平成16年7月5日号から
工務店中心にモデル建設
全棟2000万円で個性競う 東邦建設「あゆみの丘」

あゆみの丘モデルハウス全景。画面左が竹内建設、右最前列が北王
 東邦建設(株)(本社帯広市)は、札幌市南区真駒内にある自社所有地を住宅分譲地として開発、「あゆみの丘」としてこのほど売り出した。工務店6社を含む8社が「2000万円で建てられる住宅」をコンセプトにモデルハウスを建て、6月19・20日に行われたモデルハウスオープン記念イベントでは数百組が来場した。このモデルハウスは約3ヵ月間展示した後、秋にはモデルハウスの第二弾公開を予定しており、建設に参加する会社を現在受け付けている。

こだわりの層に好評
 「あゆみの丘」は、地下鉄南北線真駒内駅からバスで15分ほどの丘の上にある。札幌芸術の森が近くにあるなど、利便性よりも緑豊かな環境の良さが売り。開発面積は約2万坪、合計140区画あり、第1期分譲分として82区画が販売される。1区画の面積も70~100坪と札幌市内の分譲地としては広めで分譲価格は1000万円前後が中心。建築業者に関する条件は一切ない。



丸仁工務店はレンガスタイルとゼオンサイディングを張り分け、メンテナンスの手軽さをアピール


北王は、モデルハウス人気投票で人気?1に。気鋭の建築家を起用し、内装を大胆にも白で統一


中央建設は道産カラマツを構造材や内装材に使用。壁は腰壁上は稚内珪藻頁岩(けいそうけつがん)の塗り壁
 消費者が現実的な検討がしやすいように「給排水工事なども含んだ金額で1棟2000万円」をコンセプトに工務店など各社にモデルハウス参加を打診、地場工務店六社を含む8社が参画し、延床面積35~41坪のモデルハウスが完成した。消費者は現実的な2000万円という価格で各社がどんな提案をしてくるのかを、期待しながら八棟をまわって比較検討ができる。さらに、各モデルハウスを企画した担当者を「建築家」として顔写真入りで紹介、造り手の顔が具体的に見える工夫をしている。6月19・20日のオープン記念イベントでは建築家自身によるモデルハウス解説と見学会が行われ、30代、20代を中心に多くの参加者があり、すこぶる好評だった。
 今回モデルハウス建設に参加したのは、(株)光和建設、(有)ジャストホーム、竹内建設(株)、中央建設(株)、(株)北王、丸仁工務店(株)(社名50音順)の工務店6社と(株)ジョンソンホームズ、(株)太平ホーム北海道の計8社。北広島市の光和建設以外はすべて札幌市内の業者。

第2期モデル業者募集

 東邦建設札幌支店の石川孝祐氏は、「ハウスメーカーの住宅に飽き足らない個性的な家を建てたい客層を想定し、地場工務店を中心にモデルハウスに参加する会社を募集した。道路からのセットバック規制など景観を維持するための建築協定を設けており、資産価値も保っていけると思う」と話している。
 なお、モデルハウス建設にあたっては、建設用地を一定期間、事業者の東邦建設が参加業者に貸し出す方式とし、モデルハウスを建設する会社の負担を抑えている。また、モデルハウスを建設する会社には優遇条件で土地販売も行うという。
 モデルハウス募集の問い合わせなどは、同社札幌支店(Tel.011・621・5130)へ。
 
ユーザー心理の変化 中小ビルダーの健闘
【解説】札幌圏ではこのところハウスメーカーの市場支配力が低下していると言われるようになってきた。そして代わりに注目されているのが年間20から30棟くらいを施工するビルダーだ。
 そのビルダーのなかには、いわゆる工務店も含まれているが、そのほかに設計事務所に近いこだわりの設計力と施工を請け負う体制を持った住宅会社も含まれている。
 ハウスメーカーの商品としての住宅に飽き足らないユーザーがこのようなビルダーに流れているとされているが、もう一つの見方としては、大手ハウスメーカーへの信頼という神話が崩れたことも挙げられる。
 全産業的に見られる経営破綻、そして欠陥住宅問題によって、大手イコール安心という図式が成り立たなくなっている。そうすると、ユーザーとしては大手メーカーに信頼の対価として高い坪単価を払う理由が見あたらなくなり、自分の目でビルダー選びを行うようになる。このような流れは、札幌圏で地場の(株)ホーム企画センターと豊栄建設(株)が大手を抑えてトップクラスの受注を獲得していることからも裏付けられる。
 ニュータウンの開発、分譲についても同じことが言えそうだ。従来、札幌市内のニュータウン開発では、大手メーカーが早々と土地を押さえ、工務店が入る余地はなかった。しかし、地価の下落、大手の支配力低下によってニュータウンの様相も大きく変化し、今回のように工務店を中心とした提携も可能になってきている。
 施工棟数イコール信頼という時代は終わり、どれだけユーザーを感動させられるかという時代に変わってきた。ユーザーの土地選びも単純に坪単価を比較するのではなく、その土地が自分にとって価値があるのかという見方に変化しているといえそうだ。

