200ミリ断熱の超省エネ

昭和63年竣工 小樽市 鯰江邸

大きな三角屋根が目を引く外観
この住宅は間違いなく買い
 建設業に携わるご主人自らしっかりした構造に魅力を感じ、R-2000実験住宅を購入したという鯰江(なまずえ)さん。今回取材した奥様によると、入居した時に感じた暖かさと明るさは昔も今も一番気に入っているとおっしゃいます。
 鯰江さんは以前、市営住宅に住んでいましたが、3人のお子さんが成長しそれぞれ部屋が必要になってきたことから、マイホームを計画。施工業者を探している時に、ちょうど完成現場見学会を行っていた現在の住まい・R-2000実験住宅を見て、「しっかりした構造体や断熱仕様、使っている部材など、この住宅は間違いなく買い」と、ご主人が購入を決断したとのこと。抜群の性能を見抜いたのです。

灯油消費は7リットル/平方メートル
 セントラルヒーティングは初めて経験することもあって、寒さが厳しい時期にどれだけ暖かいのか、期待と不安に胸をふくらませて迎えた最初の冬。家全体が日だまりに包まれているかのように暖かく、その快適性は家が古くなり、家族が歳を取っても変わらないと言います。お子さんも友達の家から帰ってくると、「うちは暖かいね」と一言。グラスウール充てん+グラスウールボード外張りのダブル断熱とした外壁構造など、現在でも最先端の断熱仕様はその性能をいかんなく発揮しているようです。
 以前の市営住宅と比べると灯油・ガス代は半分くらいになり、「こんなに違うの?」と最初はビックリしたそう。しかもそれはこの15年間ほとんど変わっていません。入居した昭和六十三年のひと冬の暖房用灯油消費量は807リットル。1平方メートル当たり7リットル台の超省エネ住宅です。
 灯油消費量は、新省エネ基準相当で10~11リットル、次世代基準相当で8リットル/平方メートル程度。これは札幌の場合だから、札幌より寒い小樽で七リットルというのは、15年後でも次世代基準を上回る省エネルギー性能ということになります。

地震でも物が落ちない
 15年間で、外壁の塗り替えや給湯器の取り換えといったメンテナンスが必要な部分を除いて不具合はなく、構造体は頑丈そのもの。
 1993年の北海道南西沖地震や今年9月の北海道十勝沖地震でも近所の住宅はかなり揺れたと言いますが、物が落ちることは全くありませんでした。


暖かく明るいリビングはペットのワンちゃんもお気に入り

勾配天井と手すりが
印象的な階段廻り

● R-2000住宅テクニカルデータ

建築概要
所在地
小樽市望洋台
竣工
昭和63年夏
構造工法
ツーバイシックス工法
延床面積
1階64.59+2階44.71=109.30平方メートル

性能仕様と気密性能
グラスウール16K 250ミリ
外  壁
グラスウール16K 150ミリ+グラスウールボード32K 50ミリ
天  井
グラスウール16K 250ミリ
玄関ドア
樹脂製断熱タイプ
プラスチックサッシLow-Eペアガラス
暖房方式
パネル式セントラルヒーティング
換気方式
排気型セントラル換気システム
気密性能
竣工時:2.49回/h(1.27平方センチ/平方メートル
今 回:2.6回/h(1.56平方センチ/平方メートル

西條産業が建設した鯰江邸は、外壁に2×6スタッド、屋根に2×10のガセットトラスを採用することにより、剛性の高い構造と高断熱化を両立していることが大きなポイント。外壁部分は高性能グラスウール16K150ミリをスタッド間に充てんするとともに、グラスウールボード32K50ミリを外張り付加したダブル断熱200ミリとするなど、その断熱仕様は次世代省エネ基準をも大きく上回り、現在でもトップレベル。また、気密施工は気密シートのジョイント部分に加え、気密シートと窓枠・ドア枠の取り合いもコーキング処理するなど、細い部分まで配慮している。
(平成63年8月5日号 北海道住宅新聞から)

設計・施工…西條産業(株)(小樽市)

