平成17年7月5日号から
基礎断熱の先張りを考える
ここが知りたい!現場のツボ 第1回

布基礎と屋外側の断熱材の間に挟んだ防湿・気密シートを土台の下に通して室内側に立ち上げるのが、基礎断熱の土台先張りの基本
 ここ数年、基礎断熱の採用が増えるにともなって、土台廻りの気密化もいろいろな方法で行われるようになってきた。その中でも充てん断熱とする時の土台先張りシートは、土台の室内側・屋外側どちらに位置するかによって、使用するシートの種類が異なってくることを知らずに、間違った施工をしている現場もあるようだ。「ここが知りたい 現場のツボ」と題した企画記事の第1回として今回は基礎断熱の土台先張りシートについて取り上げてみたい。

 納まりのポイント 
シートは防湿or透湿
 在来工法では、繊維系の充てん断熱による床・壁・天井の室内側に連続した防湿・気密シートを張ることによって、断熱性能を十分発揮させるとともに、壁の中に水蒸気が入るのを防いで壁内結露を防止するが、土台廻り・桁廻りなどシートを連続して張れない部分は、あらかじめ先にシートを張っておく必要がある。これが先張りシートだ。
 防湿は高温側での原則通り、防湿・気密シートは断熱材の室内側に位置することになり、基礎断熱で施工する場合は、外断熱工法であれば土台先張りシートとして、布基礎外側の断熱材と一緒に防湿・気密シートを打ち込み、外壁の防湿・気密シートと連続させる納まりとなる。充てん断熱の場合は土台先張りシートを土台の屋外側に設けるケースもあれば、土台の室内側に設けるケースもあり、さらに基礎断熱材と同時打ち込みとするケースもあれば、気密パッキン一体型の専用部材を採用するケースもある。


防湿・気密シートを使った土台廻りの先張りの基本的な納まり
先張りシートを布基礎外側から土台の上を回して外壁の防湿・気密シートと連続させる時は透湿・防風シートを使う(新在来木造構法マニュアル2002より)
基本は室内側で防湿・気密
 まず、基本は防湿・気密シートを使い、布基礎と布基礎外側の断熱材との間に先張りシートを挟んでおき、土台の上ではなく土台の下、つまり基礎天端と土台の間を通して室内側に立ち上げ、外壁の防湿・気密シートと連続させる。
 ほかにも土台の室内側に先張りシートを施工する方法として、1.基礎両側断熱とし、布基礎と布基礎室内側の断熱材の間に防湿・気密シートを挟んで立ち上げる 2.気密パッキン付先張り(防湿・気密)シートを使う 3.布基礎天端と土台の間に気密パッキンを施工し、先張りシートは幅300ミリ程度のものを土台の室内側に押え材を使って付ける―といった方法があり、いずれも先張りシートには防湿・気密シートを使う。

室外側は透湿シート
 最近では1.基礎天端と土台間の気密処理が不要 2.基礎天端の精度に神経質にならずに済む 3.大引や火打ちが先張りシートを貫通しないので施工しやすく、気密も確保しやすい―などの利点から、土台先張りシートを布基礎外側から土台の上に回して外壁の防湿・気密シートと連続させる納まりが注目されている。

上:透湿・防風シートを使った土台廻りの先張り
右:パッキン一体型の先張り防湿・気密シートを施工している現場
 この納まりでのポイントは、シートに透湿・防水シートを使うことだ。
 これはツーバイで外壁と2階床の取り合い部の先張りシートに透湿・防水シートを使うのと同じ理屈。ツーバイでその部位の先張りシートは、2階床の側根太を屋外側から巻き込むように施工するが、先張りに防湿・気密シートを使うと側根太とシートとの間に湿気が入った場合、通気層に湿気が抜けず、結露が起こって木材を腐朽させる可能性がある。土台先張りシートも布基礎外側から土台の上を回す場合、防湿・気密シートでは土台との間で結露が起こる可能性があるわけだ。
 簡単に言えば、先張りシートが土台の室内側を巻き込む場合は防湿・気密シート、土台の室外側から巻き込む場合は透湿・防水シートを使うことになる。

 合理化を目指して 
パッキン付シートを利用
 基礎断熱では、基礎天端と土台、土台と壁の気密層の連続が気密性を確保する上で一番のポイントになるだけに、施工精度の高さが求められるが、基礎断熱の普及にともなって周辺部材の充実など施工の合理化も進んでいる。
 その中で代表的なのがパッキン一体型シートを使う方法だ。基礎天端・土台間は、基本的に布基礎打設時に断熱材と一緒に打ち込んだシートか、気密パッキンで気密化することになるが、断熱材と同時打ち込みのシートはコンクリートとの接触によって長期的に見ると劣化という面で不安が残り、気密パッキンは大引・根太で床組をする場合、先張りシートを別に施工しなければならず手間がかかるという課題がある。
 また、施工の簡略化を考えて天端均しを省略し、サンダー掛けなどでレベル調整を行っているビルダーもいるが、その場合、布基礎と屋外側または室内側の基礎断熱材の間にシートを挟む方法だと、先張りシートを傷つけたり、切断してしまう可能性がある。
 そこでこれらの課題を解決できる部材として登場したのがパッキン一体型のシートだ。


