平成17年9月5日号から
ガルバ等の電食に注意促す
鉄鋼連盟がパンフで対策紹介

ガルバリウム鋼板にステンレス製の雪止めをつけた部分が電食を起こした屋根。一昨年、札幌で見つかった
 一昨年、札幌でガルバリウム鋼板の屋根材に無塗装ステンレス製の雪止め金具を付けた部分で電食が発生、腐食した事例が見つかった件で、鋼板メーカーは異種金属同士の接触は避けるのが板金業界の常識と主張していたが、鉄鋼業界の全国的な組織である日本鉄鋼連盟の亜鉛鉄板委員会では、そのようなトラブルが全国的に起きていることから『塗装/亜鉛系めっき鋼板の異種金属接触さび防止方法』というパンフレットを昨年11月に作成。改めて建設・板金業界に対し異種金属同士の接触に対する注意を促している。


日本鉄鋼連盟が作成した『塗装/亜鉛系めっき鋼板の異種金属接触さび防止方法』
全国的に問題発生
 このパンフレットは、塗装/亜鉛系めっき鋼板(ガルバリウム鋼板など)と異種金属または防腐・防蟻処理木材との接触による電食・腐食について、その発生理由や発生が心配される部位、防止策を紹介したもの。鋼板関連の協会や団体を通じて配布を行っている。
 作成した背景には、異種金属同士の接触による電食が全国的に起きていることがあり、正しい知識を知ってもらうことでそのようなトラブルの防止を狙いとしている。
 一昨年、札幌で異種金属同士の接触による電食が見つかった際に鋼板メーカーは「異種金属同士の接触を避けるのは板金業界の常識」としていたが、実際には全国的に発生していたことを考えると、メーカーと現場の板金業者の間にはかなり温度差があったようだ。また、「異種金属同士の接触を避けるのはごく常識的な話だが、最近では常識的な話でもなくなってきているようだ」(日新製鋼北海道支店丑場直輝支店長)と言うように、昔とは現場サイドの意識が変わってきている可能性もある。
 いずれにしても住宅の耐久性にかかわる問題だけに、メーカー側が積極的に十分な情報を提供し、板金業者側が正しい知識で施工できる環境づくりに乗り出したのは大きな一歩だ。

 異種金属同士の接触1  雪止め廻りが多い
 それではパンフレットで指摘されている問題点を改めて見てみたい。

ガルバリウム鋼板とステンレス製のドレンの接触により、電食が発生した屋根
 まず塗装/亜鉛系めっき鋼板と異種金属の接触による電食だが、心配される部分としては鋼板を取り付ける金具(ボルト等)周辺、屋外のドレンやダクトの周辺、雪止め廻り、増築部分と既築部分の屋根・壁の取り合いなどを挙げており、積雪寒冷地では雪止め廻りの電食が多いようだ。  具体的にはガルバリウム鋼板の屋根材にステンレス製の雪止めやドレンを設置したり、ガルバリウム鋼板の外装材にステンレス製換気フードを設置した場合など。ガルバリウム鋼板の外装材と灯油ボイラーの給排気筒の取り合いも注意が必要。

 異種金属同士の接触2  都市部ほど腐食促進
 異種金属同士の接触による電食は、異なる金属同士が接触している場合、接触部分の表面が雨水等で濡れていると金属間に電位差が生じ、電位の小さい方が雨水等に溶け出して腐食する現象のこと。パンフレットでは日本溶融亜鉛鍍協会技術委員会が亜鉛めっき鋼板と異種金属を接触させて行った長期暴露試験も紹介しており、それによると大気中にNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)などの汚染物質を含む都市・工業地域の場合、金属接合部の亜鉛の腐食が促進される。酸性雨や酸性雪が降る地域、塩害を受けやすい地域も腐食しやすい 。

同種金属使うか防食処理等施す
 異種金属との接触による電食を防止するには、電位差が大きい銅・鉛が直接接触する施工は避ける金具や役物などは、アルミ製や、亜鉛厚めっきの耐久処理・塗装を施したものなどを使用し、特に塩害地域や積雪地域では同種金属(アルミ・亜鉛メッキ)を使うか、防食・絶縁処理したステンレス製を使用する―などとしている。