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変わらない燃費と気密性

平成元年竣工 旭川市 高橋邸
この住宅は間違いなく買い
厳寒地で快適に暮らす
 「入居してから15年間、灯油消費量は変わってないんですよ」―。こう話してくれたのは旭川市内に土屋ツーバイホームが建てたR-2000実験住宅で暮らす高橋さんご夫妻。
 昭和60年にロケーションの良い現在の土地を購入し、その後マイホームを建てる業者を探していた高橋さんは、初めからツーバイフォー住宅を考えていたと言います。いろいろな業者のモデルハウスを回った中でR-2000実験住宅で建てようと思ったのは、当時同社旭川支店の営業担当者だった柴田さんから提案されたことがきっかけ。道内でも特に寒さの厳しい旭川では高い断熱・気密性が快適性や省エネには重要と考えていたので、R-2000の性能の高さを聞き「それならぜひ」となったそうです。

灯油消費量は15年間同じ
 暮らし始めた当時の様子をご主人に聞いてみると、全ての部屋はもちろん、トイレや浴室、玄関など、どこに行っても暖かさが感じられたことを話してくれました。お客様を迎えると「玄関に入った瞬間から暖かい家だね」と言われることも多かったと言います。夜に暖房を切っても朝はそれほど寒くならず、土間床の蓄熱性が効いていることも実感できたそう。今と昔を比べても快適な暮らしは変わらないようです。
 また、「暖房・給湯にかかる年間の灯油消費量は1700リットル程度で、この15年間変わっていないんです」と嬉しそうに話す奥様。極寒冷地の旭川は、暖房用に床面積1平方メートルあたり新省エネ基準相当で12リットル以上、次世代基準相当でも10リットル程度必要。高橋邸は次世代基準と同等以上の省エネルギー性能です。

緑道を眺めながら食事ができるダイニング
 ご主人は「灯油消費量が今でも変わらないのは、施工当時の優れた断熱・気密性が生きているからなんですね。コンセント廻りなど細い部分まで丁寧に気密化していたことを思い出します」と、改めてR-2000で建てたわが家を気に入った様子。実際、気密性は今回の測定でも竣工当時とほとんど変わりませんでした。

フィルター交換も自ら

 性能を維持していくためには、住まい手のメンテナンスも重要ですが、ご主人は定期的に換気システムのフィルターの点検・交換を行うなど、非常に意識が高く、心配はなさそう。メンテ意識が高いのは、R-2000ユーザーの共通した特徴と言えそうです。
 断熱・気密性能と同様に、シンプルな三角屋根の外観や、リビングからダイニング、コンパクトにまとめた水廻りへと続く1階のプランなどもお気に入りと語ってくれました。


外観は三角屋根とウッドバルコニーが印象的


家族憩いの場であるリビングは、落ち着いた雰囲気

● R-2000住宅テクニカルデータ

建築概要
所在地
旭川市緑が丘
竣工
平成元年春
構造工法
枠組壁工法(2×6)
延床面積
1階84.46+2階43.68=128.14平方メートル(車庫含む)

性能仕様と気密性能
グラスウール100ミリ(根太間)+押出スチレンフォーム50ミリ(土間下)
外  壁
高性能グラスウール吹き込み140ミリ
天  井
ブローイング300ミリ(一部屋根断熱の部分はグラスウール200ミリ)
玄関ドア
木製断熱タイプ
プラスチックサッシ Low-Eペアガラス
暖房方式
熱交換型換気暖房システム
換気方式
熱交換型換気暖房システム
気密性能
竣工時:0.46平方センチ/平方メートル(相当隙間面積のみ)
今 回:1.2回/h(0.5平方センチ/平方メートル)

土屋ツーバイホームが建設した高橋邸は、カナダR-2000プロジェクトのテクニカルコーディネーターであるクリス・マトック氏と連携してディテールを検討するなど、様々な工夫を凝らしている。外壁と床の取り合い部などで気密シートを先張りし、完全に連続したエアーバリアを形成しているほか、下枠室内側の欠き込み部分にガスケットを二つ折りにして挟み込んで、木材の乾燥収縮による空気漏れを防止。さらに2階床の端根太部分やまぐさの室内側を断熱補強するなど、徹底した気密化とヒートブリッジの解消が最大のポイントとなっている。
(平成元年2月25日号 北海道住宅新聞から)

設計・施工…(株)土屋ツーバイホーム(本社札幌市)