道北・留萌に白アリ
青山プリザーブが発見 5~6月の羽アリに要注意
被害家屋から採取したシロアリと羽アリ。いずれもすでに死んでいる
 道北の留萌市内ではじめてシロアリが発見された。
 確認したのは札幌に本社を置く(株)青山プリザーブ旭川営業所の村上竜仁所長。留萌市内の大手建設業者から一般木造家屋内に羽アリが出るので調べてほしいとの連絡を受け、今年6月1日に現地調査、羽アリはヤマトシロアリであることが判明した。さらに床下を調べたところ、浴室の入口下で大引を食害中の無数のシロアリを発見、留萌地方シロアリ被害家屋第1号として学会報告する。
 被害家屋は築後41年の木造。被害箇所は浴室入口柱と床下の大引、床束で、それぞれ空洞になるほどの被害を受けていた。隣地との境に放置された角材、木製物置にもシロアリの集団を確認したので、留萌市内にシロアリ生息が定着していると判断した。6月9日には被害家屋の薬剤散布を完了した。
 北海道にはイエシロアリはおらず、ヤマトシロアリも生息域が限られていると考えられている。ただ、3年前には旭川市内でシロアリ被害が確認されており、凍結深度の深い道東や沿岸部などを除き、これまでに北海道の半分以上は生息が確認されている。

北海道の白アリ分布図(平成16年現在、青山プリザーブによる)
最近は乾燥木材の被害例も
 今回の被害例のように、シロアリは湿った環境を好み、水廻りの構造材などで被害が起きるのが一般的だ。しかし最近は旭川や札幌の被害例のように、新築の高断熱・高気密住宅で乾燥した床組み木材や基礎の発泡断熱材が食害にあう例があり、その理由はまだわかっていない。
 なお、シロアリは羽アリになると黒いため、ふつうのアリと区別がつきにくい。一般的には6月に発生する羽アリがシロアリ、8月がふつうのアリだが、今回の留萌では5月28日に羽アリが飛んだ。
 これについて同社青山修三社長は「今回の被害家屋は6月でも朝夕ストーブを焚き、5月には一晩中焚きっぱなしだったことが、本来は温暖地の昆虫であるシロアリの活動期間を長く活発にさせたのではないか」と見ている。
 いずれにしてもシロアリかどうかの鑑定と駆除は、専門の知識を持っている業者に依頼してほしいとしている。

十勝初のスーパーE
土屋ツーバイ カナダの暮らしと性能提案

スーパーEハウスの外観。意匠面も凝っている
 (株)土屋ツーバイホーム(本社札幌市、工藤政利社長)では、帯広市内に十勝地方初のスーパーEハウスを建築中だ。
 スーパーEハウスは、R-2000住宅を基本にカナダ・天然資源省が日本向けに開発した住宅を輸入したもので、同社が日本初の施工認定企業。日本の次世代省エネルギー基準を上回る断熱・気密性能や、森林資源を有効利用した木材、有害物質の発生量が極めて少ないカナダ製建材などによって、健康・快適性と省エネ・省資源化を実現。その性能・品質はカナダ・天然資源省が1棟1棟チェックし、全てクリアした住宅のみ認定証を発行している。
 同社は6年前からスーパーEハウスを建築しているが、昨年末に札幌市北区新琴似に完成させた4棟に続き、十勝では初施工。札幌より冬の寒さが厳しい点を踏まえ、外壁の付加断熱材を25ミリから50ミリに強化。また外壁下地をOSBから構造用合板に、TJIの梁背をややゆとりを持たせてワンランク上げるなど、地震が多い十勝に対応し構造強度も引き上げている。
 間取り面では日本の事情を取り入れて一階に個室を設けたり、巾木をダブルとするなど細かな変更を加えている。
開口部はカナダの樹脂サッシ。国内の窓とは異なるデザインが楽しい
 内装仕上げはドライウォールペイント。このほかほとんどの建材をカナダから輸入し、ライフスタイルと性能をいっしょに提案するプランだ。
 六月には現場見学会にあわせてセミナーも開かれ、カナダ政府認定スーパーEハウス技術指導員のキミ・伊藤氏がカナダのライフスタイルを説明。塗り替えで手軽にインテリアを一新できるペイント仕上げの良さについて「四季それぞれに調度品を変えてインテリアを楽しむのがカナダのライフスタイル。このとき、壁は装飾品を引き立てるため、柄ものではなくペイントが好まれる。そういった暮らしの彩りがカナダの特徴だ」とし、DIYで実際に塗り替えを行う例も紹介。また暮らしの工夫として、トイレは人が入っていないときは扉を少し開けておくのがマナー。合理的な考え方と暮らしを楽しむカナダ流の暮らしに、参加者は興味深げに聞き入っていた。
 なお、スーパーEハウスは帯広市郊外の土地およそ81坪、建物の延床が41坪の4LDK。販売価格は土地・税込で3200万円。