 防腐・防蟻木材との接触  木材と鋼板を絶縁

海水中における金属腐食電位列。電位差が大きい金属同士ほど電食が起こりやすい


防腐防蟻剤を圧入処理した木材と接触させためっき鋼板の赤さび面積率
 住宅で異種金属以外に接触による腐食が起こる材料として、防腐・防蟻処理木材にも注意を促している。
 同連盟薄板軽量形構造技術小委員会の資料によると防腐・防蟻剤を圧入処理した木材と亜鉛系めっき鋼板を接触させて塩水を吹き付ける試験をしたところ、銅を含む防腐・防蟻剤で処理した木材はいずれも赤さびが多く発生した。これは木材が水分を含んだ場合、防腐・防蟻剤に含まれる銅の影響で、塗装/亜鉛めっき系鋼板は急激に腐食が進行するため。現在木材に使われている防腐・防蟻剤はACQ(銅・アルキルアンモニウム化合物系)とCUAZ(銅・ホウ素・アゾール化合物系)が主流になっており、いずれも銅を含むため注意が必要だ。
 塗装/亜鉛めっき系鋼板と防腐・防蟻処理木材の接触例としては、防腐土台と鋼板製の水切り、通気胴縁と鋼板製のサイディング目地下地材が挙げられる。鋼板の腐食を避けるためには、土台と水切り、または通気胴縁と目地下地材の接触面にブチルテープやアスファルトフェルトなどのルーフィング材を挟んで絶縁することが重要。銅を含んだ防腐・防蟻剤を使っている場合は、打ち込んだ釘も腐食する可能性があるので、できれば銅を含まない防腐・防蟻剤を使うか、ヒバなど防腐・防蟻処理が不要な樹種の木材を使うほうが安全と言える。
 なお、雨などで木材に注入された防腐・防蟻剤から銅が流れ出して鋼板を腐食させる心配はない。

異種金属接触と水溜まり避ける
 日新製鋼北海道支店主任部員(商品技術担当)の澤谷啓一氏は「鋼板の腐食を防ぐには異種金属と接触させないことと、鋼板部分に水たまりを作らないことが非常に大切。特に屋根はドレン廻りに水がよくたまるが、そうなるとほぼ確実に腐食する。水勾配をしっかり取り、ゴミも溜まらないようにして、融雪水が速やかに排出されるように気を付けてほしい」と話している。
 このパンフレットは鋼板メーカーや商社、板金業者に限らず、ビルダーも入手可能。
 問い合わせは同連盟亜鉛鉄板委員会(〒103-0025東京都中央区日本橋茅場町3-2-10鉄鋼会館、Tel.03-3669-4819、FAX.03-3669-0229)へ。

(図2点)防腐防蟻処理木材と鋼板の直接接触が懸念される部位


Q値1モデル住宅
札幌・拓友建設 暖房や開口部に新しい提案

Q-HOUSEの外観。緑の植栽は隣の公園のもの
 拓友建設(株)(札幌市、妻沼澄夫社長)は、真空断熱材などを使い熱損失係数(Q値)が1を切る断熱性能を持ったモデル住宅「Q-HOUSE」をこのほど札幌市北区太平の本社事務所近くに完成させ、現在週末限定で一般公開している。

屋根に真空断熱材
 「Q-HOUSE」は押出スチレンフォーム断熱板内部を真空化して薄いアルミ袋に包み込むことで断熱性能を従来製品の約3.5倍に向上させた真空断熱材(開発・ダウ化工(株))を使うなどしてQ値1を切り、年間の灯油消費量を次世代省エネ基準レベル比で半分以下に減らすことを目標に断熱スペックを詰め、さらにその高性能を前提にしたこれまでとは違う暖房システムや、狭小敷地の有効利用など様々な提案を折り込んだ実験的住宅。
 妻沼社長が会長を務める北海道SHS会と共同で研究を行い、モデル住宅のために断熱材はダウ化工(株)、サッシは(株)ノルド、暖房はピーエス(株)の協力を得て部材開発を行った。また、狭小敷地を生かした設計を初山森彦アトリエ(小樽市)に依頼した。
 敷地の間口が狭いこともあり、住宅は2階建てで延床面積は約116m2(組込車庫含む)と小さめ。構造は1階が太陽熱や暖房輻射熱の蓄熱効果を狙ったコンクリートブロック造、2階が在来軸組のPM工法を採用。断熱スペックは、外壁が押出スチレンフォームB3種の外張り断熱で、50ミリ+50ミリの二層張り、基礎断熱部が押出スチレンフォームB3種75ミリ(外側)+75ミリ(内側)の計150ミリ、屋根断熱が同75ミリ+新開発の真空断熱材40ミリ。これは押出スチレンフォームB3種で215ミリの断熱厚に相当するという。

