海道建設部建築指導課主幹福島明氏、北海道建築士会旭川支部女性部会長米本一恵氏、北海道建築工事業組合連合会常務理事経営改善委員会委員長佐藤英雄氏。

大勢の参加者で埋まった会場
 基調講演で大矢氏は、人に優しく安心・安全な住まい造りには1.基本性能と耐久性 2.個性に応じた生活空間 3.防犯 4.高齢者や子供への配慮⑤雪対策―などが必要であり、こうした要素を満たした良質なストックを地域全体に造ることが真に人に優しく安全な環境づくりにつながると述べた。
 「1戸の住宅がいくら頑丈で防犯上申し分のない造りであっても、地域全体の安心・安全にはつながらない。住民の意識向上、インフラの整備に加え、それぞれの住まいが安全に暮らすため機能と耐久性を備えることで街全体が安心して暮らせる環境になる。それらの住宅に手を入れて次世代に残すことによって建物への愛着が生まれ、本物のコミュニティが育っていく。
 こうした流れの中で、地場工務店は人々の暮らしを見守るホームドクターであるべき。住宅の寿命が延びれば新築は減少するが、リフォーム需要が発生する。このビジネスチャンスを生かすには地域社会との信頼関係の持続が大切(大矢氏)」。
これを受けて福島氏は地場工務店の顧客管理を支援するシステムとして道が行っている「北方型住宅登録・保管事業」を紹介、概要を説明した。
 「北方型住宅登録・保管事業は北方型住宅基準を満たした住宅を登録し、設計・施工に関する情報や図面、現場写真などを電子媒体化して保管するもの。イギリスの田園都市・レッチワースでは街ができてから現在に至るまでの住宅の図面や修繕・増改築の記録が全て残されているが、これと同じことを道がやろうというわけだ。
 登録に必要な専用ソフト・北方型住宅サポートシステムは北方型住宅のホームページから無料でダウンロードできる。住宅の耐用年数が長くなれば、建物の情報を記録して残すことが安心と信頼につながる。新築需要が減少する中、大手ハウスメーカーではすでに顧客を取り込むために顧客データの管理に着手しており、今のところ工務店は一歩出遅れた感がある。地域に根ざした住まいづくりの担い手である地場工務店にこそ、システムを活用してほしい(福島氏)」。
 また、瀬良氏は量から質への転換期を迎えてい日本の住宅政策について「住生活基本法案では、新築住宅の耐久性の向上と中古住宅流通の円滑化を柱に据えている。いい家を大切に長く使おうというのが基本的なスタンス。それには確かな技術を持った技能者集団が身近にいることが必要だ。行政が伝統技術の継承をサポートする仕組みも作っていかなくてはならない」と述べた。
 このほか、米本氏は建築士としての立場から「人に優しい住まいづくりには、その家族を知ることが大切。子供が喜ぶ空間も一部につくるようにしている」と発言。佐藤氏は「地球規模の気候変動により温暖なはずの地域でも寒波や大雪でスガモリなどの被害が増加している。これまでの家づくりが間違いだったわけではないが、気候の変化への対応も考える必要がある」と語った。


桁上断熱
気密性能と現場の安全性高まる
ここが知りたい!現場のツボ4
 天井断熱、屋根断熱に続く天井・屋根部分の第3の断熱方法として徐々に採用例が増えているのが桁上断熱。最上階の桁の上に合板を張り、その上に防湿・気密層を設けてから断熱材を施工するこの工法は、安定した気密性能の確保と同時に屋根・小屋組施工時に合板が作業床になり安心して作業できるのが大きなメリット。今回は桁上断熱の納まりと施工ポイントなどを取り上げる。
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輸入換気が好評価
JVIAアンケート調査で
 日本輸入換気システム連盟(略称JVIA・高野鋼二理事長、ジェイベック(株)取締役営業本部長)ではこのほど、新築住宅の換気設備についての満足感をアンケート方式で調査、その結果を発表した。それによると、どの方式の換気も一定の満足感が得られるなか、同連盟の会員が販売した換気システムは、全体回答に比べ総合的な満足感が高く、空気環境と換気にこだわるユーザーに支持されていることに同連盟では自信を深めている。

騒音評価も良好
 この調査は同連盟の会員が販売する第3種換気システムのユーザーを中心に、その他の換気方式を使うユーザーにもアンケートを依頼した。回答項目は主に5段階評価とし、プラス評価2項目、マイナス評価2項目、その中間回答を1項目とした。
 総合的な満足感についての全体回答では、「たいへん満足」と「やや満足」を合計し半数を超える58%がプラス評価、「ふつう」と答えた33%も加えれば9割の人が換気に対して一定の評価を下していることがわかる。
 このなかで同連盟の会員が販売する第3種換気システムを取り付けたユーザーだけを見ると、「たいへん満足」と「やや満足」を合計したプラス評価が77%で全体回答より2割多く、積極的に好評価を下していることがわかる。
 この傾向は「空気の新鮮さ」「室内のにおい」についての回答でも同じで、まあまあなどの中間回答よりも、“空気が新鮮、とても新鮮”“においが全くまたはあまり気にならない”と答える積極的な換気性能に対する評価の傾向が見られる。
 輸入品の換気システムは、換気能力が高いことなどから騒音が比較的大きいともいわれるが、運転に伴う音についても全体回答とほぼ同じややいい結果となっている。
 これに対して第3種換気の給気レジスターからの冷気については「ときどき感じる」とする回答がやや多くなっている。
 メンテナンス面では、定期的に清掃を行っているユーザーの割合が全体回答よりも多く、換気システムに対する意識の高さがうかがわれる。また「掃除しやすい」との回答も多く、清掃性の高さも評価を高めているようだ。
 この結果について同連盟?野理事長は「換気システムの基本性能である換気量の安定的確保という点にこだわって啓蒙・普及を進めてきた成果が、そのまま調査結果に現れたと思う。この調査結果をふまえ、“空気環境にこだわるなら輸入換気”というPRをすすめたい。給気の冷たさについては、給気レジスターの設置位置の工夫など、設計によってかなり問題を解消できることから、これまで以上に配慮していきたい。ただ、熱交換換気に対する“給気が暖かい”という期待感が反映されている面もあると思う」としている。
 日本輸入換気システム連盟は、住宅用輸入セントラル換気システムとその関連部材の輸入・発売元企業などが中心になって平成12年に設立。優れた換気性能を有する輸入換気システムを通じ、住宅環境の改善や、公的機関などへ一定の提言力を確保することでフェアな市場環境を維持・発展させることを目的に活動を続けている。
 同連盟の正会員は以下の通り(社名50音順)。A正会員▽(有)アトム建築環境工学研究所▽(株)アルデエンジニアリング▽日本住環境(株)▽ガデリウス(株)▽ジェイベック(株)▽ディックス(株)・B正会員▽(株)栄興▽タイガースポリマー(株)▽タイロン(株)▽日本スティーベル(株)▽フクビ化学工業(株)▽(株)北海道日立

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