ガルバ等の電食に注意促す |
鉄鋼連盟がパンフで対策紹介 |
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ガルバリウム鋼板にステンレス製の雪止めをつけた部分が電食を起こした屋根。一昨年、札幌で見つかった |
一昨年、札幌でガルバリウム鋼板の屋根材に無塗装ステンレス製の雪止め金具を付けた部分で電食が発生、腐食した事例が見つかった件で、鋼板メーカーは異種金属同士の接触は避けるのが板金業界の常識と主張していたが、鉄鋼業界の全国的な組織である日本鉄鋼連盟の亜鉛鉄板委員会では、そのようなトラブルが全国的に起きていることから『塗装/亜鉛系めっき鋼板の異種金属接触さび防止方法』というパンフレットを昨年11月に作成。改めて建設・板金業界に対し異種金属同士の接触に対する注意を促している。
日本鉄鋼連盟が作成した『塗装/亜鉛系めっき鋼板の異種金属接触さび防止方法』 |
全国的に問題発生
このパンフレットは、塗装/亜鉛系めっき鋼板(ガルバリウム鋼板など)と異種金属または防腐・防蟻処理木材との接触による電食・腐食について、その発生理由や発生が心配される部位、防止策を紹介したもの。鋼板関連の協会や団体を通じて配布を行っている。
作成した背景には、異種金属同士の接触による電食が全国的に起きていることがあり、正しい知識を知ってもらうことでそのようなトラブルの防止を狙いとしている。
一昨年、札幌で異種金属同士の接触による電食が見つかった際に鋼板メーカーは「異種金属同士の接触を避けるのは板金業界の常識」としていたが、実際には全国的に発生していたことを考えると、メーカーと現場の板金業者の間にはかなり温度差があったようだ。また、「異種金属同士の接触を避けるのはごく常識的な話だが、最近では常識的な話でもなくなってきているようだ」(日新製鋼北海道支店丑場直輝支店長)と言うように、昔とは現場サイドの意識が変わってきている可能性もある。
いずれにしても住宅の耐久性にかかわる問題だけに、メーカー側が積極的に十分な情報を提供し、板金業者側が正しい知識で施工できる環境づくりに乗り出したのは大きな一歩だ。
異種金属同士の接触1 雪止め廻りが多い
それではパンフレットで指摘されている問題点を改めて見てみたい。
ガルバリウム鋼板とステンレス製のドレンの接触により、電食が発生した屋根 |
まず塗装/亜鉛系めっき鋼板と異種金属の接触による電食だが、心配される部分としては鋼板を取り付ける金具(ボルト等)周辺、屋外のドレンやダクトの周辺、雪止め廻り、増築部分と既築部分の屋根・壁の取り合いなどを挙げており、積雪寒冷地では雪止め廻りの電食が多いようだ。
具体的にはガルバリウム鋼板の屋根材にステンレス製の雪止めやドレンを設置したり、ガルバリウム鋼板の外装材にステンレス製換気フードを設置した場合など。ガルバリウム鋼板の外装材と灯油ボイラーの給排気筒の取り合いも注意が必要。
異種金属同士の接触2 都市部ほど腐食促進
異種金属同士の接触による電食は、異なる金属同士が接触している場合、接触部分の表面が雨水等で濡れていると金属間に電位差が生じ、電位の小さい方が雨水等に溶け出して腐食する現象のこと。パンフレットでは日本溶融亜鉛鍍協会技術委員会が亜鉛めっき鋼板と異種金属を接触させて行った長期暴露試験も紹介しており、それによると大気中にNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)などの汚染物質を含む都市・工業地域の場合、金属接合部の亜鉛の腐食が促進される。酸性雨や酸性雪が降る地域、塩害を受けやすい地域も腐食しやすい
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同種金属使うか防食処理等施す
異種金属との接触による電食を防止するには、電位差が大きい銅・鉛が直接接触する施工は避ける金具や役物などは、アルミ製や、亜鉛厚めっきの耐久処理・塗装を施したものなどを使用し、特に塩害地域や積雪地域では同種金属(アルミ・亜鉛メッキ)を使うか、防食・絶縁処理したステンレス製を使用する―などとしている。
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防腐・防蟻木材との接触 木材と鋼板を絶縁
海水中における金属腐食電位列。電位差が大きい金属同士ほど電食が起こりやすい
防腐防蟻剤を圧入処理した木材と接触させためっき鋼板の赤さび面積率
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住宅で異種金属以外に接触による腐食が起こる材料として、防腐・防蟻処理木材にも注意を促している。
同連盟薄板軽量形構造技術小委員会の資料によると防腐・防蟻剤を圧入処理した木材と亜鉛系めっき鋼板を接触させて塩水を吹き付ける試験をしたところ、銅を含む防腐・防蟻剤で処理した木材はいずれも赤さびが多く発生した。これは木材が水分を含んだ場合、防腐・防蟻剤に含まれる銅の影響で、塗装/亜鉛めっき系鋼板は急激に腐食が進行するため。現在木材に使われている防腐・防蟻剤はACQ(銅・アルキルアンモニウム化合物系)とCUAZ(銅・ホウ素・アゾール化合物系)が主流になっており、いずれも銅を含むため注意が必要だ。
塗装/亜鉛めっき系鋼板と防腐・防蟻処理木材の接触例としては、防腐土台と鋼板製の水切り、通気胴縁と鋼板製のサイディング目地下地材が挙げられる。鋼板の腐食を避けるためには、土台と水切り、または通気胴縁と目地下地材の接触面にブチルテープやアスファルトフェルトなどのルーフィング材を挟んで絶縁することが重要。銅を含んだ防腐・防蟻剤を使っている場合は、打ち込んだ釘も腐食する可能性があるので、できれば銅を含まない防腐・防蟻剤を使うか、ヒバなど防腐・防蟻処理が不要な樹種の木材を使うほうが安全と言える。
なお、雨などで木材に注入された防腐・防蟻剤から銅が流れ出して鋼板を腐食させる心配はない。
異種金属接触と水溜まり避ける
日新製鋼北海道支店主任部員(商品技術担当)の澤谷啓一氏は「鋼板の腐食を防ぐには異種金属と接触させないことと、鋼板部分に水たまりを作らないことが非常に大切。特に屋根はドレン廻りに水がよくたまるが、そうなるとほぼ確実に腐食する。水勾配をしっかり取り、ゴミも溜まらないようにして、融雪水が速やかに排出されるように気を付けてほしい」と話している。
このパンフレットは鋼板メーカーや商社、板金業者に限らず、ビルダーも入手可能。
問い合わせは同連盟亜鉛鉄板委員会(〒103-0025東京都中央区日本橋茅場町3-2-10鉄鋼会館、Tel.03-3669-4819、FAX.03-3669-0229)へ。
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(図2点)防腐防蟻処理木材と鋼板の直接接触が懸念される部位
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