基礎断熱の先張りを考える |
ここが知りたい!現場のツボ 第1回 |
|
布基礎と屋外側の断熱材の間に挟んだ防湿・気密シートを土台の下に通して室内側に立ち上げるのが、基礎断熱の土台先張りの基本 |
ここ数年、基礎断熱の採用が増えるにともなって、土台廻りの気密化もいろいろな方法で行われるようになってきた。その中でも充てん断熱とする時の土台先張りシートは、土台の室内側・屋外側どちらに位置するかによって、使用するシートの種類が異なってくることを知らずに、間違った施工をしている現場もあるようだ。「ここが知りたい 現場のツボ」と題した企画記事の第1回として今回は基礎断熱の土台先張りシートについて取り上げてみたい。
納まりのポイント シートは防湿or透湿
在来工法では、繊維系の充てん断熱による床・壁・天井の室内側に連続した防湿・気密シートを張ることによって、断熱性能を十分発揮させるとともに、壁の中に水蒸気が入るのを防いで壁内結露を防止するが、土台廻り・桁廻りなどシートを連続して張れない部分は、あらかじめ先にシートを張っておく必要がある。これが先張りシートだ。
防湿は高温側での原則通り、防湿・気密シートは断熱材の室内側に位置することになり、基礎断熱で施工する場合は、外断熱工法であれば土台先張りシートとして、布基礎外側の断熱材と一緒に防湿・気密シートを打ち込み、外壁の防湿・気密シートと連続させる納まりとなる。充てん断熱の場合は土台先張りシートを土台の屋外側に設けるケースもあれば、土台の室内側に設けるケースもあり、さらに基礎断熱材と同時打ち込みとするケースもあれば、気密パッキン一体型の専用部材を採用するケースもある。
|
防湿・気密シートを使った土台廻りの先張りの基本的な納まり |
先張りシートを布基礎外側から土台の上を回して外壁の防湿・気密シートと連続させる時は透湿・防風シートを使う(新在来木造構法マニュアル2002より) |
基本は室内側で防湿・気密
まず、基本は防湿・気密シートを使い、布基礎と布基礎外側の断熱材との間に先張りシートを挟んでおき、土台の上ではなく土台の下、つまり基礎天端と土台の間を通して室内側に立ち上げ、外壁の防湿・気密シートと連続させる。
ほかにも土台の室内側に先張りシートを施工する方法として、1.基礎両側断熱とし、布基礎と布基礎室内側の断熱材の間に防湿・気密シートを挟んで立ち上げる
2.気密パッキン付先張り(防湿・気密)シートを使う 3.布基礎天端と土台の間に気密パッキンを施工し、先張りシートは幅300ミリ程度のものを土台の室内側に押え材を使って付ける―といった方法があり、いずれも先張りシートには防湿・気密シートを使う。
室外側は透湿シート
最近では1.基礎天端と土台間の気密処理が不要 2.基礎天端の精度に神経質にならずに済む 3.大引や火打ちが先張りシートを貫通しないので施工しやすく、気密も確保しやすい―などの利点から、土台先張りシートを布基礎外側から土台の上に回して外壁の防湿・気密シートと連続させる納まりが注目されている。
上:透湿・防風シートを使った土台廻りの先張り
右:パッキン一体型の先張り防湿・気密シートを施工している現場 |
|
この納まりでのポイントは、シートに透湿・防水シートを使うことだ。
これはツーバイで外壁と2階床の取り合い部の先張りシートに透湿・防水シートを使うのと同じ理屈。ツーバイでその部位の先張りシートは、2階床の側根太を屋外側から巻き込むように施工するが、先張りに防湿・気密シートを使うと側根太とシートとの間に湿気が入った場合、通気層に湿気が抜けず、結露が起こって木材を腐朽させる可能性がある。土台先張りシートも布基礎外側から土台の上を回す場合、防湿・気密シートでは土台との間で結露が起こる可能性があるわけだ。
簡単に言えば、先張りシートが土台の室内側を巻き込む場合は防湿・気密シート、土台の室外側から巻き込む場合は透湿・防水シートを使うことになる。
合理化を目指して パッキン付シートを利用
基礎断熱では、基礎天端と土台、土台と壁の気密層の連続が気密性を確保する上で一番のポイントになるだけに、施工精度の高さが求められるが、基礎断熱の普及にともなって周辺部材の充実など施工の合理化も進んでいる。
その中で代表的なのがパッキン一体型シートを使う方法だ。基礎天端・土台間は、基本的に布基礎打設時に断熱材と一緒に打ち込んだシートか、気密パッキンで気密化することになるが、断熱材と同時打ち込みのシートはコンクリートとの接触によって長期的に見ると劣化という面で不安が残り、気密パッキンは大引・根太で床組をする場合、先張りシートを別に施工しなければならず手間がかかるという課題がある。
また、施工の簡略化を考えて天端均しを省略し、サンダー掛けなどでレベル調整を行っているビルダーもいるが、その場合、布基礎と屋外側または室内側の基礎断熱材の間にシートを挟む方法だと、先張りシートを傷つけたり、切断してしまう可能性がある。
そこでこれらの課題を解決できる部材として登場したのがパッキン一体型のシートだ。
天端ジョシーツ500の納まり例
|
土台の室内側に防湿・気密シートを回すタイプとしては、シールドキャッチャー(発売元・(株)栄興)、レール(同・ジェイベック(株))、土台用キミツ・パッキン400(同・(株)タイガー産業)、天端リスト(同・日本住環境(株))などがある。
いずれも先張り防湿・気密シートに2本のパッキンをレール状に取り付けたもので、基礎のレベル調整を行ってから、パッキンを取り付けている面を下にして基礎天端の上に敷き、土台を乗せてから土台の室内側にシートの部分を立ち上げて外壁の防湿・気密シートと連続させる。
透湿シート仕様も
先張りシートを布基礎屋外側から土台の上に回して外壁の防湿・気密シートに連続させる納まりでも、施工を簡略化できる専用の部材が発売されている。
その製品が天端ジョシーツ500(発売元・日本住環境(株))。この部材は、先張りシートとなる透湿・防水シートに2本のチューブ状EPDMゴム製のパッキンを平行して取り付けたもの。施工は基礎のレベル調整を行ってから、シート部が屋外側になるように製品を基礎天端に敷き込み、土台を設置。その後シート部分を立ち上げて、土台を外側から巻き込むように室内側に回し、柱を落とし込む。柱やアンカーボルトの貫通する場所はあらかじめカッターで十字に切り込みを入れておく。後は柱間で貫を土台に打ち付けてシート部分を押さえ、間柱を貫の上に施工する形とする。
天端ジョシーツ500の施工現場。土台をぐるっと包み込むようにして室内側へ立ち上げる
ヌキの上に間柱施工で気密処理を省略できる
|
シート一体型土台用気密パッキン一覧
●防湿・気密シートタイプ
|
商品名
|
発売元
|
電話
|
FAX
|
天端リスト
|
日本住環境(株)
|
011-222-6330
|
011-222-6386
|
シールドキャッチャー
|
(株)栄興
|
011-373-4031
|
011-373-0161
|
レール
|
ジェイベック(株)
|
011-781-8201
|
011-783-6166
|
土間用キミツ・パッキン
|
(株)タイガー産業
|
011-851-3711
|
011-858-3981
|
●透湿・防風シートタイプ
|
商品名
|
発売元
|
電話
|
FAX
|
天端ジョシーツ500
|
日本住環境(株)
|
011-222-6330
|
011-222-6386
|
|
|