リフォームで中古住宅の流通促進
室蘭・内池建設 リサイクル住宅事業を開始

新事業について語る内池社長
 (株)内池建設(室蘭市、内池眞人社長)では、誰も住んでいない中古住宅を構造体からリフォームする、リサイクル住宅事業を立ち上げた。市内に数多くある古家を同社が買いとり、新築同様にリフォームして今秋には売り出す計画だ。また、販売に先駈けてモデル住宅を市内に完成させ、5月に見学会を開催した。


外観before:時代を感じさせるモルタル塗りの外観。部分的に傷んでいるところが見られる

外観after:樹脂サッシに変更しサイディングを張ったリフォーム後の外観。以前と比べて大きく印象が変わった
“壊すのはもったいない”
(株)内池建設 内池眞人社長

 リサイクル住宅事業は、一般的な大規模リフォームも対象としているが、その範囲はもう少し広い。新築の注文住宅のように、古い住宅をオーダーでリフォームしたり、リフォームした中古住宅を建売住宅のようなかたちで販売する。
 つまり建物には価値がない“古家付き住宅地”を再生することで流通を促進し、新築とは異なる新しい市場を作り上げていこうという事業だ。
 同社内池社長に背景と狙いをインタビューした。

 古家が多いという地域の事情 
─リサイクル住宅事業に取り組もうと考えたきっかけは。
 「室蘭を含め周辺地域は年を追う毎に人口が減ってきている。その背景には、大きくなった子供たちが両親を残して都会へ行ってしまうことが挙げられる。親も自分たちが動けるうちは問題ないが、年を取り身体に不調がでてくると子供の元へ行ったり、老人ホームなどの施設へ入ってしまう。そうなると居住者のいない築20~30年の住宅が次々と余ってしまうことになる。室蘭地域には使われていない古家が多く存在するという点に注目した。
 一方、若い世代は、家は必要だが昨今の経済情勢を反映して予算が厳しい。新築ばかりを考えていては、規模面などで希望を叶えられないケースも多い。そこで、性能は新築と同様に引き上げながら、コストについては新築より低い商品が必要だ。
 使わない家を処分したいという高齢の世帯と家が必要な若い世帯のそれぞれのニーズを仲介することで新しい需要が生まれるし、これを社会的に見れば住宅という社会資産を解体で壊すのではなく再生させるという大きな意義もあると思う。
 世間では様々な分野でリサイクルの時代となっているのに、最も高価な住宅を壊して建て替えるのはもったいないことだ」

外観before:リフォーム前は天井が低いことから余計に狭い感じがした

外観after:明るく広い空間となったリビング。壁のニッチを新たに取り付け、天井に高窓を設けた
 新築と比べ250万円ほど安い 
―コストと間取りの制約もあると思うがどうか。
 「ほとんどの住宅は、水廻り周辺の木材が腐っていても、その部分を補強するか取り替えてしまえば大丈夫。水廻り以外の部分はよっぽどのことがない限り再利用できる。何より木材は、何十年と家を支えてきた古い柱・梁のほうが乾燥しているので頑丈だし、新しい木材よりも住宅に馴染みやすいこともあるので安心して使うことができる。ムクの木材としては最高の素材だ。ただ基礎と地盤がしっかりしていることが条件だ。基礎が使えないと、コストは新築以上にかかる可能性もある。
 もう一点、コストとの兼ね合いで大切なのが築年数。20年以内だと建物に価値があるため仕入れコストが高くなってしまう。このためポイントはRCの布基礎で築20年以上の物件ということになる。
 これらの条件をクリアすれば、基礎工事と木工事で大幅にコストを抑えられるので、解体にかかる費用を差し引いても新築より250万円ほど安くなる。新築同様の住まいがここまで安く手に入るなら、年収の少ない若い世代が家賃程度で住むこともできる。
 今の段階ではローン商品が用意されていないが、銀行側と折衝中だ。趣旨には賛同してもらっており、ふさわしいローン商品を用意したいと話してくれている」
 まずはユーザーに知ってもらう 
―まずは建売形式ということになるか。
 「完成したリサイクル住宅を見てもらい、こういう住まいがあるんだということを、地域のユーザーにまずは知ってもらう必要がある。その上で個性やこだわりを求める人には、注文建築のかたちで叶えることができるという提案をしたい。古家を在庫として持つことになるが、平面プランだけでなく、立地も大切になってくるだろう。
 秋ごろには、3棟のリサイクル住宅の展示・販売を開始する予定なので、現在はそれにふさわしい中古住宅を探している。この事業は初めての取り組みなので、ユーザーの声に耳をかたむけながら反応を見ていきたい」