Q-HOUSEのプラン。1F住居部分は間口2間だが狭さを感じさせない
 これに加え、トリプルガラスの単体熱貫流率(K値)が0.9Wを切る日本板硝子の新商品「アクア」を採用したノルドの特注木製サッシを使用、サッシトータルのK値も1Wを切る。暖房は電気ボイラーによる温水とスイス製薪ストーブの余熱を利用した温水を適宜切り替えて使うハイブリッド型温水セントラル暖房。換気は個別換気。これらの仕様でモデル住宅のQ値は0.99Wと1を切った。これにより暖房の年間灯油消費量を同社でシミュレーションしたところ、同モデルは817リットルと、次世代省エネ基準レベル(Q値=1.6W)時の1710リットルに対して半分以下に抑えられるという。
 窓の断熱性能が上がったことでコールドドラフトの発生がほとんどなくなったため、ピーエスでは暖房の放熱パネルを窓下に置くという発想をやめ、個室には高さを低く抑えて巾木のようなデザインとしたパネルを製作して存在感を薄め、玄関や台所にはコートや小物が掛けられるフックをつけた放熱パネルを置き、リビングには縦型パネルの間に薄型木製ラックを挟むなど、パネルを実用的なオブジェのように扱っている。
 デザイン面だけでなく、快適な暖房のために同社が提唱する『低温暖房』を実践。電気ボイラーからの送水温度を45℃まで下げ、その分放熱面積を広げてまろやかな輻射暖房を実現する。

ブロック造の1階寝室。ブロックや一部臥りょうが現しとなっている。巾木型の放熱パネルが新鮮


リビングからキッチンを見る。キッチン左手にハイサイドライトがあるので昼間は明かりをつけなくても明るいの
窓の配置にも工夫
 窓の性能向上は配置にも大きな変化をもたらした。従来大きめの窓が配置される南東向きの寝室には、道路や隣の家からの目線を遮って朝の光を部屋の奥まで採り入れるため比較的高い位置に小さな幅広の窓を配置(いわゆるハイサイドライト)、逆に2階のLDK部分は北西向きだが、隣接する公園を眺めてウッドデッキに出やすいように大きな掃き出し連続窓を流行のガラススクリーンのように配置している。
 設計者の初山氏は、「北入りで間口が狭く奥行きが長い敷地条件だが、玄関アプローチを長く取るなど動線の工夫で住宅内部への期待感を高めて住宅全体を心理的に広く思わせる効果を狙った。また隣の緑豊かな公園を借景として利用しているため敷地も広く感じる」と話している。


放熱パネルの間にきれいに納まった木製薄型ラック。低温水だから木部の変形の心配がない
トータル性を重視
 拓友建設の妻沼社長は、「外張り断熱工法のパイオニアとしてSHS工法が誕生して17年になるが、現在は次世代省エネ基準をクリアする断熱工法がたくさん存在し、SHS工法が誕生したときのような圧倒的な優位性を保ちにくくなっている。Q-HOUSEはQ値1を切ることだけでなく、住設建材メーカーや設計者も一緒になって暖房、換気、開口部、プランニングを考えることで『トータルで豊かな暮らしができる家』を実現したかった」と話している。