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構造体は自慢できる

昭和63年竣工 幕別町 武田邸
灯油消費6リットル台を維持
 築十五年にもかかわらず、快く取材に応じてくれた武田さん。なるほど、マイホームについてしっかりと状況を把握していらっしゃいました。
 「室温が高いのが嫌いなので、子供がいるころは20℃、今でも22℃より上げることはありません」とご主人。年間の灯油消費量を聞いてみると、平成14年は少なくて1830リットル、13年は2175リットルで、暖房面積72.5坪と給湯をまかなっています。給湯だけで少なくても600リットルは使っているはずですから、暖房だけだとおよそ1200~1600リットル。一平方メートルあたり5~6リットル台というのは、規模が大きく灯油消費の面で有利という面を割り引いても、極寒冷地の十勝でさすがR-2000実験住宅。次世代基準のレベルを大きく上回っています
 平成5年の釧路沖地震では、暖房設備の一部に亀裂が入って真冬の1月15日から2日間、セントラル暖房が止まったが、電気ストーブだけで過ごせたそうです。
 今回の十勝沖地震では、被害はお皿1枚だけ。リビングのコーナーの壁から白い粉が落ちてきた程度で、過去数回の地震を経ても建物の被害はまったくと言っていいほどありません。
 「この地域は地盤が悪く、建てる前には地質調査の資料も取り寄せましたが、?坂社長とも打ち合わせて杭を打たず、総地下のスラブコンクリートで受けることにしました。地下水位も高いのですが、いまだに何の支障もなく地下室を使っています(ご主人)」。

「思い切りやって」と
 R-2000実験住宅の話を向けると、「?坂社長から聞いて『うちでやってもいいよ』と答えたんです。そしてやるなら思いっきり、そして完ぺきにやってね、と注文を付けました。気密性能値もとてもよかったし、私たちもよかった。構造体に対してはいまだに何の不満もありません。自慢できますよ」とご主人。結露も窓ガラスの下枠にうっすらと水滴が付く程度でまったく気にならない程度。レンジフード一体の排気型セントラル換気も故障知らずで回り続け、ときどき掃除しているそうです。

100年住宅だからこそ
 ただ、これから先のことについては、注文したいこともあるとおっしゃいます。
 例えばサッシ。「15年の間にプラスチックサッシのゴムの気密パッキン材が劣化して、多少冷気が侵入するようになってきました。悪いところが出てきたら直したい。構造体はまだびくともしていないのだから、そういう修理・交換についてはぜひ、アドバイスがほしいし、情報も知りたい」とご主人。
 百年住宅といわれるR-2000だからこそ、これからの手入れなどが重要になってきそうです。

外部は相当手を入れた。サイディングの張替、2階バルコニーと1階風除室の新設なども

造り付けの収納家具。これが地震による食器の被害を最小限に防いだ


15年で味わいを深めたリビング。クロスの汚れもほとんどない

● R-2000住宅テクニカルデータ

建築概要
所在地
幕別町緑町
竣工
昭和63年秋
構造工法
ツーバイシックス工法
延床面積
地階116.76+1階109.30+2階105.99=332.05平方メートル

性能仕様と気密性能
ブローイング235ミリ
外  壁
高性能グラスウール吹き込み140ミリ
天  井
ブローイング300ミリ
玄関ドア
木製断熱タイプ
プラスチックサッシ ペアガラス
暖房方式
パネル式セントラルヒーティング
換気方式
排気型セントラル換気システム
気密性能
竣工時:0.40回/h(0.30平方センチ/平方メートル)
今 回:0.44回/h(0.17平方センチ/平方メートル)
※…増築および吹き抜けの居室化により、
  新築時より床面積が増えている

高坂ホームの現在に至る標準仕様の基本となったのが武田邸。ツーバイシックス壁にグラスウール吹き込み工法140ミリ。天井のブローイング断熱は、小屋裏通気を確保しながら軒先部分でも断熱性能を確保できるよう、高密度グラスウールボードで補強している。気密性能面では、防湿・気密シートに当時は特注の2m幅、0.2ミリ厚のポリエチレンシートを使用、壁T字部分の先張りや手づくりの断熱・気密コンセントボックスなどに加え、木材のやせにも対応できるパッキン材を利用して気密層を連続している。
(昭和63年9月5日号 北海道住宅新聞から)

設計・施工…(株)高坂ホーム(帯広市)