外観before:長いこと使い続けてきたキッチン。カビが生えたようなあとも見られる

外観after:リビングへ向いた対面キッチンから、窓越しのきれいな庭が見渡せる。昔の面影がどこにも感じられない
モデル公開で好反応
 見学会が行われたモデル住宅では、築38年の古家が全面的なリフォーム工事によってどのように生まれ変わったかが披露され、リフォーム住宅とは知らずに見学していた来場者から驚きの声が上がっていたという。
 既存住宅は、延床面積30.2坪の在来工法による木造モルタル平屋建て。リビング・和室・寝室の2LDK。
 リフォーム前は、リビングの天井が低いため狭く感じた。暗く湿っぽさのあるキッチンはリビングに背を向けて立つ配置。和室は落ち着いた雰囲気だが、長い年月が経過する中で畳・壁・天井が傷んでいた。
 今回のリフォームで間取りの大幅な変更はないが、空間にゆとりを持たせたリビングには、壁のニッチや天井の高窓を新たに取り付けた。リビングと同一空間となったキッチンは、広さにゆとりがある明るい対面式とし水廻りの使い勝手を改善。和室はしつらえの良さはそのままに装いを新たにした。
 性能面は新築同様の工事を行い、断熱・気密性能の向上とともに耐震性の強化も行っている。
 同社の瀧澤敦チーフプランナーは「基礎を生かすということで間取りの制約はあるが、住宅の場合はLDKに風呂・トイレ・寝室と生活に必要な空間の要素はほとんど決まっている。広さは住宅の規模で対応可能だ。安い価格で新築同様の住宅を提案できるのが大きな魅力」と話している。

ダクトの凍結防止
ニットーボー東岩 ダクトにかぶせる「スノーハット」

スノーハットの本体
 ニットーボー東岩(株)は今月から、スノーダクトの横樋にかぶせて縦樋まわりの凍結を防止し、オーバーフローによるスガモリなどを防ぐスノーダクトカバー「スノーハット」を発売した。新築だけでなく既存住宅の改修などにも使える。
 スノーダクトは屋根に雪を乗せたまま融雪水を横樋から縦樋に集めて排水するが、縦樋口が凍結してオーバーフローを起こしてスガモリが発生する可能性がある。これを防ぐためスノコなどを敷くが、数年でボロボロになるなど問題も多い。
 スノーハットは耐久性・耐候性に優れたFRP製で、横樋にはめ込んで支持棒を差し込むだけの簡単な取り付け。スノーハットを取り付けることで横樋の内部は“かまくら”の内部と同様に積雪で保温された状態となり、縦樋口の凍結を防止する。
 本体には排水穴とハット頂部に予備排水穴が設けられており、万が一の凍結時にも確実に融雪水を排水できる仕組み。
 対応する横樋は、同社の「トイエース」「トイエースつばさ」はもちろん、市販されているほとんどの樋に取り付け可能。標準で幅250~300ミリ、特注支持棒を使うことで350ミリ幅まで対応可能だ。
 積雪荷重や風であおられた場合を想定した試験などを実施、問題がないことを確認。またこの冬の設置試験では、雪で覆われた時期にはハット内は安定してプラスの温度を記録、横樋底部の凍結もなかった。製品には一切金属を使っておらず、トタン屋根・樋との電食などの心配もない。
 製品は長さ1メートル、高さ195ミリ×幅310ミリで、支持棒により樋幅は柔軟に対応可能。設計価格は1枚1万500円(税抜)、2枚で1こん包。
 問い合わせは同社住宅建材グループへ(札幌市白石区本通7丁目北1-33、Tel.011・861・2102)。

スノーハット設置状態。できれば樋全体に設置するのがいいが、縦樋まわりの2メートル程度でも効果的


横樋にかぶせて支持棒でおさえるだけ。風であおられ飛ぶ心配もない

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