天端ジョシーツ500の納まり例

 土台の室内側に防湿・気密シートを回すタイプとしては、シールドキャッチャー(発売元・(株)栄興)、レール(同・ジェイベック(株))、土台用キミツ・パッキン400(同・(株)タイガー産業)、天端リスト(同・日本住環境(株))などがある。
 いずれも先張り防湿・気密シートに2本のパッキンをレール状に取り付けたもので、基礎のレベル調整を行ってから、パッキンを取り付けている面を下にして基礎天端の上に敷き、土台を乗せてから土台の室内側にシートの部分を立ち上げて外壁の防湿・気密シートと連続させる。

透湿シート仕様も
 先張りシートを布基礎屋外側から土台の上に回して外壁の防湿・気密シートに連続させる納まりでも、施工を簡略化できる専用の部材が発売されている。
 その製品が天端ジョシーツ500(発売元・日本住環境(株))。この部材は、先張りシートとなる透湿・防水シートに2本のチューブ状EPDMゴム製のパッキンを平行して取り付けたもの。施工は基礎のレベル調整を行ってから、シート部が屋外側になるように製品を基礎天端に敷き込み、土台を設置。その後シート部分を立ち上げて、土台を外側から巻き込むように室内側に回し、柱を落とし込む。柱やアンカーボルトの貫通する場所はあらかじめカッターで十字に切り込みを入れておく。後は柱間で貫を土台に打ち付けてシート部分を押さえ、間柱を貫の上に施工する形とする。


天端ジョシーツ500の施工現場。土台をぐるっと包み込むようにして室内側へ立ち上げる


ヌキの上に間柱施工で気密処理を省略できる








シート一体型土台用気密パッキン一覧
●防湿・気密シートタイプ
商品名
発売元
電話
FAX
天端リスト
日本住環境(株)
011-222-6330
011-222-6386
シールドキャッチャー
(株)栄興
011-373-4031
011-373-0161
レール
ジェイベック(株)
011-781-8201
011-783-6166
土間用キミツ・パッキン
(株)タイガー産業
011-851-3711
011-858-3981
●透湿・防風シートタイプ
商品名
発売元
電話
FAX
天端ジョシーツ500
日本住環境(株)
011-222-6330
011-222-6386


地場ビルダーが団結
オホーツク・登別 利害超えて協調、市場を活性化
 地域に根ざした良質な住宅の普及を図ろうと、オホーツクと登別それぞれの地元ビルダーを中心とする研究会・勉強会が相次いで発足した。それぞれ会員同士が協力・勉強しながら技術力の向上を図り、同時に地元ユーザーに情報提供を行うなどして市場の活性化にもつなげていく考えだ。

ユーザー目線で活動
O.E.H 地元に健康・快適な住宅提供

 ユーザーの目線に立って地元に健康性と快適性に優れた住宅を提供しようと、北網地域の地場ビルダーが中心となって「オホーツク環境住宅研究会(略称・O.E.H)」をこのほど設立。北見工業大学・坂本弘志教授(工博)を顧問に迎え、去る6月24日に北見市内のホテルで設立総会及び記念講演を行った。
 O.E.Hは、坂本教授が主査を務める寒地環境工学研究会環境流体応用部門の住宅関連業者が中心となって設立。ビルダー間の情報交換やユーザーへの情報提供、気密やVOC等に関する性能測定などを行うことで、21世紀にふさわしい快適で地球環境に優しい住宅を目指すとともに、それらの活動を通じて会員各社がビジネスチャンスの拡大を図ることを目的として、新たにO.E.Hを設立することになった。
 会員数は24社(大学・団体含む)で、このうち愛知県・三河地方の工務店を中心とする「みかわ100年の家project」(5月25日付2面参照)から11社が参加。本州ビルダーとの連携・情報交換などの活動も行う。

技術向上へ相互協力
 設立総会では、顧問の坂本教授のほか、会長に竹口祐司氏(北見・(株)竹口組社長)、副会長に三浦秀秋氏(北見・(株)建築館みうら社長)と澤田利昭氏(網走・光輝建設(株)専務)、事務局長に加藤典幸氏(網走・網走交通(株))、事務局次長に浅野仁志氏(北見(株)・竹口組)、監査に岡田好勝氏(埼玉・(有)オカトミ社長)と藤巻雄介氏(ジェイベック(株)札幌支店長)を選出。事業として、会員各社の技術力向上を図るため研究会・セミナー・勉強会での技術・情報交換及び住宅建築現場の検証会を実施高品質・低価格な住宅を目指し、建築資材や設備機器の検証・提案、共同購入の実施ユーザーに対するセミナー・相談会の実施信頼性のあるデータに裏付けられた健康的な室内環境の実現を目指すVOC測定の実施本州の会員ビルダーに対し、オホーツク地域で確立された住宅技術の提供―などを決めた。

