平成15年7月5日号から
扇風機でカビ予防
旭川・ヨシダホーム 低ホルム化で新たな対策

1階に設置された牛舎用の扇風機
建材の低ホルムアルデヒド化が進んでいるが、一方、工事水の影響などで現場が高湿状態の時にはカビが発生しやすい環境になると言われている中、旭川のヨシダホーム((株)吉田建設社、吉田寛社長)では、施工中の現場に牛舎などで使用されている業務用扇風機を導入し、通風を促すことでカビが発生しにくい現場環境を整えている。

各階と床下に設置 
現場によっては除湿器も

 これまでホルムアルデヒド(ホルマリン)は、合板の接着剤やクロス糊の防腐剤として使われてきたが、ここ数年、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因物質の一つとわかり、現在、建材は低ホル化を謳う製品が主流になっている。しかし、ホルムアルデヒドは細菌や真菌(カビ)、ウイルスに有効で防虫・防腐効果があり、そのおかげでカビの発生がある程度抑えられていたことから、低ホル化で特にクロスの接着剤は湿度環境によってはカビが発生しやすくなるとも予想される。
 同社では十勝のビルダーからカビ防止を考えて現場で扇風機を使っている話を聞き、自社の現場でも採用を検討。道内は梅雨こそないが、最近は6~7月にかけてエゾ梅雨という雨の多い時期があることを考慮し、今年六月から全ての現場に牛舎用扇風機を導入することを決めたという。

断熱施工の頃から運転

 現在施工している現場では、1階・2階に各1台ずつ設置しており、価格は1台1万円未満。基礎断熱した床下にも一台設置する予定だったが、高さの関係で牛舎用扇風機が入らなかったため、高さを抑えた扇風機を設置する。
 扇風機の設置時期は建て方が終わり、断熱材を入れて風が抜けにくくなった頃。職人が毎日現場に入った時に運転を開始し、仕事が終わって帰る時に停止する。なお、現場の状況によっては除湿器を設置することも考えているそうだ。

通風を促進
 同社の吉田社長は「多くの建材でホルムアルデヒドが無くなってきている状況では、カビ対策として現場で空気を澱ませない工夫が必要と考えた。旭川でも雨の多い時期があるので、一定の効果は得られると思う」と話している。

今回初めて扇風機を導入した住宅現場

住宅におけるカビの生育条件(上川郡東川町のホームページより)

バリアフリー体験棟
石狩市・酒井組 身体状況に応じた提案

てすりんの外観は一般の戸建住宅をイメージさせるデザイン
 (株)酒井組(石狩市、酒井敏一社長)では、高齢者や身障者向けの介護用設備やバリアフリー製品などを展示し、それらの使いやすさをその場で確かめてもらい、使用する人の身体に合った製品を提案するバリアフリーショールーム「住まい工房てすりん」を石狩市に完成させた。
 六月二十日にオープンした「住まい工房てすりん」は、高齢者や身障者ができるだけ不自由せず、快適に過ごせる住まいを築く架け橋となるために企画された体験型ショールームとなっており、誰でも気軽に使えるように地元住民の交流の場所としていく考えだ。
 建物は、敷地面積110坪に延床面積54.4坪の木造2階建て。1階は様々な介護設備を備えた体験コーナーを設け、2階には介護製品を展示したコーナーを設けている。
 入口のアプローチには、アスファルト、ゴムマット、人工芝、インターロッキングで仕上げた歩行スペースをそれぞれ用意し、床仕上げの違いによる歩きやすさを比較できるコーナーとなっている。

アプローチにそれぞれの歩きやすさを比較できるコーナーを設けた


障害者に対応したトイレ。
寝た状態で排泄できるようにとの工夫がなされている
 室内は一般的な住宅の間取りをイメージした空間に、高齢者や身障者が必要とする介護設備やバリアフリー対応の製品を完備。まず、介護室コーナーには、来場者が自由に使える高齢者専用の電動ベッドを設け、このベッドを自宅に置く場合どれだけのスペースが必要か確認できるように、4畳半、6畳、8畳分のスペースをラインで区切るという工夫がされている。また、ホールには高さや踏み板のサイズが異なった階段のサンプルを三パターン用意し、それぞれ比較することができる。
 広いスペースを設けたトイレコーナーには、便器を中心とした両サイドに便座と同じ高さのステージを設置し、平行に回転する手すりを便器の両側に取り付けてあるため、手をついた状態で体重移動ができ、寝たままの排泄を可能とするなど、あらゆる障害者に対応したトイレとなっている。
 浴室コーナーには、腰をかけた状態でゆっくりとお湯の中へ下降できる入浴昇降機を設置。また、入浴に介助を必要とする人のためのシャワー浴という専用のシャワー設備も備わっている。
 ほかにも、様々な種類の手すりをそれぞれ違う高さで取り付けた手すりコーナーや、ワンプッシュで自由な高さに調整できる昇降型の洗面台やキッチンを展示している。
 同社営業部長の家守寛氏は「福祉や介護または街づくりの情報発信地となるように、常に新しい情報を提供できるように努め、工務店やリフォーム業者の方にも利用してもらいたい。今後は、この場所を地元の方々が自由に使える交流の場としていきたい」と話している。
 営業時間は午前10時~午後5時まで、定休日は毎週水曜日。住所は石狩市花川北6条5丁目2、Tel.0133・76・1333。