四季を通じ快適な家
名寄・大野組 地域性考えた構造・仕様

集成材を接合金物で緊結したHPナックル工法の軸組
 旭川の北、道北の名寄市に本社を置く(株)大野組(大野茂実社長)では、名寄で四季を通じて快適に過ごせる住まいをコンセプトに「四季の家」を自社ブランド住宅として提案。集成材の軸組を接合金物で緊結するHPナックル工法をベースとして地域性に配慮した独自の工夫を構造体に施すとともに、遠赤外線による天井暖房や蓄熱効果のある土間床などを組み合わせることによって快適性・省エネ性を実現している。
 同社では5年ほど前に縮小する公共工事から民間住宅建設へのシフトを進めるために住宅の設計・開発部門となるFS企画推進室を設置。四季がはっきりしている名寄で1年を通じて快適に過ごせる住宅として「四季の家」を開発し、大手ハウスメーカーとの差別化を図りながら普及を進めてきた。
 構造体は施工のしやすさや仕口の強度などを特徴とするHPナックル工法を採用。柱・梁から根太・間柱まで軸組全て集成材とし、柱と基礎などは柱脚金物、梁と桁は蝶番型の接合金物を使ってドリフトピンで緊結する。軸組外側は防湿・気密シートを張ってからOSB9.5ミリを施工し耐力を取る。



集成材を接合金物で緊結したHPナックル工法の軸組


天井暖房のエナジョイを採用したモデルハウス室内
土間床の蓄熱で冬暖く夏涼しく
 内陸の名寄は冬にマイナス20℃以下、夏は逆に30℃を超える日が珍しくない。そこで四季の家では150ミリ厚の土間床を造り、蓄熱体として利用することで、名寄の厳しい冬の寒さや夏の暑さを緩和する。夏は今までエアコンを付けた物件がないほど過ごしやすく、冬は遠赤外線による電気熱源の天井輻射熱暖房・ターマレイまたはエナジョイを採用しているが、南側に面した部屋では昼間、暖房が入らなくても日射取得熱だけで十分暖かいことも珍しくなく、年間の暖房費は10万円を切るほどという。
 また、土間床の上にフロア材を直張りすると、居住者の足腰に負担がかかるため、土間床の上は高さ10センチのプラスチック製の束を300ミリグリッドで配置して床下空間を取り、その上に床下地合板を張ってフロア仕上げしている。
 屋根は100坪単位の土地が名寄で多いことから落雪勾配屋根を標準とし、屋根断熱して小屋裏空間を納戸や電気温水器の設置場所などに有効利用。また、想定外の大雪にも対応できるように、屋根たる木は軒先から1つ目の母屋の間まで通常の半分のピッチとなる227ミリピッチで入れている。

地産地消にも積極的
 断熱は基礎が押出スチレンフォームB3種50ミリ、外壁がフェノールフォーム50ミリ、屋根が同45ミリ+45ミリによる外断熱、窓はPVCサッシLow-Eペアガラス。換気は第3種セントラルシステムを採用。
 このほか、地産地消とリサイクルにも積極的に取り組んでおり、室内に現しとする梁や手すり、ウッドデッキなどには名寄の隣町・下川町で生産されるカラマツの集成材や板材を採用。基礎工事は鋼板製の型枠を利用して廃棄物を削減すると同時に、基礎の精度を高めるのにも役立てている。さらに、外注工事もできるだけ地元業者に発注することで地域内で経済が循環するよう配慮している。
 同社FS企画推進室の又村秀浩室長は「今後も地域や時代のニーズに合った仕様や建材を採用していきたい。特に来年3月には名寄市と風連町が合併するので、風連町の地域性も考慮した家づくりが求められてくるが、地域の発展のためにも地場ビルダーとして大手ハウスメーカーに真似のできない住まいを積極的に提案したい」と話している。

上:想定外の大雪にも対応できるよう、屋根は軒先から1つ目の母屋の間まで、たる木を227ミリピッチで入れる
右:現しにする梁などには積極的に地場のカラマツを利用

 製品プロフィール
 
製品名
製品名

ターマレイ・エナジョイ
部位等 天井暖房
価 格 問い合わせのこと
問い合わせ リフォジュール(株)
札幌駐在事務所
札幌市厚別区大谷地東2丁目4-1
(札幌市交通局本局庁舎1F)
011-896-7500

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