高断熱高気密で環境共生目指す

左から三浦副会長、竹口会長、顧問の坂本先生、澤田副会長
 竹口会長は「地球環境問題が深刻になりつつある中、高断熱・高気密を基本とする環境共生住宅の実現を目指す必要があると考え、オホーツク環境住宅研究会と命名した。前身の寒地環境工学研究会では12年余りにわたって快適な空気環境を目指して調査・研究を行ってきたが、これからも今までの研究成果を基に、坂本先生を中心としてユーザーや地元業者らと幅広い活動を行っていきたい」と抱負を述べた。
 また、顧問に就任した坂本教授は「北網地域の工務店と寒地環境工学研究会で住宅の室内環境について研究を進めるうちに、こういう工法や材料が良かったという話が出てきていた。そこで思いきって活動範囲を広げて行動してはどうかと思いO.E.Hの設立に参加した。言葉だけの健康住宅ではなく、データに裏付けられた実践的な健康住宅を造るためにO.E.Hを手伝っていきたい」と挨拶した。
 設立総会の後は、道立北方建築総合研究所居住科学部主任研究員の大柳佳紀氏による記念講演を開催。続いて懇親会が行われ、O.E.Hの門出を祝った。

地域密着の家づくり
e-ハウジング登別 合同現場見学会など予定

 地域に密着した家づくりを今まで以上に消費者に知ってもらう一方、住宅に必要不可欠な性能のさらなる向上を目標として取り組むために、同じ考えや目的を持つ登別の工務店が集い「e‐ハウジング登別(古本明代表、住研ホーム(株)社長)」を結成した。

例会で会員同士が意見を交わしている様子
 e‐ハウジングの名称の由来は、すでに工務店同士でグループ活動を行っている「e‐ハウジング函館」を手本にアドバイスしてもらい、同じような活動を胆振でも行っていきたいという登別の工務店が先ごろ集まり「e‐ハウジング登別」を立ち上げた。
 すでに会員工務店の現場で性能の向上を目的とした勉強会や、道内他地域の住宅地視察、定例会を通じての交流や情報交換を行っている。また、登別市富岸地区で造成中の分譲地数区画を既に取得しており、そこに会員工務店が住宅を建て、合同現場見学会を開催する話が出ている。
 古本代表は「会員工務店はみんな同じ目標に向かって進もうとしているので、1社では出来ないことをグループ内で協力し合って活動していきたい」と話している。
 会員は次の通り。
▽代表・古本明(住研ホーム(株)社長)▽木原昭司((有)キハラ住建社長)▽渡部勉((有)北翔建設社長)▽中川雄三((有)成雄建設社長)▽石坂武((株)ほっこうハウス社長)▽谷正一((株)丸石設備工業専務)▽荒川昌伸((株)荒川設備社長)


床下地用の遮音板
イワクラ 遮音性高く分別解体対応

遮音複合板を敷き込んでいるところ
 (株)イワクラ(本社苫小牧市)は、床下地材の上に置き敷きするだけで遮音性能を10~15dB改善できる床遮音複合板をこのほど発売した。施工が簡単なだけでなく、分別解体にも容易に対応できることをアピールしながらアパート・マンション市場や二世帯住宅向けに販売したい考え。
 床遮音複合板は、20ミリ厚の同社パーティクルボード「ホモゲン」をウレタンフォーム系の特殊遮音フォーム4ミリと20ミリ品でサンドイッチして再剥離可能な特殊接着剤で貼り合わせた商品。施工は、床下地合板を張ってその上に置き敷きしていくが、このとき壁際は荷重に対する沈み込み防止用に幅25ミリ、厚さ20ミリの専用モールド材をビス止めする。床遮音複合板はモールド材が掛かる部分をカッターで剥がし、床遮音複合板とモールド材をビス止めする。その上から12ミリ厚の捨て貼り合板を床遮音複合板の目地と合わないようにビス止めする。最後にフローリングなどの床材を施工する。
 遮音性能は、床遮音複合板施工前と施工後それぞれ実際の住宅で測定したところ、重量床衝撃音、軽量床衝撃音とも数値が10ポイントほど下がった。構造・工法にもよるが木造戸建住宅ならだいたい10~15dBの改善効果が見込めるという。

遮音複合板を使った床組みの例
 長期荷重に対するへたりはほとんどなく、適度なクッション性で快適な歩行感がある。パーティクルボードは木材をリサイクルしており、特殊遮音フォームもウレタンフォームのリサイクル製品、複合板の接着に再剥離可能な特殊な接着剤を使用して解体時の分別が簡単になるなど、環境に配慮した商品となっている。なお、接着剤も含め構成する材料はすべてF☆☆☆☆クラスを使用しており、F☆☆☆☆を取得予定。
 規格サイズは幅910×長さ1820×厚さ44ミリ/枚。設計価格は6000円/m2(税抜)。
 問い合わせは同社建材事業部建材課(苫小牧市晴海町23、Tel.0144・55・6123)へ。

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