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パッシブソーラー設計

昭和63年竣工 池田町 梅田邸

緑に囲まれた外観
半地下のリビングに蓄熱
 十勝管内でツーバイフォー工法導入のパイオニアである(株)赤坂建設。同社・梅田社長の自宅がR-2000実験住宅なのです。
 「もうあんまり手入れしていないんだけど…」。少しシャイな梅田社長がそう話すのは、『医者の不養生』ではありませんが、建築の専門家としてのはにかみかもしれません。
 社長が「普通の家」と話す自宅は、現在でも高性能を維持するパッシブソーラー設計の魅力的な間取りの住まいでした。
 プランは、外観上は半地下1階+地上2階ですが、玄関を入るとすぐに上下階段が出現。リビングは半地下で階段を4、5段下ります。社長の書斎はさらに3段ほど階段を下りたところ。ダイニングは逆に玄関から5段ほど上がったところにあり、台所、寝室も同じフロア。子供部屋は最上階なので、全体として5層のスキップフロアとなっています。「開放的にしたかったが、ただ吹き抜けがあるだけの空間にはしたくなかった」と梅田社長。
 リビングは半地下の一部コンクリート造で、土間床コンクリートと合わせて、大きな窓から太陽熱を効率的に蓄熱するパッシブソーラー仕様となっています。
 凝った設計とは裏腹に、内装の仕上げはシンプルです。梅田社長は「やはり性能が一番大事。内装などは、私自身はシンプルが好き」と言います。
 六〇坪近い大きな家ですが、内装工事は4人の大工で1週間足らずで完成したとか。階段の裏など目立たない部分は石こうボードのみで仕上げています。

子供たちの素直な感想
 梅田社長自身は住み心地に関しては、あまり多くを語りませんが、お子さんが竣工当初、友だちの家に遊びに行って帰ってきたとき、「よそのおうちの部屋はどうして寒いの」と聞いてきたそうです。
 R-2000住宅が他を圧倒する高性能ぶりを発揮していたことを示すエピソードと言えそうです。

変化が生み出す『味』

 気になっている点は、採用したカナダの木製サッシは注文したLow-Eガラス入りではなく、間違って通常ガラス入りが配送されたため断熱性能が少し低いこと。太陽熱取得の面では有利ですが、「リビングが床暖房で窓面が暖まりにくいこともあり、少し結露するのが悩み」とか。
 薪ストーブのある壁がススで汚れたり、玄関横の羽目板がいい色に日焼けしてきたり、築15年の変化が「いい味わいを出してるな」と思わせる風格を感じました。


リビングから眺めるとスキップフロアの様子がわかる


ダイニングはコンパクトにプライベートな雰囲気を醸し出す


ダイニングからリビングを見下ろすとその広さが実感できる

● R-2000住宅テクニカルデータ

建築概要
所在地
中川郡池田町利別西町
竣工
昭和63年秋
構造工法
ツーバイシックス工法
延床面積
1階91.18+2階56.31+地階52.33=199.82平方メートル

性能仕様と気密性能
発泡ウレタン80ミリ
外  壁
高性能グラスウール24K 150ミリ
天  井
高性能グラスウール24K 200ミリ+押出スチレンフォーム20ミリ
玄関ドア
木製断熱タイプ
木製サッシ トリプルガラス
暖房方式
パネル式セントラルヒーティング(一部床暖房)+薪ストーブ
換気方式
排気型セントラル換気システム
気密性能
竣工時:1.01回/h(0.62平方センチ/平方メートル)
今 回:1.40回/h(1.10平方センチ/平方メートル)
※…今回の測定では薪ストーブの煙突を目張りできなかったため、
  通常の値よりも多少悪い数値が出た可能性がある

 十勝管内で初めてツーバイフォー住宅を施工した赤坂建設は、R-2000実験住宅にも積極的に取り組み、R-2000レベルのクリアだけでなく、その高性能を生かして新しい試みも行っている。パッシブソーラーは、発泡ウレタン80ミリを外側に施工した半地下部と土間床コンクリートを蓄熱体とし、蓄熱容量は通常のツーバイフォー住宅の10倍以上、結果として暖房用ボイラーは7,000kcalタイプで済んでいる。
 躯体はツーバイシックス、暖房はパネル式セントラルヒーティングにリビングは床暖房を組み合わせ、薪ストーブも取り付けている。気密施工は、防湿層をフレーミング段階で先張りするなどの配慮をし、窓まわり・ドアまわりにはノルウェー製の気密パッキン材とウレタン吹きつけを併用、梅田邸の高性能を支えている。
(昭和63年9月25日号 北海道住宅新聞から)

設計・施工…(株)赤坂建設(池田町)

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