第8回 寒地住宅学校 講演特集
健康に配慮したリフォーム時の 木材防腐と周辺技術
(株)青山プリザーブ 代表取締役 青山 修三氏

青山社長
理解不十分なナミダタケ
対応誤り被害拡大

気密材・グラスウール・新木材の使用でナミダタケの勢いが増し、白い菌糸が出てきたところ
 北海道の木造住宅に見られる腐朽は欧州型。その代表格と言える「ナミダタケ」による腐朽は、ひどい場合、床の落下などの被害を引き起こすため最も警戒が必要だが、その性質等がよく理解されていないために対応を誤り、被害が拡大するケースが今でも見受けられる。
 ナミダタケは比較的寒い地域を好む腐朽菌の一種で、木材のセルロース(繊維)を栄養分とし、乾燥木材に自ら水分を運ぶなどの性質を持っている。綿状の菌糸があまり出ていない状態では「普通の腐れ」と誤解されることが多く、菌糸が出た状態になって初めて「ナミダタケ」とわかる。そのため、専門家でも間違う人が多い。
 なぜ、北海道の住宅がナミダタケに弱いのかと言うと、大引梁と中基礎が大きな原因と考えられる。大引梁の支持点でセルロースが分解されると木材の強度が落ちるが、さらに中基礎の場合は木口の湿度が高くなりやすく、繁殖しやすい条件が整う。
 なるべく早い段階での処置が望ましいが、新材の使用や中途半端な断熱・気密化による「新築並みの改築」はナミダタケに新しいエサと繁殖しやすい環境を与えるようなもので、より被害を大きくする。木材表面の菌糸を取り払っても、内部に活性の高い菌糸が潜んでいるので全く効果がない。表面に異常がなかったとしても、内部が黄色く変色していたら腐朽が始まっている証拠なので注意が必要だ。


防腐せずに新材を継ぎ、ナミダタケが発生した

綿状の菌糸で覆われている床下

家屋を食い荒らすナミダタケのイメージ
VOC対策を考え、ホウ酸を浸透剤で固めてチョーク状にした防腐・防蟻剤「モクボープラグ」

北海道のシロアリ推定生息分布図

旭川市内の住宅で見つかったシロアリ
防腐防蟻はホウ酸で
揮発性高い油剤は避ける

 古材にある程度の強度がある場合の補強工事の仕方としては、木材に保存処理を施した上で、古材または古材と新材の接合部分をアラミド繊維と樹脂で補強する方法がよい。
 木材防腐の歴史の古い北欧では改修方法として、断熱材で外壁と内壁の間に空気の通路を作り、熱風を数日間送風するヒートトリートメントや樹脂と棒状のガラス繊維で古材の表面と内部を固める方法、古材を半割にして鉄芯を埋め込むなど古材を活かした方法が用いられている。
 VOC対策を考えた防腐・防蟻剤としては、浸透性ホウ酸製剤の塗布やホウ酸を浸透剤で固めてチョーク状にしたものを仕口・継ぎ手部分に挿入する方法が良い。油剤は揮発性が高いので、住宅の気密性が高い北海道では増改築の現場で絶対に使ってほしくない。水溶性タイプも油剤ほど臭いはひどくないが、増改築現場での使用は避けるべきだろう。
 また、ヒバ油や木酢液など天然成分の防腐防蟻剤は、効果にバラツキがあるうえ、臭いがきつく、持続効果がないなどの欠点があり、天然だからと言って必ずしも安全とは言えない。なお、クロルピリホスは建築基準法改正により今年七月から全面的に使用禁止となった。
 基礎空間の湿気対策では最近、ゴム・アスファルトをエマルジョン化した防水剤が開発された。施工性に優れ、凹凸のあるところでも簡単・確実に施工できるのが特徴だ。 

シロアリにも注意
上川付近まで生息範囲に

 シロアリ被害についても少し触れておく。一般的に、北海道ではシロアリは生息できないとされているが、過去2年間に旭川市内で3件のシロアリ被害が発生した。明治期にも函館や札幌で発見されたという記録があり、開拓以前から既に上川付近まで北上していたと推測できる。
 今後、基礎断熱工法の普及により床下温度が一定に保たれた住宅が増えると、シロアリの生育期間が長くなると考えられる。また、土台の気密パッキンと先張りシートにより、羽蟻が外に出られずに室内に入り込むため、発見率も高まってくるだろう。注意が必要。

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